※こちらは2023年8月に公開された記事の再掲です。
グローバルコンサルティングファームの大手で、リーダーシップのある人材を多く輩出してきたマッキンゼー・アンド・カンパニー。クライアントへの貢献と同等に人材育成も重視する文化が根付いており、「Make your own McKinsey」の言葉通り、自身のキャリアを自分で選択するというキャリアの形成の考え方に特徴があります。
一方で、コンサルティング業界で働き方改革が進んでいるとは聞くものの、「ハードワーク」「ワークライフバランスを保てない」といったイメージを拭えない学生も少なくないのではないでしょうか。
ワンキャリア編集部は2020年4月に新卒で入社したコンサルタントの尾方琳さんと池上遥香さんに、入社の動機や魅力、そして身をもって経験してきた人材育成やワークライフバランスの実態についてお話を伺いました。
本当に「やりたいこと」に出会えるコンサルタントという仕事
──まず、尾方さんがマッキンゼーを選んだ理由を教えてください。大学生の早い段階からコンサルティング業界を意識していたのでしょうか。
尾方:やりたいことがなかなか明確にならなくて、「誰かの困りごとを解決できたらいいな」ぐらいの気持ちで就活をしており、どちらかといえば事業会社に興味がありました。スタートアップもいくつか検討しましたが、実際に就活をしていると「もう少し広い世界を見てみたい」という気持ちが湧いてきて。そんなときに、たまたま友人に誘われて参加したイベントで出会ったのが、マッキンゼーでした。
コンサルティングファームならプロジェクトごとに業界やクライアント、トピック、一緒に働く人も違うので、興味関心に従ってキャリアを重ねつつ、自分が本当に好きなことや適性を見つけられそうだと思ったのです。実際にこの3年あまりのプロジェクト経験を通して、ライフサイエンス、製品開発、新規事業開発といった分野の仕事に魅力を感じることが分かってきました。
──子どものころから興味の幅は広かったのですか。
尾方:今振り返ってみると、考古学者、外交官、英語の先生など、その時々でいろんな職業に興味を持つ子どもでした。結局、大学は経済学部で計量経済学を学びました。例えば、経済政策が実際にどのような効果をもたらしたのかを分析するような学問です。一方で学外では、農業や地方創生に関する活動にも従事していました。そうした経験から、幅広い領域で社会課題を解決したいと思っていたこともマッキンゼー入社の動機になりました。
尾方 琳 (おがた りん):アソシエイト
一橋大学 経済学部 学士課程修了後、2020年入社。ヘルスケア、製品開発、新規事業開発などのプロジェクトに携わっている。(所属部署はインタビュー当時のものです)
──子どものころの興味、どれも英語が必須ですよね。得意だったのでしょうか。
尾方:いえいえ、マッキンゼーは選考時に英語力を問われないからよかったものの、内定をもらった際の英語力はビジネスでは使いものにならないレベルでした。
──英語のプロジェクトもあると伺いましたが、それでは英語力を上げるためにとても苦労されたのではないでしょうか。
尾方:英語を勉強するためのサポート制度が充実していますし、英語を使うプロジェクトに志願して入れてもらいました。今では英語しか話せないパートナーやマネージャーと一緒に働けるレベルになっています。海外留学の経験もなかったので、自分でも信じられません。
仕事もプライベートも充実した父の背中を見てコンサルタントに
──池上さんは大学院からマッキンゼーに入社されたそうですね。
池上:大学、大学院では経営工学を専攻し、日本企業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の研究をしていました。その中でさまざまな業界のDXに携わっている方々と議論する機会も多くあり、いつかDXに限らず、コンサルタントとして企業変革をサポートできたらいいなと思っていました。
学業以外では、海外旅行が好きでいろいろな国へ行き、卒業旅行ではアフリカとヨーロッパの10カ国を巡りました。その影響か、何となく海外に憧れがあったので、就活では「多国籍の人がいる」「グローバル企業である」という観点でコンサルティング業界を見ていました。さまざまなコンサルティングファームにエントリーした中で、コンサルタントの雰囲気やキャリアパスの考え方が一番自分に合っていると感じたのがマッキンゼーでした。
池上 遥香 (いけがみ はるか):アソシエイト
東京工業大学 工学院経営工学系 修士課程修了後、2020年入社。製造、金融、運輸、小売などの業界を中心にプロジェクトに携わっている。(所属部署はインタビュー当時のものです)
──尾方さんとは対照的ですね。コンサルティング業界に決めていたのは、どうしてですか。
池上:父がコンサルタントで、専門性は異なるものの、同じコンサルティング業界だったからです。私の父は、長めに休みを取って家族を国内外のいろいろな場所に連れて行ってくれたり、勉強を毎日教えてくれたりしていました。あとは、私もいろいろなことに興味を持つ子どもだったのですが、その疑問に答えてくれる何でも知っている人でした。自分もコンサルタントになったら、そのように自分の時間も取れ、かつ仕事柄いろいろな業界に携わるので知識の幅も広くなるのではないかと、自然とコンサルティング業界に興味を持つようになりました。
──すてきな話ですね。お父さん、就職が決まってどんな反応でしたか。
池上:自分と同じ道だ! と、とても喜んでいました。
昇進よりも経験。早い年次から海外へMBA留学、短期転籍、出向
──3年ほど前を振り返っていただきたいのですが、入社後はどのような研修やサポートを経てプロジェクトに参画していくのでしょうか。
池上:研修の最初に強調されるのが「Dual Mission」です。クライアントや社会に良い変革をもたらし続けるだけでなく、人を育てるためのサポートも同等に惜しまない、両方が大事だという理念です。このDual Missionは、ファームの全員が大事にしている考え方で、何かに迷ったとき常に立ち返るようにしています。もちろん問題解決スキルやExcelなどハードスキルの研修もありましたし、そういった研修はいつもグループワークも多く、インプットだけではなくその場でアウトプットできるように設計されていました。
尾方:研修は年次が上がっても引き続き用意されており、グローバルで交流する機会も数多くあります。同期だけを見ていても本当に多様なバックグラウンドの人が集まっていて刺激を受けますが、海外トレーニングを通じてさらに仲間が増えていきます。
つい先日も、アジア各国の同じくらいの年次の人がバンコクに集まって、1週間ほどトレーニングを受けました。昼間はグループワーク、夜はディナーに出かけて、仕事だけでなくいろんな相談ができる友人ができました。
池上:私は秋に参加予定なので楽しみです。同期の中には今、出向で外の世界を見に行っている人や、海外MBA取得のために留学している人もいますよね。
──そういう経験は、一般的にだいぶ年次が上がってからだと思っていたのですが、入社数年のうちに、自分の意思でキャリアを進み始めるのですね。
池上:自身の興味を追求していくことはファームとして推奨されていますし、「みんな違って、みんないい」という雰囲気です。
尾方:昇進よりも経験に興味がある人ばかりですよね。海外オフィスへの短期転籍制度もあって、ちょうど検討しているところです。オーストラリアへ行きたくて、現地のパートナーと話をしています。
池上:そうなのですね、私も来年どこかへ行きたいと思っていたところです。
──ファームからの指示があるわけではなくて、自分の意思で決められるものですか。
池上:MBAも短期転籍も行きたいという意志があればファームがそれをサポートしてくれる環境です。東京に限らず、海外オフィスの知らない人でも、社内システムで連絡先を検索していきなり相談しても問題ありません。特にオフィス間の壁はなく、世界のどこの拠点にいる人でも隣の部屋にいるような感覚でコミュニケーションを取っています。
いつまでも続く助け合い・教え合いの文化
──日頃のプロジェクトでも、そんなふうにフラットな関係性なのですか。
尾方:そうですね。「部長」「課長」のようなピラミッド構造の役職がなく、新入社員でもパートナーでも等しく扱われます。問題解決(プロブレム・ソルビング)のために全員の意見を尊重することが文化として根付いているのだと思います。入社して初めてのプロジェクトに入るときは、すごく緊張してミーティングへ行ったのを覚えていますが、みんな役職に関係なく一人のメンバーなのだと理解して、積極的に発言するようになっていきました。
また、初めてのプロジェクトのマネージャーに言われたことは今でも心に残っています。
「たとえ初めてのプロジェクトでも、クライアントの問題を解くためにあなたが中心になって動くんだよ。その周りにパートナー、マネージャー、エキスパートたちがいて、あなたをサポートしてくれる。世界中の人の力を借りながら、自分が運転席にいて物事を前に進めるつもりでやってみよう」
その上で、タスクごとに先輩が付きっきりで仕事を教えてくれました。最初のプロジェクトではクライアントからいただいたデータを分析しましたが、先輩が分析の設計に加え、Excelの使い方まで丁寧に教えてくれたので、期限内に有意なアウトプットを出せました。
池上:どのプロジェクトも同じですよね。先輩が手厚く教えてくれます。日々のコーチングに加え、週に1回か隔週でマネージャーからフィードバックを受ける機会があり、各自の成長をサポートする仕組みや文化が整っていると感じています。
尾方:プロジェクトの経験を重ねると次第に担当範囲は広くなっていきますが、伝統的にアプレンティスシップ(徒弟制度)が根付いているので、パートナーやマネージャーなど周囲の方からの手厚いコーチングはずっと続きますし、新しいことを始めるときにも、誰かが必ずサポートしてくれます。私が最初にマネージャーの役割を担ったときも、右も左も分からなかったので、先輩に相談したところ付きっきりで教えてくれました。
「ワークライフバランス」が取れているからこそ、仕事も突き詰められる
──いい関係性ですね。もう少し「人」について知りたくなりました。皆さんは、どのような姿勢で仕事に向き合っていますか。
尾方:まず、議論が大好きですね。それはギスギスした論破するようなことではなくて、相手の話を聞いて「それいいね、そんな考え方もあるんだね」と、意見を交えることを楽しんでいるような雰囲気です。
そして、課題に対してトコトン突き詰めていくプロフェッショナリズムの高さ。最初のプロジェクトで「世界で最高のアウトプットを出すにはどうしたらいいか、という気持ちで考えるんだよ」「頭が沸騰するくらい、考えて考えて考えて答えを出そう」と教わりました。「まあ、これでいいか」が絶対にない。
池上:絶対にないですよね。
尾方:本当にクライアントにとってベストなことを、自信を持って出そうという信念を持っていることが、私が肌身で感じるプロフェッショナリズムです。
池上:もう一つ共通していると思うのは、仕事とプライベートの両面でパッションを持っていることです。趣味を極めている人が多くて、ワインが好きなら検定まで取得しているし、ダイビングならインストラクターレベルの人も。
──仕事と同じで「突き詰める」性格の人が多いわけですね。
池上:アウトドアが好きならキャンプはもちろん、船舶免許を持っていて魚もさばけて、料理も大好きで……あり得ないくらい多趣味の人もいます。
そういった人たちの影響で、毎日自炊をするようになったり、キャンプや釣りにも最近興味を持つようになったりしました。
──そんな時間があるとは思いませんでした。
池上:私も就活の際に参加した説明会では「土日は仕事ですか?」と聞きました。そうしたら「いえ、全くしません。土日は家族か友達と出かけるので、2カ月先ぐらいまで予定が入っています」と。入社してみて一番の驚きだったのは、本当にワークライフバランスが取れることでした。
──ということは、疑っていたわけですね。お父さんもコンサルタントですしね。
池上:父は平日は忙しくしていましたが、土日はよく遊んでもらった記憶があったので可能かなと思っていました。とはいえ違うファームですし、2割ぐらい疑いの気持ちがありましたね。
土日が休みなのはもちろん、平日でも「ゴールデンタイム」を決められます。私の場合、趣味で中国語のレッスンに通っているので、月曜日の習い事以降の時間は会議をしませんと宣言しています。保育園への送り迎えの時間をブロックしている人もいます。
プロジェクトが始まるときやメンバーが加わったときは、パートナーも含めて全員が集まって、「自分は朝型です」「前もって予定を知りたい性格です」といったそれぞれの働き方について話す機会を設けます。その中で、ゴールデンタイムの話もして互いに理解し助け合うようになっています。
──そのように働けるということは、逆に働くときは集中力や効率が求められるわけですよね。そのための工夫はありますか。
尾方:プロジェクトの合間はまとまった休みを取ってリフレッシュし、次のプロジェクトで集中できるようにしています。私の場合は1カ月休んで旅行を楽しむなど、メリハリのある生活を意識していますね。
池上:長い休みを取れるから、プロジェクトの間は頑張ろうと思えます。オンオフを自分で切り替えられるのがいいところです。
自分のキャリアパスは自分で作る──Make your own McKinsey
──今までの経験を通じて、マッキンゼーで働く醍醐味(だいごみ)は何だと感じていますか。
尾方:よく社内で使われる言葉に「Make your own McKinsey」があって、自分が何をしたいのか、自分がどうありたいのかを聞かれますし、それをすごく大事にしています。だから「やりたい!」と言えば、機会が回ってくる。私も「新規事業開発をやってみたい」と、いろんな人に言っていたらプロジェクトを紹介してくれて。そんなふうに、みんなで助け合ってそれぞれがやりたいことをかなえてくれる環境です。
池上:私も自分のキャリアパスを自分で作っていけるマッキンゼーが大好きで、ここで働く醍醐味は「Make your own McKinsey」の一言に尽きます。
──お二人の話を聞いて、選考を受けてみたいと思った学生さんもいるでしょう。選考対策のアドバイスはありますか。
池上:私は「ケース面接とは」といった市販の本をひととおり読みました。あとは過去問や面接のポイントについての動画がマッキンゼーのウェブサイトに載っていますので、雰囲気に慣れておくといいと思います。
ケース面接は、出されたお題に学生が答えるような形式の面接ですが、いきなり完璧な答えを出すようなものではなくて、自分の考えを説明してから面接官とディスカッションするような形式です。一緒に議論をするのがすごく楽しかったのを覚えています。今になって振り返ると、実際のプロジェクトでの日常的な会話と似ているので、仕事をするときのイメージをつかむいい機会でもあります。
──動画も公開しているということは、できるだけリラックスしてベストを出してほしいという意図を感じますね。最後に、学生のみなさんへメッセージをお願いします。
池上:本当に楽しむつもりで選考に臨んでほしいと思っています。面接官だけではなく、説明会でいろんな社員と積極的に話してもらえると、より雰囲気が分かるのではないでしょうか。
尾方:私自身は「この人たちと一緒に働きたい!」と思ったのが決め手でした。マッキンゼーの魅力とは人の魅力だと思いますので、社員と会ってそれを感じてもらえるとうれしいです。まずは自分に合うかどうか、ぜひ説明会などに参加してみてください。
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