就活で40社以上受けたが6月末時点で内定ゼロだったため、就活を辞めて「新卒フリーランス」になると宣言したブログ(※1)が、ネットで話題になりました。
寄せられた意見で最も多かったのは、「『新卒カード』を捨ててフリーランスになるのは勿体ない」「何をやりたいのか分かっていないのに、『逃げ』の気持ちでフリーランスを選ぶのは危うい」というものでした。
結論から言うと、私も「新卒フリーランス」はオススメしません。
ですが、フリーランスという選択肢を考えることは、大企業かベンチャーかという選択肢を考えることのヒントにもなるので、今回は「フリーランスの難しさ」について考えてみたいと思います。
(※1)参考:いわタワー「【就活失敗】40社受けて内定ゼロのぼくはフリーランスで生きていく」
新卒は「自分の能力を試す」より「楽しい生活」を求めている
新卒でどこにも就職しないままフリーランスを目指すとまでいかなくとも、新卒世代の仕事への意識は緩やかに変わってきています。
日本生産性本部が新入社員を対象に行った「働くことの意識調査」では、「働く目的」として「楽しい生活をしたい」が41.7%と過去最高を更新し、「自分の能力をためす」は12.4%と過去最低を更新しました。
仕事を単に「生計」ととらえたときに、冒頭のブログのように、企業への就職に伴う長時間労働などの負担を選びたくない人が今後増えてくるのかもしれません。
フリーランスは増えている
フリーランス=自営業(専業)と定義するなら、2016年時点で日本の自営業率は労働者全体の10.5%(出典:総務省「労働力調査」)です。
また、フリーランスに小遣い稼ぎ程度の兼業も含めるなら、ランサーズによる「フリーランス実態調査2016年度版」によると、直近1年で報酬を得た5,977万人中、フリーランスは1,064万人もいるといいます。単純計算ですが、この1年で働いた人の約17.8%がフリーランスということになります。
自営業者は減っていますが、兼業フリーランスは増えていることから、既に定職を持っている人の兼業という形態で広まっているようです。
アメリカのフリーランス市場は大きい
ここで、アメリカと比較してみましょう。
Freelancers unionの調査『53 million report』によると、アメリカでは、専業+兼業フリーランスの割合は、全労働人口の34%を占めるほど、大きな市場です。
そのため、経済紙の『Forbes』も、大学卒業後にフリーランスを選択するための5つの条件を記事として扱うほどです。日本ではあまり見られない現象だと思います。
フリーランスを選択するために必要な5つの条件
1. 大企業への就職等の、従来的な仕事を得ることが、あなたの自尊心にとって重要かどうか
2. 需要があるスキル(Web開発など)を持っているか
3. 仕事に対してどのように自己管理できるか(短期的な〆切から長期的なキャリアまで)
4. あなたは、友人から業種交流会に招いてもらえるようなキャラクターか
5. 金銭的なゆとりがあるか
(引用:Forbes「Should you Freelance After Graduation」)
あなたはこれを満たせているか?
この5つのスキルは、裏返せばこれらがなければフリーランスを選択しても生き残ることは難しいということです。新卒時にこの5つのスキルを満たせている学生はなかなかいないのではないでしょうか。
そのような意味から、私は「新卒フリーランス」は、やりたいことが確立していない限りオススメしません。
しかし、上記の5つの条件のうち、特に「2. 需要があるスキル」「3. 自己管理」「4. キャラクター(コミュニケーション能力)」はフリーランスに限らずビジネスマンの基本的なスキルでもあります。
ここで、これをもとに、大企業とベンチャーで新卒採用時にどれだけそのスキルを必要とされているかみていきましょう。
大企業とベンチャーとフリーランス「就職難易度」と「就職後の難易度」を測る
大企業の場合:3つとも入社してから学べる
新卒採用時には「2. 需要があるスキル」はほとんど重視されません。入社後に自社独自の研修を長期間受けさせるためです。また、大企業は分業化が進んでいるため、市場価値がある(=どこでも転職できる)実務スキルは意外と身につかないこともあります。それよりも大企業的・総合職的な視点(プロジェクトの進捗管理など)が重視される傾向があります。
また、「3. 自己管理」もさほど重要視されないと私は思います。大企業は率先して社員を管理してくれるからです。タスクやプロジェクトの進捗管理方法を研修で学ばせてくれ、社内における長期的なモデルキャリアもある程度与えてくれます。
「4. コミュニケーション能力」についてもある程度重要視されますが、大企業では分業化のため職種によってはコミュニケーション能力が低くてもやっていける部署もあります。
ベンチャーの場合:3つとも自分で習得する必要がある
対してベンチャーに就職した場合、「2. 需要があるスキル」や「3. 自己管理」については特に研修が無いことが多いので、自分で習得する必要があります。加えて、一人で行わねばならない業務の幅が広いので「4. コミュニケーション能力」も欠かせません。
上記から、下記のような図式が成り立つのではないでしょうか。
就職難易度:大企業>ベンチャー>フリーランス
就職後の難易度:フリーランス>ベンチャー>大企業
入社は大変ですが入ってしまえば(辞めたり倒産・リストラされたりしない限り)面倒を見てもらえる大企業と、今すぐ名乗れますがキャリアを積むには高い自己管理能力が求められるフリーランス。比べてみると、確固としたやりたいことがない限りは、就活が辛くとも内定をもらうまで頑張った方が無難な選択といえるでしょう。
これからは海外から仕事を受注するフリーランスも増えるかも
現時点では「まだ」新卒フリーランスはお勧めできませんが、最後にフリーランスの将来性を感じさせる話題も挙げておきます。
世界の高収入フリーランスにおいて、上位50人の半分をインドのIT系フリーランスが占めている(※2)という統計があります。
こうしたフリーランスは、主にクラウドソーシング(ネットを介してフリーランスが仕事を受けられる仕組み)を使っています。
日経ビジネスの記事(※3)によれば、海外では人事や経理、法務、マーケティングや広告などの職種でもクラウドソーシングが始まっていて、世界中から仕事を受注することができるそうです。
これからは、英語ができれば日本在住という参入障壁が崩れ、インド人のように海外から時給150ドルで仕事を受注するフリーランスが増えていくのかもしれませんね。
(※2)参考:BYTES「How to Freelance to Your First Million, It's been done!」
(※3)参考:日経ビジネスDIGITAL「時給150ドルのフリーランスになれるか」