「大学時代に頑張ったことは、ゼミとアルバイトでした」。ごくありふれた大学生だった佐藤岳歩は、就活で自身の可能性を最大限広げることを模索していた。
昨年12月、長期インターンをしていた会社で学生向けの新規事業を提案。そして今春からグループ会社の代表として、たった3人のチームで挑戦に船出する。
就活中に意識していたのは「予期せぬ出会いをどう引き起こすか」。ワンキャリアがHOPE by NewsPicksと進める特別コラボ企画「生き方就職 特別編」。今回はHOPE by NewsPicks チームのインターン生が、そのリアルに迫った。
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・【特別コラボ企画】生き方を狭める“固定観念”に気づいた瞬間。4人の大学生が向き合った就活のリアルを語り合う
──最初に、佐藤くんがはじめた事業と、株式会社The Youthについて教えてください。
佐藤:はい。The Youthが何をする会社かというと、一言でいえば「新しい、オープンな学生アパートメント」を作る会社です。
基本的には普通の学生寮と同じように部屋があって、みんなで集まれるラウンジがある。特徴は多国籍の方に入居いただくこと、そして1階のラウンジが街にひらかれたカフェバーラウンジであることです。
1階に行けば、その地域の大人たちや海外からの旅人がラウンジを利用しにきてくれる。2階から上に住む学生たちもラウンジを使うことで、出会うはずのなかった学生と大人の出会いが起こり続けていく。
これは僕自身が就活をしているなかでも強く感じたんですけど、若者が自分の可能性をどれだけ広げられるかって、「自分の知らない世界」を「自分の知っている世界」にどれだけ変えられるか次第じゃないかと。
だから、もっともっと学生同士が関わり合って、大人とも混ざり合って、自分と異なる文化や環境で育ってきた人々と出会えたら、人生の選択肢が広がるはず。そんな場をつくりたいと思っているんです。
親会社である「Backpacker’s Japan(以下、BJ)」が運営しているカフェ&ホステル事業のナレッジをベースに、2020年7月、僕が生まれ育った仙台で1棟目をオープンすることが決まりました。現在開業に向けて日々頑張っているところです。
また、先行して「The Youth Night」という名称で、The Youthが目指している空間・世界をイベントとして表現することもはじめています。
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自分の「好き」を仕事にしている大人たちをゲストに呼んで、夕方から前半はトークセッション、後半は同世代のDJが入ってくれて、学びもありつつ、食と音楽、お酒を楽しめるイベントです。ぜひ多くの学生に遊びに来てほしいです。
広い経験が強くする「好き」の思い
──まだ学生なのにグループ会社の社長って、ちょっと遠く感じちゃうんですけど、昨年の今ごろって何をしてました?
佐藤:元々、僕はめちゃめちゃ普通の学生だったんですよ。頑張ってたことはゼミとアルバイトだけだったので、それこそ就活では「自分の可能性を広げよう!」と思って、意識的に行動をするようにしたんです。
その中で去年の2月ごろでいうと、ちょうどBJで長期インターンを始めたタイミングでした。
同時並行で普通に就活もしていて、不動産業界を志望してました。いろいろな業界で短期のインターンをしたりもしてたんですけど、『あらゆる境界線を越えて、人々が集える場所を。』っていうBJのコンセプトにめっちゃ共感して、「ここで働きたい!」と思ったんです。
──夏は短期インターンに行っていたんですね。
佐藤:不動産・金融・IT・コンサルティング業界のインターンに行っていました。将来の方向性として、なんとなく「場づくり」に関わりたいという思いはあったんですけど、せっかく就活をするなら決め急ぐのはもったいない気がして、いろいろな業界を経験してみたかったんです。
だから就活は結構頑張っていました。結果的にIT企業のインターンがきっかけでBJに出会えたので、われながら間違っていなかったなと思います(笑)。
──BJへの入社を決意したのはいつごろでしょうか。
佐藤:明確に決めたのは5月あたりです。それまではずっと就活を続けていました。
夏のインターンでいろいろな業界をみたからこそ、より強く「場づくり」をしたいと考えるようになりましたし、その思いを形にするには総合デベロッパーという建物を造っていく会社に入るべきなんだろうと考えていました。
都営地下鉄・蔵前駅から徒歩4分に位置する「Nui. HOSTEL & BAR LOUNGE」にて取材が行われた。
なので冬は総合デベロッパー数社のインターンに参加しました。面白かったんですけど、ちょうどBJの長期インターンで新規店舗の開発事業をやらせてもらえていたこともあって、どうしてもBJの方が楽しかったんですよね。自分の手で事業を動かせる、自分の意思をより再現しやすい環境にすごいやりがいを感じていたんです。
──そこで入社を決意するんですね。ベンチャーへの入社に不安はなかった?
佐藤:正直、それほど不安はありませんでした。「安定」なんて分からない時代だと思いますし、多くの企業を見たからこその納得感もありました。
限りある自分の人生の中で、「安定」ファーストで選んでしまったがゆえに、楽しくなかったり、生き生きできない自分になったりする可能性もあるわけじゃないですか。それよりも好きを体現する、好きを貫くことが自分にとって大事なことでした。
──就活で「好きを貫く」って難しいなと思うんです。内定や安定に縛られないためには、何が必要なんでしょうか。
佐藤:自分の道を選ぶときに周囲の目を良い意味で気にしないこと、何より世界を広げて多くの出会いを重ねていくことはすごく重要だと思います。
特に後者。巡り合わせって本当にすごくて、僕自身、不動産以外のインターンに行っていなかったらこの会社とも出会っていないわけで。デベロッパー以外を一回受けてみようというほんのわずかな思いが芽生えて、世界が広がって、多くの出会いがあったからこそ、最高に好きな道を選んでいる自信があるんです。
──就活って「枠にはまる」イメージが強いですが、むしろ可能性を広げる場にもなるんですね。可能性を広げるためには何を意識するといいんでしょうか。
佐藤:それでいうと、最近「セレンディピティ(偶発性)」という言葉が好きで。
「予期せぬ素敵(すてき)な出会い」「計画的偶発性」というニュアンスの言葉なんですけど、このセレンディピティを意識することで、就活をチャンスに変えられるんじゃないかなと。
例えば、「やりたいこと」もしくは「こんなことに興味がある」を発信することで、出会いが生まれると思うんです。
同じ分野に興味を持つ同世代と集まれたり、「詳しい人がいるよ」と紹介してもらえたりも、一つの「予期せぬ素敵な出会い」ですよね。インターンで出会った友人に自分の好きなことを話していたら「めっちゃ会わせたい人がいる」とBJ代表取締役の本間を紹介してもらえたり。
それこそ自分もやりたいことを発信したからこそ、パートナーとして一緒に事業を立ち上げたいと思えた山本や三浦と出会えました。
こういった出会いがなかったら、就活をチャンスに変えていなかったら、全然違う生き方になっていたはずです。
──「好きを貫く」という価値観はどこで得たんでしょうか?
佐藤:幼少期に両親や親戚の方々に支えられて生きてきたこと、あとは海外留学の影響がでかいです。
高校時代に頑張って貯金して、一人でサンフランシスコに行きました。テレビで見た海外の風景や生き方の哲学みたいなものがすごく刺さって、あとは単純にサンフランシスコへの憧れもありました。
これが人生で初めての海外旅行だったんですけど、衝撃がすさまじかった。
黒人のおっちゃんがラジオの音全力で鳴らしながらバスに乗ってきたり、ショッピングセンターの中でいきなりライブが始まったり。
僕はそれまで周囲に気を遣ったり空気を読んで、多くの人が言いたいことがあっても言わない世界で生きていたので、「なにこの世界!」って。
驚いたし、何よりうれしかった。
自分の想いだったりやりたいことを素直に表現できる、かつそれが受容・称賛される社会を発見したんです。
──世界が広がって、「場づくり」という思いができていったんですね。
佐藤:まさにそうです。こんな「場」をつくりたいと思いましたし、そういった景色を見ることで、価値観が変わったり人生が変わったりすることもあるんだと気付きました。
知らない世界に、出会うべくして出会う
──会社にジョインして1年で子会社社長、CEOという立場になって、どんな思いがありますか。
佐藤:毎日、超怖いです。初めてづくしなので、「大丈夫かなこれ」みたいな、深夜まで日々向き合ってます(笑)。元々ごく普通の学生でしたから。大学1年生は、マジで何もしてなかったです。強いて言えば、アルバイトとゼミ活動は自分なりに頑張りましたけど。
特別なことはなかったと思います。ただ、やりたいことがあって、運命的な出会いがたくさんあった。就活がカギでした。
──やりたいことを言語化できている人って、なかなかいないですよね。
佐藤:そうですね。でも「やりたいことを持つこと」は、強要されているわけではないと思っています。
その人が楽しく生きていることが一番じゃないですか。そもそも社会は「あなたのやりたいことはなんなの」とプレッシャーをかけているわけではないと思うんです。僕たちが勝手に、 存在しないプレッシャーに、心身をすり減らしている気がするんです。
どっちが上だ下だとか、立派だとかないですよね。ないならないで、ないこと自体をどうやっていい方向に持っていくかをみんなで一緒に話し合うとか、そのくらい楽しみながらオープンに話し合う仲間たちがいたらそれでいいと思うんです。
ただやっぱり僕はやりたいことがあって楽しいなと思うので、仲間たちとオープンに楽しく、話し合うくらいの感覚で、それぞれの「好き」を見つけたり、醸成していけたりする世界が素敵だなと思っています。
──むしろ就活を好きを見つけたり醸成したりする機会にするのは良いかもしれませんね。
佐藤:そうですね。やっぱり対面で誰かと語り合ったり、直接聞いたストーリーって本で読むのとは比べ物にならないくらい心に残るじゃないですか。
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就活でたくさん出会って、自分の意見を発信するのと合わせて異なる意見を受け入れていくのって、素晴らしいことだと思うんです。
毎年出ている「小学生がなりたい職業ランキング」って、ここ20年くらいほとんど変わっていないじゃないですか。変わったのはYouTuberくらい。
世界中には数えきれないほどの職業があるのに、同じ職業が毎回ランクインしている。男の子でいうとまさにスポーツ選手とかお医者さん、女の子で言えばパティシエや看護師さん。
なぜ順位が変わらないかって、5歳の子供たちがその仕事しか知らないから。すごくもったいないと思うんです。
人や景色、自分が見たことも聞いたこともない世界に触れることで、自分の歩める道が増えて、歩みたい道も見えてくると思うんです。
自分の知らない世界に、出会うべくして、出会う。それだけじゃなくて、偶然もたくさん生まれる。そんな「場」をつくりたいんです。
だから、まずは人と会う。就活も「人と会うため」くらいのスタンスで、まずは少しでも楽しいとか興味があるところに行ってみることが大切だなと思います。
【編集:呉琢磨(HOPE by NewsPicks)、構成・撮影:日野空斗(HOPE by NewsPicks)、聞き手:古平翔太(HOPE by NewsPicks)、デザイン:岩城ユリエ】