※こちらは2017年11月に公開された記事の再掲です。
就職活動が始まって間もなく、生態系に大きな異変が生じるのをご存じだろうか。
それは、「サークル副代表の異常増殖」
もしかしてサークルには副代表って10人ぐらいいるんですか? って勢いで面接会場に度々出現する。石を投げれば副代表に当たる。
この現象は、ガラパゴス諸島のゾウガメのように、副代表から留学経験へ、そして今や留学支援団体立ち上げメンバーの増殖へと進化を遂げているらしい。中身は変われど、きっと本質は一切変わっていないと思う。
オチの分かるドラマを毎週見たいか? 模範解答なんて誰も求めてない
この現象を面接官の立場で見ていこうというのが、今回の議題だ。大体、サークルの「自称副代表」によって語られるエピソードは、こんなことではないだろうか。
サークル内で起こったトラブル収束のために自分が頑張ったこと、チームの皆で成し遂げたこと、大変だった出来事をどう乗り越えたか、自分がどれほどチームに貢献したか……。
数々の副代表ネタを聞いて、面接官は一体どう思うか。まっとうな神経の持ち主ならば、No More フクダイヒョウである。一日に数十人の学生の話を聞いている面接官にとって、内容に多少の違いはあれど、既視感ハンパないはずである。数カ月もたつと、下手な占い師よりも予知能力が高くなると思う。
私は自称副代表くんに、問いたい。君はストーリー展開が分かりすぎるドラマを毎週見続けたいと思いますか、と。
面接は自分がやってきた特別なことをアピールする場ではない。そこをはき違えている人がたくさんいる。面接官が知りたいのはただ一つ。自社で働くことをイメージできる人なのかどうかだけだ。
君が「合コン三昧のクソ野郎」に就活で惨敗するワケ
就活中には予想外のことがたくさん起こる。例えば、学生時代は合コン三昧でろくにゼミにも顔を出していなかったようなやつが、なぜだか内定をバンバン決めてくる……みたいな不条理な出来事だ。あんなやつに負けるだなんて! 面接官、絶対騙されてる!! と悔しがるのもムリはない。自分が誰よりも下に見ていた相手に負けるというのは、相当な屈辱である。
では、彼はなぜ面接で異様なまでに力を発揮できているのか。合コンに参加したことがあまりない人のために、簡単にその流儀とやらをお教えしよう。
合コンとはチームプレーである。集まる人たちのタイプに応じて、臨機応変に役回りを変えながら、参加者全員が楽しめる場を開始15分ぐらいで作り出さねばならない。例えば、控えめ女子ばかりが参加している場合は盛り上げ担当に、お酒が強い人が多ければすかさずオーダー役に回り、ルックスのいい友人がいればそいつで女子たちの気分を盛り上げつつも、さりげなくお目当ての子に近づき、ほどよい感じで会話に入ってLINEをゲットする!
ただ飲んでいるだけと思ったら大間違い、頭の中は意外と忙しいのである。
ここで何が言いたいのかというと、何も合コンしろと言っているのではない。「場の空気を読む力」というのを、学生時代にぜひ磨いてもらいたいのだ。
ぶっ飛んだエピソードで内定ゲット? それは戦略です
私の友人に、某大手メディア系企業の面接で「学生時代、走り屋でした!」という話をして、見事に内定をゲットした強者がいる。一見すると、速攻お祈りを食らいそうなエピソードではあるが、これは彼女が「場の空気を読む」ことに長けていたからこそ、功を奏したのだ。
それは、お昼明けすぐの集団面接だったという。一緒に参加していた学生たちから語られる話も、既視感のあるつまらないものばかりで、面接官たちも顔には出さないものの「飽き飽きしていそうだな」と思ったそうだ。
そこで彼女は機転を利かせた。真面目な話をするのではなく、いっそぶっ飛んだエピソードを切り口にして、自分の経験談を語ってみようと。
実際に彼女は走り屋だったが、同時に苦労人でもあった。高校卒業後に家を出てからは、新聞奨学生の制度を利用して、泊まり込みで新聞配達の仕事をしながら1年かけて大学入学資金と生活費をため、親の力を一切借りずに大学を卒業したのである。新聞奨学生は単位規定も厳しいので、学業もしっかりやっていた。また、ゼミのワークでは大手レンタルサービス事業のECサイト立ち上げに貢献したこともあり、エンジニアとしても非常に優秀だったのだ。でも、あえて彼女はその優秀さをおくびにも出さずに、自分の希有な生い立ちを語る「取っ掛かり」として走り屋の話で場を和ませ、面接官との会話のキャッチボールに成功したのである。
ツッコミどころ満載のエピソードを面接官に投げろ
私は何もぶっ飛んだ話をしろと言っているのではない。自分が本当に伝えたいエピソードがあるのであれば、どうすれば面接官がもっと詳しく知りたいと思ってくれるのか、そこまでを算段して、面接官の目線になって考えてみるクセを身につけてもらいたいのだ。
面接中、多くの学生は「私」が主語となる一人称の目線でばかり物事を考えがちだが、面接とは自分のスゴいところ自慢の場ではなく、他人と会話のキャッチボールをする場だ。三人称の目線、つまり面接官から見て、どうやって話を展開すれば、もっと詳しく聞いてみたいと思ってもらえるか、質問の真意はなんなのか、というところまで視野を広げてみてほしい。これは先ほどの合コン男でいう、「場の空気を読む力」なのだ。チームで気持ちよく仕事をして結果を出す人には、この力に長けている人が非常に多い。
最初から過不足なく、自分の伝えたいことを語れる人なんていない。スティーブ・ジョブズだってプレゼンの前には死ぬほど練習したと思う。孫正義だってきっとそうだ。天才だと言われている人たちですら、陰ながらの努力があるからこそ、人の心を掴み感動を呼ぶプレゼンができるのだ。面接で緊張していつも思うように話せないという人は、まだまだ話す練習とイメージトレーニングが足りていない。面接官の目線で場の空気が読めるようになるまで、繰り返し練習を重ねてほしい。
<本日の処方箋>
『テラスハウス』を死ぬ気で見ろ!
フジテレビの人気バラエティー番組、『テラスハウス』をご存じだろうか?男女6人がシェアハウスでともに生活する様子を追うドキュメンタリー番組なのだが、生まれも育ちも違う者同士が集まると、当然そこには恋愛やら人間同士のトラブルが起こる。
「こういうヤラセ番組、くだらない!」と決めつけないでほしい。テラスハウスの面白さは、ストーリーそのものではなく、副音声で聞いたときのスタジオにいるギャラリー側の声にあるのだ。
南海キャンディーズの山ちゃんがテラスハウスに住むメンバーの行動をバッサリとぶった切る爽快さ、チュートリアル徳井さんの絶妙なラインの下ネタとボケ、女性代表としてYOUさんやトリンドル玲奈さんがダメ出しする様子など、それぞれの突っ込みが鋭くも痛きもちいい。番組で人間模様を観察しながら、何気ない行動の一つ一つが周囲にはどんな印象を与えるのか、第三者目線で知ることができるのだ。下手な合コンに10回参加するぐらいならば、テラスハウスをじっくり見る方がずっといい。
他にも、Amazonプライム会員限定の『バチェラー・ジャパン』もオススメだ。こちらもバチェラー役のスマートな身のこなしや女性陣への気遣いは見ていてとても勉強になるし、エピソードごとに今田耕司とゲストの女性芸能人がトークしながらストーリーを振り返るので、第三者目線を養うにはもってこいなのだ。
社会人になってからも必要となる人としての深み、そして他人への気遣いや場の空気を読む力といった対人能力など、ぜひ学生時代に学ぶ機会を持ってもらいたいと思う。