東武鉄道は1都4県にまたがる関東私鉄最長の463.3キロの路線網を持ち、通勤客や観光客など幅広い利用者を日々支えています。
都市部・住宅街・観光地・自然豊かな地域において、鉄道事業のほかにも、商業開発や住宅開発、大規模なエリア開発など、さまざまな事業も行っています。
グループ68社(東武鉄道含む)を巻き込んだまちづくりまで行う東武鉄道について、同社の経営企画本部に在籍する高山滉平さんと人事部の高野友希さんに、お話を聞きました。
地域・行政・企業を巻き込むまちづくりの醍醐味
──初めに、「鉄道×開発」という二刀流だからこそ可能な地域づくりについて、聞かせてください。
高山:多くの街が駅を中心に市街地が広がっているように、私たちは鉄道というアセットを組み入れた大規模開発を行えます。
例えば、東京の足立区にある当社の竹ノ塚駅では、鉄道の高架化をきっかけに地域や行政を巻き込んで周辺のまちづくりを進めてきました。駅舎のリニューアルとともに、イメージを一新するまちづくりも可能です。
現在も池袋西口にある東武百貨店を含め、池袋の再開発計画が進行中です。池袋ならではのカルチャーを取り入れながら、地元の方々や行政とともに具体的なまちづくりの検討を進めている最中なので、ぜひ完成を期待していただきたいと思っています。
463.3キロという関東私鉄最長の沿線には、都心から地方、浅草や日光、川越といった観光地まで多種多様な街があり、さまざまな開発やまちづくりができる点は、当社ならではの特徴といえます。
また、少子高齢化を伴う人口減少や働き手の不足といった社会課題についても、鉄道やバスの自動運転化による交通システムなどによって解決できないかと日々検討しています。
──高山さんのキャリアについて詳しく聞かせてください。
高山:私は2016年入社の9年目で、初めて配属された生活サービス創造本部では、リーシングという新しい商業施設や既存施設の空区画に入居する店舗や企業の検討や調整などを行う業務を担当していました。
その後は物件の売買や開発の企画に従事した後、東京都に出向して都市計画やまちづくりの上位計画の策定を行っていました。事業会社と行政という両方を経験したことで、知識や人脈は大きく広がりましたね。
現在所属している経営企画本部では3つの業務があります。まず1つ目が会社の経営計画の策定で、2つ目が新規事業です。3つ目が私のメイン業務でもある、グループ全体で中長期的にみて事業化すべき案件の事業化に向けた社内外の調整になります。
──これまで仕事のやりがい・苦労を実感した瞬間はありますか。
高山:開発やまちづくりは調整の連続で、まず社内調整から始まり、次に行政や地域、あるいはテナントとの調整が続きます。もちろん調整がうまく行かず、時には方向転換が必要となる苦労もあります。
ただ、多くの人々を巻き込み、悩み考えた末に作り上げたときは、何ものにも代えがたい感動がありますね。その感動を関わった人々みんなと分かち合えるところに、この仕事における醍醐味(だいごみ)があると思います。
──印象に残っている仕事はありますか。
高山:生活サービス創造本部在籍時の、埼玉県にある東武動物公園駅の駅前の商業施設を開発したことですね。
当時は地域に溶け込む商業施設の開発を掲げ、商業施設の建設前からテナントを決め、入居する無印良品と当社グループの東武ストア、そして行政とともにチームを組みながら作り上げた施設になります。
通常の駅前開発は敷地を余すところなく利用し、高い建物を作るものです。ただ、東武動物公園駅がある宮代町の魅力は駅を出ると非常に空が広く感じることだと思い、私たちとしても大きく開けたその空の広さは失わせたくないという思いがありました。
その結果、空間を大らかに使えるようにと、商業施設は平屋建てで空が広く見えるような設計にしました。さらに敷地全体に建物を作るのではなく、「みんなの広場」という地域に開かれた場を設けて、入居している無印良品のソファを設置してもらったり、キッチンカーを出店したりとにぎわいを創出していきました。
10歳上の上司にもフランクな会話。誰もが親戚の空気感
──幅広い事業同様にキャリアパスも幅広いのでしょうか。さまざまな仕事を経験した、ジョブローテーションの魅力についても聞かせてください。
高山:さまざまなキャリアパスがあります。キャリアの希望を会社に伝えることもでき、当人の希望や適性が考慮された上で配属が決まります。
ジョブローテーションの頻度は決まっていませんが、私自身は数年おきに異動しています。当社では出向も多く、例えば、私もまちづくりを希望していたこともあり、会社側が私の適性や今後のキャリアパスを見据えた上で、東京都への出向を決めたのではないかと考えています。
──高野さんは2023年入社で2年目を迎えています。入社理由を聞かせてください。
高野:私は就職活動時に重要視していた2つの軸から入社を決めました。
まず1つ目の軸は、地域貢献性の高い事業かどうかです。転勤の多い家庭でさまざまな地域に移り住んだ経験を通し、地域の方々に満足いただけている事業が最終的に残るという思いが芽生えたことから、地域貢献性の高い事業を行う企業を志望していました。
2つ目の軸はジョブローテーションで、多くの事業に携われる環境で働きたいと考えていました。就職活動時に、今後の人生について考えた結果、40年以上続く長い社会人人生で、1つのことを究めるよりもさまざまな経験を積むことで自身を成長させていくキャリアに魅力を感じたことも理由です。
──続いて、鉄道会社は「縦割り・堅い」というイメージがありますが、実際のカルチャーについて教えてください。
高山:社員は優しく温かいですね。誰もが親戚のような雰囲気があり、部署が違っても社内で顔を合わせれば「調子はどう?」と気さくに話しかけてもらえる雰囲気はあります。
高野:私も高山さんとは部署は異なりますがフロアは同じで、すれ違ったときに声をかけてもらうなど、気にかけてもらえています。全く違う部署の先輩だからこそ話せることも多いと思います。
プライベートでも同期や先輩から誘われることもあり、上司が他部署に紹介して関わる機会を作ってくれるような温かい雰囲気があります。
高山:開発と鉄道で部署は異なっていても、鉄道の駅の近くで開発するプロジェクトでは部署間での調整が必要になるなど、部署をまたいで行う業務も多く、他部署をはじめ多くの人と関わり合う機会がありますね。
高野:私の所属する人事部の採用担当チームはかなり少数で、2年目の私に最も年次が近い社員ですら10歳上です。とはいえ、フランクに話せますし、業務も協力し合いながら進めています。信頼して仕事を任せてもらえている環境だと感じています。
高山:私の経営企画本部は文系と理系の人材がそろい、それぞれの経験を持ち寄って事業を進めています。キャリアも年次も人それぞれで、多様性に富んで接していても面白いですね。
転換期を迎える鉄道会社で求められる人材像
──鉄道業界の将来性は、どのように考えていますか。
高山:個人的な意見になりますが、鉄道業界は過渡期を迎えていると考えています。
現在は人口減少に加え、コロナ禍を経て移動がマストではなくなっている状況で、鉄道に人々を乗せて運ぶという鉄道事業そのものが伸びづらい環境下にあるといえます。
私たちにとって難しい状況であるからこそ、これまで培ってきた技術やノウハウを駆使しながら鉄道以外の分野にも進出する必要があります。当社としても生体認証を活用したプラットフォームの立ち上げなど、デジタル技術を活用した既存事業にとらわれない事業の創出に取り組んでいます。
一方、人の移動は減少しても、観光事業に活路を見いだせるのではないかとも考えています。観光は現地に足を運んで実際に体験するところに喜びがあるはずです。観光需要をうまく取り込んでいくこと、例えば、当社でも新型特急 「スペーシア X」の運行に代表される、移動そのものに付加価値をつけるなどの工夫がより一層求められると感じています。
──最後に、これから仕事選びをする学生に向けたメッセージと、東武鉄道にマッチする人物像について聞かせてください。
高野:就職活動は苦しい時間も多くありますが、終わってみると人生の中ではほんの少しの期間だったと思えるときが来ると思います。そのときが訪れることを信じ、就職活動を悔いなく頑張ってもらいたいです。業界や企業は数限りなくありますので、多くの世界を見て自分に何が向いているかを考えてみてほしいです。
私自身、就活に関してはもっと周りに頼れば良かったと反省しています。当時は就活について、恥ずかしさから家族や先輩に相談できませんでしたが、実は話してみると誰もが温かく相談に乗ってくれる方ばかりです。家族や友達はもちろん、インターンで知り合った社員に相談してもいいかもしれません。多くの人たちと協力し合いながら就職活動を進めてもらいたいですね。
高山:私は、就職活動はあまり気負いすぎなくていいと伝えたいです。
実際働いてみないと分からないこともたくさんあると思います。そのため、就活ではさまざまなことをぜひ考えていただきたいですが、その一方で、直感に従って突き進むこともあっていいはずです。
高野:東武鉄道には、さまざまなことに興味を持って挑戦する人材が向いていると思います。ジョブローテーションを繰り返す中では、想定していなかった部署に配属されることももちろんありますが、予期せぬ状況でも自分なりの興味や楽しみを見つけられて、自分から意見を発信できる方にぜひ入社していただきたいです。
高山:確かに、多くのチャレンジや新しいことに取り組む意欲のある人材に向いている環境といえます。企業としての転換期を迎える現在、既存事業にとらわれない発想を持つ人材とぜひ一緒に働いてみたいですね。
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東武鉄道
【ライター:小谷紘友/編集:山田雄一朗】