こんにちは、ワンキャリ編集部のChikaです。先日、7ヶ国語マルチリンガルの秋山さんにKENがインタビューしました。その内容を2記事にわけてお届けします。
前編では、「なぜ、多くの言語を習得しようと思ったのか」「5年間のうちに7ヶ国語を習得できたわけ」など、留学を経験せず次々と言語を身につける、秋山さんの言語習得法に迫ります。
英語をどう学ぶべきか?その答えは「コミュニケーション」にこそある。
〜たくさんの言語を学び始めたのは、アイデンティティが欲しかったから〜
秋山燿平(あきやま ようへい):
東京大学大学院薬学系研究科修士1年。海外在住経験、留学経験ゼロながら独学で7ヶ国語を話すマルチリンガルになる。この経験を生かして学生国際交流団体Elanを設立。また3月13日にはフジテレビ特番「さんまの東大方程式」において「5年で7ヶ国語を習得した東大生」として紹介され、7ヶ国語を織り交ぜた自己紹介を披露して反響を呼んだ。ONE CAREERでインターン中。7ヶ国語自己紹介はコチラ。
北野唯我(KEN)/聞き手:
ワンキャリア執行役員。ボストン コンサルティング グループ、博報堂出身。英語(TOEIC960)と中国語(HSK5)での対話が可能。国際恋愛の経験が豊富。
KEN:あっきー、今日はよろしくお願いします!まず、あっきーが7ヶ国語を学ぼうと思ったきっかけが聞きたいな。
秋山:よろしくお願いします。そうですね、僕、薬学部に所属しているんですけど、入ってすぐに、「自分はこの学問の研究者にはなれないな」って思ったんです。けれど東大に入って院生にまでなって、何もしないまま卒業するのは嫌でした。
それで何か一つ強みを作りたい、と思って、高校生の頃にスペイン語をやっていたこともあって、語学をはじめようと思い立ったんです。人の趣味って「広さ」と「深さ」という2つの軸があると思うんですけど、僕に深さという軸は向いていませんでした。海外経験も0ですので。
KEN:えっ、海外経験ないの?
秋山:フランスに3週間行ったことがあるだけです。だから僕が言語というフィールドで何かインパクトを残すには「数で勝負しなあかんな」と。日本は単一民族国家で、日本語だけ喋れれば生きていける特殊な環境だからこそ、この国でたくさんの言葉を喋れるというのはそれだけでインパクトになると思いました。ここで尖りたいと思った。それが広く浅く言語をはじめたきっかけです。
会話の生まれる状況が「もっと喋りたい!」を作り出す
KEN:俺が留学に際して英語を勉強したときは、文字と音を結びつけて考えたのね。たとえば「r」というアルファベットを見たときに、「r」の発音が自然と身体から出てくるようにトレーニングした。こうやってイメージと音を結ぶことで語彙を増やしていったんだけど、あっきーは具体的にどうやって語彙を増やしてきた?
秋山:外国人としゃべっていたら勝手に身につく、というのが僕の信念なんですよ。会話の文脈のなかで覚えた単語って絶対忘れないから。単語帳を見ていても、単語ってなかなか覚えられないですよね。でも、美人なフランス人の女性に「何を勉強しているの?」とフランス語で訊かれて、「薬学」ってフランス語で返せなかったら、すっごく悔しいと思うんですよ。そのあと「薬学」っていう単語をフランス語で調べたら、その意味も発音も、きっと一生忘れませんよね。
KEN:そりゃあ忘れないだろうなあ
秋山:そうですよね。他人を理解したい、自分のことを伝えたいっていう本能的で感情的な部分が、覚えることを後押ししているなと感じます。一つのものを覚えるときに、他のものと連鎖させて覚えるほうがいいっていうじゃないですか。先程の例なら、僕にとって「pharmacie(薬学)」という単語は美しい女性と結びつけて覚えられる。
KEN:なるほど。でも実際そういう状況を作り出すのってなかなか難しくない?
秋山:それが案外できるんですよね。外国人と手軽にコミュニケーションがとれるアプリもたくさんあるし、僕は自分で交流イベント開いているし。けっこう努力次第でなんとかなります。これも、「浅く広く」という自分のスタイルに合っているのかもしれません。
KEN:あとは、自分の喋る持ちネタって基本的に同じだから、小話を2,3個用意できれば会話は成立するよね。自分主導で話をしていくのが得意な、アクティブな人にとってはそれも良い手ですね。
相槌さえできれば、会話を繋げられる
KEN:コミュニケーションといえば、英会話教室に行っている人でも「通っているのに喋れるようにならない」っていう人がよくいるけれど、あれってどうしてなんだろう?
秋山:基本的な文法とか単語とか、最低限の知識っていうのはもちろん必要だと思うんですよ。で、その「覚えなくてはいけない最低限の知識」のなかでも、僕はけっこう「相槌」って重要だと思うんですよね。会話を繋げるのに必要不可欠だから。
KEN:相槌は、俺もすごく大切だと思う。自分が海外でコミュニケーションを学ぶときに取った戦略は、質問と接続詞に力を入れること。そうすれば、会話は続く。「でもね」とか「そうだね」って返せば、会話を膨らませられる。仮に聞き取れなくても、文脈からこんなことを言っているのかな、って予測して、そこに質問を重ねていけば、とにかく会話は進められるよね。
秋山:本当にその通りですね。会話を浴びれば浴びるほど、言語能力は上がっていきます。相手の外国人側からしても、自分が話している相手が反応してくれないとだんだん話したくなくなる。単語は知らなくてもジェスチャーでなんとかなるけれど、「相槌を打つ」というのは外国語でも母国語でも会話を成り立たせるために欠かせないことなんじゃないかな、と思います。相槌の意図やタイミングをつかめないまま英会話をしようとすると、どうしても会話がすぐに途切れてしまうから、自分は英語ができないという劣等感に繋がってしまいます。相槌は、会話を結ぶんです。
KEN:そうなると、まずは会話のために必要な言葉やフレーズを手に入れることが必要だね。
秋山:それから、英会話にはモチベーションもけっこう大きく関係しています。あまり英単語や構文を勉強してなくても、とにかく会話をしてみて「伝わった!」という手応えがあると自信が持てるようになる。これは英語を勉強していくうえでの大きなモチベーションに繋がりますね。正しさを気にしすぎてしまうと、「これが言えなかった、あれが分からない」というふうに、負の感情に繋がってしまいやすくて、その結果会話に苦手意識を持ってしまう。
アイビーリーグの学生でも、三単現をすっとばす
秋山:例えばフランス語なんて、ネイティブでも文法とか細かい規則がめちゃくちゃだったりしますよ。英語のネイティブも平気で三単現のsを飛ばしたりして喋るし。実は、ここがまさに日本人の盲点で、日本人はその言語の専門家になりたがろうとしてしまう傾向がある気がします。文法とかスペルミスの細かいところを気にしすぎてしまいがち。でも、ネイティブの人達は全然気にしていないし、コミュニケーションはきちんと成り立っているんです。
KEN:アイビーリーグ(※1)の外国人でも、英語で冠詞も三単現のsもすっとばすし、過去形か現在形かすら使い分けていない人たちもいたけれど、それでも伝わるもんね。
秋山:文法がうまく組み立てられなくても、まずは話してみてほしい。それで「あ、めちゃくちゃでも案外伝わるじゃん!」という経験をたくさんしながらより高度な会話のステージに進んでいく、という方法をとったほうが絶対にいいと思いますね。言語って結局、通じることが一番大切だから、そういうポジティブな経験をたくさん積んで良いサイクルを作ることが、何よりモチベーション維持に繋がります。正しく書くっていうことも大事だけど、コミュニケーションを取るうえで言語の専門家になる必要はないですから。
(※1)アイビーリーグ:ハーバード大学をはじめとする、アメリカ北東部の8つの名門大学からなる連盟。
会話をはじめるのに、200単語覚えていればいい
秋山:それから、覚える単語の数なんですけれど、単語帳って普通は1500とか2000単語くらい載っているのが普通じゃないですか。けれど、その中から会話に本当に必要そうな100単語か200単語だけ覚えて会話しにいけばいいと思います。どのタイミングでどう使うかもわからない単語を最初から500個以上覚えようとしたら絶対にすぐ力尽きてしまうんですよ。語彙は会話の流れのなかであとあと増やしていけばいいんです。
KEN:100から200単語って、一般的なイメージからしたら随分少ない印象だけど、それくらい覚えたらとにかく会話しにいけ、と?
秋山:そうですね。この「ちょっとの単語で会話しに行け」も僕の信念のひとつです。例えばサッカーをするとき、最低限の基礎を覚えたらプレーしてみますよね。試合のなかで自分に足りないところを見つけて、そこを補完する練習をする。リフティングが100回できないと、試合でたくさんゴールを決められないというわけではない。言語も一緒ですよ。
KEN:なるほどね。そういう姿勢でいるためには、「失敗を恐れずに喋る」ということがマインドセットとして必要じゃん。でも、特に日本では、試験のために英語を勉強するっていう背景があるよね。つまり、子供の頃から間違えることを恐れるようになる。それってどう対処していけばいいんだろう。
英語は学校の試験から廃するべし
秋山:学校の英語教育のゴールは、テストで点を取ることですよね。でも言語を学ぶことの本当のゴールって、コミュニケーションを取れるようになることだから、そう考えると学校の英語がつまらなく感じられるのは当然です。だから僕、英語のテストってなくせばいいと思うんですよね。
KEN:面白い! テストをなくすと具体的にはどういうことになるの?
秋山:それこそ音楽の試験みたいに、点をとることを目的としない、副教科的な扱いにすればいい。英語「を」学ぶのではなく、英語「で」何かを学ぶ、という意識が、学ぶ上ではとても重要だと思います。コミュニケーションを目的として学んだほうが英語は絶対に身につく。だからこそ、試験の教科から英語を廃止してしまうか、試験するならば、莫大なコストを掛けて一人ずつ英語のコミュニケーションテストをするべきだと考えます。
KEN:あえて受験を意識させない形で勉強させよ、と。
言語を学ぶのに才能も学歴も関係ない。必要なのはたった2つのこと。
KEN:俺は、英語を学ぶうえで、留学とか英会話教室に行くことは、重要ではないと思うんだよね。あっきーが今まで話してくれたような、自分なりの英語を身につける方法だったり、学ぶためのモチベーションがあったりすれば、どこにいても喋れるようになると思う。
秋山:僕もそう思います。何度も言っている通り、言語を身につけるためには、とにかく外国人と会話すること、「伝わった」という経験を通して自分のモチベーションを維持していくこと、その2つだけです。だから、言語を学ぶのに才能も学歴も、もちろん母国語も関係ありません。この2つさえ守れば、誰でも必ず上達すると思います。
──後編「言語対策においてまず大切なこと」「TOEIC対策」につづく
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