ワンキャリ編集部の辻です。
外資OB・OG訪問特集、外資コンサル編。
前編では「アタリ案件とハズレ案件」「『戦略ファーム>総合ファーム』の嘘」など、知られざるコンサル業界の内部事情に切り込みました。
・「戦略ファーム>総合ファーム」の嘘。総合系でも戦略案件に携われる?【代わりにOB訪問】
後編の今回は、コンサル入社後のキャリア形成について語っていただきます。
<見どころ>
●コンサルの社風は「上司からの詰められ度」に表れる
●派遣先のユニットの人と仲良くなることで、専門性が決まっていく
●「もっと上流の仕事がしたい」事業会社からの転職者が持つ期待
●若手が3年でコンサルを辞めるのは、ミスマッチが原因?
●マネジャーになるまではコンサルタントを続けたい
<プロフィール>
辻:ワンキャリの新米編集者。大学時代は社交ダンスに熱中し、バイトではマダムのダンスパートナーを務めた。
Kさん:外資系総合ファームに勤める若手コンサルタント。これまで大企業の海外戦略案件や新規事業立案に関わってきた。かつては2時間以上にわたって辻の就活相談に乗ってくれたこともある人格者。
コンサルの社風は「上司からの詰められ度」に表れる
辻:コンサルティングファームは会社によって業務内容が大きく異なるわけではないので、社風で選ぶという学生も少なくないと思います。Kさんのファームはどんな社風でしょうか?
Kさん:「マイルドな社風」という印象かな。上司からすごく怒られる、詰められるっていうこともないし、風通しも比較的良い方だと思うし、かなり働きやすいと感じます。でも、他の総合ファームはうちの会社よりさらにマイルドらしいよ。総合系ファームの中では、うちの会社も厳しい方なのかもしれない。
辻:では、戦略系ファームはどうなんでしょうか?
Kさん:戦略ファームは、今でもめちゃくちゃ怒られたり、ロジカルに詰められたりっていうのはかなりあるって聞く。成果を出せなければ「そんなにバリュー出せないなら、タクシー拾いでもやってろ」って言われるとかね。でも、コンサルタントとしてバリバリやりたい、鍛えられながら成長したいっていう気持ちが強い人にとっては、そっちの方が良いんだろうと思う。もちろん一概には言えないけど、「ファームのレベルが上がるほど、詰められることが多くなる」といえるかもしれない(笑)。
派遣先のユニットの人と仲良くなることで、専門性が決まっていく
辻:「入社後にいろんな業界のことを知れる」という理由でコンサルを志望する人は多いですが、どこかの時点で自分の専門領域を決めることになると思います。コンサルタントはどのようにスペシャリティを高めていくのでしょうか?
Kさん:辻くんの言う通り、最初はいろんなユニットに派遣されて、何でも屋さんみたいに働くことになる。聞く限り、これはどこの総合ファームでも同じらしい。でも、ある時期から、だんだんとスペシャリティが決まってくる。
辻:具体的には、どのように決まってくるのでしょうか?
Kさん:例えば、派遣されたユニットの人と仲良くなって、自分がそのユニット付きのコンサルタントになりたい、っていう希望を持つ。同時に、ユニット側も「今後もうちで働いてほしい」っていう希望を持つ。こういった相思相愛の状態になると、自分が所属するユニットが決まることが多いかな。
一度ユニット付きのコンサルタントになれば、基本的にはそのユニットでずっと働くことになるから、専門性は高まっていく。早い人で入社2年目、遅くても4〜5年目くらいには所属するユニットが決まる。20代のうちに決まるっていうのは間違いないと思うよ。
辻:「新人コンサルタントがパートナーに気に入られて、そのパートナー付きになる」みたいな話も聞きますが、これって実際にあることなのでしょうか?
Kさん:たしかにそういった事情で「人付き」のコンサルタントになることもあるけど、「ユニット付き」になることもあるよ。
それに、特定のマネジャーやパートナーに引っ張ってもらったわけでなくても、そのコンサルタントの実力が低いっていうことにはならない。優秀なコンサルタントでも、特別相性が良い人に出会っていないだけという場合はあるし、たとえ相性が良い上司がいても、その人が気に入ったコンサルタントを引っ張る力があるとは限らないからね。
辻:そういえば、コンサルに行った友人が「興味があるユニットのマネジャーに気に入ってもらえたけど、その人の発言権があまりないから引っ張ってもらえない」って嘆いていました……。
「もっと上流の仕事がしたい」事業会社からの転職者が持つ期待
辻:最近はコンサル業界の人気が高まっていて、事業会社から転職してくる人も多いと聞きます。Kさんのファームの中途社員は、どんな業界から来ている人が多いですか?
Kさん:中途社員には大きく2パターンある。1つ目は、事業会社で働いていた人が、その業界のユニット付きで中途入社するっていうパターン。自動車メーカーで働いていた人が自動車ユニットに配属されるとか、製薬会社で働いていた人が製薬ユニットに配属されるとか。
辻:それまで働いていた業界の知見を生かして中途入社してくるということですね。そういう方は、その業界に居続けることも選択もできる中で、なぜコンサルに転職するんでしょうか?
Kさん:人によると思うけど、コンサルならもっと上流の仕事ができるんじゃないかっていう期待があるんだと思うよ。
とはいえ、入社してから上流の仕事ができた人もいれば、ちょっと期待外れだったって言う人もいる。期待が大きすぎたり、ファームの実態をよく知らずに入社したりすると、ミスマッチが起こってしまうかもしれない。
辻:先ほども「アサインメントに納得感を感じられるのは全体の50%くらい」という話がありましたね。他にはどんな中途入社のパターンがありますか?
Kさん:もう1つのパターンは他のファームからの中途入社。この業界には、ファームを転々とする人も少なくないからね。うちの会社の中途社員はほぼこの2種類かな。
一応ポテンシャル採用の第二新卒もあるけど、ほぼ新卒として扱われることが多い。ユニット付きではなく、新卒同様にジョブローテすることになるしね。
若手が3年でコンサルを辞めるのは、ミスマッチが原因?
辻:逆に、Kさんのファームから転職する人についても教えてください。
Kさん:うちでは、転職に特別ネガティブな印象は持たれていなくて、特にマネジャー以上の転職はポジティブに捉えられている。マネジャー以上になると他のファームに転職したり、クライアントに引っ張られて事業会社に行ったりする人は多いんだ。
反対に若手の転職、特に入社から3年以内の転職は、恐らく仕事のミスマッチが原因だね。3年以内に半分くらい辞めてるんじゃないかな。
辻:え! コンサルを3年で辞めるという話はよく聞きますが、多くはミスマッチが原因という印象なんですね。早く辞める傾向にあるのはどのような人でしょうか?
Kさん:最初の配属でIT案件にアサインされた人からは不満が噴出しているね。ITの部署に配属されるとまずプログラミングを勉強することになるんだけど、研修施設にこもりっきりで、何カ月も案件にアサインされないといううわさ。アサインが決まっても、決まり切ったパッケージの導入案件は少なくないし、業務内容がほとんどプログラミングということもある。「これってコンサルの仕事なのか......?」とぼやいている同期もいたよ。
辻:企画系の業務に憧れて入ってきた新人はがっかりしてしまいますよね。とはいえ、Kさんみたいに待っていたら戦略案件が回ってくることもあるのでは?
Kさん:いや、ITの部署は一度配属されると、半年とか、長くて2年くらいは出られなくなってしまうらしい。
辻:なんと......。望まぬ仕事に社会人最初の数年をささげる前に、出て行ってしまう人がいるのは分かる気がします。
Kさん:やっぱり、長く働くつもりで入ってくる人が少ない業界だから、「つらい仕事でも、歯を食いしばって頑張る」っていう理由もあまりないのかもしれない。でも、ある程度のものを手に入れてからの転職じゃないと、ただのジョブホッパーになってしまうとも思うよ。
マネジャーになるまではコンサルタントを続けたい
辻:Kさんご自身の今後の目標について教えていただけますか?
Kさん:ひとまず、マネジャーになるまではコンサルタントを続けたいと思ってる。マネジャーになると、クライアントに案件を提案するなど、仕事の種類が大きく変わる。そこまではコンサルタントとして、少しでも多くの経験をしておきたいと思うよ。
辻:マネジャーには何年目くらいでなれるのでしょう?
Kさん:一番早い人で入社から4〜5年、平均では7〜8年くらいかな。
その後もずっとコンサルタントとして……っていうのはあまり考えてないけどね。将来的には、いつか起業したいかな……(笑)。
「入社から3年以内の転職は、恐らく仕事のミスマッチが原因だね」
転職ありきで就職する人がほとんどのコンサル業界。
数年で辞めるつもりで入社する学生もいると思いますが、「3年で辞める」の実態は皆さんのイメージとは違うものかもしれません。
前編で紹介した「『戦略系>総合系』の嘘」もそうですが、就活界隈(かいわい)でうわさされる情報に惑わされず、自分の足で情報を取りに行くことの大切さを感じたOB訪問でした。
【代わりにOB訪問】【執筆協力:下原マヤ】
<外資総合コンサル>
・「戦略ファーム>総合ファーム」の嘘。総合系でも戦略案件に携われる?
・コンサルタントの半分が、3年以内にファームを辞める理由
<外資金融>
・外銀では、オンもオフも全力なヤツが頭ひとつ抜け出せる
<外資メーカー>
・華やかなる外資マーケターの泥臭すぎる社内調整
・日本に初進出してきた外資系企業への転職も。マーケターのセカンドキャリア
(Photo:Kanashkin Evgeniy/Shutterstock.com)