※こちらは2020年3月に公開された記事の再掲です。
あなたは20代のうちに、どんな仕事をしたいだろうか?
頭に浮かぶことはさまざまだろう。現場に出て多くの経験を積みたい。会社の事業を引っ張るコア人材になりたい。いや、経営にまで携わってみたいという人もいるかもしれない。
ここに、「25歳で日本有数の成長企業の役員になった男」がいる。
レバレジーズ 藤本 直也。彼は学生時代のインターンを経てレバレジーズに新卒入社し、3カ月で事業責任者、2年目で事業部長に昇格した。そして入社4年目、弱冠25歳にして執行役員に就任し、社員数990人・年商342億円を売り上げる(2019年3月末時点)同社の成長をリードしている。
創業メンバーではなく新卒社員としてスタートラインに立ち、これほどのスピード感で日本有数の成長企業の経営に参画している20代は日本にも数えるほどしかいない。彼は、いかにして経営者への道を駆け上ったのか。今回は、藤本氏のキャリア論をもとに、最短で経営人材にたどり着くためのヒントを探る。
<目次>
●3カ月目で事業責任者、2年目で事業部長、4年目で執行役員。トップスピードで階段を駆け上る
●迷いを断ち切ったのは、20代の経営者として背中を見せる覚悟
●経営人材になる方程式:「仕事を作る」×「会社の柱になる」×「急成長企業」
●「最強の剣」よりも「剣の使い手」であれ。スキルはコモディティ化する
●「学びたい」「成長したい」と言っているうちは、経営人材にはなれない
●新卒で入るべき会社には賞味期限がある
●本気で事業を作るインターン。「メンター、マジで怖い」と言われても手を抜く気はない
3カ月目で事業責任者、2年目で事業部長、4年目で執行役員。トップスピードで階段を駆け上る
──まずは、藤本さんの今のお仕事について教えてください。年商400億円企業の執行役員は、どんなミッションを担っているのでしょうか?
藤本:レバレジーズ全社の経営管理、人事戦略、企業ブランディング、新規事業の創造まで、フィールドを問わず任されています。事業運営を考えるときはCOO(最高執行責任者)、経営数字や予算を管理するときにはCFO(最高財務責任者)、利益の適正化を考えているときはCRO(最高売上責任者)のような動きをしています。ちょっと乱暴な言い方ですが、代表の岩槻の目が届かない部分を補っていく役割です。
藤本 直也(ふじもと なおや):レバレジーズ株式会社 執行役員。1991生まれ。大阪大学工学部卒業後、2014年レバレジーズへ新卒入社。マーケティング部、新規事業の責任者、レバテックの経営企画を担当後、25歳でレバレジーズ史上最年少の執行役員に就任。就任後は人事責任者、新規事業の統括を経て、現在は経営企画室長を兼任する。(所属部署はインタビュー当時のものです)
──経営者としての高い視座と事業家としての推進力を、同時に求められる仕事なのですね。藤本さんは、25歳の若さで執行役員に就任しましたが、そこに至るまでの道のりを聞かせてください。
藤本:1年間の学生インターンを経て、新卒入社3カ月目で立ち上げに携わった事業の責任者になりました。入社2年目からは事業部長になり、入社4年目で執行役員に就任しました。
──すさまじいスピードで経営者への道を駆け上がっていますね。まず、入社3カ月でメンバーから事業責任者へと昇格できたのはなぜですか?
藤本:目の前のことに着実に取り組みながら、事業責任者の仕事を自分から取りに行ったからです。社内のいろいろな人とコミュニケーションを取り、全ての依頼に対して期待に応えるアウトプットを出せるよう心がけました。その傍らで、事業が直面している課題を明らかにし、改善の提案をし続けていました。そうしたらある日、代表の岩槻からの提案で、「藤本が事業責任者になったらいい」と事業を任されることになって。責任者になってからは、事業の意義やビジョンをメンバーに理解浸透させ、その戦略を実現するために対話を重ねながらチームのアウトプットの最大化に取り組みました。
──そこから事業部全体や全社の経営でもインパクトを残すため、どのように視座を高めていきましたか?
藤本:会社に対してより広く・より大きなインパクトを与えられるように、全社のリソースの最適配分を意識していました。事業責任者になってからは、自分が使える時間には限りがあると強く感じました。同じ労力を割くにしても、1回で1,000円が動く施策から1億円が動く施策まであるわけですから。
迷いを断ち切ったのは、20代の経営者として背中を見せる覚悟
──順風満帆なキャリアを歩んできたように見えますが、今まで迷いや葛藤はなかったのでしょうか?
藤本:執行役員のポジションを打診されたときは、辞退しようかと2カ月悩みました。私は学生時代から、「自分の死後に世の中に残るような事業を作りたい」と思っていました。組織や経営よりも、事業作りに集中したい気持ちが強かったんです。
──それでも、最終的に役員に就任することを決心したのはなぜでしょう?
藤本:日本のベンチャーをさらに盛り上げたかったからです。日本の代表的なベンチャー経営者を見ても、孫正義さんは60代、メルカリの山田進太郎さんは40代と、自分よりずっと年上なんですよね。もし自分が「20代の経営者」というロールモデルになれれば、日本のベンチャーにも夢があると優秀な若者たちに示せるのではないかなと思いました。
「日本はもう危ない、海外に出るべきだ」という人もいますが、日本企業は資金力があるし、ビジネスのインフラも整備されていますから、まだまだ世界で勝てると思っています。リクルートが海外の企業を相次いで買収したことも記憶に新しいですよね。
──自分の背中を後続世代に見せる決意をしたのですね。確かにマーク・ザッカーバーグのように、20代で大成功した日本の経営者はなかなか思い浮かびません。実際に執行役員になって、変化を感じたことはありますか?
藤本:何かギャップがあったかというと……そうでもないですね。でも、肩書は社外に対する有効なツールになりました。執行役員という肩書のおかげで情報が集まりやすくなるし、他の経営者とも対等に話せるというメリットがあります。一方、社内での動きは思いのほか変わりません。むしろ、若いメンバーに気を遣われるのがちょっと寂しいですね(笑)。
経営人材になる方程式:「仕事を作る」×「会社の柱になる」×「急成長企業」
──これから社会人になる学生に向けて、藤本さんのように最速で経営人材になる方法として、どんなアドバイスを送りますか?
藤本:「自分で仕事を作り」「会社の柱になる」ことです。そして、チャンスが豊富にあるのは「急成長している企業」でしょう。急成長フェーズにある企業は、目まぐるしい変化によって組織が不安定になっていることがほとんどです。このカオスの中で問題解決の先頭を走り切る行動ができれば、間違いなく事業のトップに抜擢(ばってき)されます。
──「仕事を作る」「会社の柱になる」「急成長企業」の3つについて、詳しくお聞きします。まず、事業へのインパクトの大きい仕事を自分で作り出すためのコツはありますか?
藤本:何より大切なのは、課題をどこに設定するかです。課題設定の時点でセンターピンを射抜けていないと、その後出てくるのは部分最適な施策にとどまり、根本的な解決ができないまま時間が過ぎてしまいます。ここで問われるのは、ロジックではなく、ミクロな「虫の目」とマクロな「鳥の目」を行き来するセンスです。ロジカルシンキングができる人はたくさんいるけれど、課題設定のセンスがある人は稀(け)有ですね。
「最強の剣」よりも「剣の使い手」であれ。スキルはコモディティ化する
──センスの他に、経験やスキルが重要だと考える学生も多いと思います。
藤本:ビジネスパーソンとして成長したいなら、経験やスキルよりもセンスの方がはるかに重要です。例えば本当に優秀なエンジニアは、事業課題をクリアするためなら未経験のプログラミング言語まで身に付けます。数カ月もすれば技術経験が長いエンジニアと同等か、それ以上のレベルに達していることも珍しくありません。インターネットで情報を簡単に得られるようになり、一定水準のスキルは努力すれば誰でも手に入る世の中ですから。
──スキルがあっても問題解決ができるとは限らない、と。
藤本:その通りです。センスとは、つまり「状況に応じてスキルをどのように使うか判断する力」です。RPGに例えるなら、スキルや経験は「剣」や「槍(やり)」のような武器だと思います。センスは、どんな武器をどう組み合わせてモンスターを倒すかを考える能力です。その組み合わせには正解はありません。確かに、強い「剣」があれば倒せるモンスターも増えますが、全てを一撃で倒せる「最強の剣」を手に入れるのはすごく難しいし、そもそも存在しないかもしれない。戦術の幅を広げた方が応用が利きます。
──優れたスキルや高い専門性を武器に活躍している人もいると思いますが?
藤本:例えば、コンサルティングファームや広告代理店の方々ですよね。彼らの場合、スキルが高い方が成果を出せます。なぜならクライアントは、何が課題か、どのような剣が必要かを認識した上で、彼らの剣にお金を払うので。一方、事業会社で力を発揮できるのは「剣の使い手」になれる人ですね。広告は代理店に依頼できるけれど、事業の成長はアウトソーシングできません。
「学びたい」「成長したい」と言っているうちは、経営人材にはなれない
──次に、「会社を支える柱になる」ためにはどうすれば良いのでしょうか?
藤本:自ら学んで、自ら育つというマインドセットを持つことです。誤解を恐れずに言いますが、会社を支えるような人材になりたければ、自分の成長を会社に任せきりにしないでほしい。レバレジーズにも「自己成長したい」「優秀な人たちと働きたい」という学生がたくさん受けに来ます。すると私は、「あなたの自己成長のためだけに会社があるのではない」と思うわけです。企業はクライアントや社会に価値を届けるために動いてるので。それに、優秀なメンバーと同じ環境で仕事をすれば成長できるとは限りませんよね。むしろ、「自分がレバレジーズを支えてやる」「藤本を抜かしに来た」という人を歓迎します。
──「会社の支え方」を誰かが手取り足取り教えてくれるわけではない、と。
藤本:おっしゃる通りです。そもそも、「自分の足で立って責任を負える人材」こそが会社を支えていけるので、「教えてほしい」という他力本願の姿勢ではいつまでたっても経営人材にはなれません。「どこに入社したら会社を支えていける人材になれるか」という考え方は捨て、「自分が会社を支えていくんだ」と、前向きに、主体的に動いてほしいと思います。
新卒で入るべき会社には賞味期限がある
──3つ目の条件、「急成長企業」についてもお聞きします。経営人材を目指す学生が入るべき「急成長企業」の条件を教えてください。
藤本:(1)売上と社員数が急増している(2)新卒社員の比率が高い企業だと思います。この2要件を満たす会社は、会社の中核を担う人材を求めるフェーズかつ新卒のポテンシャルに期待しているので、カオスな環境に飛び込むチャンスです。加えて、現在企業経営に携わっている僕の感覚で言えば、「売上高1,000億円未満の企業」が狙い目だと思います。周囲の企業を見ていると、1,000億円を超えたあたりで採用ブランドが切り替わり、優秀な人材が集まってくる印象です。さまざまな企業で活躍してきた中途社員が一気に集まってくる前に新卒入社した方が良いでしょう。
──もし、藤本さんがもう一度新卒で就活するならどの企業を選びますか?
藤本:もう一度レバレジーズに入ります。
──即答ですね(笑)。
藤本:ここまで新卒に任せる会社は珍しいと思います。レバレジーズが新卒に仕事を任せているのは、能力の高い新卒社員を採れているからです。しかし、うちもあと5〜6年くらいで売上高1,000億円に到達する見込みです。自分で言うのもなんですが、今が新卒入社の狙い目だと思います。
本気で事業を作るインターン。「メンター、マジで怖い」と言われても手を抜く気はない
──藤本さんが審査員を務めるサマーインターンシップについても聞かせてください。改めて、レバレジーズのインターンの魅力は何でしょう?
藤本:「本気の職業体験」ができることです。レバレジーズでは、実際に来年やりたいと思っている事業をインターンの課題にします。「インターンのためのインターン」をする気はありません。自分たちがやりたい事業をテーマにするわけですから、私たちも本気です。メンターにも、日本のトップレベルにいるような優秀な社員をつけます。仕事を通じ、自分の現在地と優秀なビジネスパーソンとのギャップを味わいたい人を待っています。
──そのギャップに打ちのめされる経験もできそうです。
藤本:インターンの参加者から「レバレジーズのメンターはマジで怖い」と言われているのは知っています(笑)。私たちは、学生をお客様ではなく事業の担当社員として扱います。ですから、成果が出なければ、「どうしてできないのか」と問いかけます。人と事業に真剣に向き合っているなら、当たり前に出る言葉だと思っています。
──最後に、この記事を読んだ学生に向けてメッセージをお願いします。
藤本:みなさんの「将来ありたい姿」「将来やりたいこと」は、今の行動とリンクしていますか? そうでないなら「イケてない」状態だと自覚してください。やってみたいことがあるなら、今すぐにアクションに移した方がいい。私自身も、レバレジーズを日本を支える企業にしたいと行動し続けたからこそ今があります。正直なところ、「藤本の今後の展望」を聞かれても、大それたことは思い浮かばないんですよね。レバレジーズを大きくするために、できることを行動に移していくだけだと思っています。お互い、目標に向かって徹底的にコミットしていきましょう。
──藤本さん、ありがとうございました。
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【ライター:スギモトアイ/編集:中山明子/カメラマン:保田敬介】