女性が日本で働く上で大切なのは、一生細く長く働き続けられる企業を選ぶこと。
ライフスタイルや価値観の多様化により、現在の日本における女性の働き方やライフ・ワークバランスの取り方における選択肢は増加傾向にあります。
その中で自分の生き方を開拓していく人もいれば、選択肢が増えたからこそ自分の身の振り方に迷う人もいるのではないでしょうか。
今回はそんな方のために、日本の女性が置かれた現状を紐解き、就活前に何を考えておくべきなのかをお伝えします。
「結婚・出産」は女性のキャリアにどんな影響をあたえるのか
まずは、女性と結婚・出産について見てみましょう。
日本では、女性は結婚・出産で仕事を辞めざるを得ないことが多い
※出典:内閣府「男女共同参画白書平成23年度版 第3図 女性の年齢階級別労働力率(国際比較)」
グラフから、日本における女性の年齢別労働力率(※1)は「M字カーブ」を描いていることが分かります。
数値が落ち込むのは30代で、数値が戻るのは40代ということから、結婚・出産を機に、仕事を辞めてしまう女性が多いことが推測できます。
(※1)労働力率:人口に占める労働人口の割合
これは、スウェーデンやドイツでは、30代女性の労働力率は20代より増加しているのと対照的です。
辞めた後は、2人に1人がパートタイマーとして再就職
では、出産で仕事を辞めた日本の女性は、どのような形で再就職するのでしょうか。
厚生労働省「平成27年雇用動向調査」によると、平成27年内において、30~40代の入職者女性(新たに仕事に就いた人)の約半分がパートタイマーとして就職しています。
※出典:厚生労働省「-平成 27 年雇用動向調査結果の概況-」
子どもがいる日本女性の給料は、男性の約40%しかない
日本では、家庭と両立しやすい仕事を選ぶと、低賃金と非正規雇用がセットでついてくるのが現状です。
そのことが分かる、子どもがいる女性・子どものいない女性と男性との賃金差を示すグラフを見てみましょう。
※出典:The Atlantic「The 4 Rich Countries Where Women Out-Earn Men (With 1 Huge Caveat)」
このグラフから、子どもがいる日本女性は、男性の40%(つまりマイナス60%)の賃金で働いていることが分かります。
子どもがいるため長時間労働を伴う仕事ができないといっても、これは世界一低い水準です。
対してオランダは、短時間のパートタイマーでも、正社員と同じ時給・待遇が法律で保証されている国です。
そのため、OECD「Part-time employment rate」によると、オランダ女性の61.1%が短時間のパートタイムで働いているにも関わらず、上のグラフでは男性との賃金差は10%未満となっています。
ここまでの女性と結婚・出産に関連するデータから、「日本では、女性は結婚・出産で会社を辞めることが多く、辞めた後に再就職すると待遇は下がることが多い」という現実が浮かび上がってきました。
一生、正規雇用で働き続けたとして管理職になれるのか
次は、女性とキャリアについて見ていきたいと思います。
キャリアを大切にする方なら誰でも意識するのは「昇進」だと思いますが、日本における女性の管理職の割合を見てみましょう。
日本では、女性が管理職に占める割合はたった12.5%
内閣府「男女共同参画白書平成28年度版」第2章によると、日本では女性が管理職に占める割合は12.5%(つまり、男性が87.5%)と、世界的にも下位から数えた方がいい水準です。
※出典:内閣府「男女共同参画白書(概要版) 平成28年版 第2章 就業分野における男女共同参画」
民間企業で、女性が課長職を占める割合はたった9.8%
職種ごとの管理職の割合も見てみましょう。
※出典:内閣府「男女共同参画白書(概要版) 平成28年版 第2章 就業分野における男女共同参画」
同調査の第1章によると、皆さんが就活で目指すであろう民間企業では、女性が課長職を占める割合は9.8%、部長職を占める割合は6.2%と、他と比べて低いです。
逆に、司法職・医療専門職(特に薬剤師)・国家公務員などが比較的数値が高いことから、やはり資格試験の受験が必要な職は強いことが分かります。
これらのデータから、「仮に一生、正規雇用で働くことができても、管理職になるのは難しい」ということが分かります。
高学歴の女性も他人事ではない
もう1つ、衝撃的なデータを紹介します。
日本総研の「東京圏で暮らす高学歴女性の働き方等に関するアンケート調査結果」(2015年)によると、偏差値60~70台の大学を卒業した女性(東京在住・25~44歳)においてさえも、正規雇用はたったの48.3%なのです。
※有効回答数は 1,828 人(25~29 歳:419 人/30~34 歳:441人/35~39 歳:494 人/40~44 歳:474 人)
※出典:日本総研「「東京圏で暮らす高学歴女性の働き方等に関するアンケート調査結果」の 図表 6」より著者が作成
この調査の他の数値から、この「無職」というのは大半が専業主婦であることが類推されます。
いろいろな事情が考えられますが、日本一企業数が多い東京であっても、偏差値60~70の大学を出ていても、正規雇用で居続けている人は2人に1人しかいません。
就職活動をする上では、日本の女性が置かれているこうした現状を知っておく必要があります。
「一生、細く長く働き続けられる企業を選ぶ」という選択肢をあなたはどう思うか
ここまで、
・「日本では、女性は結婚・出産で会社を辞めることが多く、辞めた後に再就職すると待遇は下がることが多い」
・「仮に正規雇用で働くことができても、管理職になるのは難しい」
・「高学歴の女性でも、正規雇用で居続ける人は2人に1人」
という現実を見てきました。
こうしたデータから導き出される、女子学生が長く働き続けるために就活時に考えておきたいことは、下記になると思います。
・結婚・出産をしたいのかを考える
・結婚・出産をしたいなら、その後は働くのかどうかを考える
・結婚・出産を経ても働きたいなら、どのような形で働きたいのかを考える
・結婚・出産をしたいなら、産休・育休や時短勤務などのサポート制度を利用できる会社を選ぶ
・自分が仕事に望むこと(管理職としての昇進なのか、専門職としてスキルを高めることなのか等)を考える
・上記がかなえられるような会社を選ぶ(例.昇進したいなら、子供がいても昇給や待遇に差が出ない会社)
加えて、会社を辞めるようなハプニングが発生しない企業を選ぶことが大切です。
つまり、働き過ぎで体を壊して辞めることのないよう、マスコミなどのハードワークな業種は避けることをオススメします。
こうした日本の現状を踏まえて、何よりも安定を重視したい人に私がオススメしたいのは、「一生、細く長く働き続けられる企業を選ぶ」という働き方です。
この選択肢を、あなたはどう思うでしょうか。
「人生は仕事だけではなく、家庭や趣味に割く時間を確保したいから賛成」「安定した立場で、給料をもらい続けることが大事だから賛成」と思う人もいるでしょう。
「そんな無難な選択肢は嫌だ、たとえ連日残業でも、好きなことをやってガンガン出世したいから反対」「安定よりも自分の成長を重視するため、いつでも転職できるようなスキルを磨き続けたいから反対」と思う人もいるでしょう。
この選択肢に対して感じたこととその理由を、自ら分析することから、あなたの企業選びは始まります。