18/19卒の君が、5年前と違うのは、80まで働く覚悟が必要ということ
今の就活生は、幸か不幸か、「社会の構造的な変化」に直面している。
それは「就労期間」だ。より具体的には80歳まで働くことになるということ。そして、この変化の背景は2つの側面があり、1つは「人口ピラミッドの変化」によるものだ。
下記の表を見てほしい。
※出典:高齢社会白書
上表は平均寿命の推移を表している。私を含めた今の20代が定年を意識しはじめる50歳になる30年後では、平均年齢は女性で90歳、男性は84歳になると推測されている。このことから、人口ピラミッドが劇的に変化したり制度が変わったりしない限り、私たちの定年退職の時期は後ろ倒しになる可能性が高い。
そうすると、次の問題は「何歳ぐらい」後ろ倒しになるのか、だ。
再びデータを見てみたい。
※出典:「かつては55歳が主流! 定年退職の平均年齢はいくつ?」
これらによると定年退職の時期は、平均すると10〜15年で5歳ずつ後ろ倒しになっている。今の少子高齢化の流れを考えると、この流れは加速し、私たちが50歳になる30年後は、+15歳、つまり、80歳まで働いている可能性が高いといえるだろう。
「10歳の子どもが、車を運転する」未来が来る
もう1つの社会の構造的な変化の背景は「テクノロジーの進化」にある。
インタビューの中で元世界経済フォーラムの長尾氏は「第4次産業革命は、テクノロジーと人体の融合である」と語った。例えば、コンタクトレンズの技術は「テクノロジー」と「人の目」の融合だ。こういった例が増えるという。
例えば、世界的なエンジニアである遠藤謙氏は義足を作っているが、その取り組みは足(人体)と義足(テクノロジー)の垣根を限りなくシームレスなものにするものだ。
このような技術が進んだ結果、「人間が物理的にイキイキと動ける年齢」は飛躍的に広がっていく。極端な話、「10歳の子どもが、テクノロジーを生かして、車を運転する」ということもあり得るだろう。当然、定年退職のボトルネックであった「肉体的な問題」も解決されていく。つまり、「テクノロジーの進化」の観点からも、私達の定年が伸びることが予想されるのだ。
何が言いたのか?
繰り返しになるが、つまり、今就活しているあなたは、
「80歳まで働く気で、就活した方がいい」
これが、私から就活生に送る1つ目のメッセージだ。
僕らは、22歳で浦島太郎になり、50で桃太郎になる。
2つ目のメッセージは、「桃太郎vs 浦島太郎問題」についてだ。宇宙飛行士の山崎直子さんは、ほとんどの人のキャリアには必ず「浦島太郎」と「桃太郎」のフェーズが訪れると語ってくれた。
・桃太郎……明確な目的があり、わかりやすくゴール(鬼退治)を達成しようとしている時期
・浦島太郎……ゆるやかなゴールはあるものの、脱線しながら(竜宮城)、少しずつ前に進んで行く時期
21歳の学生さんにしばしば聞かれることの1つは、「やりたいことが分かりません」ということだが、それもそのはずで、多くの学生は実際に働いたことがないわけなので、例えるのであれば「野球したことがないのに野球選手になりたい」と言っているようなものだ。21歳の時点で、やりたいことが見つからないのは、ある種当然だと感じる。
では、問題は「何歳ぐらいで見つかるのか。見つける『べき』なのか」だ。
データを見てみたい。例えば、「やりたいことをやっている人」の代名詞である「起業家」の現在の平均年齢は42歳。そして今後、定年退職が80歳に後ろ倒しになった場合、この年齢も上がる可能性が高い。
正確な数字を予測することはできないが、
「22歳で浦島太郎として働き始め、50で桃太郎になる」
そんなキャリアを歩む人が増えるといえるのではないだろうか。
定年が伸びれば、キャリア選択の自由度の男女差が縮まる
しかし実は、この変化(定年退職の後ろ倒し)によって最も影響を受けるのは、女性のキャリアだと私は思う。
というのも、例えば30歳で出産し、33〜34歳あたりまで子育てした後に、再就職したとしても、定年となる80歳までは45年近くある計算になる。45年というと今の平均的な就労期間(約40年)よりも長い。十分なキャリアを歩めることになる。
いわゆる「第二新卒」と同じように、35歳からの「終身雇用」が活発になると可能性もあると感じる。
レアなペンギンになりたいなら、「最初のペンギン」になれ
3つ目に言いたいのは、「最初に飛び込める」というのは類いまれな才能だということだ。
例えば、今でこそ輝かしい経歴を持つ、ライフネット生命社長の岩瀬大輔さんは新卒当初は「BCG? 何それ、お布団コンサルティンググループ?」と鼻で笑われたと言う。BCGは、当時の日本での知名度はなかったというのだ。
これを長尾氏は、「MBAで流行っている企業には行くな」と表現しているし、南壮一郎さんも「当時のモルガン・スタンレーは日本においては無名だった」と語っている。
学生の多くは「今」の有名企業に入り、安定的にキャリアを進めようとする傾向にあるが、大きなリターンを手にしたいのであれば、逆だ。誰も知らないが、ロジカルに考えて伸びる会社に「最初に飛び込む」という選択肢こそ、ベストだ。ちなみに、これをイーロン・マスクは「世間はバカと思うけど、実際には賢いことを考えろ」と語っている。
すなわち、レアなペンギンになりたければ、「最初のペンギンになれ(ファーストペンギンの法則)」といえるのではないだろうか。
30歳の後悔:「若い頃に、ホンモノの大人を見ておくべきだった」
最後に、私はもうすぐ30歳になるが、自分を内省し、驚愕する事実がある。
それは、「若い頃に想像していたより、今の自分が、ダサい」ということだ。その理由の1つは単に私の努力不足というのもあるが、あえて過去を後悔するのであれば
「若い頃に、もっとホンモノの大人を見ておけばよかった」
ということだ。学生時代、私が見てきたのはあくまで「サラリーマンという枠にはまった大人たち」であり、そして私はそもそも「枠にハマっている人」より「ハマらない人」の方がカッコイイと思う傾向にある。サラリーマンが良い悪いではなく、OB訪問時のニーズの不一致が起きていたのだ。
そして、ロールモデルがない状態で、成長を目指すのはゴールがない旅に出かけるようなものだ。その意味で、今のダサい自分がいるのは当然の帰結だと感じる。
18卒・19卒の皆さん、就職活動は、いろんな人と出会うチャンスだ。大企業に勤める方はもちろんだが、ぜひ、既成の枠にハマっていない今回ご紹介した6名のような「ホンモノの大人たち」と出会ってみてほしい。
いかんせん、私たちは、80歳まで働くだろうから。
「WORLD5特集」 ライフネット生命社長 岩瀬大輔
・99%の人は天職に出会えていない。でも、それでもいいと思う
・パワポで世界は変わらない。彼がハーバードを経て起業した理由 宇宙飛行士 山崎直子
・地球から「8分30秒」の職場。それが宇宙
・苦しい業務も、全てが楽しい。きっと、それが「天職」
Xiborg代表/義足エンジニア 遠藤謙
・「パラリンピックは人類の未来」
・最短距離で世界一になるため、根回しなど面倒なことは不要だ
国連出身・コペルニクCEO 中村俊裕
・官最高峰の国連を経て、彼が「コペルニク」を創立した理由
・今、国連に入るってどうなんですか?就職先としての「国連のリアル」
投資銀行出身・ビズリーチCEO 南壮一郎 ・「世の中にインパクトを与える事業を創りたい」南氏の天職と理想のリーダー像に迫る ・自分のことを信じよう!就活生に贈るメッセージとは?
世界経済フォーラム出身/コーディネター 長尾俊介
・「MBAで流行ってる業界には行かないこと」就活生へメッセージ
・僕らは多分、100歳まで働くことになる 総合ディレクター 北野唯我(KEN) ・編集後記:ハッキリ言おう、君は、80歳まで働く気で就活した方がいい。