企業研究をしたいなら「学生研究」の手法を盗め
企業研究というと、まず自分が興味を持っている企業のホームページを見てOB・OG訪問をして、情報を集めたところでなんとなく合いそうな企業があったら受けてみて……という方法で就活を進める方も多くいらっしゃいます。しかし、実は企業研究なんてものは、10分で終わる簡単な作業です。このコラムでは、企業研究の簡単かつ最も正攻法なやり方をお届けいたします。
企業研究の前の自己分析?
企業研究・業界研究の前によく「自己分析をして、やりたいことをノートにまとめてみましょう」などと就活本には書かれていますが、就活生は「やりたい仕事」を考える前に「やれる仕事」を分析しなくてはいけません。なぜなら企業が知りたいのは「あなたができそうな仕事」だからです。
そのために、まずはあなたがどんな仕事に向いているか研究します。変な適職診断を受けるより、企業が「学生をWebテストで診断するときに使っている手法」で分析してしまえばいいのです。
ビッグ・ファイブ理論で自己分析を制する
多くの企業は心理テストを受けさせて、学生をふるいにかけています。大企業が採用する代表的なテストは「Big Five(ビッグ・ファイブ)理論」と呼ばれるもので、人の性格を5つの要素でランク分けし、適性を測るようにできています。といっても、やり方は難しいものではありません。「外向性」「情緒安定性」「開放性(好奇心の強さ)」「勤勉性」「協調性」をそれぞれ5段階評価で判断しているのです。
就活の際にはできれば実際のテストを受けてほしいのですが、お金がかかるため、「Big five」などで検索して出てくる簡易版のテストを受けてみてください。
例えば、このテスト結果で、あなたは「外向性が強く」「情緒は不安定」「好奇心強く」「あまり勤勉ではない」「協調性そこそこ」の人材だ……というふうに判断されるとします。たった5つのポイントとはいえ、それなりに仕事ぶりがわかりそうなデータです。企業はこの心理テストからメンタル面でも合いそうな学生を選び、Webテストで絞り込みをしているのです。自分の分析結果は下記のように、ノートにでもメモしておきましょう。以下は私の実際のスコアです。
【トイアンナ】
- 外向性 ☆☆☆☆☆
- 情緒安定性 ☆☆☆
- 開放性 ☆☆☆☆☆
- 勤勉性 ☆☆
- 協調性 ☆☆
この結果を見ただけで「自分はプロジェクトがコロコロ変わって好奇心が常に満たされる仕事ならできそうだ」とわかります。就活で内定が一つも取れない状況の大半は「向いていない業種の採用選考を受け続ける」ことで発生しますので、このツールを使うだけでもある程度自分に向いている業界・仕事分野がわかり、内定が一つも取れない状況を回避できるはずです。
自己分析のテストで、企業・業界分析ができる!
次に、自分がそれとなく気になっている企業が採用ページやセミナーで語る「欲しい人材」をそれぞれ同じように5段階評価してみましょう。以下は私が企業の情報をもとに独断で作ってみた事例です。あくまで参考としてご利用ください。
【会社名:花王】
- 外向性 ☆
- 情緒安定性 ☆☆
- 開放性 ☆
- 勤勉性 ☆☆☆☆☆
- 協調性 ☆☆☆☆☆
【会社名:三菱商事】
- 外向性 ☆☆☆☆☆
- 情緒安定性 ☆☆☆☆
- 開放性 ☆☆
- 勤勉性 ☆☆☆☆
- 協調性 ☆☆☆☆☆
【会社名:電通】
- 外向性 ☆☆☆☆☆
- 情緒安定性 ☆☆
- 開放性 ☆☆☆
- 勤勉性 ☆
- 協調性 ☆☆☆☆☆
スコアの作り方
例えば、花王さんの企業セミナーで「会社の先輩方に助けていただいたおかげで、仕事が前に進み」という社員の言葉を聞いたので、先輩を立てる協調性というポイントが最優先として☆5にします。また「日が当たらない仕事でも、こつこつ頑張れる人材」が欲しいという採用担当のコメントで協調性も☆5にし、代わりに真逆のポイントである外向性を下げました。
別の事例として三菱商事を見てみましょう。まずはOB・OG訪問をしたときの「みんなと仲良くなれる、バランスのとれた人材がいい」という言葉から、協調性と外向性ポイントをどちらも☆5にしました。また、「仕事で外国へ赴任してもやっていける精神力があると望ましい」という情報をセミナーで得たので、情緒安定性ポイントを次点の☆4にしています。☆5にしないのは「望ましい」とあくまでオプションとして希望する人材について話していたためです。また、過去の内定者を見て「変なこと、とっぴなことに挑む学生は意外と少ない」という事実に気付き、知的好奇心の度合いである開放性を最も低い☆2としました。
もしスコアに悩んだら、「外交的に人を巻き込む学生と、真面目にこつこつ取り組む学生のどちらが御社に望ましいでしょうか」などと企業の社員に聞いてみてもいいでしょう。属性に優先順位をつけようと思えばやりやすいはずです。慣れれば企業の社員に質問しなくともすぐにスコア化できるようになるので、OB・OG訪問などでも活用してみてください。
自分が合わない企業に恋をすることもある
この企業分析で伝えておきたいのは「就活で自分に合わない会社を受けるな」というメッセージではありません。あなたの適性から真逆の人材を求めていたとしても、「この会社に入りたい!」という本命企業に出会うことはあるでしょう。そんなときは「今のままの自分では採用選考に落ちる」とだけ覚悟しましょう。
たとえば協調性ポイントが足りないのなら、協調性を養う経験を始めれば間に合います。集団のスポーツや、ゼミで役割を持ってみるのもいいかもしれません。企業分析・業界研究の時期から考えれば、採用面接は2カ月くらい先にあるかと思われます。2カ月あれば、一つの特性を伸ばすくらいなんとかなります。本命企業に出会えたのであれば、ぜひ背伸びをして成長の糧としてください。
自分と本命企業との正確な距離感を理解する大切さ
大切なのは志望する企業を見たときに「ここなら通りそう」「ヤバい、頑張らなきゃ」といった、企業が求める人材との正確な距離感を理解することです。
自分が向いてもいない業界を適職だと勘違いして、その業界の企業ばかり50社受けた場合と、向いている業界を狙って10社の採用選考を受けた場合では、明らかに後者のほうが内定しやすいはず。どうか自分が楽しく活躍できる場所を選ぶツールとして、ビッグ・ファイブ理論を利用してみてください。
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※こちらの記事は2016年1月に掲載された記事の再掲です。