──「入社4年目で経営幹部へ」。
採用ページに大きく書かれたこの言葉を、有言実行する東証一部上場企業があります。
UTグループ。社員数2.3万人、売上1,000億円を超える同社は、2018年に新卒採用において、幹部候補コースを開始しました。会社の未来を担う若手人材を3年というスピードで登用・育成すべく、採用を強化しています。
今回はそんな幹部候補コースの1期生である佐野良輔さんに話を伺いました。この春に入社4年目を迎え、いよいよ経営を担うことを期待される立場です。
「経営の本質は実行にあると思っている」と語る彼に、これまでの歩みを語っていただきました。経営人材を目指したい方にとって、先駆者のヒントが詰まったインタビューをぜひご覧ください。
佐野 良輔(さの りょうすけ)
早稲田大学卒、幹部候補採用の1期生として2018年UTグループに新卒入社。大学時代は学園祭実行委員の代表を務めながら、バーの経営や証券関係のインターンに参加。入社から3年目までは経営人材管理部門でグループ企業のPMIプロジェクトや全社の人事制度改定などに携わり、入社4年目の現在は新サービスのプロジェクト推進を主導している。
東証一部上場・1,000億円企業の幹部候補。入社1年目でPMI、4年目で新サービスを主導
──UTグループの幹部候補コースは、募集要項で「入社して3年間の成長環境を用意する」と明言しています。佐野さんは今まで、どのような経験をしてきましたか。
佐野:新卒から今年の3月までの3年間は、人事制度の策定・導入に携わっていました。入社4年目の今は部署を異動し、全社を巻き込んだ新規サービスのプロジェクトリーダーを務めています。サービスの全体設計、システム構築や体制づくり、マーケティングまで、サービスを作り込むところを幅広く担当しています。
<佐野さんが主に携わったプロジェクト>
◎入社1年目
・入社や異動対応などのオペレーション業務
・グループ各社の人事制度の比較検証
・グループ会社のPMIプロジェクトをリード
◎入社2年目
・全社の人事制度改定をリード
・人員計画の策定プロジェクトに参加
◎入社3年目
・グループ各社の人事制度の最適化をリード
・人員計画の策定をリード
・新サービスの立ち上げプロジェクトに参加
◎入社4年目(現在)
・新サービスの立ち上げプロジェクトのリーダーに抜擢(ばってき)
──これまでの業務で、印象に残っているエピソードを教えてください。
佐野:1年目の夏に子会社のPMI(M&A後の統合プロセス)に携わったことです。僕が担当したのは、スタッフ1,700名規模の派遣会社の人事制度を、親会社であるUTグループの制度と統合するプロセスです。プランを作るところから統合先の役員に対する提案、現場への説明まで、一貫してプロジェクトを主導しました。苦労も多かったですが、その分だけ視座が上がりました。
特に記憶に残っているのは、統合先の社長に「提案の内容は良いけれど、これでは従業員の人たちは納得できない」と指摘されたことです。人を巻き込む大変さと、言葉の力を痛感しましたね。資料に使う言葉ひとつをとっても、その先にいる従業員の方々をイメージしたときに「高圧的な印象を与えてしまっていないか?」「PMIによって現場の方々にどんなメリットがあるのかを提示できているか?」と考え続ける日々でした。
愚直にやりきる経験が、会社を束ね、変える今につながった
──1年目からPMIを主導し、経営陣と渡り合ったのですね。貴重な経験です。
佐野:補足すると、入社してすぐにPMIに関わったというわけではありません。入社してすぐは入退職・異動の対応や給与計算の確認など、人事の基礎ともいえるオペレーションに全力で向き合いました。並行して、子会社の人事規定を比較して課題を可視化するという調査もしていましたね。
実はPMIに携わるきっかけもこの調査です。人事制度を統合することでシナジーが生まれそうな点を上司に提案したところ、「プロジェクトをやってみないか」と声をかけてもらいました。
──UTグループの幹部候補コースでは、キャリアプランとして、1年目は「やりきる」2~3年目に「束ねる」「変える」をコンセプトにしています。やりきるフェイズは地道な業務に全力で向き合うことが大切だと感じました。幹部候補というと「すぐに新規事業に携われそう」などと華やかなイメージを持たれがちです。ギャップを感じませんでしたか?
佐野:いいえ、ギャップという感覚はなかったですね。会社のことを知らずに抽象度の高いテーマを与えられても、実現につながらなかったでしょう。入社後はいかに早く自社のことを理解し、必要とされる知識をインプットするかが大切だと思います。
今は僕が新卒のころよりも育成の仕組みが整っていて、入社半年までは現場研修としてグループの事業会社で拠点業務に携わってから、本配属の部署の中でやりきるテーマがアサインされますよ。現場を経験していないことで苦労することもあったので、入社早々に現場を経験できるというのは、当時の僕からしたら羨ましい限りです。
──華やかそうな業務に初めから携われるとしても、本人のキャリアや会社にとって意義があるかどうかは別問題ですね。新卒で人事に配属されたことをどう捉えていますか?
佐野:UTグループは人を商材とする企業です。そんな会社で内側から人を動かす業務に携わってみたいと思い、自分から人事への配属を希望し、ありがたいことに意向を汲(く)んでもらえました。人事として一貫して心がけているのは、自分が担ったことがないことも理解しようとする姿勢です。半ば業務外ですが、現場に入り込んで営業資料を作ってみたり、事業課題をヒアリングしたりしていました。
自分が当事者ではなくても、どこにどういう課題があるのかを把握しているからこそ、実現可能性の高い企画が作れるし、目標達成を促すマネジメントができると思います。
経営は「カッコよさそうな仕事」じゃない。その本質は「実行」にある
──入社からの3年間で、経営に対する考え方は変わりましたか。
佐野:学生のころの僕は、「経営」という言葉は知っていても理解はしていなかったように思います。なんだかカッコ良いフレーズというか……(笑)。イメージできるのは「ヒト・モノ・カネを動かすんだろうな」ということくらいでした。
今は、施策を作る力と人を巻き込む力の総体が経営だと思っています。ファクトを集めて「この数字をこう変えれば事業が伸びますよ」と分析するのはカッコよさそうだし、それっぽいけれど、経営の本質ではないと思っていて。
──興味深いです。どういうことでしょうか?
佐野:経営の本質は実行にあると僕は思っています。目的を達成するための選択肢をいくら並べても、実際にやってみるまではどれも仮説です。売上高を伸ばしたいなら、新たな顧客を獲得しても良いし、単価を上げても良いですよね? 目的を達成するためにどんな手を打つかの判断軸は、ロジカルな領域ではなく、「どのプランなら思いを持って実行できるか」だと実感しています。
PMIのプロジェクトでも、計画を立てたり資料を作ったりすることはそこまで負荷は高くありませんでした。ハードだったのはその後です。説明会で従業員の前に立って話をして、個別に資料を作って面談を重ねながら新制度に納得してもらって……。意志ある仮説を置いて、自分の言葉で人に説明し、計画を実現することの方がはるかに大変でした。カッコよさそうな業務には、見た目の魅力以上の苦労があります。
──経営の本質は、机上の空論ではなく泥臭い実行にこそあると。経営人材を目指す選択肢としてコンサルなどのプロファームを志す学生もいると思いますが、佐野さんはどう考えていますか?
佐野:「経営」という言葉の定義次第かもしれませんね。プロファームの価値は経営の判断材料を集め、スムーズな合意形成を手助けすることだと思います。決断を下し、プランを実行に移すのは事業会社側に委ねられます。個人的には決めることからすべてが始まると考えているので、コンサルは就職先に選びませんでした。
また、プロファームは一つの目的、事業、プロダクトを突き詰めるのは難しい環境かもしれませんね。僕はクライアントの立場でプロファームの方々と一緒に働いていますが、プロジェクトに一貫して関わる若手スタッフが少ない印象です。序盤の資料作成フェイズが終わったら、次のプロジェクトに移る方が多いのではないでしょうか。
3年間で経営幹部を育てる覚悟があったのは、UTグループだけだった
──ここからは佐野さんの就活時代のお話をお聞きします。当時はどんな就活の軸を持っていたのですか?
佐野:僕の就活は2つ段階がありました。最初のころは人気企業をとにかく受けるミーハーな就活をしていました(苦笑)。そこから事業を立ち上げたり、休学して都庁で勤務したりと、紆(う)余曲折を経てキャリアの方向性が固まりました。結果として、「日本から世界で戦えるビジネスを作りたい」という思いを実現できそうな企業を受けることにしました。
──そこで、なぜUTグループを選んだのでしょうか?
佐野:事業と環境のそれぞれに理由があります。事業について、僕はものづくりに携われることを軸にしました。一時期よりも弱くなったかもしれませんが、日本のものづくりブランドは、まだまだ世界で信頼を得ています。東南アジアなど発展途上国でも、決して安いわけではない日系の製造業が入札で都市開発に参入できています。それが何よりの証拠でしょう。
加えて、世界の潮流として多くのメーカーが自社の工場を持たずに企画・設計に特化しつつある中で、ものづくりのノウハウが蓄積するのは製造体制を提供する側ではないかとも考えました。製造業向けの人材ビジネスを手掛けるUTグループなら、日本のものづくり人材を活用したプラットフォームを実現できると思ったんです。伸ばしがいがある事業だなと。
──後者の環境についてはいかがですか。
佐野:新卒社員に対する期待値の高さを大切にしていました。UTグループの幹部候補採用は、入社後に得られる可能性や使わせてもらえるリソースの大きさがフィットしましたね。
──佐野さんは他社の幹部候補の選考も受けていたそうですね。UTグループは何が魅力だったのですか?
佐野:「入社から3年間でミドルマネジメント以上に引き上げる」という育成方針に興味を持ちました。この規模の企業でそういう採用枠を作るのは、組織的な葛藤が避けられないと思うんですよ。自分よりも若い新卒社員がマネジメントクラスに上がってくるなんて、もともといる社員は絶対嫌じゃないですか(笑)。軋轢(あつれき)が起きることを想定したうえで、本気で経営幹部を育てようとしている会社はUTグループしかなかったんですよね。
──経営陣の覚悟が伺えますね。幹部候補コースの1期生として、社内に前例のないキャリアを歩むことに不安はありませんでしたか?
佐野:会社に対するものというよりも、「この選択を正解にできるのか?」と自分に問いかける瞬間はあったかもしれません。これまでの歩みを振り返ってみると、この成長は他の場所では得られなかったと思います。
僕の周囲にはメガバンクやメーカーなど、いわゆる大手企業に就職した友人が多いです。入社4年目は多くの企業でジョブローテーションの1周目が終わる時期ですが、彼らに話を聞くと、1つの事業所で経験を積んできた印象を持ちました。かたや自分は、同じ期間で全社の経営を俯瞰(ふかん)して次の一手を考える思考が身についてきた感触があります。どちらのキャリアが良いというわけではありませんが、僕には今の環境が合っていると感じます。
──興味深いです。佐野さんをはじめ、UTグループの幹部候補生として活躍している人の共通点は何だと思いますか。
佐野:自分がやっていることに対して明確な意思を持っていることです。今の時点で将来のビジョンが明確でなくても、「どんな環境だったら頑張れるのか」「どんな物事に関わっているときに一番パフォーマンスが出るのか」という考えを持って、自ら環境をコントロールできる人が活躍しています。
そういう人だからこそ、ときには自分の意志にそぐわない課題を課せられても結果につなげることができ、活躍の場をさらに広げていけるのかと。逆に、事業計画作りだけをやりたい人や、専門性を確立したキャリアを歩みたい人には合わないかもしれませんね。
コロナ禍の就活は、企業側も不安。腹を割って話しましょう
──幹部候補コースの募集要項には「4年目以降は、3年間の経験を基にご自身でチャンスを掴(つか)み取っていただきます」とあります。佐野さんは入社4年目を迎えた今、どんな思いで業務に向き合っていますか?
佐野:新サービスの立ち上げに携わっていると、マーケティングやITプロダクトの領域など、門外漢の話に関わることも多々あります。自分で勉強したり外部の有識者を巻き込んだりしつつ、専門知識を身につけようとしているところです。僕が学んでいることは、この先もUTグループが新しいことに取り組もうとするときに必ず求められるはずです。会社が挑戦する機会に指名される存在になりたいです。
──まさに、チャンスを掴むために努力を続けているのですね。長期的なキャリアの展望も教えてください。
佐野:入社当時に描いていたプランとして、5年目までに新サービスの立ち上げをリードしたいと思っていました。ありがたいことに想定より早くそのポジションを得られたので、しっかり結果を出したいです。入社10年目までには、UTグループが海外で戦えるような足固めをしたいですね。国をまたいでもバリューが伝わるよう、競合と比べた優位性やサービスの価値を鋭敏にして、まずは日本国内で天下を取りたいと思っています。
──活躍のフィールドはまだまだ広がっていきますね。最後に、コロナ禍の中で就活する学生さんへのメッセージをお願いします。
佐野:就活生の皆さんが企業とリアルな接点を持てなかったり、実の伴う情報を引き出しにくかったりする大変さは、僕もよくお聞きしています。僕たち企業側も同じくらい不安で、お互いに心苦しい状態です。企業によって一定のルールはあると思いますが、気になった会社には「踏み込んで話を聞きたい」とアクションを起こして良いと思います。
UTグループとしては、こうした思いに向き合ったうえで学生さんのことを知りたいです。意識的に腹を割って話す場を作っていきたいですね。「面と向かって話す時間がほしい」、「会社に対しての意見を聞いてほしい」という壁打ちをどんどん挑んできてほしいです。
──この記事を読んで「佐野さんの話をもっと聞きたい」という問い合わせも歓迎ですね?
佐野:はい。「お申し込みはこちら」とテロップを出していただけると(笑)。
──頼もしいコメントです。佐野さん、ありがとうございました。
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【ライター:中山明子/撮影:赤司聡】