ワンキャリ編集部の辻です。
外資OB・OG訪問特集、2本目の今回は若手外銀マンの話を伺いました。「外銀マン=仕事も遊びもできる人」という世間のイメージの真偽に迫ります!
<見どころ>
・仕事がキツくて病むような人は外銀にはいない
・外銀は日本社会でメジャーな存在になった。商社からの転職者も増加中
・外銀の社風を知りたければ、新卒入社組を見極めよ
・飲み会の予算は5万円から?外銀マン達の派手すぎる遊びっぷり
・お金は無くならない。高級なスーツ、靴、時計はすべて投資だ
・外銀マンがモテるのは、「外銀にいる」という事実が自分に自信を与えてくれるから
<プロフィール>
辻:ワンキャリの新米編集者。大学時代は社交ダンスに熱中し、バイトではマダムのダンスパートナーを務めた。好きな記事は「ゴールドマン・サックスを選ぶ理由が、僕には見当たらなかった」と「上司の唱えた『当事者意識を持て』という恐ろしい呪文。そうそれはマダンテ」。Mさん:外資系投資銀行に勤める若手バンカー。SNSで豪遊ぶりを発信している。
仕事がキツくて病むような人は外銀にはいない
辻:まずは「外銀=激務」というイメージについて伺いたいんですが、実際はどうなのでしょう?
Mさん:最近は就業規定が厳しくなっているので、辻くんの想像よりもハードルは低いと思うよ。そもそも残業続きで寝られないだろうと覚悟した上で入社しているので、もともとのハードルが高すぎるということもあるんだけど(笑)。
ただルールが厳しくなったからと言って、仕事量が減るわけではないので、上の人が仕事の分配をきっちりしてくれているのが大きいかな。毎日深夜までガツガツ働かなくても、やっていける環境にはなっているね。
辻:他の部署も同じような感じでしょうか?
Mさん:うちの部署も他部署もプロジェクトベースなので、案件次第では忙しいというのは変わらない。でも、平日も終業後に飲みに行くこともあるし、それが深夜0時集合なんてことはないよ。大体21時スタートが多いかな。
辻:思ったよりも普通の働き方ですね。1年目だと、どんな感じで仕事をするのでしょうか?
Mさん:「入社1年目だから」っていう仕事はないね。年次にかかわらず、担当案件に関する資料は全て把握するように言われるし、全てを理解して上席に説明できるようになっていることが大前提。お客様とのミーティングにも出席するし、ベンダーとの交渉も案件全体を理解して臨みます。
辻:「1年目だから上の人を支える裏方の仕事」ということはないと。
Mさん:そう。1年目から採用現場で面接官をやることもあるし、プロフェッショナルとして、チームメンバーとして認められているように感じる。その分バリューを出すことも求められるし、「1年目だから」って手加減されることは全くない。
辻:それは成長も早そうですが、プレッシャーも大きいのではないでしょうか。
Mさん:もちろんプレッシャーもあるけど、例えば、仕事がキツくて病んじゃうような人は外銀にはほとんどいない。選考の時点で、プレッシャーに耐えられるタフネスを見られているんじゃないかな。
辻:タフネスはどうやって見られるのでしょう? 圧迫面接とか?
Mさん:いや、圧迫面接はなかったかな。例え圧迫面接をしたとしても、その人のタフさは測れない。仕事のプレッシャーは一瞬ではなくて、一定の期間続くこともあるけど、30分や1時間のプレッシャーなら耐えられそうだと思いませんか?
辻:確かに。
Mさん:だから「つらい状況で何かを成し遂げた経験」を聞いて、タフネスを確かめているんじゃないかな。実際、チームで新卒の面接をした後に「彼はこういう経験をしてるからタフそうだよね」という話はするし。
辻:面接攻略法のようになってしまいますが、そういう話はウケが良かったりしますか?
Mさん:そうだね。タフさが示せるエピソードなら、スポーツでも勉強でも、なんでもいいと思うよ。
「自分がどういう人なのか」ということは変化していく可能性があるんだけど、「これまでどういう人だったのか」ということは経験から語ることができる。そこで無理をしても、入社してから自分が苦しくなるだけなので、正直にこれまでの経験を語ればいいんじゃないかな。
外銀は日本社会でメジャーな存在になった。商社からの転職者も増加中
辻:外銀の転職事情についても伺いたいのですが、中途社員には同業からの転職者が多いのでしょうか?
Mさん:辻くんの言う通り、他のファームから来る人は多い。でも、最近は幅広い業界の人が入社してくるようになった。昔に比べると外銀自体が日本社会に定着してきて、心理的ハードルが下がったからかもしれない。
辻:確かに、M&Aに関するニュースを聞くことも多いですしね。具体的にはどんな業界の人がいるのでしょうか?
Mさん:意外に思ったのは総合商社の人が多いことかな。あくまで俺のイメージだけど、商社は下積みが長くて、ジェネラリストとしてのスキルを高めている人たちなんだろうなと。その人たちが職種のスペシャリストが集まる外銀への転職を視野に入れるというのは意外だったね。
辻:逆に、御社から出て行く人はいかがですか?
Mさん:やっぱり別のファームの同じ部門、あるいはファンドに行く人が多いけど、これも状況が変わってきている。外銀の人はずっと外銀を渡り歩くイメージだったのが、最近は財務や金融の専門知識を生かして他業界に転職したり、起業する人も出てきてる。市場で専門性が求められていることもあり、そういう人はこれからもっと増えるんじゃないかな。
辻:Mさんご自身は今後のキャリアをどう考えていますか? やっぱり、転職前提で考えていらっしゃる?
Mさん:いや、あくまでも会社に貢献できて上司にも認められればの話ですが、今の会社で長く働きたいと思っているよ。
先輩や上司のスペシャリストぶりは本当にすごくて、どんな仕事にも自分なりの意見を持っているし、絶対に妥協しない。今はどうしたら彼らと対等に議論できるのかとか、早く彼らに認められる発言をしたいとか、そういうことがモチベーションになっているかな。愛社精神も強いです。
辻:意外です! 外銀マンは高い年収やキャリアアップを求めて転々とするイメージもあるので。
Mさん:少なくとも周囲で「3年で辞めてやる」というような人は聞いたことがない。というか、ジュニアバンカーの間は仕事が大変すぎて、転職なんて考える余裕はないんだよね(笑)。
外銀の社風を知りたければ、新卒入社組を見極めよ
辻:御社の社風について教えていただけますか?
Mさん:うちは保守的な社風かな。保守的というと、あまりいいイメージを持たない人もいるかもしれないけれど、実はすごくいいことだと思っています。案件を進める上でリスクは最小限にすべきだけど、うちはリスク排除の徹底ぶりがすごい。他社のリスク管理の話を聞いていると「そんなにリスクとって大丈夫なの?」と心配になってしまうくらい。
辻:学生がファームの社風を見極める方法ってあるんでしょうか? 金融商品のリスク管理って、学生には分かりにくくて……。
Mさん:中途社員が多い業界だからこそ、新卒生え抜きの社員の雰囲気を見るといいと思うよ。もちろん一定のスペックを満たしている前提はあるけど、スキル重視の中途採用と違って、新卒採用では専門知識よりもその人の人間性を見ている。だから新卒入社の人たちにこそ、各社のカラーが出る。
辻:社風を知りたければ新卒入社組を見よと。良い判断基準ですね。
飲み会の予算は5万円から?外銀マン達の派手すぎる遊びっぷり
辻:SNSの投稿を見る限り、いつもクラブで豪遊してますよね(笑)。やっぱり外銀の人ってみんな派手に遊んでるんでしょうか?
Mさん:うーん、みんな元気ですよね。フルで働いて、フルで遊ぶという人が向いている業界なのかなとは思う。
辻:具体的に、どんな感じで遊ぶのでしょうか?
Mさん:飲む場所は六本木がほとんど。スタンディングバーで飲んでいると同業の知り合いに会うし、ある程度人数が集まったらクラブに行って飲みまくる。クラブに行くと、普段一緒に仕事をすることはない上の人がいたりして、一緒に飲んで仲良くなることもあるね。
辻:まさに六本木のクラブが社交場になっていると。飲みに行くとしたら、1回の予算はどれくらいですか?
Mさん:平日なら最低1万円、休日なら最低5万円。時々、他業界の人と飲むこともあるけれど、「予算5000円くらいでいい店を選んでおいて」と言われたときが一番困るかな。
辻:ちょっと想像がつかない世界ですね……。住んでいるのは、みなさんやはり港区あたりが多いですか?
Mさん:ほぼ港区の住人だね。休日に六本木や赤坂を歩いてると、知り合いによく会う。
辻:休日というと、この前の長期休暇で海外に行ってらっしゃいましたよね。
Mさん:そうだね。忙しい業界だけど、長期休暇は年に2回とれているかな。
休暇中は派手に遊ぶというよりは、海外のリゾート地とかでリラックスして過ごす人が多い。自分もこの前の海外旅行では、靴とかバッグとか大量に買ってきたよ。何を買ったか全部は覚えてないけど……(笑)。
お金は無くならない。高級なスーツ、靴、時計はすべて投資だ
辻:派手に遊んだり一等地に住んだりしていらっしゃいますが、お金をためるという発想にはならないんですか?
Mさん:お金って無くならないんだよね。
辻:……(絶句)
Mさん:例えば、年収500万円の人が頑張って節約して、1年間に100万円を貯めたとするじゃない? 一方で年収1000万円の人が、毎日外食して、100万円の高級時計を買ったりして一銭も預貯金がないとする。世間の人は、どちらがお金持ちだと考えるでしょうか?
辻:貯金がない方の人ですね。
Mさん:そうだよね。しかも、100万円の時計を持ってることで、同じ時計をつけている上のクラスの人と話をすることができて、チャンスが広がることもある。俺は目的のない貯金は意味がないと思っています。
辻:特にお金をかけるのは何ですか?
Mさん:スーツ、靴、時計かな。高級ブランドを身につけることによって仕事のモチベーションが上がるし、もっと良いものを買うために自分を高めたいと思える。これも投資の一種だね。
辻:成長するためのエンジンを自分で回せている……。
外銀マンがモテるのは、「外銀にいる」という事実が自分に自信を与えてくれるから
辻:やっぱりMさんはカッコいいしモテると思うんですが、僕も外銀にいったらモテるようになりますか?
Mさん:モテるヤツはモテるし、モテないヤツはモテないけど(笑)、外銀マンは平均よりはモテると思うよ。
それは外銀の社会的ステータスや高い給料が、本人に自信を持たせてくれるからだと思っています。同期でめちゃくちゃモテる人がいるんですが、彼は見た目のカッコ良さだけでなくて、女性へのアプローチがすごいんだよね。
辻:タダですらイケメンなのに、外銀にいるというステータスが自信になって女性に積極的になれるから、なおのことモテると。
Mさん:うん、やっぱり仕事もプライベートも自信って重要。自信があるからこそ、いいなと思う人にアプローチできる。外銀に入社してしまえば、ブランドや高年収は必ず手にすることができるから、それを自信にできればモテるようになるんじゃないでしょうか。
辻:Mさんって、外銀ライフを心から楽しんでそうですね。
Mさん:俺はこの業界が向いてると思うよ。俺は他の人より高い給料が欲しいし、ラグジュアリーな経験がしたいし、優秀なメンバーが集まる環境にいたい。他の人よりも頭ひとつ抜けるためであれば、つらいことも頑張れる。外銀に向いているのは、そういう強い向上心やパッションがあるやつなんじゃないかな。
「外銀って、学生のみんなが思っているほど怖いところじゃないよ」
Mさんはそう言い残し、遊び仲間が待つという銀座へ去って行きました。
彼の所作から現れる自信と余裕、そして圧倒的なバイタリティ。これが彼が外銀マンたるゆえんなのかもしれません。
オンもオフも全力な外銀マンの姿に尊敬の念を、そして「お金は無くならない」という言葉に一抹の怖さを覚えつつ、私は港区を後にしました。
【執筆協力:yalesna】
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