今回は多くの学生が企業選びのときに重要視する「裁量」「仕事の幅広さ」「人」の3つの軸について、どう考えを深め、それが実際の選考でどう生きるのか、想定質問を踏まえてお伝えします。
人気業界である商社やメーカーを志望している皆さん、一歩踏み込んだ志望動機で差別化するために必見です。
「若くから裁量を持つ」は自分にとって何を意味するか分かっているか?
リクルートやベンチャー志望者がこぞって使う「若手の裁量」という軸。しかし、「裁量」という言葉が持つ意味を明確に捉えている人は意外と少ないです。成長意欲の高い人ほど「若手からの裁量」を求めがちですが、「裁量=意思決定権」とは限りません。以下の3点の切り口を持って「裁量」について考えを深めましょう。
・将来何をしたいから、若手のうちから裁量が欲しいのか
・求める裁量は会社が与えてくれる裁量とマッチしているか
・「裁量を持つ=やりがい」という短絡的な考えで終わっていないか
予測質問、深掘りのポイント
若手からの裁量を軸とした志望動機は、以下のような質問を受けたときに役立ちます。
・「なぜ若手から責任のある仕事をしたいのか?」・「過去のつらい経験はどのようなものがありますか?」
「裁量」のwhyは「キャリア設計」で答える
「なぜ若手から責任のある仕事をしたいのか?」という質問は、「将来何をしたいのか?」というキャリア設計が明確であれば答えられます。
「将来やりたいこと」には目標アプローチと選択肢アプローチが存在します。「目標アプローチ」はゴールが明確で、そのために裁量が必要なタイプ。「自分がやりたい◯◯という事業をこの会社で成し遂げるため、自分が仕事においてできることを増やしていきたい」のようにアピールできるでしょう。一方、「選択肢アプローチ」の場合は、ゴールはこれから決める段階で、ゴールが決まったときのために、自由な選択ができるよう能力を上げたいタイプ。「若手から裁量を持って働くことでキャリアの選択肢を広げ、御社のさまざまな事業で必要とされる人材になりたい」のようにアピールできるでしょう。企業のメリットになる人材であると示せているかが大切です。
過去のつらい経験から「信用度」を測っている
スキルの未熟な若手に裁量を与えることは会社にとってリスクでもあります。自分のやりがいばかりを打ち出し、自己満足に終始する志望動機にならないよう注意が必要です。「過去のつらい経験はどのようなものがありますか?」という質問は、「若手のうちから裁量を持たせて、きちんと仕事を成し遂げられる人か?」という面接官の意図を反映しています。人並み以上にタフな人材かを確認し、信用できるかどうかを測っています。口では責任のある仕事をしたいと言っていても精神的なひ弱さが感じられるようでは、説得力に欠けてしまいます。
面接官を納得させるためには、自分の過去の体験を整理し、「何が、どれくらいつらく、状況に対してどれくらい頑張ってきたのか」を客観的に伝えられるようにしましょう。
キャリアの中で「さまざまな経験を積む」ことはメリットばかりではない
「仕事の幅の広さ」は業種を問わず、総合職採用の会社でよく用いられる志望動機の一つですが、そこには落とし穴もあります。「さまざまな経験を積むこと」をあなたの目的にひも付けて考えましょう。その目的には大きく分けて以下2つの目的が考えられます。
・多角的な視点を培い、経営に生かしたい
・自分が本当にやりたいこと/向いていることを明らかにしたい
ジョブローテーションによって「その」会社の経営人材に育つ
ジョブローテーションはさまざまな経験を積めることの代表例ですが、いいこと尽くしなわけではありません。
商社志望者の多くは「経営に生かすために多角的な視点が欲しい」という目的を持っています。事実、「その」会社の経営人材に成長することは可能でしょう。企業側もこの点をウリにしており、会社が求める人材に育つように人事異動させるからです。
しかし、転職や起業を視野に入れている人にとっては、その会社固有の商習慣が染みついてしまうため、汎用性の高いマネジメント力は身につきにくく、「こんなはずじゃなかった」と思う結果になるかもしれません。自分の行いたい「経営」とは何なのか、あらためて考えましょう。
そのジョブローテーションは、目的を達成できるか?
「自分のやりたいこと・向いていることを明らかにしたい」場合も、そのあとに、自分にあった業務にずっと取り組みたいという思いが強いなら、少し注意が必要です。一口にジョブローテーションといってもその中身は実にさまざまで、自分がやりたいことが見つかったとしても、その仕事をずっとさせてもらえない場合があります。ディベロッパーや海運は10年ほどのジョブローテーションを経て自らの専門を決める「ゴールがあるジョブローテーション」ですが、商社の場合はジョブローテーションしているうちにキャリアが終わる「ゴールのないジョブローテーション」の場合が多いです。
志望企業のジョブローテーションがどちらなのかを知るために、最後のOB・OG訪問をオススメします。その際の目的は、OB・OG訪問初期の「その会社の本質的な志望理由を探す」ではなく、「理想の環境と実際の環境にギャップがないかを探る」ためです。志望動機を隙(すき)なく固めるために活用しましょう。
予測質問と深掘りのポイント
仕事の幅広さを軸とした志望動機は、以下のような質問を受けたときに役立ちます。
・「なぜいろんな仕事を経験したいと考えるのか?」・「さまざまな仕事を経験したあと、どういうキャリアを目指しているのか?」
「仕事の幅の広さ」のwhyは過去の経験を絡めて答える
「なぜいろんな仕事を経験したいと考えるのか?」と聞かれたら、自分の最終目的をジョブローテーションに絡めて回答しましょう。経営視点を身に着けることが目的の場合、「過去に務めたこういう経験から、組織を回すには幅広い視野が必要であることを学んだ。御社でのさまざまな業務経験を通じて多角的な視点を身に着けたい」のように、自身の過去の経験と絡めると一層説得力が増すでしょう。
「さまざまな仕事を経験したあと、どういうキャリアを目指しているのか?」
「どういうキャリアを目指しているのか」を問われたときには、自分の求めるキャリア像が明確になっているかが重要です。その上で、その会社で目的を達成できることを簡潔に説明できるように準備しておきましょう。
将来について考えがまとめにくい場合は、どのようなキャリアプランを歩んだ社員がいるかに着目するのも一つの手段です。説明会やOB訪問などで出会った、実際に活躍している方を例に挙げ、「◯◯という理由で◯◯さんのようなキャリアを歩むために、さまざまな職種を経験したいと考えます」と回答できるでしょう。
「人が好き」は説得力で差別化する
「人が好き」という志望動機は、業界・職種を問わずよく使われますが、それだけに面接官の印象に残りにくいものです。「どれくらい説得力を持って語れるか」で差別化することが重要です。
以下の2つの回答をご覧ください。
「OB訪問を1人行い、その人の人柄が魅力的だった」「10人のOB訪問を行い、共通して◯◯という点で魅力的だった」
どちらが面接官に説得力を持つかは明らかで、当然後者でしょう。
会社に勤めるある人の魅力が、もともとの個性なのか、会社の方に共通のものなのかを見分けることは困難です。会社の方に共通の魅力を語るには、複数人と出会い共通して見られた特徴を挙げることで説得力が上がります。さらに、その特徴がどうして生まれたのか、会社で働いた結果身についた魅力なのか、選考の結果選ばれた魅力なのかまで考えて、人の魅力と会社の相関性を示すことが重要です。
さらに詳しい「人を軸とした志望動機」について知りたい方はこちらも参照してください。
・面接とは「自分がその会社で活躍できること」を面接官にイメージさせるプロセス。人を軸にした志望動機の欠点とは?【キャリア相談】予測質問と深掘りのポイント
人を軸とした志望動機は、以下のような質問を受けたときに役立ちます。
・「OB訪問や説明会で印象に残っている話はあるか? また、その人の名前や、所属する部署を教えてください」・「なぜ人という軸で弊社の社員がいいと思ったのか?」
この学生が来てくれるかどうか、を「好きな人」から見極めようとしている
「人」について聞かれるのは選考の最終段階です。「本当にこの学生は、弊社に来てくれるのか?」と能力ではなく、熱意を測るために質問されています。具体的に聞かれる場合もあるので、面接を実際に受ける前にOB訪問や説明会で話を聞いた社員さんの名前や所属する部署について整理し、1人につき1、2個の印象に残った話を整理しておきましょう。選考の最後まで準備を怠らないことが大切です。
人柄や人生観が合うかどうかの最終チェック
「なぜ人という軸で弊社の社員がいいと思ったのか?」という質問では、熱意を測ると同時に、あなたの人柄や人生観を見ようとしています。そして、「本当に弊社で活躍できるか?」を判断します。例えば商社であれば、「グローバルに働く姿」という表層的なものではなく、「多国籍チームを率いるために地道な積み重ねをしている姿勢に共感した」と答えられると説得力が増します。どういう理由でいいと思うのか、自分の人生観と共通している部分はどこか、など相手の意図を押さえた上で、回答を練っておきましょう。
おわりに
いかがでしたか。
「若手でも裁量を持ちたい」「会社の中でさまざまな経験を積みたい」「人が好き」という就職活動でよく用いられる3つの志望動機について解説しました。どの軸においても「その先に何を目指しているか」を説明できるかどうかがポイントです。残りわずかで終わる就職活動を後悔のない形で終えられるように頑張っていきましょう。
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※こちらは2016年5月に公開された記事の再掲です。
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