新型コロナウイルスの感染拡大で、講義のオンライン化のほか、留学や文化祭など、イベントの中止が相次ぎ、学生生活に大きな影響を与えています。状況は違えど、多くの学生が急激な予定の変更に戸惑ったのではないでしょうか。
特に留学は、準備も含めて多大な時間がかかる分、大学生活そのものが一変してしまったという方も少なくないはずです。
『目標だった資格試験の間近に緊急帰国が決まりました。』
こう話す、2019年6月からモスクワへ留学していたAさん(22卒、女性)は、大学でロシア文化やロシア語を学び、モスクワ留学でロシア語の資格獲得を目指していましたが、資格試験を目前に控えた2020年3月、突然緊急帰国が決まりました。
当時のモスクワでは、日本人、中国人など新型コロナウイルスが蔓延(まんえん)していたアジアの人に対して厳しい目が向けられていたと言います。帰国後しばらくたち、留学が中途半端になってしまったことに対して、虚無感に襲われたと言います。
そして、この記事を書いている私自身も、コロナ禍で留学を断念した23卒の大学生です。今回は、新型コロナウイルスが蔓延(まんえん)している状況下の「留学×就活」について、私自身の経験と就活を終えた22卒、23卒への取材を交えてご紹介します。
憧れの留学生活はコロナで断念。大きくなる就活への不安
経済学部に合格した私は大学に入学する前から、将来は世界を舞台に活躍したいと考え、2年生の秋から留学をすると決めていました。
実際に大学には、帰国子女や長期留学経験で英語がペラペラな人がたくさん。「私も留学して憧れの英語強者になろう」と考えながら、週4でサークル、週3でバイトに明け暮れていました。
そして、新型コロナウイルスが流行し始めた2020年春。
「留学は秋からだし、何とかなるだろう」という考えは、日に日に薄くなり、2020年夏、留学の中止が決まりました。時期をずらすと言っても新型コロナウイルス収束のめどが立たず、難しい状況です。
就活はどうなってしまうのだろうか。私には何もない。ガクチカどうしよう──焦り始めた私は、留学に行けない悔しさや絶望感に襲われました。
しかし、不安を抱えながらも2020年秋に行われるサークルの公演準備に時間を注ぎました。本来であれば華々しい留学生活を送っていたはずの時期です。このままサークルを続けていいのだろうかと感じていました。
留学に行けなくても、ガクチカは意外とあった
そして年が明けた頃、23卒向けの就活記事を目にして驚く私。「もう、23卒!? インターン!? そろそろ就活だし何かしなきゃ……」
まずは自己分析から始めようと、大学生活を振り返ると、「ちゃんと留学に向けて行動していた」と気づくことになります。
留学するには、主に以下の6点が必要です。
(1)TOEICやTOEFLなどの資格取得
(2)GPA
(3)留学先の調査
(4)留学資金調達(奨学金など)
(5)願書提出
(6)留学審査
受けたい講義もあるけれど、いい成績が出やすい授業を徹底調査
私は、大学が行っている交換留学制度を利用していました。
提示された条件は以下の通りです。
・GPA3.0以上(Max4.0)
・TOEFLスコア65以上
そのため、条件として提示されていたTOEFLのスコア獲得に向け、コツコツ勉強をしていました。
特に力を入れたのは、GPAです。大学の講義は学びたいことに加えて、成績が高くなりやすいものを選びたい。
そのため、レポートやテストの難度を、過去の成績分布表を利用して分析しました。過去のデータがない講義は、同じ教授が行っている講義の成績分布表を参考にします。
大学の成績は、教授により評価方法が大きく変わるため、一度好成績をとれた教授の講義は引き続き、受講する──そうすることで、GPA3.0以上をキープしていました。
留学先を決めるのも、大切な「意思決定」の場
留学先を決めるための調査にも苦労しました。現地情報を調べつくしたうえで、志願書の提出や面接に挑むためです。
大学の留学カウンセリングルームに何度も足を運び、1対1でのカウンセリングに加え、留学帰国後レポートを200枚以上は読んだと思います。
英語が身につく地域は? 治安がいい国は? 美味しい食べ物がある国は? 安く行ける地域は? 人とたくさん出会う機会がある場所は? これらの疑問に対して、納得のいく留学先をひたすら探し続けました。
こうした努力が実り、2020年秋から1年間の留学が決まりました。留学決定後は、留学予定先の大学の生徒とオンライン上で繋(つな)がり、交流を深めていました。
極論、留学に行けなくても、就活の成否には関係ない!?
結果的に私は留学には行けませんでしたが、GPAの維持や英語力の向上、そしてグローバルな世界を見続けていたことは、今後に繋がる良い経験だと今は思いますし、立派なガクチカになるはずです。
例えば、このように「行動力」を示すエピソードとして仕上げることもできます。
2021年秋からスロベニアに留学を予定していたBさん(23卒、男性)は、水球部に所属しており、水球が強い国であるスロベニアで英語とともに水球を学びたいと考えていました。
彼は交換留学制度を利用していたため、学費は大学から出るものの、現地での生活費は自己負担でした。当初は、両親に負担をお願いする予定でしたが、現地政府の奨学金があるかもしれないと考え、大使館に電話をかけて確認。結果的に、月7万の補助・食事つきの下宿先を提供してもらえたと言います。
また、Bさんは「コロナ禍によって大学の講義がオンラインになったため、通学にあてていた時間に勉強できた。さらに、早くから就活を始めて、早期に行われているインターンにも参加できた」と話します。留学に関わらず、コロナ禍だからこそできたことを探してみるのもいいでしょう。
2020年4月からマレーシアに留学を予定していたCさん(22卒、女性)は、学生の頃から国際協力に関心を抱き、実際に現地で自然環境を学びたいという目的で留学を決意していました。留学の中止を受けてからは、自然環境に関するインターンに参加していたそうです。
そして、就活を終えた今では、「留学に行きたい目的をしっかりと面接官に伝えたことで、信念の強さが伝わり、内定がもらえたのではないか」と話します。また「英語を学ぶ」「グローバルな文化に触れる」「いい企業に就職する」など、それぞれの目的に対して、留学は1つの手段でしかないと感じたと言います。
Cさんが「留学は1つの手段でしかない」と言うように、まずは留学をしたかった理由を明確にすると良いかもしれません。
結果ではなく、過程にも目を向けてみる。「留学をする」という目標に対してしっかりと行動していたことは、とても貴重な経験であるといえるでしょう。
留学断念のエピソードをガクチカに進化させる「5つの視点」
ここまで紹介してきたように、留学に行きたいと決意した背景やその準備には多くの「ガクチカ」が隠されています。ここからは留学に絡んだガクチカの例をご紹介します。エピソードを探すきっかけになれば幸いです。
TOEICやTOEFLなどの資格取得
・TOEFL90点を取るために毎日オンライン英会話をした
・英語サークルの友達に頼み込んで教えてもらった
・大学の留学生コミュニティーに参加していた
GPA関連
・講義内容の疑問点は、必ず教授に質問をしていた
・大学の図書館にこもって勉強していた
・成績の得点分布を把握し、計画的に学習していた
留学先の調査
・留学生同士で情報共有コミュニティーを作った
・大学の留学支援センターに通い詰め、最新の情報を得ていた
・留学先の生徒と交流をし、現地の詳しい情報を共有してもらった
留学資金の調達
・国選びだけではなく、都市選びに気を付けた
・留学支援をしているさまざまな企業や団体に申請をした
留学断念後の行動
・関心を持っている分野の長期インターンに取り組んだ
・オンライン留学に切り替え、学びを継続した
・就活を終えた後、再度留学をしようと決意している
大学生活での留学は叶(かな)いませんでしたが、私の就活の軸は「世界を相手に働けること」から変わっていません。
今後は、駐在の機会がある企業やグローバル教育に力を入れている企業を積極的に見ていこうと考えています。
留学をはじめとするイベント中止は、私を含め23卒であれば誰もが悔しさを味わっているはず。その経験は絶対にムダにはなりません。
一緒に頑張っていきましょう。
(Photo:VectorMine , Andrew Krasovitckii/Shutterstock.com)