3月に入り、2021年卒学生の就職活動が解禁されました。しかし、その様子は新型コロナウイルスの影響で、例年とは大きく異なるものとなっています。
セミナーや説明会などが相次いで中止になる中、一部の企業では、新卒採用における面接を「Web面接」に切り替えると発表しました。
「対面の面接とWebでの面接は、皆さんが思っている以上に異なります。対面と同じような意識や準備で臨んだ結果、失敗してしまう人も少なくありません」
こう話すのは、ソーシャルメディアサービス大手、ガイアックスの採用マネジャーである流さん。Web面接や面談などを、これまで1,000回以上行っており、SNS上でも「Web面接で気を付けるべきポイント」を呼びかけています。
今回はそんな流さんに、Web面接初心者が特につまずきやすいポイントやその対策、そして、人事が考えるWeb面接の「裏ワザ」を教えてもらいました。
流 拓巳(ながれ たくみ):株式会社ガイアックス 人事支援部マネジャー/経営会議事務局 所属。入社後から新卒採用を担当し、3年目には同社初となる人事専門部署の立ち上げを任される。
Web面接で学生がやりがちな3大トラブル
もともとガイアックスでは、遠方で本社がある東京に来られない採用候補者に向けてWeb面接を行っていました。3年前には既にWeb面接が一般的になっており、面接をWebで行うか対面にするか、候補者に選んでもらっているそうです。
流さんは、これまでの経験から「Web面接でのトラブルや失敗は大きく3つに分けられる」と話します。
「圧倒的に多いのは、音が聞こえないトラブルですね。次に多いのが面接を開始できないケース。また、伝えたい感情が自身の意図通り相手に届いていないため、損をしている学生も少なくありません」(流さん)。
【Web面接で起こりがちな「3大」トラブル】
その1:音が聞こえない(届いていない)
その2:機器トラブルや準備不足で、時間通りに開始できない
その3:相手に感情が伝わっておらず、適切な意思表示ができていない
すぐに気が付けるトラブルから、指摘されないと気付けないようなポイントまで、さまざまな落とし穴があるようです。それぞれ、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。
Web面接で「音が聞こえない」はよく起こる。遠慮せずに聞き返すことが一番大切
まずは「音が聞こえない」問題について。一口に音が聞こえないと言っても、その原因はさまざまなものがあります。流さんによると、以下の3つがありがちなパターンのようです。
●BGMや周囲の話し声で、声が聞こえない
●ネットや機器の接続状況が悪い
●話す人の声が小さい
特に気を付けたいのが、1つ目のBGMや周囲の話し声に邪魔されてしまうケース。外出先でWeb面接を行おうとして、カフェなどを選ぶ人もいると思いますが、自分の声がBGMでかき消されてしまう可能性があるので、注意すべきでしょう。
Web面接(や会議)における雑音は、自分が思っている以上に相手がうるさく感じることも多いです。流さんは「雑音が大きい場合、お互い、自分が話すとき以外はミュート(消音)にしてもらうようにすることで対処する」と話してくれましたが、なるべく静かな場所を探した方が、面接はスムーズに進みそうです。
残り2つのパターンも含め、オンライン面接では、何らかの事情で声が聞こえないケースはよく起こります。デバイスの設定で音声の入力は最大にしておく、いつもより少し大きな声で話す、など努力できる部分は意識した上で、それでも「音が聞こえにくかったり、やりにくいと感じたりする点があれば、積極的に指摘した方がいい」と流さんは話します。
「Web会議でのトラブルはどちらが悪いか分からないことがほとんど。音が聞こえないのに、空気を読んで、憶測や勘で的外れな回答を述べる方が危険です。聞こえない場合は遠慮せず、素直に言いましょう。また、相手の反応が鈍ければ『オンラインで伝わりにくいかもしれませんが』などと前置きして、話が理解できているか、確かめてみるのもOKです」(流さん)
●聞こえなかった場合は?
例:「申し訳ございません。今音声が乱れており、◯◯の後から聞こえていませんでした。もう一度お願いできますか?」
●相手の反応が鈍かった場合は?
例:「オンラインで伝わりにくいかもしれませんが、〜〜」
企業によっては、オンライン面接に慣れていない場合もあります。流さんは「指摘をしてくれるのはありがたい」とした上で、「こうした指摘で嫌悪感を示したり、それで不合格にしたりする企業はないと思います。仮にあるとしても、そんな企業に行きたいか考えてみてください」と強調しました。
スマートフォンよりもPCがオススメ。専用アプリが必要なのか必ず確認を
就活生の皆さんは、「志望動機の確認」など、面接の前にさまざまな準備を行うと思います。直前になればなるほど話す内容を確認したくなると思いますが、Web面接の場合、「面接を開始できない」というトラブルを避けるための準備をする必要があります。
流さんによると、面接が時間通りに開始できないトラブルとしてよくあるのが、以下の3つ。こうした事態や通信トラブルを避けるため、面接当日は時間に余裕を持って、アプリの動作や接続を確かめた方がいいでしょう。
●ビデオ通話用の専用アプリをダウンロードしていない
●スマートフォンの容量不足でアプリがダウンロードできない
●(家で行う場合)油断して寝坊してしまう
Web面接では、基本的にスマートフォンよりもPCを使うことを流さんは推奨しています。基本スペックが高く、遅延などが起こりにくいほか、アプリをダウンロードせずに済むことが多い点も重要だと言います。
「ガイアックスでは、Web面接にGoogle ハングアウトを利用しています。PCの場合はWebブラウザー上で利用できますが、スマートフォンの場合はアプリのダウンロードが必要になります。これはZoomなどのアプリでも同じことが言えます」(流さん)
とはいえ、PCのWebブラウザーでも油断はできません。急に接続しようとして、動作が重くなってしまうケースもあるためです。流さんは「15分前には一度ページを開き、必ず動作チェックを」と注意を促しました。
リアクションは通常の1.5倍、Webならではの「タイムラグ」を意識した会話を
Web面接のコミュニケーションは、対面での面接のそれとは雰囲気がやや異なるというのも重要なポイントです。同じ意識で臨む人が多いことに、流さんは警鐘を鳴らします。
「オンラインでは身ぶりや表情、言葉の強弱や抑揚といった非言語情報が対面より伝わりにくく、話を聞いているのか、納得しているのかといった感情が分かりにくくなります。オーバーリアクションとまでいかずとも、普段よりも1.5倍くらいの反応で感情を伝えることを意識するといいでしょう」(流さん)
人事に理解できたかどうかを聞かれて、「はい!」とだけ答える学生も多いはず。何気ないこの返事にも、流さんは注意を促します。「オンラインでは、人事に気持ちを察してもらえる環境を作ることが重要。反応がないと人は不安になってしまう。なるべく意思を言葉で伝えてほしい。目線をカメラに向けるのも重要です」
また、Webならではの「タイムラグ」を意識したコミュニケーションも大切だと流さんは忠告します。通信環境によっては、自分が話してから相手が聞こえるまで、5秒以上かかってしまうこともあります。それによって、会話が聞き取れないだけでなく、会話を止めにくいケースも生じるためです。
「普段から自分の意見を一気に伝える人は、気をつけた方がいいかもしれません。会話を止められず、必要な情報を聞けずに終わってしまうこともあります。いつも以上に簡潔に答えることを意識した方がいいでしょう」(流さん)
こうしたコミュニケーション面で不安がある場合、友達や就活仲間とビデオ通話をしてみて、雰囲気を確かめるのもオススメです。相手に自分の声がどう聞こえているか、聞いてみるのもいいでしょう。流さんも「自分が考えているよりも低く聞こえるので、Web面接では声を張るようにしている」そうです。
ワイヤレスイヤフォンは危険? 人事がオススメするWeb面接の「スタンダード」
以上の注意点を踏まえ、「服装、場所、撮影位置、姿勢、機材」の5つについて、流さんがオススメするWeb面接のスタイルを教えてもらいました。
【Web面接の一般的なスタイル】
●服装:何でもOK。不安なら面接に行くときと同じ格好
●場所:自宅を推奨。就活カフェや大学内の静かな場所を利用するのもOK
●撮影位置:(自宅内なら)カーテンやドアの前など、部屋の様子が映りにくい場所
●姿勢:基本的に自分が楽な姿勢でOK。ただし、慣れない正座や長時間の体育座り(三角座り)は集中できなくなるのでNG
●機材:PCと有線のマイク付きイヤフォンを推奨。充電しながらだとなお良い
場所に自宅を推奨する理由として、「将来の夢など、個人的なことを語る際、周りに他人がいると恥ずかしく思う人も多いから」と流さんは話します。ただし、国道や線路沿いに住んでいるなど、生活音の状況によっては、就活カフェや大学なども検討すると良いでしょう。
撮影位置について、特に人事が気にするということはないものの、「もし本棚などが映って自分が気になる場合は、タオルで隠しても差し支えはない」と教えてくれました。
機材については「イヤフォンは必須」と流さん。スピーカーを使うと、マイクが相手からの音を拾ってエコー(音が二重三重に聞こえる)の原因になりやすいからです。
さらに、そのイヤフォンも「ワイヤレスではなく有線タイプがオススメ」と言います。途中で充電が切れてしまうリスクがあるからです。充電についてはPCやスマートフォンも同じ。あっという間にバッテリーが減ってしまうため、充電しながら面接できる環境が望ましいでしょう。
自分に有利な環境を作れるWeb面接は「チャンス」と捉えよう
慣れない環境ということで、Web面接は緊張するかもしれませんが、「企業側のペースで進みやすい就活において、端末や服装など、環境を自分で選べるチャンス」と流さんは話します。
ある意味、相手が見えない場所では何をやっても問題ないのです。相手との円滑な会話を妨げないよう注意しながら、自己分析ノートやリラックスグッズをお守り代わりに横へ置く、好みの空調や喉を潤すために飲み物を用意し、コンディションを整えるといったこともできます。
自分が安心できる、または有利な環境を作りながら、面接に臨める分、その状況を最大限活用してほしいと流さんは提案。「小さなトラブルが起きたくらいでは、選考結果に影響しないので、緊張せず、思い切りやってほしい。厳しい状況かもしれないが、ITリテラシーが高まった状態で社会人になるので、入社後に活躍できるはず」とエールを送りました。
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