文系の方が有利、情報がない、研究やレポートで忙しい──。
「理系就職」といえばこんなイメージを持ちやすいはず。
今回ワンキャリ編集部がインタビューしたのは、大阪大学に在学中のBさん。彼女は理系を専攻しながら、大手インフラ企業に文系職で内定しました。
理系学生は、就職に限らず幅広い選択肢があります。研究を生かして研究職に就くことも、さらに学びを深めるため大学院に進学することも、はたまた自分の強みを伸ばす文系職に就くこともできます。
彼女があえて文系職を選んだ理由とは一体なんでしょうか? 理系学生が就活を乗り切る秘訣(ひけつ)も伺いました。
<目次>
●理系の環境を言い訳にしない。悩むくらいなら一度チャレンジしよう
●「幅広く受ければ、行きたい企業が見つかる」が間違いだと気付いた夏インターン
●「ルフィみたいだな」でわかった就活の軸、意思決定の多さが主人公感を生む?
●「理系=研究職」は思い込み。レールから外れた先にある自分らしさ
理系の環境を言い訳にしない。悩むくらいなら一度チャレンジしよう
──就活を始めたのはいつでしたか?
Bさん:大学2年生の3月です。私の学科では9割が院に進むのですが、もともと就職するつもりだったので早めに就活を始めました。4年生からは研究室の配属で時間がなくなることを想定し、2年に動き出して正解だったと思います。私の学科は課題が多く実験もあったことで、授業がある期間はインターンに行けないほど忙しくて。秋以降のインターンは全て辞退せざるを得ませんでした。就活に集中して取り組むのであれば、春休み・夏休み・冬休みしかなかったですね。
──理系であれば、研究を生かした仕事に就きたいと考える人も多いと思います。研究職を目指したことはなかったのですか?
Bさん:私はなかったです。大学での研究と就活は完全に切り分けて考えていました。せっかく大学に行くなら自分が1番学びたいことをしようと、高校生のときに興味を持った有機化学の分野に進んだのですが、学生生活の全てを研究に捧(ささ)げるイメージもなかったんですよね。だから、研究を生かす選択肢も自分の中にはなかったです。私は人と関わることが好きで、話すことも得意だったので、絶対に強みを生かせるであろう文系職の方がいいと考えて、最終的にはインフラ企業の文系職に決めました。
──9割が院に進むとなると、就活をしている人は少ないですよね。周りに就活生がいなければどう進めるか迷いませんでしたか?
Bさん:私も何をすべきか全くわからず、情報を集めることから始めました。そのとき、理系にも就活生が一定数いるのに対して、情報が回っていないと気付きました。調べても調べても理系就職に関することは何も出てこない。どの時期に、どうしたらいいのかという基本的なことも、特に情報弱者の理系学生は把握できていないのが現状です。情報収集は課題だと感じます。
──ちなみに「就活がうまくいかなかったら、進学の選択肢もある」と考えている人もいるのでは? そういう人は就活か進学か、かなり悩むと思います。
Bさん:院進と悩んでいると相談されたこともありますが、「1回本気で就活してみたら?」とアドバイスしていました。悩んでいる時点で、もしできるなら就職したいと思っているわけじゃないですか。中途半端だからどっちつかずになってしまう。したい研究があるなら院進でいいと思いますが、就活がダメだったときの保険にするのは違うよと。院進の試験は8月中旬にあるため、落ちたら就職しようと考えていると残っている企業はほとんどありません。終わってからだと遅いんですよね。
「幅広く受ければ、行きたい企業が見つかる」が間違いだと気付いた夏インターン
──理系学生が就活を始めるなら、まず何をしたらいいですか?
Bさん:悩む前に行動することです。選考を1回だけでも受けてみたらいいんです。受かっても実際には進まなくていいし、経験するだけで全然違います。特に選考ありのインターンがおすすめです。実際に私も参加してみて、この企業は違うなと判断できたり、周りの友達もことごとく自分の考えが変わっていたり、参加するだけで、何かしら得られるものがあるはずです。
──とにかく行動に移すことが大事なんですね。
Bさん:個人的な印象ですが、理系の人は自信がないんですよね。私の周りでは、経済学部などが有利だと勝手に思い込んでいる人が多かったです。「どうせ受かんないし」と悲観的になって、踏み出す勇気もなくチャレンジもできない。動けない人は悩んでいるだけで行動できないことが課題だと思います。理系だと研究やレポートがあって時間がないと言われますが、それならエントリー数を調整すればいい。まずは、一度チャレンジしてほしいなとは思います。
──Bさんのインターンについても教えてください。夏の時点では何社くらい受けたんでしょうか?
Bさん:ある程度業界を絞りたかったので、幅広く20社ほど受けました。「いくつか受ければ、どうしても行きたい1社が見つかるのでは」と幻想を抱いていて……。実際はそんなことなかったのですが。
選考も順調に進み、ありがたいことに夏休みはインターンの予定だけで埋まるほどでした。「ここに受かったらかっこいい!」と言われるような企業のインターンも通過して、最終面接にも呼ばれました。特に行きたい気持ちはなかったですが、周りにも「絶対受けた方がいい」と言われて。そんな気持ちが見抜かれたのか、結局落ちてしまいました。でもそれが悔しくもない。すごく無駄な時間だったと反省しましたね。
そこからは業界や企業を絞って、本当に自分が働いてもいいと思える企業を受けようと決めました。そうしないと、何となく受けた感じになってしまうと思ったんです。特に理系学生は時間が少ないので、優先順位の高いことに時間を割く方がいい。それに気付いただけでも、インターンに参加した意義はあったと思います。
「ルフィみたいだな」でわかった就活の軸、意思決定の多さが主人公感を生む?
──インターンで企業を絞る重要性に気付けたわけですね。本当に行きたい企業を選ぶ軸は何でしたか?
Bさん:企業を選ぶうえでは「主人公感のあるキャリアを歩めるか」という軸を大事にしていました。『ワンピース』のルフィのようなイメージでしょうか。具体的には、会社の歯車にならないことと、意思決定をできる機会がどれだけ多いかを重視していました。私は歯車だと強みが出せないし、何なら異端児になってしまうかなと。
ただ、軸の内容は本当に変わっていきましたね。自分が大事にしたいことって何だろうと、就活を始めてから常に考えていました。それこそ最後の意思決定をする瞬間まで。その過程で、建前の軸は絶対に作りませんでした。本音を言って落とされるなら構わないと思っていて、「『この子違う』って思ったら落としてください」と面接官に言ったくらいです(笑)。
──軸はどうやって作られたんでしょうか?
Bさん:とにかく他人に聞いていました。自力では絶対作れなかったと思います。例えば、飲み会の席で「私ってこうで〜」と適当に話していたことを、言語化が得意な子に「こんな生き方がしたいんだね」とまとめてもらってそれをメモする。そんなカジュアルな感じです。他にもインターン先のメンターさんが話を聞いて、きれいにまとめてくださったこともあります。
「主人公感」という軸ができたのも、友達に「おまえ、マジでルフィみたいだよな」と言われたのがきっかけです。私はこの言葉がめちゃくちゃうれしくて、中学時代に習い事のピアノと部活動を両立させながらも毎日3時間は練習してピアノの全国大会に出場し、塾でさえ親にお願いをして通い、結果的に自分の行きたい大学に行かせてもらうなど、これまでもそんな生き方をしてきた自負がありました。友達にさらに深掘りをしてもらい、「主人公感は意思決定の数の多さだ」とまとめてくれた子がいて、最終的な軸が定まりました。本当に周りの人たちのおかげです。
──主人公のような生き方ですか。そんな生き方をするための原動力はなんでしょうか?
Bさん:「絶対に後悔したくない」という気持ちでしょうか。就活では、はっきりとした目標があったわけではないですが、ただ自分の努力不足で落ちるのが悔しい、それだけのために対策を徹底していました。ゲームに近い感覚もあって、受かるか落ちるかみたいなところで、途中からそれを楽しんでいる自分もいました。
「やれるだけやって落ちたら胸を張って頑張ったと言えるけど、そうじゃないのは怠けている」と私は考えていたので、後悔のないように取り組んでいました。例えば「絶対にこれは受かったな」と思える選考でも慢心しないために「反省ノート」を作り、面接でダメだったところ思いつく限り挙げていました。
──反省ノートですか。それはすごい。
Bさん:私はグループディスカッション(GD)が得意でしたが、「あのときあの人に話を回せばよかった」とか「タイムキーパーはあの人だったけど、自分で時間を見ていればタイムオーバーをしなかった」とか、毎回振り返ってまとめていたんです。失敗を防ぐために、反省会を繰り返すだけで選考の突破率は変わると思います。ノートの他にも、Twitterで振り返りや選考のポイントを発信していましたね。
──反省を繰り返すことで着実に突破率を上げていくのは、誰でも実践できそうですね。他にも突破するための秘訣はありますか?
Bさん:就活仲間を作ることです。先ほどお話ししましたが、理系で就活する人はわずかで、情報が本当に少ない。積極的に情報を取りにいく必要があったため、情報共有や選考対策を一緒に行っていた人たちの存在が1番大きかったです。就活仲間はTwitterで集めていました。
──具体的にはなぜ就活仲間が必要だったのでしょうか?
Bさん:まずは情報を集めるため。「この企業受けたよ」という人がいたら、実際に話を聞いた方がどこの情報よりも正確ですし。そのうえで、「この企業は協調性が大事」とか、「集団面接は1分で話すことが大事らしいからタイマーを用意しておこう」とか、集めた情報で事前準備を徹底していました。リアルな情報を得られるTwitterは重宝していました。
もう1つは、モチベーションの維持です。就活は個人戦ではなく、団体戦の方が圧倒的に強い。周りが頑張っているから自分も頑張ろうと、自分自身を奮い立たせていました。学業と就活の両立は大変でしたが、それでも頑張れたのは就活仲間のおかげです。最終的にはフォロワーが3,000人以上になるまで、Twitterを使いこなしていました。
「理系=研究職」は思い込み。レールから外れた先にある自分らしさ
──最後に理系の学生へメッセージをお願いいたします。
Bさん:自分の可能性を狭めないでほしいです。理系だから研究職になるしかないと思い込んでいる人も多いですが、そんなことはありません。実際、私の周りでも「俺は教授の推薦がなかったらどこにも就職できなかった」と言っていたものの、個人的には文系職の方が活躍できそうなのに、と思うほど優秀な先輩もいました。
もし「推薦だと進みやすいから研究職にしよう」と考えていたら、それって本当にやりたいことか? 強みを生かせることか? と自分に問いかけてみてください。もちろん研究職に向いている人もいますし、大事なのは、初めからこれしかないと決めつけないことです。選択肢を広げてみたら、もっと自分に合った環境が見つかるかもしれません。そのためにも、まずは勇気を持ってチャレンジしてみてください。
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