こんにちは、ワンキャリ編集部です。
先日、初代編集長である北野唯我が出版した『内定者への手紙 ─「仕事が遅い人」と呼ばれないための、10のチェックリスト』。Amazon新着ランキングで1位を獲得、さらには全体のカテゴリー別ランキングでも3部門1位を獲得するなど話題になっています。
この本は、その名の通り、北野が内定者に向けて書いたものですが、就活生がこれからのキャリアを考える上でも知っておいて損はない内容になっています。
そこで、この連載では、北野がこの本の内容を基に「仕事でミスが多い」「周りの内定者が優秀で自信がない」といった内定者の方たちからの悩みに答えていきます。4月に社会人になるという読者の皆さんはもちろん、就活生の皆さんもぜひお読みください。
さて、今回北野がいただいた質問はこちらです。
他の内定者が優秀そうに見えて、自信がなくなってしまいました。自分は要領が悪いと思っており、仕事の早い社会人になれるイメージが持てません。どうすればいいですか?
(斉藤さん・仮名)
北野からの答え:「記憶」と「記録」を交互に繰り返せば、スピードが上がる突破口が見つかる
仕事のスピードには「タイム」と「タイミング」という2つの要素があり、タイミングの方が重要だ──先日の記事ではそんなお話をしました。
ただ、もちろん仕事のタイム(かかる時間)を短くしていくことも重要です。斉藤さんにまず聞いてみたいのが、「自分が仕事にどれくらいの時間をかけているか、知っていますか?」ということです。
私が考えるに、仕事(作業)の時間を短くする方法はたった1つ。それは「測る」こと。私自身は「計測の法則」と呼んでいます。
【計測の法則】
・作業を分解し、要素ごとに「客観的」に記録する
・数字や変化をメモし続ける
大切なのは「記憶」を「記録」に落とし込む、これを繰り返すことです。
記憶(きおく)とはあなたの脳内の話。とても主観的でぼやけがちなものです。一方で、記録(きろく)はあなたの脳みその外にあるもの。客観的な事実です。“きおく”と“きろく”は1文字しか違いませんが、決定的に違うものなのです。
例えば、メールを一本返信するにしても、仕事が早い人と遅い人では雲泥の差が出ます。そして、仕事の遅い人であれば「何にどれぐらい時間がかかっているのか?」を把握していないはずです。
斉藤さん。もし周りに社会人がいれば「あなたは、メールを一本返信するのに、どれぐらい時間がかかりますか?」あるいは「500文字の報告文を書くのに、どれぐらい時間がかかりますか?」と聞いてみてください。
ほとんどの人は「分からない。測ったことがない」か「何となく○分ぐらいじゃないかな」と、曖昧な数字で答えることしかできないでしょう。
しかし、これではいけません。この状況をスポーツで例えるなら「自分の最高球速が何キロなのか?」「体重が何キロなのか?」「ウェイトトレーニングで、何キロまでなら上がるのか?」が分からない状態といえます。「計測」というのは、自分の状態を知る上で非常に大事なのです。
先輩と新人、メール送信にかかる時間が「4倍以上」差がついた理由とは
では、具体例で見ていきましょう。
斉藤さんが営業職だったとします。今お客さんとのアポイントが終わり、お礼メールを送らないといけない。お礼とともに、アポイントで話した内容の要約(サマリー)を送ると喜ばれるでしょう。
この場合は、以下のように作業を分解できます。
・メールアドレスの入力
・メール文面のベース作成
・推敲(すいこう)〜編集
・(必要ならば)上司への送付確認
・送信前の最終チェック
・送信
そして、それぞれのタスクに「自分がどれぐらい時間をかけているのか」をざっくりでいいから計測します。このケースで調べた結果、以下のようになったとしましょう。
<新人の場合>
・メールアドレスの入力(2min)
・メール文面のベース作成(15min)
・推敲(すいこう)〜編集(5min)
・上司へのチェック依頼(10min)
・送信前の最終チェック(3min)
・送信(1min)
合計 36min
いかがでしょうか。仕事の時間が「何となく」ではなく、構造的に、そしてロジカルに理解できるはず。毎回測ることはありませんが、まず1回やってみましょう。そうすれば確実にスピードが上がるはずです。
例えば、同じように先輩にも時間を計測ってもらったところ、こんな感じになるでしょう。
<仕事ができる先輩Aの場合>
・メールアドレスの入力(0.5min)
・メール文面のベース作成(1min)
・推敲(すいこう)〜編集(3min)
・送信前の最終チェック依頼(3min)
・送信(1min)
合計 8.5min
2人のメール作成の時間には、実に4倍以上の差があります。こうやって比較することで、ボトルネックが一瞬で分かるようになりますし、具体的な改善策も見えてきます。
まず目につくのは、2つ目の「メール文面のベース作成」。先輩は1分なのに対し、新人は15分もかかっています。文面を作るだけなのに、なぜこれだけの差が?
実は先輩はメールのパターンを事前に全て作っていて、ExcelやWordなどで管理し、コピー&ペーストをしていたのでした。また、パソコンやスマートフォンの「辞書機能」も使い、文章入力の時間も短縮していたようです(できるビジネスパーソンとしては当然の習慣だが、やっていない人もたまにいます)。
これはあくまで一例ですが、こうやって要素を分解し、計測することで、自分と他者との差が分かります。
もしかすると「面倒だな」と思ったかもしれません。だるそうだし、大変そうな気もする。私が皆さんの立場でもそう思うはず。ただ、実際は「仕事が遅いままでいる」ことの方が、もっと面倒くさいのです。
歳を重ねても仕事が遅いままだと、正直、絶望的なビジネス人生を送ることになります。そんな人に、私たち大人は面倒くさくて指導しようと思わないから。時間の無駄だと感じてしまうのです。
だから、新人のときはどんなに面倒でも、自分のタスクを分解し、計測する。これを半年に一度でいいのでやってみてほしいです。それだけでほぼ確実に、他の同年代や同期よりも仕事のスピードが上がってくるでしょう。他の人はやらないから。
「仕事の本質」というのは、他の人がやらないけれど、価値のあることに先んじて投資することです。それがもっとも効率のいい戦い方だから。この「計測の法則」もそれに当てはまります。
斉藤さんが企画職になったら、企画書が完成するまでの時間を。営業職になったら1社の受注にかかるまでの時間を。ぜひ測ってみてください。
また、より詳しくは新刊『内定者への手紙』で述べていますが、仕事のスピードを上げるには、目標を立てることも重要です。「目標」を立て、「分解」し、「計測」する。この3つがそろって、初めて成長が加速します。
これらを実行するだけで、ほぼありとあらゆることのスピードを上げることができます。斉藤さんは不安に思っているかもしれませんが、この技術には、頭の良さもIQ(知能指数)も、生まれも関係ありません。どんな人でも変われるのです。その意味で、希望がありますよね。
Amazon新着ランキングで1位、全体のカテゴリー別ランキングでも3部門1位を獲得!
これをするだけで「仕事が出来る人」になる、北野唯我が実践する仕事術、10のチェックリスト。
あなたはできていますか? 今なら、Kindle Unlimitedで無料で読める!・内定者への手紙 ー「仕事が遅い人」と呼ばれないための、10のチェックリスト
【北野唯我のキャリア相談:特別編】
・あなたは「いい会社に入りたいのか」? それとも「いい会社を作りたいのか」?
・「20代はとにかく、仕事の量をこなした方がいい」というのは本当ですか?
・要領はいいはずなのに「仕事が遅い」とよく怒られます。どうすればいいですか?
・他の内定者が優秀そうに見えて、自信がなくなってしまいました
・仕事のスピードは朝決まり、翌日の成功は前夜に決まっている
(Photo:McLittle Stock/Shutterstock.com)