東大・京大生の69.2%が、就職先を決める際に重視する要素として「スキル・経験」を挙げている──。
大企業でも終身雇用を守れなくなっている今日、社外でも通用するようなスキル・経験を重視して就活をする学生が増えています。
「転職を見据え、市場価値が高める会社を選ぶべき」「自己成長ができる会社を選ぶべき」といった言葉を聞くことも珍しくなく、上のデータも、スキルや経験を得ることで市場価値を高めたいという思いの表れといえるでしょう。
しかし、「市場価値を高める会社」「成長できる会社」を選ぶための具体的な方法を聞く機会はそれほど多くありません。そこで今回は、東大・京大を卒業し、現在はエムスリーで働く3人の若手社員に、会社選びの思考法について伺いました。エムスリーは、企業価値1兆7,800億円、売上高1,130億円(※2019年11月現在)、国内外に50もの事業を持つ医療業界の巨人ともいえる存在。3人はどのような考えで就職活動を進めていったのでしょうか。
「コモディティ化したスキル」の獲得を目指しても意味がない時代が到来している
──近年は転職ありきで就活する学生は増えてきており、ファーストキャリアに「成長できる環境」を求める傾向にあります。この風潮について、東大・京大出身であるみなさんのお考えをお聞かせください。
白川:東大生・京大生など、多くの優秀な学生がファーストキャリアで「スキル・経験」の獲得を求める気持ちはとてもよく理解できます。それは獲得したスキルや経験をベースに、将来的に他者には真似できない自分ならではの仕事がしたい、自分の市場価値を高めていきたい、という気持ちが強いからだと思います。
私がここで1つお話ししたいのは「スキル・経験」が得られたら何でも良いというわけではなく、どんな「スキル・経験」を追い求めるかが明暗を分けるということです。
つまり、社会の変化の速度が速いこれからの時代において、大切なのは「型化された業務知識」の獲得ではなく、「まだ型化されていない、今よりも一歩先にある事業やプロダクトを作り出す能力」の獲得だということに気付いているか。これがとても大事だと思います。こうした、いわば「経営人材としての資質」ともいえる能力を20代の若いうちから磨いていくことが、これからの時代を勝ち抜くための必須条件になるのではないでしょうか。
久野:私も白川さんの意見に賛成です。コモディティ化したスキルをどれだけ習得しても、これからの時代に市場価値を高めていくのは難しいと思うからです。
これに関連した話で、「成長したい」という学生がよくいますが、私は「成長」は手段であって、目的ではないと思っています。
私の場合、「近い将来、自分の手でプロダクトやサービスを作りたい」という気持ちが強いのですが、これがキャリアの目的であり、成長はそのための手段です。
社会人になった当時は全く何をしてよいのか分からなかった自分が、1年半の仕事経験を通じて今はある程度やるべきことが見えてきている。これこそが成長だと思います。
何が言いたいかというと、「成長」や「スキル・経験」の獲得を考えるとき、一度立ち止まって「目的は何だろう?」と考える癖をつけてほしいということです。
江口:とはいえ、最初から明確な目的がない、という就活生も多いと思います。私自身、そうでしたから。
私の場合、就活中に人に言える明確な夢や目的がなくても、「自分が30代になってやりたいことができたとき、それを実行し、実現できるようになりたい」という漠然とした気持ちはありました。
私の場合、キャリアの目的は「30代でやりたいことをやれる自分になること」であり、「20代のうちにガムシャラに努力して自分の可能性を最大限高めること」が成長になるのかもしれません。
成長産業×成長企業×成長環境の「成長の3乗法則」があてはまる企業を探そう
──みなさんは就活をしていた時、「20代での自己成長」についてどのように考えていたのでしょうか?
江口:私は「20代で最も成長できる会社」を探して就活をしており、さまざまな企業のインターンに参加し、優秀な学生にも数多く出会いました。しかし、インターンに登場する各社のエース社員と比べると私たち学生は無力で、「将来優秀になる可能性はあるけれど、現状何もできない人」に過ぎない、就活生の間には誤差程度の実力差しかないと感じていました。ではどこで差がつくのか? と考えてみると、これは「20代の働き方」に違いないという結論に行きついたわけです。
それ以来、20代にどんな会社で、どんな仕事をして、どんな経験をすれば、30代以降の自分の市場価値が最大化するのか。つまり、将来人生をかけてやりたいことが出てきたときに確度高くそれを実現できる人材になれるかを考え続けて就活をしました。
──おそらく「20代で最も成長できる会社」を見つける方法は、多くの就活生が知りたいテーマだと思います。みなさんは、どういう点を見て企業選びをすべきだと考えていますか?
江口:結論から言うと、「成長産業×成長企業×成長環境」の3要素で考えるべきだと私たちは考えています。
20代の自己成長を一番に考えるなら、「どれだけチャレンジする機会を得られるか」が何より大切です。その視点で考えると、当たり前ですが、成長産業と成長企業はチャンスが生まれやすい環境と言えるでしょう。成長している市場のほうが事業を作っていてもどんどん伸ばしていけるので楽しいですしね。
白川:社内にチャンスが存在していても、そこに関わることができるのは実務経験のある年次の高いベテラン社員や中途入社の人たちだけであり、新卒が関わるのが難しいという企業もあるので注意が必要です。
ですから、その企業が「新卒にとっての成長環境を提供しているか」を見極めることも重要だということを強調したいと思います。
成長産業や成長企業は調べれば分かるが、成長環境は冷静な見極めが必要
──「成長産業×成長企業×成長環境」の3要素を見極める上で、注意すべき点はありますか?
白川:成長産業、成長企業かどうかは、企業のWebサイトでIR情報(投資家向け情報)などの公開データを見たり、会社説明会に参加したりすれば大体把握できます。
しかし、「成長環境」を見極めるのは難しいと思います。繰り返しになりますが、成長産業・成長企業だからといって新卒社員にとっての成長環境があるとは限りません。たとえ企業が成長していても、新卒社員1人1人に入社当初からどれだけ発言権や裁量権が与えられるかは外部からは分かりづらい部分ですから、冷静な見極めが必要だと思います。
江口:私はこれを見極めるためには、インターンを活用するか、新卒2、3年目の現役の社員に話を聞くのが最も効果的だと思います。
私なら組織の中で「自分で創り出した仕事と割り振られた仕事の割合」「普段仕事を一緒に進めているチーム人数」「出席している会議での発言回数や内容」などを徹底的にヒアリングしますね。企業間での目線をそろえて比較・見極めできるよう定量的にヒアリングできればなお良いですね。
私たち3人が選んだエムスリーはなぜ「20代で最も成長できる会社」と言えるのか?
──「成長産業×成長企業×成長環境」という軸で見ると、みなさんの選んだエムスリーはどうでしょうか?
江口:成長産業、成長企業の要素はとても高い水準で満たしていると思います。日本の医療費はこの20年で30兆円から40兆円に増加しています。さらに、エムスリーはその中でも大きな成長の余地があるIT分野で事業を展開しており、創業以来、昨年度対比120%成長を続けている成長企業です。私も就活の際にさまざまな企業を調べましたが、成長率の高いIT産業の中でも、エムスリーほど持続的に高成長を遂げている企業はないと感じ、入社を決めました。
久野:海外展開と事業数拡大に積極的なのも、成長企業としての要素に入るのではないでしょうか。2010年から2018年の8年間で、事業を行っている国は3カ国から10カ国に、事業数は10事業から50事業にまで増加しています。
──エムスリーは「新卒にとっての成長環境」という点ではいかがでしょうか?
白川:「打席に立てる回数(意思決定機会)が多い」という点で恵まれていると感じています。エムスリーには「社長意識」という言葉があり、「自分が社長だったらどうするか?」をあらゆる業務で問われます。若いうちから自分で決めて良い、むしろ決めなくてはならないという状況に置かれると、自然にプロジェクトリーダーとしての当事者意識が芽生えてくるものです。私自身、意思決定の精度は入社当初よりずっと高まったと思いますし、急成長できる土台ができたと感じています。
──前回のインタビューでも、「経営に近付くためには、新卒からバッターボックスに立つしかない」という話がありましたね。
マッキンゼー、ゴールドマン・サックス、リクルート出身者が語る「今、日本のトップ学生が選ぶべきファーストキャリア」とは?
白川:学ぶべき人(師匠)が多いことも魅力だと思います。私は新卒入社からこれまでで4つの部署を経験していますが、その全ての部署にベンチマークになるような先輩(師匠)がいました。例えば、マッキンゼー出身の上司からは「ロジカルシンキングや現場で情報をつかんでくる方法」を、元スタートアップ出身の上司からは「ユーザーへの価値提供に徹底的にこだわる姿勢」をたたき込まれました。関わる先輩社員のバックグラウンドによって学べることは違いますし、みなさんから教わったことは全て今の仕事に生かされています。
「医療×IT」の領域で世界標準を創る仕事ができるのが、エムスリーで働く醍醐味(だいごみ)のひとつ
──江口さんと久野さんは、エムスリーの環境についてどうお考えですか?
江口:事業に前例があると、過去の成功例や型に沿ってしまうため、自分では考えなくなり、「思考停止状態」に陥ります。しかし、エムスリーのビジネスは世界的に見ても例がなく、私たちがファーストペンギン(※)という状況です。したがって、誰も正解が分からない手探りの状態で意思決定をしていくため、頭をフル回転させています。
お手本がない事業を展開しているからこそ、エムスリーには「答えは自分で作っていくもの」という文化が根付いていると思います。型化された仕事はAIに代替される時代には、「前例のないことに取り組み正解を創り出していく経験」がとても重要です。その意味では新卒から「前例のない、正解のない課題」に取り組めるのはエキサイティングですし、とてもラッキーなことだと思います。
(※)……リスクを顧みず、新しいことに挑戦する人
久野:エムスリーの海外事業では、国内事業の成功例を参考にしますが、法規制や商習慣が違う国で日本式をそのまま適応できるとは限りませんから、地域に合わせたベストプラクティスを自ら作っていくことになります。
私自身、まだ新卒2年目ですが、今年度中にM3 USAへ出向する予定です。IT産業ではアメリカや中国に先を越されている分野が多く、日本がパイオニアというビジネスはなかなかありません。ですが、「IT×医療」の領域ではエムスリーは世界に類をみないビジネスを展開しており、その事例を引っ提げて世界に挑戦できるので、これは非常に貴重な機会だと思います。
「エムスリーは中途の会社」の誤解。1事業を10人で回す組織体制だから、新卒にも必ず打席が回ってくる
──白川さんのお話にもあった通り、エムスリーには元戦略コンサル、元投資銀行、元ベンチャー経営者など、華やかな経歴の方が集まっています。そのため、「エムスリー=中途社員が活躍する企業」という印象を持つ学生も少なくないと思いますが、新卒入社しても活躍できる素地は整っているのでしょうか?
白川:新卒にも活躍のチャンスはたくさんあります。
その最大の理由は、事業数に対して関わる社員数が圧倒的に少ないということです。
2018年現在、世界中で50の事業を展開していますが、それを400人程度で回していますから、1事業あたりの人数は単純計算で約8人。事業以外を担当するコーポレートの社員もいますから、実際のチームの人数はもっと少ないわけです。社員によっては1人で複数の事業を担当しているような状況ですし、新卒でも山ほどやるべきことがあります。今のエムスリーはできる新卒ならどんどん仕事を任せてもらえる状況ですね。
久野:正直、新卒か中途か関係なく、エムスリーという企業は誰に対しても平等です。
経験が少ない新卒でも、短期間で努力を重ねてその分野のクライアントの課題、事業課題を最も理解し、自らアクションを取ることが求められます。つまり、1人1人がプロフェッショナルとして仕事をすることを求められるわけです。
また、上下関係というものがカルチャーにないため、「私の意見はこうです」と堂々とチームに自分の意見を述べることが求められます。私はもう2年近くこの環境で仕事をしているので慣れてしまい当然のことと思っていますが、大学の同期で大手企業に就職した友人からは「うちでは考えられない」「そもそも意見を求められる機会がまだない」などと言われることが多く、今のエムスリーの環境はとても恵まれているんだなと実感しています。
逆に言えば、新卒を特別扱いしてゆっくり育てていく土壌が整っている企業ではないので、少し厳しいようですが「教えてもらわないと何もできない」「言われた通りやるので、活躍できるように育ててほしい」という受け身の人には全く向かない会社かもしれません。
自ら考え動くことを求められるのは、20代での圧倒的な成長を期待されているから
──最後に、この記事を読んでいる就活生に向けてメッセージをお願いします。
久野:まずは「自分が何をやりたいか、どうありたいか」を考え、その大きな目的にフィットする会社を見つけてほしいです。
「海外で仕事をしたい」「あの人みたいになりたい」「新規事業が創れるようになりたい」「◯◯×AIがやりたい」など、今の自分の感性で自由に目的を設定してみてください。
「自分は人生をかけて本当は何がしたいのか?」と大きく考えすぎると、答えを出すのも難しくなります。まずは手軽に今の自分は「こんな風になりたいかも」「こんなことがしたいかも」をたくさん出してみてください。
そして企業の人に、「御社に行くとこんなことできますか? こんな人になれますか?」と自分の思いをぶつけることから始めるといいと思います。
何度も言いますが「成長」は目的を達成するための手段です。成長を考える前に、まずは目的ドリブンで考え、動いてみてください。
江口:「誰かが良いと言うからその企業や業界に行く」という発想でキャリアを決めてしまうのは、思考停止以外の何物でもなく、ある意味で自分の人生に対する責任を放棄していると言えます。久野さんの考えとも似ていますが、他人からどう見られるか(親の目、友人の目、世間の目)は置いておいて、自分がどうしたいのかに限りなく素直になることが最重要です。それでも迷ったときは一番カオスな選択肢を選んだ方が良いと思います(笑)。
それから「決めたからにはこの意思決定は正解だったと自分で言えるように行動する」ということは入社前に決めておいた方がいいですよ。
白川:ここまでの話から「エムスリーは結構厳しい会社かもしれないな」「自分はエムスリーでやっていけるかな?」という不安を感じる就活生もいるかもしれません。
ですが、20代の若いうちから自分の頭で考え動くことが求められるのはこの上なく幸せなことだと思いませんか? なぜなら、自分の頭で何も考えずにただ言われたことをやっていると、知らず知らずのうちに何の市場価値もないありふれたビジネスパーソンになってしまうリスクがあるからです。AI時代は「人がやるべきこと」が限られてくるので、市場価値の低い人材になることのリスクは今まで以上に大きくなります。まだ経験の少ない新卒にも厳しく接してもらえるのはプロとして尊重されているということであり、「そのペースで20代を乗り切り、30代には一線で働けるビジネスパーソンとして大成してほしい」という組織の温かさの表れだと私は思います。
もしこの記事を読んでエムスリーの門をたたいてみようと思った方がいたら、「厳しい会社だからこそ地力がついて思いっきり成長できて面白そう! ワクワクする!」という逆転の発想で飛び込んできてほしいです。
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【ライター:スギモトアイ/編集:辻竜太郎/カメラマン:保田敬介】
※こちらは2019年11月に公開された記事の再掲です。