日系企業志望の学生が襟を正す3月1日まで、残すところ数カ月。
就活に本腰を入れるのは、まだまだ先だと思っていませんか?
外資系企業の選考で鍛えられた学生、サマーインターンで良い結果を残した学生、そんな学生たちと距離を離されてしまわぬよう、今から就活準備を始めてはいかがでしょうか。
今回から始まる「21卒 内定図鑑」。日系大手企業に内定した2021年卒学生の選考対策や就活スタイルを余すことなくお伝えします。
第1弾は、総合商社。
新型コロナで商社は再び冬の時代だ──そんな声も聞こえてくるけれど、やっぱり商社はかっこいい。第一志望に落ちて絶望を味わいながらも、短期間で戦略的に対策を練り、総合商社に内定した21卒就活生にお話を伺いました。
<目次>
●第一志望はまさかのES落ち。商社志望に切り替え、合格可能性を計算した
●内定には必ず理由がある。体育会や帰国子女でもなくても、その「要素」があればいい
●多いときは一日3回。1カ月で50回以上こなした模擬面接
●「商社だから」と何十人もOB・OG訪問する必要はない。面接以外の各フローの選考対策
・SPI
・ES
・OB・OG訪問
●おわりに
第一志望はまさかのES落ち。商社志望に切り替え、合格可能性を計算した
──Aさんは就活解禁2カ月前の4月に総合商社志望になったそうですね。
Aさん:はい。それまでは広告業界を志望していました。OB・OG訪問もたくさんしたし、絶対に入るぞという気持ちだったんですが、まさかの全てES落ち。新型コロナウイルスの影響で就活が不安定になると思い、多くの会社を受けていたのが不幸中の幸いでした。
残った駒の中から「自分のやりたいことができるのはどこだろう」と考えたときにふと商社を見ました。
商社って「体育会系」や「帰国子女・留学組」が受かりやすいって言われていると思うんですけど、私はどちらでもない。いわゆる「商社っぽい」学生ではありませんでした。
──それでも商社を受けようと思ったんですね。
受けた企業 | 内定した企業 | |
3年秋 (M1) |
【インターン】 リクルート ADK(アサツーディ・ケイ) |
ー |
3年冬 (M1) |
【本選考】 P&G Japan、化粧品会社A セールスフォースドットコム アマゾンジャパン |
ー |
4年春 (M2) |
【本選考】 電通、博報堂、ADK(アサツーディ・ケイ)、ITベンチャー企業 凸版印刷、伊藤忠商事、三菱商事 東京海上日動火災、アサヒビール ミルボン、日本航空(JAL)、ソニー キリンホールディングス、サントリーグループ PwCコンサルティング・PwCアドバイザリー コーセー、花王、ヤフー(Yahoo! JAPAN)、楽天 |
ITベンチャー企業、 伊藤忠商事 |
※Aさんが出した企業一覧。就活開始時の第一志望は広告業界だった。
相当焦っていました。どこにもいけないんじゃないかと。そこからはまさに背水の陣という感じ。残った持ち駒の中から自分が入りたいと思える会社を探しました。ただ、内定可能性を算出してみたらかなり低かったんです……。
──内定可能性を計算できるんですか?
Aさん:はい。まず、企業の採用実績を見て自分の大学から何人合格者が出ているかを調べました。次に男女比をみます。商社は女性の割合が少なくて、自分の大学から多くても4、5人。そして、大学の名簿を見るなどして、その中に体育会系出身者と帰国子女はどのくらいいるのかを見ます。そうすると、自分の入る余地のある枠は1、2枠しか残らない。
じゃあ、その1、2枠に入るためにはどうすればいい? というところでようやく戦略的に考えることができます。絶望的な状況だったからこそ、戦略的に進めないと無理だなと思いました。持ち駒がたくさん残っているなら話は別かもしれませんが、私はほとんどの企業に落ちてしまって残っていた企業が少なかったので……。
内定には必ず理由がある。体育会や帰国子女でもなくても、その「要素」があればいい
(1)体育会系や帰国子女の学生がなぜ必要とされているのか分析する
──あえて自分を追い込んだと……。具体的にはどんな戦略を立てたのでしょう?
Aさん:商社に体育会系や帰国子女が多いのは正当な理由があると思っていたので、なぜ彼らが内定しやすいのかを考えました。
まずは体育会系の人。さまざまなステークホルダーと関わったり、海外を飛び回ったりするので、タフじゃないといけませんよね。そういうタフさを持った人が体育会系には多いはず。であれば、タフさをアピールできれば体育会系じゃなくてもいいということです。
だから、仕事が多少ハードでも問題ないことをアピールしたり、圧迫気味の面接をされたときも全力の笑顔で答えたりしました。顔が引きつっているくらいは許容範囲だと思うので、ビビらないことが功を奏したかなと思います。
帰国子女に関しても、海外の人と仕事をする機会が多いので英語が話せる人が欲しいのは理解できます。それなら、帰国子女じゃなくても英語が得意になればいい。私、英語がすごく苦手なんですけど「入社までの10カ月で必死に勉強して話せるようになります」と面接で強調しました。
(2)体育会系と帰国子女にはなくて、自分にはあるものをアピールする
商社は「仕組みを作る仕事」とよく言われています。
生産の過程を整えたり、今はないビジネスをさまざまなコネクションを使って作ったりといった「構想を形にする能力」が必要です。私は大学時代にイベントの立ち上げなどをやっていたので、「夢物語ではなくビジョンを形にできます。そういう能力がありますよ」ということをアピールしました。
大それた経験じゃなくても、みんなアルバイトやサークルなどを基にガクチカを作っていると思います。それを、商社が求めていそうなものに当てはめればいい。
どこの業界を受ける場合でも、採用されやすい人っていると思います。外銀だったら帰国子女、商社なら体育会系などです。「なんでその人たちが採用されているんだろう? 自分が補うべきものは何か?」っていうのは考えてみてもいいかもしれません。
多いときは1日3回。1カ月で50回以上こなした模擬面接
──現状を理解して戦略を立てても、実践しないとその戦略がうまく機能するかわからないですよね。
Aさん:そうなんです。だから、戦略を立てた後はひたすらアウトプットを増やしていました。とにかく模擬面接をたくさんやっていましたね。
※緑の部分が模擬面接。多い日には3回以上こなしていた
4年の5月は、ほぼ毎日模擬面接をしていました。就活コミュニティに模擬面接を募集できるチャンネルがあったので、商社志望の学生に声をかけたり、Twitterの就活アカウントで仲間を募集したり。
主にZoomを使って、1回20分くらいで実施していました。簡単な自己紹介、ガクチカ、志望動機を聞くというスタンダードな流れです。「今日は時事問題多めに聞いてください」とか「今日は圧迫気味でお願いします」とかも面接官役をやってくれる相手の学生に頼んでました(笑)。
個人的に、各フローの対策の中で模擬面接が一番効果的だったと思っています。私は選考のときにESやWebテストで落ちまくっていたので面接に全然慣れていなくて。その意味でも、選考前に面接対策をたくさんできてよかったです。後輩にも模擬面接を一番オススメしています。
「商社だから」と何十人にもOB・OG訪問する必要はない。面接以外の各フローの選考対策
──WebテストやESなど、各フローの選考対策についてもお聞きしたいです。
SPI
日系大手でSPIにたくさん落ちてしまったので、焦って勉強しました。テストセンターには4、5回いきましたね。問題集は数学を重点的に4周くらい、国語と英語は1周しました。
※Aさんが使用していたSPIの問題集
▼総合商社の筆記試験対策はこちらから
・【総合商社の筆記試験対策】ボーダーは9割? WEBテストの種類と通過率まとめ
ES
伊藤忠のESはほとんどがガクチカなので、ESを添削してもらったというよりは、商社勤務の知り合いにガクチカを添削してもらいました。
毎年、文字数が少ないけど、今年は多かったです。ボリュームは変わりうるのでガクチカを磨くほうがいいと思います。
・あなたが大学入学以降、チームで取り組み成果を上げた経験について教えてください。(30文字以下)
・その取り組みを行うことになった背景や目的を教えてください。(200文字以下)
・その取り組みを行う際にチームやあなた個人が定めた目標を教えてください。(200文字以下)
・その取り組みを行う過程でどのような課題があり、解決のためにどんなアクションを行ったかを教えてください。(300文字以下)
・その取り組みの結果を教えてください。(100文字以下)
※2021年卒の伊藤忠商事のES
▼総合商社のES対策はこちらから
・【商社ES通過例】総合商社のインターン選考、面接につながるESの書き方は?三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、丸紅、双日、豊田通商のエントリーシート突破例
OB・OG訪問
OB・OG訪問は4人行いました。商社はいくつか部署があるのですが、絶対に入りたい部署があるなら、もっと訪問した方がいいと思います。面接でのアピール材料になるので。
ただ、商社で「絶対にこの部署に入りたいです」って強調するのはリスクでもあります。商社は他の内定者との兼ね合いで部署が決まります。面接官がもし「この部署入りたいと話しているけど別の子の方がこの部署っぽいな」と思ってしまったら自分はそこに入れないし、選考もそれ以上進めない可能性があります。
どこに絶対に入りたいっていうのがなければ、社員さんの雰囲気を知るには4人くらいで十分でした。「OB訪問はしましたか? どこの部署の何さんですか?」と高確率で聞かれるので、その質問に答えられる情報や訪問の際印象に残ったエピソードなどがそろったらいいと思います。
おわりに
就活人気ランキング上位の常連、総合商社。
一度は憧れるけれど、その狭き門を前にすると怯(ひる)んでしまう。
今回インタビューに応じてくれたAさんも「何のアドバンテージもない私が商社に受かるんだろうか……と悲観的になりました」と話してくれました。でも、商社に入りたい強い気持ちと戦略を携えて一歩ずつ内定に近づいていったAさん。
もし、「私になんて無理だろうな」と心のどこかで思っている方がいたら、すぐには諦めずAさんのように一歩立ち止まって考えてほしいなと思います。内定への道は必ずあるはず。選考対策にはワンキャリアの記事をこれでもかというくらい使ってください。
新型コロナウイルスの影響で情報が得にくくなっている今、みなさんの就活を少しでも手助けできたらと思っています。
内定体験記のあとは過去の総合商社の内定者インタビューや総合商社各社への取材記事もご覧ください。
▼総合商社内定者インタビュー
・【総合商社/三井物産、丸紅内定】「本当に総合商社」は、別業界も受けないと分からない!?:業界別トップ就活生レポート2020
・商社内定の秘訣は「自分の姿を自然体でアピールすること」⁉【トップ就活生レポート2019:商社編】
・【神大/関西電力、双日内定】商社インフラW内定の神大生、奥の手は「キャリセンの名物おじいちゃん」!?:トップ就活生レポート2018
▼総合商社特集
・【三井物産】毎日転職を考えている私が、それでも働き続ける理由。モザンビークとマラッカ海峡で見つけた「商社パーソンのやりがい」
・【住友商事】私自身、最初の会社を辞めていますから──中途採用の人材開発トップが考える、「1社で働き続ける意味」
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(Illustration:Plasteed , Vector Stall/Shutterstock.com)