こんにちは、ワンキャリ編集部です。
今回は理系大学院生の筆者が就活の実態についてお伝えします!
理系大学院生といえば、「学校推薦でメーカーの研究職に就職する」というイメージですが、ここのところメーカーの研究職にあえて行かない理系院生も増えてきました。メーカーの研究職へは、今研究している技術の専門性を買われて就職するわけですが、技術の転換のスピードが早い現在、今磨いた専門技術が10年後も必要とされるかは分かりません。新たな技術に取って代わられ、大学院で磨いた技術自体が必要とされなくなっている可能性もあるのです。
そんな危惧を抱いた理系大学院生が一般の就活の場にあらわれ、また存在感を放つようになりました。ある外資系コンサルでは、内定者の8〜9割が理系大学院生ということもあるほどです。
こう聞くと「就活強者」と思う方もいるかもしれませんが、理系大学院生ならではの問題点も抱えています。今回は、そんな理系大学院生の就活についてお伝えします。
理系大学院生の進学の道は3通り
理系大学院生の進学の道は大きく分けて「学校推薦」と「自由応募」「博士進学」の3つがありますが、社会に出るという意味では、最初の「学校推薦」と「自由応募」が該当します。
以下、近年その道を選択する理系大学院生が増えてきた「自由応募」についてお伝えします。実際に理系大学院生が学科推薦以外の就活をして幸せなのか、そして就活をうまく進めていくために何を意識すべきか、ご紹介します。
一般的な理系大学院生の強み
理系大学院生は、学部卒業後2年間(博士なら計5年程度)の研究の道を選んだ学生です。理系大学院生が就活でアピールすべきポイントは以下の3つです。
(1)特定分野に対する専門性
(2)論理的思考力と数値処理能力
(3)高いストレス耐性
(1)特定分野に対する専門性:投資銀行やコンサルでも役立つ!
理系大学院生の持っている高い専門性、それを活かすためにはメーカーが最適と考えてしまいがちですが、専門性を活かせる場はメーカー以外にも多岐にわたります。例えば、投資銀行やコンサル。選考の段階からやりたいことや専門性が明確な理系大学院生は、その分自分の強みに関連する部署に配属される可能性が高くなります。そうなれば専門分野の顧客と対等に議論できる人材として、大きな価値を発揮できるでしょう。
選考でどの業界に興味あるかを聞かれた際に、自分の専門分野の知識を活かした返答ができること自体も理系大学院生ならではの強みです。実際に、「今落ち込みつつある日本の電機メーカーを金融または経営面から支えたい。その実現はメーカーでは何十年もかかるが、金融やコンサルなら急速に成長できる」という志望動機で、投資銀行やコンサルの内定を勝ち取った理系大学院生もいます。
このように、理系大学院生の専門性は入社後も選考時も幅広く活用できます。
学科推薦の限られた候補以外にあなたに向く企業があるかもしれません。視野を拡げて、自分の強みが最も活かせる(活かしたい)企業を納得いくまで見極めることをオススメします。
(2)論理的思考力と数値処理能力:「協調の視点」とあわせてアピールする
理系大学院生が日々の研究を通して磨いているスキルのうち、就活で活かされる2つのスキルがあります。それは、論文を読み、仮説を立て、実験を行い、仮説を検証するサイクルを何度も繰り返すことを通して身につく「論理的思考力」と、そこから得た膨大なデータを扱うことを通して身につく数字の見方や扱い方、つまり「数値処理能力」です。社会人の必須能力ともいえるこの2つを、研究でのエピソードとあわせて伝えれば納得感のあるアピールになるでしょう。
しかし、この2つの能力は強みになる反面、扱い方に注意が必要です。「就活の場では、グループのメンバーと協力して議論を進めていく事が求められる」という視点が欠けてしまいがちな理系大学院生が多いのです。
就活においては、研究と違って能力の高さだけでなくその見せ方も大切です。ビジネス独特の協調的な物事の進め方に慣れるには現地訓練が一番です。仲間内の研究所を抜け出し、インターンに参加するなど早期から一般の就活生がいる場所で過ごす時間を設けることをオススメします。
(3)高いストレス耐性:外資系金融・外資コンサルへの相性抜群!
理系大学院生の最たる強みは、実はストレス耐性です。研究は順風満帆には進まないということに加え、学会発表や論文提出締め切り付近で何度も徹夜する……という苦しい状況を乗り越えた経験を持つのが理系大学院生。さらに、厳しい教授からの激しいプレッシャーにさらされることも珍しくありません。しかし、それらの経験は裏を返せば、ストレス耐性のアピールにつながるのです。
特に多忙といわれる外資系金融や外資コンサルにおいて、この高い社畜耐性は好相性です。実際に、外資系にありがちな「忙しい時には徹夜になることもあるけど大丈夫?」という質問に対して、理系大学院生の研究話は面接官に納得感を与えるでしょう。うまくいかない研究の日々も、理系大学院生ならではの強みに昇華できるのです。そのためにも、とにかく目の前の研究を真面目にやる。これこそが、理系大学院生の就活には欠かせません。
理系大学院生が就活で対面する壁
ここまで見てきて、「就活において理系大学院生はかなり有利ではないか?」と思う方もいるのではないでしょうか。確かにそれだけの強みが理系大学院生にはあります。
しかし、その強みに匹敵するほどの「壁」もまた理系大学院生は持っているのです。
(1)「何故、研究者を目指さないのか」:前向きで意欲的な回答を用意する
一般に就活生が必ず出会う質問は「志望動機」ですが、理系大学院生にはもう一つ必ず聞かれる質問があります。それが「なぜ、研究者を目指さないのか」。
理系大学院生はつまり「学部を卒業してもなお2年間研究する道を選んだ学生」です。その2年間を経た上であえて研究職以外を志望する際には、必ず「何故、研究者を目指さないのか」という問いが突きつけられます。
本音の回答は人によってさまざまでしょう。そして「研究に飽きたから」「周りの友達が院に進学したからなんとなく院に進んだだけで、もともと深い意味は無い」という学生も多いのではないでしょうか。
しかし、この問いに対して、それらの本音を言うのはNGです。面接官は「たかが2年の研究でも飽きてしまう学生」「主体性が無く、流されやすい学生」と受け取ってしまうからです。そんな「しょうもない学生」と思わせないために、前向きな答えを用意しましょう。「研究も本当に楽しいが、××な理由から、このキャリアの方が向いていると感じている」のように、研究を肯定しつつ前向きで意欲的な志望理由が好ましいです。
例えば、あるコンサル内定者は「今までの研究が楽しかった分、将来もその研究と関連するメーカーの成長に寄与したい。そのときには、一人の研究者として底上げを図るのではなく、コンサルタントとして経営という全体を鳥瞰する立場からアプローチしたい」と志望動機を述べたようです。
(2)「研究内容を教えてください」:内容ではなく「伝え方」を見られている
理系大学院生が回答を失敗しやすい質問の1つが「研究内容を教えてください」です。この質問をされると、理系大学院生は自分の研究の凄さをアピールするチャンスと考えます。そしてそのときについ、専門用語をそのままに語ってしまうのです。
しかし、ほとんどの面接官は全く専門知識を持っていません。難しい専門用語を用いて研究の凄さを語ることはマイナスになってしまいます。
この問いでは見られているのは「誰が聞いても分かるように自分の研究内容を説明できるか」なのです。研究内容の凄さアピールを求められているのではないことを念頭に置き、以下の3つのポイントに気をつけましょう。
・カタカナ系の専門用語を極力使わない
・研究の目的・最終的なゴールを分かりやすく伝える
・何が困難で、どう乗り越えたのかについて、個人の工夫を伝える
研究知識を持たない人が分かるレベルまで、明確で簡潔な伝え方を練習しましょう。
以下に、理系大学院生がやりがちな独りよがりな失敗例と、内容はそのままに見せ方だけを変えた例を掲載します。
質問 研究内容と研究を通して頑張ったことをあわせて教えてください
(失敗例)
私の研究テーマはマイクロスケールレベルのデバイスの開発である。今までに無い新規デバイスの開発が目標であったため、日々教授との議論を重ねた。さらにデバイス開発では、実物モデルの作製が何度も必要であるため、データへの深い理解だけでなく、結果を得るまで取り組むタフさが要求された。私は持ち前の思考力と体力の粘り強さを発揮することで、新規デバイスの開発に至った。
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(改善例)
私の研究テーマは太陽光用超小型機器の開発であり、従来のものより安価かつ小型化することが目標である。研究過程のフローは煩雑かつ失敗も多く伴うなか、(1)多忙な教授からアドバイスをもらうためにコミュニケーションを工夫するなど常に効率的な方法を追求することと(2)粘り強く取り組むこと、この2つを持って研究に取り組んだ。これらが功を奏し、新規デバイスの開発に成功した。
(3)「え、もう締め切ってるの?」:研究室を飛び出せ!
最後に、一番深刻ともいえる「壁」についてお伝えします。それは「情報弱者になりやすい」ということです。
冒頭で「推薦以外のキャリアを選ぶ理系大学院生が増えてきている」と述べましたが、そのような学生がマイノリティーであることは変わりません。実際に筆者の研究室でも、私以外の全員が推薦で進路を決めました。
このことから、基本的に学科全員が就活を行う文系学部生に対し、理系大学院生は情報交換の機会に乏しい傾向があります。
「就活は情報戦」といわれるように、わずかな情報1つがキャリアの選択や選考の結果に響く場合があります。筆者も「え、もう締め切ってるの?」という経験が何度もありました。
この情報量という点で大きく遅れをとる理系大学院生は、研究室以外できちんと情報源を持っておくことが大切です。就職支援サイトに登録する、都合が合えばインターンに応募するなど行動を起こしましょう。
特にインターンは、情報への感度を高くする必要性を実感できる良い機会ですし、情報強者と呼ばれる学生と繋がることもできます。理系大学院生こそ、積極的に研究室を飛び出して、就活の場へ足を踏み入れてみてほしいと思います。
おわりに
今回は理系大学院生の就活の実情をお伝えしました。
筆者も理系大学院生ですが、早期のインターンから就活を始めたことで、就活でしか見つからない、さまざまな面白い企業や学生と出会えました。
新卒という機会は、学部生も大学院生も変わりません。身につけていることが多い理系大学院生だからこそ、幅広くかつ積極的に就活を行い(研究が疎かにならない程度に)、後悔の残らないキャリアを選んでください。