「自分にどんな企業が合うか、分かりません」
慶應大学4年 ♀ 海下さん
北野唯我(KEN)です。
この連載では、私のこれまでの経験を踏まえて、皆さんのキャリア相談にお答えしています。
まず「自分にとって仕事はどれぐらい重要なのか?」と「せっかく貴重な時間を投下するなら、どんな仕事がいいか?」を分けて考えたほうがいい
「自分に合う企業の見つけ方が、分かりません」
という声は学生さんからよく聞きます。本当のところ、この悩みは学生だけではなく、社会人になっても同じです。皆さんの10年先の未来、すなわち30代前半になっても、「自分にあった企業」を見つけるのは容易なことではありません。今回はこれを前提としながらも、「自分に合う企業」を見つける方法を探っていきます。
まず大事なのは、2つの問いを明確に分けて考えることです。2つとは
・自分の人生にとって「仕事」がどれぐらい重要なのか?
・貴重な時間を投下するなら、どんな仕事がいいのか?
です。今回の記事では、この1つ目を見ていきます。
人生における仕事の重要度は「成長」「お金」「一緒に頑張れる仲間」をそれぞれどれぐらい求めているのかの最大値で決まる
では、どうやって「自分の人生にとってどれぐらい仕事が重要なのか?」を判断すべきでしょうか。結論からいうと「成長」「お金」「一緒に頑張れる仲間」のそれぞれを、どれだけ求めるのかの「最大値」で決まります。……わかりにくくてすみません。どういうことでしょうか? 順に見ていきましょう。
どれか1つでも「強烈に求めているもの」があるなら、バリキャリ志向
そもそも、仕事には多くの側面があります。その中で、特に重要な要素は3つです。それが「成長」「お金」「一緒に頑張れる仲間」でしょう。そして、そのうち1つでも強い思い入れがあれば、それはつまり「あなたにとって仕事はとても重要だ」ということを指します。
例えば、あなたにとって「お金」がとても重要だとします。執着心も強い。だとすれば、おそらくあなたにとって「仕事はとても大事なもの」になりえます。あるいは、あなたにとって「お金」はそれまで大事ではないが「一緒に頑張れる仲間や、同志」がとても大事なのであれば、同様に「仕事はとても大事なもの」になりえます。あるいは、「成長や、向上することがとても大事」だとすれば、同様に「仕事はとても大事なもの」になりえます。3つ全てが大事な人にとっても、仕事はとても重要なものになりえます。
つまり「最大値」があなたにとっての仕事の位置づけを決めます。ここではこういう人たちを「バリキャリ志向」と呼びましょう。
どれにも強い執着がない人は、「堅実キャリア」を目指した方がいい
反対に、これら3つのどれにも強い執着がないのであれば、きっとあなたは「プライベートが優先で、仕事はほどほどであればいい」というタイプの方だと思います。ここでは「堅実キャリア志向」と呼びましょう。言わずもがなですが、どちらが良い、悪いは一切ありません。ただ、タイプによって「自分にあった企業の見つけ方」は大きく異なります。
バリキャリを目指す人は、「理不尽なことがあったときに、なんのためなら我慢できるのか?」で考えるべき
まず「バリキャリ志向」向けの、自分にあった企業の見つけ方をお伝えします。それは一言でいうと「理不尽なことがあったときに、なんのためなら我慢できるのか?」で考えるべきです。
コンサルや投資銀行、メーカーや商社、マスコミ、ディベロッパー、ベンチャーなどのいわゆる「忙しい企業」に入社すると、必ず一度は「思い通りに行かないこと」にぶち当たります。理不尽なこともあるでしょう。それを乗り越えるためのポイントは「理不尽なことにぶつかっても、なんのためなら、乗り越えられるか?」という自分自身の価値観です。
例えば、私は理不尽なことがあったとき、「お金」のためだけでは自分自身を納得させることはできません。一方で「成長」や「一緒に頑張れる同志」のためなら頑張れます。あるいは、外資系投資銀行に勤める私の友人は、社内で理不尽なことがあっても「巨額のボーナスを考えれば、踏ん張れる」と語ります。このように、人によって「何によって踏ん張れるか?」は異なり、向いている職種も異なります。
以下は、一例です。
・成長/将来やりたいことなら踏ん張れる人:コンサル・外資メーカー・ベンチャーなど
・お金や、社会的ステータスのためなら踏ん張れる人:投資銀行・商社・マスコミ・コンサルなど
・一緒の仲間なら踏ん張れる人:商社・ベンチャー・マスコミなど※あくまで参考までにご覧ください
堅実キャリアを目指す人は「どんな人間となら、四六時中一緒にいても苦痛ではないか?」で考えるべき
では、反対に「堅実キャリア」を求める人は、どうやって自分にあった企業を選べばいいでしょうか。
あえてスタンスをとって言いますが、結論は「人だけで選べ」です。事業内容や福利厚生は二の次です。とにかく人です。
仕事の悩みのうち、ほとんどは「人間関係の悩み」。どんな人なら一緒にいて苦がないかを見るべき
まず前提として、仕事の悩みは、ほぼ全てが「人間関係の悩み」です。感覚値でいうと9割近くでしょうか。特に、堅実なキャリアを求める人にとってはお金や地位、成長は大きな問題にはなりにくいため、その傾向は特に強い。
具体的には、以下の2つの点で自分のキャリアを考えるべきだと感じます。
・その会社の「普通の」30代、40代が、人として尊敬できる人が多いか?
・その企業を志望している同期や近い先輩と、一緒にいて苦ではないか?
経験上、堅実キャリアを目指す人にとって一番苦痛になるのは「社内にいる人が尊敬できない」ことです。したがって、「先輩に尊敬できる人が多いか?」と「一緒に働く同期との相性がいいか?」の2点で企業を選んだ方が無難です。
「憧れ」だけでは、バリキャリは続けられない。憧れを軸にするなら、少なくとも人を軸に加えた方がいい。
学生の皆さんの中には、堅実キャリアを心の中では求めていても、「外資企業」をはじめとした、バリキャリへの憧れは少なからずある人もいるでしょう。ですが、結論からいうと、「憧れ」だけでは、バリキャリは続けられないことが多い。理不尽なことを乗り越えるための軸がないからです。
もしも、それでも憧れを軸に就活するなら、少なくとも人を軸に加えましょう。例えば、三菱商事が例であれば、「三菱商事で働きたい」という憧れに加え、上述した「人の視点」も加えた方が無難です。すなわち、「30〜40代の『普通の』先輩が尊敬できるか?」と「三菱商事を目指す学生と一緒にいて苦痛がないか?」です。
おわりに:「円エイトマップ」で自分に合う企業をサクッと把握
以上をまとめると、自分にあった企業は2段階に分けて考えるべきです。
1. 自分の人生にとって「仕事」がどれぐらい重要かは、「成長」「お金」「一緒に頑張れる仲間」をそれぞれどれぐらい求めているのかの最大値で決まる。自分がこの3つにどれだけ執着しているかで判断する2.「せっかく貴重な時間を費やすのであればどんな仕事がベストなのか?」という視点は、バリキャリ思考の人は「耐えられる理由」から探し、堅実キャリア思考の人は「人」軸で決める
最後に私が「座談会」でよく利用する「円エイトマップ」をご紹介します。縦軸と横軸を見て、自分の思考性が1から8までどこに一番当てはまるかを見てみてください。深い自己分析はできませんが、なんとなくの趣向の分類には利用できると思います。
本回答が皆さんの疑問を少しでも解消できたとしたらこれ以上幸せなことはありません。では、また次の機会に。
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※こちらは2016年5月に公開された記事の再掲です。