外資系投資銀行で活躍する女性社員の生の声をお届けする特別企画。
今回はゴールドマン・サックスの魅力に迫ります。オペレーションズ所属の足立さん(右)と、投資銀行部門所属の吉田さん(左)にインタビューを行いました。
入社2年目の足立さんからは、就職活動の真っ只中である読者の方々から比較的近い目線で、主にご自身の就職活動についてのエピソードを、吉田さんからは8年に渡る投資銀行部門でのご経験から、より詳しく投資銀行業務の内容を中心にお伺いしたいと思います。
今回の見どころ
・足立さん「取引の透明性を維持する窓口」 吉田さん「8年間アドバイザリー一筋」
・「強い日本の金融市場をつくる」国内再編。東証グループ・大証の経営統合で日本取引所グループが発足
・「あの時は敵と思ったゴールドマン・サックスが、実は味方だった」正念場で指名される、ナンバーワンの真価
・100%の仕事も不完全燃焼の仕事も、全て見ていてくれる面倒見
・子育てをする社員をサポートする制度をフルに利用しながら、仕事にもまい進できる環境を作り出す
・投資銀行の仕事は「文化祭」、提案から実行まで一気通貫で手掛ける魅力
「外資金融×女子」特集ラインナップ
ゴールドマン・サックス/J.P.モルガン
メリルリンチ日本証券/UBSグループ/シティグループ
足立さん「取引の透明性を維持する窓口」 吉田さん「8年間アドバイザリー一筋」
──足立さん、吉田さん、本日はよろしくお願いします。入社年次、所属、役職がそれぞれ異なるお二人ということで、まずは今までのご経歴と担当業務を簡単に教えてください。では、足立さんからお願いします。
ゴールドマン・サックス証券株式会社 オペレーションズ 足立 麗衣(あだち れい):2016年入社。大学では法学部政治学科に所属し、卒業後に新卒でオペレーションズに入社。現在は日本・香港・オーストラリア等の規制当局への店頭デリバティブの取引報告を主に担当している。
足立:私は2016年に法学部政治学科を卒業し、オペレーションズの入社2年目です。オペレーションズの業務は取引の決済や取引情報の管理・報告など多岐にわたりますが、私はその中でアジア地域における店頭デリバティブ(公開市場を介さない金融商品)の取引報告を主に担当しています。
日本では、ほぼ全てのデリバティブ取引について金融庁への報告義務があります。その義務を確実に果たすため、取引のすべてを正確かつタイムリーに把握し、変化する金融規制に自社の取引システムを対応させる必要があります。その点で、私の仕事は取引の透明性を維持する窓口といえます。
──ありがとうございます。続いて吉田さん、ご経歴と業務内容をお話しいただけますか。
ゴールドマン・サックス証券株式会社 投資銀行部門 吉田 瑞希(よしだ みずき):2009年入社。大学では国際関係論を専攻。卒業後に新卒で投資銀行部門に配属され、入社以来アドバイザリー業務を8年間務めている。
吉田:はい。私は2009年に国内の大学を卒業し、投資銀行部門(IBD)に配属されました。IBDには2つのグループがあり、アドバイザリー・グループと資本市場本部に分かれています。私は入社以来8年間アドバイザリー・グループに所属し、M&Aや、企業が発行した株式、債券の発行といった資金調達を担当してきました。
アドバイザリー・グループの業務は、その名の通りお客様である企業に対するアドバイスが中心です。お客様に寄り添いながら、M&Aや資金調達の提案から実行までを一貫して行う仕事です。
「強い日本の金融市場をつくる」国内再編。東証グループ・大証の経営統合で日本取引所グループが発足
──なるほど、非常に分かりやすいです。業務のイメージがついたところで、次は具体的なエピソードをお聞きしたいです。お二人の印象に残っている仕事は何ですか? こちらは現在9年目と、業務経験の豊富な吉田さんから伺います。
吉田:それぞれの案件に思い入れがありますが、一つ挙げるなら東京証券取引所グループ(東証グループ)と大阪証券取引所(大証、のちに大阪取引所に社名変更)の経営統合です。2011年に経営統合が発表され、2013年に日本取引所グループ(JPX)が発足しました。我々は大証側についてアドバイスをし、私も担当チームの一員として案件に関わらせていただきました。
印象に残った理由としては2つあります。まず、経営統合という入社前に思い描いていた仕事に携われたこと。そして、チーム内で一番若いメンバーながら、案件に関わった実感が大きかったことです。苦心して仕上げた資料がプレスリリースや会見で使われた時は、感動して泣いてしまいました。
──まさに経済紙の一面を飾るような案件に携わっていたのですね。経営統合が行われた背景を、学生にも分かるように説明いただけますか?
吉田:わかりました。東証グループと大証という巨大な取引所同士が統合に踏み切った背後には、「強い日本の金融市場をつくる」という関係者の強い思いがありました。東証グループは株式に強みを持ち、大証はデリバティブが強かったため、事業の補完性が非常に高く、取引所規模拡大や金融商品の多様化に繋がったのです。両者が統合して発足したJPXは、時価総額で世界でも有数の規模の取引所となりました。
まさに「一生に一度あるかないか」という歴史に残る案件で、お客様の真剣さに気圧されてしまうほどでした。それだけに、弊社はアドバイザーの立場で冷静に物事を俯瞰しなければならないと実感しました。
──JPXの発足により、日本の金融市場はどうなったと思いますか。
吉田:日本の金融市場に前向きな流れをつくり、私見ですが、安倍政権の経済政策を支える土台のひとつとなったのではないかと思っています。
「孤独な王者」ゴールドマン・サックスの圧倒的な強さ
──非常に興味深いです。これだけの大事業を、なぜゴールドマン・サックスが受注できたと思いますか?
吉田:「ロングタームでものごとを考える」姿勢ではないかと考えています。お客様への日々の訪問や電話の中でニーズを汲み上げ、丁寧かつ真摯に提案を重ねていった結果だと思います。弊社の取引所セクターへの知見や案件実績も奏功したのではないでしょうか。
──恐縮ながら顧客との信頼関係は、他社も同様に重視する点かと思います。「王者」と称されるゴールドマン・サックスならではの強みは何だと思いますか?
吉田:ゴールドマン・サックスは「孤独な外資」と呼ばれます。これは日系の金融機関と提携を持たないことに起因しますが、提携先を持たずそこからの仕事が得られないだけに、「絶対に案件を獲得したい」という渇望が強いと思います。先輩や同僚の仕事ぶりを見ていると、提案の速さと質の高さにこだわる姿勢には「自分が顧客でもゴールドマン・サックスに頼みたい」と感じることがあります。
「あの時は敵と思ったゴールドマン・サックスが、実は味方だった」正念場で指名される、ナンバーワンの真価
──吉田さんの役職であるVP(ヴァイス・プレジデント)は、クライアントと日頃から連絡を取り合うポジションですよね。ゴールドマン・サックスの仕事の姿勢は、顧客からはどのように受け取られていると思いますか? 過去のやりとりで、記憶に残っている言葉があれば教えてください。
吉田:あるIPOで、弊社と他の投資銀行で方針が対立した時のことです。IPOは実施時の市場動向やお客様の事業戦略・実績によって価値が変動するため、タイミングが非常に重要です。お客様がIPOのタイミングを図っていた時、競合他社は「今がいい」と口を揃えて提案する中、弊社だけは「まだ妥協しないで」と延期を求めました。ゴールドマン・サックスはここでも「孤独」だったわけですが、最終的に延期を決断いただき、結果としてお客様にとって満足いただけるタイミングでのIPO実施に至りました。お客様からは、「あの時は敵だと思っていたゴールドマン・サックスが、実は味方だった」と、驚きと感謝の言葉を頂きました。
──他社と対立する状況で主張を貫き続けるのは並大抵ではありませんね。どのような確信があって延期を提案したのでしょうか?
吉田:自社の海外オフィスとの関係が密で、グローバルレベルでの業界の動向や国外マーケットの情勢を掴むことができたことが大きな要因です。シニアクラスの役職者や、本社を含む海外オフィスの社員もディスカッションに参加してくれたので、自信を持って提案に臨めました。まさに総合力の勝利だと思います。
──「敵だと思っていた」という言葉にもある通り、クライアント側も投資銀行も、資金調達の手段であるIPOは早いに越したことはないはずです。「投資銀行は、自社の収益手段に誘導する選択肢しか提示できない」という一部の学生がもつイメージを良い意味で裏切るエピソードですね。
吉田さんのお話を伺っていると、仕事に対する圧倒的なエネルギーとナンバーワンとしての矜持を感じます。ゴールドマン・サックスの社員がここまで仕事の質を追求する原動力はどこにあるのでしょうか?
吉田:「甘えが許されない」環境にあると思います。自力で案件を得なければならない中で、弊社を選んで頂くために手を抜くことは許されません。私自身も、「トップだからこそできる仕事、トップだからこそすべき仕事をしたい」という思いを持ち続けています。その結果として、社の命運を掛ける正念場にゴールドマン・サックスを指名いただけるのだと思います。
100%の仕事も不完全燃焼の仕事も、全て見ていてくれる面倒見
──続いて、そのような大事業を成し遂げるための人材育成についてお話を伺います。こちらは新入社員の視点から、足立さんに詳しくお聞きします。ゴールドマン・サックスで働く中で、ご自身の成長のモチベーションになっている仕組みや風土があれば教えてください。
足立:フィードバックが活発なことです。この理由は制度とカルチャーそれぞれにあると思いますが、前者については「フィードバック360°」という取り組みがあります。縦横無尽に社員同士が評価し合う目的で、役職や所属を超えたフィードバックが義務付けられています。私の場合は、業務での関わりが多い海外オフィスからもコメントが届きます。
後者については、上司や先輩が自分の仕事をよく見てくれていると感じます。そのため、丁寧に取り組んだ業務は、「足立さんのこの仕事が良かった」とコメントをもらえることがありますし、改善すべき点においては的確な指摘をいただけるので、掛けられる言葉とともに成長を実感する毎日です。外資系投資銀行の放任主義なイメージとは真逆で、人を育てることに本当に力を入れている会社だと感じます。
──「人を育てる」という言葉がありましたが、その意識は社員の中でどのように醸成されていますか。
足立:マネージャーをはじめとして、チームメイトやチーム外メンターとのミーティングが頻繁に行われ、仕事で迷うことや判断がつかないことがあるとき等にすぐに質問し解決できる体制があります。ゴールドマン・サックスでは、チームワークを非常に重視する文化があり、各チームがチームワークをベースに成り立っているため、新たに仲間入りしたメンバーがいれば全員でサポートをするような環境が当たり前のようにつくり上げられています。面倒見の良い先輩方が非常に多いです。
──それは面白いですね。外資系企業の独立独歩なイメージとのギャップを感じます。先輩と後輩の間に限らず、社員同士の和を感じることは多いですか?
足立:はい。部署はもちろん他のオフィスで働く社員との間にも壁を感じたことはありません。私は海外オフィスの社員と直接会ったことはありませんが、「ずっと前から知っているみたい」と電話越しに冗談を言って笑い合うこともしばしばです。ビデオカンファレンスや、ビデオアプリを使ったミーティングを行うこともよくあり、地域やオフィスを超えてface to faceで話をする機会がとても多いこともチームワーク醸成に役立っています。
子育てをする社員をサポートする制度をフルに利用しながら、仕事にもまい進できる環境を作り出す
──女性が自身のキャリアとライフイベントを両立できること、あるいは管理職として勤め上げることも、人材育成の重要なミッションだと思います。ゴールドマン・サックスでは、女性はどのように活躍していますか?
足立:皆が能力開発とキャリア形成の機会を得られる環境だと思います。また、出産などの大きなライフイベントと仕事のバランスを上手に取るための様々な制度が用意されており、子育て中の女性もそれをフルに活用しています。例えば弊社には、専用の託児施設があり子どもを預けることができるので、保育園の入園時期に関わりなく仕事復帰ができます。出産・産休を経て職場復帰された先輩たちから、仕事とプライベートの両立の秘訣などを聞くチャンスも多く、非常に心強いです。何事も相談でき、勤務形態も柔軟に調整できる環境なので、安心して長期的なキャリアを考えることができます。
新卒入社後、昇進を重ねて管理職に就く女性もたくさんいます。新卒社員を採用し丁寧に育てることに非常に注力しており、そのためのプラットフォームや風土がきちんとできている点も、GSに新卒社員として入社することの魅力の一つだと思います。役員層のうち、新卒入社者の割合もとても高いんですよ。
様々な制度やサポートをフルに利用し、仕事にもまい進できる環境を作り出してプライベートを充実させると同時に、自身のキャリアを花開かせていく社員が多いと感じとても励みになります。
──女性社員に対する人材育成やサポートが手厚く感じますね。
投資銀行の仕事は「文化祭」、提案から実行まで一気通貫で手掛ける魅力
──インタビューも終盤です。ここまでゴールドマン・サックスの社員として働く魅力は伝わってきましたが、学生時代のキャリア選択についてもお話をお聞きします。学生当時になぜ投資銀行に、そしてゴールドマン・サックスの現在の部署に惹かれたのでしょうか。まずは、足立さんからお願いします。
足立:当時の就活の軸は2つあり、一つが「世界情勢と業務がリアルタイムに繋がる仕事に携わること」、もう一つが「自ら提案し行動することが評価される環境で働きたい」ということでした。外資系企業にはその要素を満たす点で惹かれ、業界問わず興味を持っていました。
その中で金融を志したのは、「知らない世界」に飛び込んでみたかったからです。今まで学んだ事のない金融でしたが、就活中に社員の方々の話を聞く中で、日々のニュースや情勢が仕事に直結するスピーディさや刺激に大きな魅力を感じ、投資銀行をキャリアの選択肢に入れました。
──「海外との繋がり」や「仕事のダイナミックさ」という点では、コンサルティングファームも共通する点かと思います。吉田さん、ご自身のご経験を踏まえて感じる違いはありますか?
吉田:私は投資銀行の仕事は「文化祭」に例えられると思います。これは、M&AやIPOを提案から実行まで一貫して行う投資銀行の役割に、企画から運営までを行う文化祭との共通点を感じるためです。個人的にはコンサルが扱う経営戦略という大きな枠組みより、投資銀行のより具体的な提案に面白さを感じます。
──ゴールドマン・サックスは、多くの学生にとって非常に狭き門です。足立さんは、なぜ自分が内定できたと思いますか?
足立:自分を飾らず正直でいたことだと思います。金融の専門知識が周囲に比べて不足していた当時、面接で難しい内容を問われて悩んでしまうこともありました。その時に、あれこれ取り繕わずに自分に足りないことは何かを正直かつ真摯に受け止め、かつ今後学んでキャッチアップしていきたいという気概を伝えたことが評価されたのかもしれません。また、未経験の金融業界に飛び込んだことを含め、チャレンジを楽しめる部分が伝わったのかもしれませんね。
世間のイメージに左右されない就活を。会いに来てください
──最後に、お二人から全国の就活生へメッセージをお願いします。
足立:就活は内定が目的ではなく、入社後に自分が満足できるかどうかだと思います。世間のイメージに左右されず、興味を持ったら実際に足を運んで感じたことを大切にして下さい。私自身、それがゴールドマン・サックスを志望するきっかけになりました。
吉田:新卒就活は人生で1度だけ。学生のとき感じたことはその後の人生に影響が大きいので、フルに活動して楽しんでほしいです。私も採用イベントに参加しているので、ぜひ会いに来てください!
──足立さん、吉田さん、ありがとうございました。
編集・ライター:めいこ インタビュー:北野唯我(KEN)
「外資金融×女子」特集ラインナップ
ゴールドマン・サックス/J.P.モルガン
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