こんにちは、食品メーカーの研究所に勤務し基礎研究を行っているアテナミと申します。東大大学院を卒業後、ちょっと変わったCMで有名な食品会社の研究所に就職しました。その後、研究職では比較的珍しい「転職」を経験しています。
私がまだ学生だった頃、身近にこんな先輩がいました。自由応募で惨敗し、M2の夏を過ぎても箸にも棒にも掛からず、周囲の誰もがこの先輩どうするんだろう? と心配していました。ところが、なんとM2の秋に大手の協働研究先へ内定を決めたのです。
——その企業は大手で採用は春に終了していたのにも関わらず……。その時に役立ったのが✕✕✕力です。
こんなエピソードもある理系学生の就活。今回はその6つ真実に迫りたいと思います。
真実(1)研究成果はスクリーニングの1つにすぎない
いきなりですが、実は学生が思っているほど企業は研究成果を重要視していないことをご存知でしょうか。
ノーベル賞級の発見があったり、修士のうちに筆頭著者として論文が学会誌に3本以上掲載されたりするなど飛び抜けた成果があれば別ですが、普通の学生の研究成果そのものの比較は難しいものです。
そのため、その研究が企業の欲しい研究分野に一致していない限り、個人情報の1つ、すなわち学歴や所属と同等としてしか扱われません。スクリーニングに使われるとしても採用や配属の決め手とはなりにくいのです。
真実(2)研究職で内定したのに、他に配属されることもある
それどころか、研究職を希望し内定を得たはずが入社時には他部署に配属されるという場合も多々あります。新卒採用は内定から入社までのタイムラグが長く、その間の研究所内の人事に左右されてしまう上に、新入社員の配属については所長が決定することが多いためです。
また、配属されてからの業務評価も研究成果だけが評価されるわけではありません。
真実(3)研究業務の時間は半分以下しかない
実は、研究職の業務は研究業務より調整業務の方が多いです。実験・試作・レポート作成などの研究業務は半分以下で、その他書類作成・社内アピール・社内外の打ち合わせ等の調整業務が多くの時間を占めます。
真実(4)学生を採用枠にねじ込む力を持つ教授もいる
冒頭のエピソードでご紹介した、自由応募で惨敗したと思ったらM2の秋に協働研究先への内定を決めた先輩。彼がその内定を得た背景には、教授の存在がありました。
教授はその業界の中でもトップクラスの人材であることは間違いありません。業界内の裏コネクションも多く持っています。企業側からも良い人材はいませんかと問い合わせがよく来るのを目にします。いざというときは学生を採用枠にねじり込む裏技を持つ教授もいる……ということです。
真実(5)協働研究先の採用の決め手は相性
これには、協働研究先はとりわけ印象が採用可否を左右しやすいという背景もあります。協働研究者との協働作業は数年に及ぶ長丁場となるため「業務をしやすそうか」という視点が重要となるのです。
真実(6)ヨイショ力が仕事全体のスピード感を上げる
意外かもしれませんが、皆さんが思っている以上に社会人は感情で物事を判断します。
例えば大掛かりな製造実験を行う際には研究所内外の人員の確保が必要です。その人員の確保を自分で行う場合がありますが、頼む相手が自分に良い印象を持っていないと実験を引き受けてもらえません。加えて同時期に似た依頼があった場合に良い印象の人物の実験を優先させるのはよくあることです。
そのときに役に立つのがヨイショ力です。ヨイショ力とは「相手に好感を持ってもらうために、その人・その場にふさわしい褒め言葉を使う力」。この力を活用すれば、仕事全体のスピードを上げよりたくさんの結果を生み出すことができるでしょう。
コミュ力に自信のない理系学生へ。まずは「褒める」ことからはじめよう
理系学生は研究に割く時間が多く、コミュニケーション能力の向上まで気が回らないかもしれません。しかしながら人と関わって仕事を行う以上、相手に好感を持ってもらうことが実力以上の効果をもたらします。
まず隣にいる人を褒めてみましょう。褒める内容や言葉がすぐに出てこないことに気がつきます。日本人は他人を褒めちぎる習慣がなく、褒める単語も少ないため、意識しなければ身につけることが難しいのです。日頃から相手を褒めるためのネタや単語を貯めておくなどして少しずつヨイショ力を高め、いざ必要となったときに自然とヨイショ力が発揮できるようにしておきましょう。
おわりに
ここまで理系学生の就活、6つの真実をお伝えしました。意外に思うものもあったのではないでしょうか。みなさんの就職活動が納得のいくものになることを願っています。
全4回:「理系特集」
【第1弾】理系学生が今読まないと損するまとめ記事5選&ワンキャリア理系特集
【第2弾】競争社会を勝ち抜き続けてきた東大生の「将来やりたいことがない」という葛藤に満ちた就職活動
【第3弾】「24歳で若さも失っていますから」東大リケジョが教える結婚と就活のW内定の秘儀
【第4弾】理系就職6つの真実・理系学生に必要なのは✕✕✕力!?