どうも。借金玉です。
皆さん、これまで就活をしていて、「○○様の今後の一層の活躍をお祈りいたします」という文面を何度も読まされ、若いハートをえぐられた人は多いのではないでしょうか。「俺はお祈りされるために就活をしてるんじゃない!」そんな気持ちが皆さんの中に渦巻いていることだと思います。
しかし「叶えられなかった祈り」を送りつける権利は企業側だけにあるわけではない。
そこで「逆お祈りメール」です。そう、お祈りするのは、なにも企業の人事部だけの特権ではありません。内定辞退という段階になればあなたにも「お祈りメール」を書く権利が発生するのです。
企業とはいえ、中身は人間です。内定辞退のメールを読むのももちろん人間、そのへんのおじさんやお兄さんです。ピリッとエスプリの効いた「お祈り」を届けてあげれば、それは誰かの心を揺さぶるでしょう。
もちろん、「皮肉抜きの好意の表現」としてですよ。「寸鉄人を刺す」ともいいますし。あんがい無駄にはなりません。ビジネスメールの練習にもなります。大半の方は企業に入ればいやというほどメールを書く機会がありますし、最初からビジネスメールをうまく書けたら職場でも一定のいい目線で見てもらえます。
そんなわけで、企業の人事部の皆さんにも、グラングランに揺さぶる「温かな祈り」をおすそ分けしてみましょう。
基本編:内定辞退メールには法的拘束力があるぞ
内定辞退となったら、企業の方も「あーはいはい辞退ね、またよろしく」では済みません。企業の人事部も、リクルート会社やら診断テストやらにたいそうカネをかけているわけです。とうぜん、内定辞退をされるということはそこにかけたカネがパーになることを意味しますから、向こうも必死です。自然に、慰留というやつが発生します。
企業によっては、就活シーズン末期になっても必要な採用人数がそろわずに、「何でもいいから人間を連れてこいや!」ぐらいの指令が人事に下っている場合もあります。そんな時に学生が内定辞退メールを出そうものなら、全力で思いとどまらせようとします。
喫茶店に呼び出され「キミに社運がかかってるんだよ!」ぐらいの圧をかけてくることもあれば、泣き落としでほだそうとしてくることもありますし、「辞退? そんなの聞いてねえ」とこちらの意思表示そのものをキャンセルしてくることもあります。およそあらゆる形の「大人のわがまま」がそこでは発動します。
さぁ、ここで「逆お祈りメール」の登場です!
ビジネスの練習です、きっぱり断りましょう。
ひとつだけ覚えておきましょう。
内定辞退のメールを出した時点で、あなたは辞退するという意思表示を正式に示したことになります。内定辞退を受けた企業の中には腹立ちまぎれに「会社に直に来ないと辞退を認めない」とか「うちに損害が出るんだぞどうしてくれる。百万円ください」とか「うちは石器時代だからメールは見られない」とか言ってくるかもしれませんが、あなたが学生だと思ってナメてるだけですので、ビビって内定辞退を取り消したり、眠れぬ夜を過ごす必要はありません。
これは「オトナ文法」のようなもので、おじさんの社会にはおじさんたちのやり方、作法と言語があります。これを習得する訓練に「逆お祈りメール」は大変、有益です。わからない若い人は、とりあえずそういうものがあると思ってください。ヤンキーの世界でいうと道路へのツバ吐きぐらいです。大したことはありません。
ただし、このお話には付帯条件がいろいろあります、法的なやつとか。大人は行動を起こす前に調べものをする。わかりますね?
注意点:ビジネスメールの範囲内で
内定辞退のメールは、あくまでも「ビジネスメール」ですから、それなりの体裁を保つ必要はあります。ビジネスとして相手方に失礼にならない、節度ある内容にしましょう。
間違っても
「ハロー。ボクだよ! せっかくだけど、第一志望の会社から内定が出たから、御社からの内定はいらないぴゅん! 御社からの圧迫面接はずっとずっと忘れないぴゅん! バーカバーカ! スギ花粉!」
とか書いてはいけません。
さすがにそこまでやると、相手も本気で怒ってくる可能性があります。必要以上にビビる必要はありませんが、ナメてもいけません。おじさんは本気で怒ると恐い生き物です。ヤンキーより大分恐い。
大きな企業の人事部どうしというのは、横のつながりがある場合が多いです。これは転職者の履歴の確認などが相互に発生したりするからで、同業だと特にそうです。
そんなわけで、もしあなたが上記のようなメールを送信するなどの行為をした場合、最悪、第一志望の会社の人事のおじさんがやってきて
「○○社の人から話は聞いたぴゅん。うちも君のような社員はいらないぴゅん」
などと笑顔で言われ、真っ青になるという事態も発生しえます。
実践編:「お祈り返し」をやってみよう
そんなわけで、あくまで通常のビジネスメールとして通る範囲内で、「お祈り返し」していくにとどめることにしましょう。工夫さえすれば、「オトナ文法」もなかなか便利です。
大人は日々、こういう戦いをしています。肩パンからバックドロップまで、いろいろな技が出せます。
・「貴社の今後の繁栄をお祈りいたします」
→帰ってほしい客に茶漬けを勧めるような優雅さでさらりと流す
・「体は資本と申します。差し出がましいかとは存じますが、御社の社員の皆様におかれましては、くれぐれも健康にお気を付けください」
→社員の疲れた顔にそこはかとなく言及する。(※ヤンキーでいうメンチを切るぐらいです。)
・「御社の面接で社会人の厳しさを痛感した次第です」
→書き加えて圧迫面接をにおわせる
・「貴社の人事の方の『なんで君なんかがここにいんの?』という言葉は私の心に火をつけてくれました」
→感謝のフリしつつ言質を取る
・「御社の自由で開放的な社風は今でも憧れるものがあります。○○部の○○さんからお酒の席でいただいた極めて個人的なお話については、失礼ながらお断りしたものの……」
→コンプライアンスの足音を響かせる
つらい経験をした方の中には、えぐい内容を書いて憂さを晴らしたくなる人もいるでしょうが、むしろあっさりした表現の方が相手の心に刺さるものです。
あとは、それなりの事情がある場合にしか勧めませんが、
「とはいえ、業界で名高い新人教育を受けられないのは残念です。わたしも素手で貴社の便器を磨かせていただきたかったものです」ぐらいまでやる高射砲も撃てますよ。
場合によってはあなたの大学からその会社へ就職する者が将来にわたってゼロになる可能性もありますので、ご利用は計画的に。
送る相手が人事部なだけに、相手の人生のパレットに素敵な彩りを、添えてあげることも出来るかもしれませんね。まぁ、事実に反することを書くのはダメですが。「粗相」をやらかす人事の方もたくさんいますからね。
おわりに:「祈る権利」は皆、平等にある
今回は「逆お祈りメール」についてのお話をさせていただきました。
余談ですが、トルーマン・カポーティという作家の「叶えられた祈り」という小説に、「叶えられなかった祈りより、叶えられた祈りに多くの涙が流される」という一節があります。「叶えられなかった祈り」には誰も涙を流さない。これは世界の残酷さを描いた見事な一節だと僕は思います。
「人は誰でも神の前では平等」とか言いますから、もちろんあなたにも祈る権利はあるわけです。就活においても同じです。「オトナ文法」はとても便利なものです。いずれは、ビジネスメールを送る際にも役立つでしょう。習得しておいて損はありません。ほら、ちょっと楽しくなってきたでしょう。大人は結構楽しいです。
ちなみに、僕は「御社の財務諸表も真っ赤に染まる紅葉の季節となりましたが」などの時候の挨拶から始まるやつを大量にぶっ放したところ、携帯電話が爆発しましたし、人間も爆発していました。そこまでやるのはよくないですね。ほどほどにしましょう。
やっていきましょう。
▼「お祈りメール」に関するオススメ記事はこちら
・大丈夫。「お祈りメール」を貰ってからが、勝負です。
※こちらは2018年4月に掲載された記事の再掲です。