就活を始めてまず悩む、企業の探し方。
自分に合う業界、職種……日系企業が良いの? 外資が合いそう? 何をもって判断すればいいか分からない。調べるほどに分からない。
そんなモヤモヤを抱えている方が多くいらっしゃるのではないでしょうか。
就活を通して初めて知る、コンサルティングファームやIT企業の存在。外資においても新卒採用が加速される中、学生にとって悩ましい選択肢はどんどん広がってきます。
今回は、日系企業と外資それぞれでキャリアを積んできたデル・テクノロジーズの竹本敦子さんにお話を伺いました。
日系企業と外資にはどんな違いがあるのか? どんな人はどちらを選ぶべきなのか? 分かりやすく語っていただきました。
<目次>
●日系大手で得た、着実なスキルの習得と人とのつながり
●評価制度に直結する「年功序列」と「実力主義」
●教育を考える上で、大切にしたいこと
●思いはあるか? やりたい思い、チャレンジ欲が成長をつくる
日系大手で得た、着実なスキルの習得と人とのつながり
──竹本さんが新卒で入社したのは、日系大手のIT企業だったと伺いました。どんな就活を経て、その企業に入社したのでしょうか。
竹本:1社目も現在もIT業界で働いていますが、大学時代は文系学生でした。人間科学部で学び、人への興味が強く、幼児教育にも関心がありました。父の仕事の影響もあって、漠然と将来は英語を通じてさまざまな国のビジネスや文化の違いを学べる仕事がしたいなと思っていました。
ところが当時は就職氷河期後半。業界や職種にはこだわらず、チャンスがあるかぎりあらゆる企業にエントリー。その中で最終的に内定をもらったのが、日系大手メーカーのグループ会社であるシステムインテグレーター(SIer)でした。
竹本 敦子(たけもと あつこ):大学卒業後、日系SIerでの官公庁営業を経験。2014年に(現)デル・テクノロジーズ中途入社。日本の代理店向けセールスイネーブルメント担当を経て、アジアパシフィック地域全体向けのVMwareソリューションを主としたセールスイネーブルメントリードとして従事。2023年3月にシンガポール支社へ転籍。
──なるほど。ちなみに、どんなお仕事をされていたんですか?
竹本:入社後研修を経て営業部門へ配属されました。官公庁向けの部署で、最初は政府外郭団体への新規開拓からスタート。その後は中央省庁の大規模システムの開発に携わりました。
文系学生がIT業界へ飛び込むことに不安はありましたが、すぐにITの世界の奥深さに気づき、ITも営業のいろはも気づけば夢中で学んでいきました。就活の選考を通して、私自身のポテンシャルや適性を見抜いてくれたのかなと思います。
IT営業には、専門用語や新しい技術の理解を求められるとともに、お客さまとの難しいコミュニケーション、さまざまな交渉・調整ごとが発生します。人対人のコミュニケーションスキルや、関係性構築力を培えました。
また、営業活動においてはエンジニアなどとの連携も多く、どのプロセスも決して1人で進めることはできません。ベテランやその技術の専門家を集め、チームを組んで、お客さまへ提案します。みんなで力を合わせたチームプレーで成し得た成功経験は、今振り返ってもかけがえのないもの。また、新卒特有の同期たちの存在も大きかったですね。入社早々、2カ月間の研修を共に過ごした同期とは今でも強いつながりがあります。
──とても充実した日々を過ごしていたのですね。
竹本:はい、前職には約9年間在籍しました。配属後はOJTで先輩が優しく教えてくれて、少しずつ難易度の高い仕事にチャレンジさせてもらいました。そのサイクルのおかげで自信もつき、無理なくステップアップできましたね。経験を積むごとに担当する案件の規模が大きくなり、責任も大きくなりました。最終的には数百人が携わる大型のプロジェクトにアサインされ、やりがいも大きかったですね。
まったく知識のなかった私をここまで成長させてくれたことに、とても感謝しています。
──そんな中、デル・テクノロジーズに転職されました。これは何が理由だったのですか?
竹本:社会人10年目を迎えるにあたり、次のキャリアを考えるようになりました。
日本のビジネスがある程度分かるようになり、他の国のビジネスも知りたいなと思ったんです。就活当時から英語を使って仕事をしたい思いはありましたし、9年間で学んだ日本のビジネスの良いところを海外でも取り入れたり、海外の良いところを日本のビジネスに生かしたり、それぞれを橋渡しする存在になりたいなと。そうして出会ったのがデル・テクノロジーズ(当時EMCジャパン)でした。アジアパシフィック・ジャパン(APJ)に属するグローバルチームへ入社しました。
──デル・テクノロジーズでは、どのような業務を担当しているのですか?
竹本:中途入社して10年目を迎えますが、一貫してセールスイネーブルメントに従事しています。セールスイネーブルメントとは、営業組織のパフォーマンス(成果)をあげるためのプログラムをつくり、営業の方々をサポートする仕事です。自社の営業チームだけでなく、私たちの製品を売る代理店(パートナー)企業の営業チームに対しても、トレーニングやイベントなどを開催してセールス機能を強化させていきました。2020年からは担当地域が日本・アジア太平洋地域(APJ)となり、2023年3月にシンガポール支社へ転籍。現在はVMware(※)に関するセールスイネーブルメントに従事しています。
(※)……1台のコンピューター上で、複数OS(オペレーティング・システム)の実行を可能とする仮想マシンのソフトウエアのうちの1つ。
評価制度に直結する「年功序列」と「実力主義」
──転職当初、日系企業との違いを感じたこともあるのではないでしょうか。
竹本:そうですね。入社前には、いわゆる外資に関する指南書を読むなど、環境の違いになじめるかどきどきしていました。全社ミーティングに登場する女性リーダーの比率や、調整を前提にまずはスタートする機動力の高さなど、さまざまな場面で違いを感じることがありましたが、中でも、大きな違いの1つは「評価制度」でしょうか。
前職では、経験の長さなども含めて経歴が評価につながっていたように思います。加えて、組織への貢献やチームとしての成果など、全体を重んじた評価が加わります。一方、外資では、過去の経験よりも、「今パフォーマンスが出せているか」という観点が重要。経歴や年齢ではなく、その人自身が出しているパフォーマンスで評価されるので、私には合っていると感じました。
また、会社としての意思決定・方向転換の早さにも驚きました。市場変化にすぐに適応するためスピーディにどんどん物事が変化していく。そうすると、現場では大変なことも(笑)。予想外な事態に対する適応力や柔軟性が求められますが、スピード感をもって自分もアップデートしていけるので楽しいところでもあります。ここは、どちらが良い・悪いではなく、ご自身の性格や志向によりますね。
──なるほど。日系と外資の特性を把握した上で、自分にとってマッチしているかどうか判断した方が良さそうですね。
竹本:どちらも経験した上で、今の私には実力主義の環境が働きやすいですね。チャレンジングなことがあったとしても、どうすれば解決するかという視点で捉えれば楽しめますし、その過程で学び、成長することに意義を感じるからです。
でも、こういった部分は学生だと想像がつかず、判断できないですよね。インターンシップや、OB・OG訪問を通して、なんとなく想像がつくかもしれません。究極的には実際に働いてみないと分からないことですが、解像度を上げて入社後のイメージを具体化させることをおすすめします。
教育を考える上で、大切にしたいこと
──一般的な印象として、日系の大手企業は教育が手厚い印象があります。竹本さんはどう捉えていますか?
竹本:そうですね。IT未経験だった私が、官公庁を担当するIT営業まで成長できたことは、教育システムやサポート体制の厚さのおかげですね。
とはいえ、外資が教育に力を入れていないかというと、決してそうではありません。
当社であれば、新卒研修は約6カ月かけて行っています。フィロソフィー(企業理念)の理解から始まり、ビジネスマナーや業務効率化の方法など社会人の基礎を学ぶ全体研修。次いで、営業や保守エンジニアなど職種ごとに特化した研修を実施。また、リアリティ溢(あふ)れるロールプレイを繰り返し、現場デビューに向けて準備を進めていきます。
配属後はOJTを通して、マネジャーやメンターからのフィードバックを元にスキル・知識に磨きをかけていきます。研修が終わったあともさまざまなトレーニングが用意されています。セールス領域は私たちセールスイネーブルメントチームが担い、組織の状況や課題に応じて必要な研修プログラムを開発・提供しています。
──必要な研修プログラムとは具体的に?
竹本:例えば、どの企業でも行われるロールプレイング。私たちはできるかぎり実際の商談そのものを再現させ、知識を「自分のもの」にする経験をつくっています。
──あくまでロープレはロープレ、トレーニングはトレーニング。つまり、実力は実際の商談でしか身に付かないものではと感じますが、研修の有効性はどのように捉えていますか?
竹本:知識やツールなど、必要な武器をそろえて十分に準備した上でないと、いざ現場(商談)に出ても、成功する確率は下がります。当社のカルチャーコードに「Customer(お客さま)」がありますが、ソリューションを提供するお客さまと対峙(たいじ)する時点で、年次にかかわらず私たちは全員がプロフェッショナルである必要があります。だからこそ、社内のロープレが大切。ロープレでたくさん失敗をしておくんです。
過去の営業データや経験に基づいたロープレのシチュエーションは、限りなくリアル。できるかぎり失敗し自分のものにしていけば、お客さまとの商談に出ていくときにはもう、会社の顔となってパフォーマンスが十分に出せるんです。
思いはあるか? やりたい思い、チャレンジ欲が成長をつくる
──日系企業と外資、両方を経験して、キャリアを選ぶ上で大事なことは何だと思いますか?
竹本:ワクワクする気持ちを大切にすること。向いていないかも……という先入観は解き放ち、少しでも挑戦したいことがあれば、周囲に言葉で伝えることではないでしょうか。
自分の希望を伝えるなんて、最初は怖いかもしれません。でも、自ら声に出さなければ、周りの人たちがあなたの思いを知るすべはありません。自分はどういう人で何を望んでいるか、言うのはタダですから。伝えておくのにこしたことはありませんよね。
また、外資ではまず「やってみること」が大切。例えば、当社なら「Create your future」というキャリア観があります。「自分のキャリアは自分でつくる」。入社後のキャリアは自己申告制です。オープンポジション制度を使って、かなえたいキャリアを歩めます。だからこそ、普段から自分の興味ややりたいことを発信し続けることで、タイミングが巡ってきたときに、つかみやすくなるんです。
──ちなみに、英語力などスキルの必要性についてはどう考えていらっしゃいますか?
竹本:英語力そのものよりも、もっと大切なことがあると感じています。
さまざまな状況に対応する柔軟性、新しい技術やビジネスを知りたいという好奇心。また、多様なメンバーと大きなプロジェクトを動かすためには、相手への思いやり、共感力、そして論理的に物事を説明できるロジカルシンキングなど。語学力があっても、そういったベースの力がないとうまく物事は進まないんです。語学力はあとからでも身に付くので、相手を尊重しながら自分の意見を伝える力が大切ですね。
──いわゆる「ハードスキル」より、人間性に関わる「ソフトスキル」の方が大事ということですね。
竹本:はい。あとは「失敗を恐れないこと」。失敗を最大の学びと捉えられるかです。今のパフォーマンスを元に、今後はどんなことをやってみたいのか、それに向かってチャレンジできる姿勢があるか。グローバルで活躍するには不可欠な要素だと感じます。
──最後に、竹本さんがデル・テクノロジーズで働き続ける理由について教えてください。
竹本:転職の際、面接官だった女性マネジャー(入社後の上司)がとても印象的でした。国をまたいで数々の実績を持ち、バリバリのキャリアを築いているのに、分け隔てなくコミュニケーションを取ってくれる。そんな姿に憧れを抱きました。入社後に出会う人たちは、みんなすてきな人ばかり。自分も、そんなプロフェッショナルでありたいと思って毎日取り組んでいると10年目に突入していました。
特にデル・テクノロジーズでお世話になった上司の皆さんは、いつも部下のチアリーダーのように(笑)全力でサポートしてくださって。応援してくれた彼らにもっと活躍する姿を見せたいですし、彼らのように私も後輩のサポートをしていきたいと思っているのも、私がデル・テクノロジーズで働き続ける理由の1つですね。
前職で得られたやりがいも大きかったですが、外資に踏み出して良かったと感じています。スピードがあって、自分のやったことがきちんと評価される。その上でワークライフバランスや、多様性を重んじるグローバルな価値観が根付いています。
同時に、デル・テクノロジーズには前職で好きだったチームワークを重んじる風土もあり、また、想像よりも福利厚生が充実していたのはうれしかったですね。有給休暇とは別に、自分自身・家族の体調不良のときに使用するシックリーブ(有給病気休暇)や、健康支援としてスポーツ補助金などもあります。こういった制度の充実は、日本法人ができて30年以上たっている背景があるのかもしれません。私の「心地よい」が詰まった環境が、デル・テクノロジーズでした。
就活中の皆さんにもそれぞれに合った場所が必ずどこかにあるはず。それがデル・テクノロジーズであればうれしいですね。
※本記事の内容は2023年7月時点の情報が基になっております。
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デル・テクノロジーズ
【写真提供:デル・テクノロジーズ/執筆:長岡武司/編集:山田雄一朗】