はじめまして、17卒のAnです。就活を始めた頃の私は自分の将来像が決まっていないことがコンプレックスでした。しかし、就職活動を通して「10年後になっていたい姿」について深め、それを決め手に内定を得ました。そのことについて今回はお話したいと思います。
「やりたいことがわからない」中高一貫卒の普通の大学生
都内中高一貫の女子校を卒業した私は、特に大きな夢を持つこともなく「将来へのつぶしが効きそう」という理由でK大の経済学部に進学しました。学生生活は、学生団体とサークルを掛け持ちしてとても楽しい日々。
しかし心の中には、「法曹になりたい!」「医師になりたい!」と将来への強い意志を持って勉強を続けている友人へのうらやましさも募っていました。
「10年後、あなたはどうなっていたいですか?」
周りが就活を意識し始めた3年生の春学期。私はとりあえず、「つぶしが効く」といわれている外資系コンサルティングファームにエントリーシート(ES)を出すことにしました。そのESで就活後半まで付き合うことになる質問と出会います。
「あなたが目標として思い描く10年後の姿を教えてください」という質問です。
10年後といえば私は32歳。
(社会人生活9年目だから、仕事には慣れていそう。地方や海外の可能性もある。でもそもそも10年後は、最初に入った会社にいるだろうか。結婚はしていたい。そろそろ子供も欲しい。いやでもそもそも結婚できるのか?)
……正直、10年後の姿なんて、全く想像ができませんでした。
社会人の先輩は、「自分の10年後」をどうイメージしていたのか
面接に不安を持った私は、若手社員さんへのOB訪問で「面接で自分の10年後なりたい姿を聞かれたら、どう答えていましたか?」という質問をぶつけてみることにしました。
Aさん
OB訪問やセミナーで、10年目や20年目の先輩に「具体的にどういうポジションにいて、どういう仕事をしているか」を聞いていたから、それをそのまま話したよ
Bさん
10年後の姿なんて正直分からないよね。自分は、とりあえず目の前のことにがむしゃらに取り組むタイプ。10年後なりたい姿を聞かれた時も、素直に「分からない」と答えていた
Cさん
僕はまず、自分が長い人生で何を成し遂げたいのかを考えた。それに向けて逆算し、10年後ならどのぐらいその姿に近づいているべきかを答えていたよ
社会人の先輩からはこのような意見を伺うことができました。しかし、先輩の意見は先輩の意見。
「自分の10年後の姿の答え方」には詳しくなっても「自分の10年後の姿」は分からないままでした。
「女には、タイムリミットがある」
そんな私でしたが、とある一言をきっかけに考えが深まることとなりました。
バイト先のベンチャー企業に、ちょうど妊婦さん(Oさん)がいました。彼女は32歳。新卒で入ったIT企業を2年前に退職した後にベンチャー企業でIT系のパートとして働かれていました。
Oさんとお昼を食べていたところ、こんな会話が飛び出したのです。
Oさん:初産が35歳を超えると、高齢出産扱いになるの。手帳にも高齢出産のマークが押されるし、検診の数も、検診料もリスクも上がるのよ。だから前の会社を辞めて、子供を産むことにしたの。私:えっ、35歳で! 一生懸命仕事をしていたら、あっという間にそんな年齢になっちゃいますよ!
Oさん:そうよ。女には、タイムリミットがあるのよ!
仕事に熱中していたOさんですが、まわりの女性が高齢出産で大変な思いをしているのを見て、「32歳で産む」という決断をしたそうです。
なんとなく仕事をして、なんとなく流れに身を任せていたら、あっという間に35歳になってしまうのではないかと不安になってしまいました。
「働くなら、最初の10年だ」
それでもこの段階で、「仕事に生きる」「家庭に生きる」を決めることはできませんでした。とりあえずは、どちらの選択肢も残しておきたい。
仮に32歳で出産をすると想定します。32歳で出産をするなら、32歳のうちに産休に入り、育休を使って1年ほどのお休みをとります。その後、子供が小さいうちは時短勤務でしょうか。結婚と同時に、配偶者に合わせて転職をすることなどもあり得るかもしれません。すると、「仕事だけに没頭できる時間」は、まさに最初の10年間しかないのです。
私は、学生団体で企業への営業をしていた経験やライターのアルバイトをしていた経験から、1つのことに没頭するのは嫌いではないと知っていました。むしろ、のめり込めばのめり込むほど面白いと感じるタイプだと思っていました。
そこで私は、「最初の10年間は、仕事に没頭したい!」と心に決めたのです。
実際の面接で答えた「10年後の自分」
就活において将来のことを聞かれたことは多々ありましたが、「10年後」について聞かれたのは、内定先の3次面接です。
面接官:10年後、どんな社会人になっていたいですか?私:10年後は、自分のやりたい仕事に一生懸命取り組んでいたいです。私はまだ将来やりたいことが漠然としていますが、自分の提案やアイディアが形になるような仕事にやりがいを感じているので、そのような仕事に熱中していたいです。——10年後の具体的なビジョンがはっきりと見えていたわけではありませんが、そんな状況も含めて素直にそのまま伝えるという答え方をしました。
面接官:ふむ、なるほどね。
面接官からの反応は正直なところ微妙で、その後深く掘り下げられることはありませんでした。
正直なところ、その面接の後は不安でたまらなく、馬鹿正直に答えたことを後悔してばかりでした。面接が終わってから数日が経った時、突然ケータイが鳴りました。
「Anさんですか? おめでとうございます、内定です!」
そのまま電話越しにいただいたフィードバックでは、
「自分のことを等身大で伝えようとする姿勢があったら内定をあげようと決めていたよ」
と言っていただくことができました。
よかった、自分の気持ちを素直に理解してもらえたんだ……
等身大の自分を話して受け入れてくれるところに行こうと決めていた私には、何より嬉しい言葉でした。面接は決して「自分をよく見せるアピール合戦」ではなく、自分のことを素直に表す場だと最後の最後に分かったのです。
おわりに:自分の10年後をイメージするには……
私のコンプレックスは、「将来やりたいこと、一生かけて実現したいこと」が決まっていないことでした。特に就活中はそれがずっと悩みで、将来に関する質問が来るのが恐怖でたまりませんでした。今やりたいことは話せても、将来やりたいことは話せませんでした。
「将来」といわれると、何もかもが漠然としていて分からないことだらけです。しかし、さまざまなOBの方やまわりの社会人の話を聞いているうちに、「10年後」ならギリギリ想像できる範囲であるように思いました。
これまで、「やりたいことがない」ことがコンプレックスだった私でしたが、就活をきっかけに、ぼんやりとですが10年後の自分を想像することができたし、「今は、自分のやるべきことを頑張りたい」と思えるようにもなりました。就活は大変な事ばかりでしたが、自分の将来について真剣に考えるきっかけを得たのは、とても大きな収穫だったと思いました。
編集後記:彼女が得たのは「等身大を伝える素直さ」
Anさんは就活を通して「10年後になっていたい姿」という問いについて、彼女なりの答えを見つけることができました。
しかし、彼女が本当に得たことは「等身大を伝える素直さ」です。仕事の場では、能力だけでなく人間性も重大な指標です。就活でも面接官は「この人と働きたい」かどうかを見ています。そして、伸びしろを感じる素直さはその協働したいという気持ちにつながります。
就活を終えたAnさんの等身大のストーリーが、みなさんの「将来について」や「面接に望む姿勢について」考えるきっかけになれば幸いです。
※旧タイトル『就活で聞かれる「10年後になっていたい姿」って何?』(2016年11月29日公開)の再掲です