こんにちは、ワンキャリアの多田薫平です。
ワンキャリアに1人目の新卒として入社し、今は事業企画や採用コンサルティング、キャリアアドバイザーなどをやっています。曲がりなりにも4年間、1年に1,000人以上の就職活動生と会って相談に乗り、さまざまな「悩み」を聞く生活を続けてきました。
特集「就活の羅針盤」は、今まで聞いてきた就活生の悩みを元に始まりました。悩んだところで絶対に答えが出ないことを考えていたり、本当に考えるべきは別の問題だったりする。そうならないための思考法を提示しています。
第4回は、エントリーシート(ES)や面接を通過するポイントを説明します。どちらも就活する中で出合う障壁の一つですが、共通する「ある前提」を知っていれば、乗り越えられます。
ESに時間をかけるのはもったいない
──1〜3回目で、下の図の「選ぶ問題」を考えてきました。
多田:次は「受かる問題」を見ていきたいと思います。この中でもESと面接は「どうやれば、受かるの?」と聞かれることが多いです。
特にESについては、ただでさえ忙しい就活生が、ES作成にかける時間って本当にもったいないと思います。「通過するESがもっと簡単に書ければ、企業を知る時間をもっと作ることができるのに」とも思います。
──確かに、受かるための対策に使う時間を減らして、「自分はどんなキャリアを歩みたいのか」「あの会社に行くと、どんなキャリアが築けるか」を考える時間を作った方がいいですね。
多田:そして、面接もESもポイントは同じです。「分かりやすいか」と「Why起点で書かれているか」の2つです。
「分かりやすいES」は「優秀なビジネスパーソンの視点」で書いてある
多田:「Why起点で書かれているか」については、自己分析に関係する部分が大きいです。自己分析については次回で話そうと思っているので、今回は「分かりやすいか」について話します。
──そもそも「分かりやすいES」ってどんなESなんですか?
多田:合計で数千枚のESを見ていますが、「分かりやすいES」って実はほとんどありません。つまり、「分かりやすいだけ」で抜きんでる可能性が高いんです。
──分かりやすいと、通過率はグッと上がるんですね。
多田:そして、分かりやすさとは「優秀なビジネスパーソンの言語に合わせて書いてあること」です。「優秀なビジネスパーソンの視点」でESを見ますし、面接でも同じ視点を持って学生の話を聞きます。
──それは、「面接官が優秀なビジネスパーソンだから」でしょうか。
多田:そうではありません。ここでは自分のことは棚に上げますが(笑)、優秀なビジネスパーソンでない大人もいると思います。でも、大人たちは面接するとき、優秀なビジネスパーソンと同じ見方をしているのです。
──「この人は優秀なビジネスパーソン」だと評価するときと同じ判断軸で、学生も評価するのですね。確かに、それなら優秀なビジネスパーソンの視点で話せば、面接官にとっては分かりやすいかもしれませんね。
でも、社会人経験のない学生が、優秀なビジネスパーソンの視点が分からないのは当然です。具体的に何を意識すれば、優秀なビジネスパーソンの視点が持てるのですか?
ガクチカが全国大会優勝でも「Check」が抜けていると伝わらない
多田:PDCAの「C」の視点です。PDCAは、Plan(計画して)→Do(やってみて)→Check(振り返って)→Action(またやってみる)のサイクルです。
──社会人になると「PDCAを回せ」とよく言われますものね。でも、なぜ「C」の部分なのですか?
多田:まずは、下の図を見てください。
優秀なビジネスパーソンは、このCheckの部分を細かく分解しています。ESも面接も自分がやってきたことのCheckをする場ですよね。面接官が「分かりやすい」と思うためには、これくらい細分化して伝える必要があるのです。
「学生時代に力を入れてきたこと(ガクチカ)」について、就活生は「その内容が大事」と考えがちです。確かにその一面もありますが、「そもそも、分かりやすく伝えられているか」をしっかり認識する必要もあります。
──ガクチカが全国大会優勝だったとしても、そのプロセスや努力が面接官に伝わっていなかったら、意味がないですものね。でも、具体的にどうすればいいのでしょうか。
優秀なビジネスパーソンは課題(Task)の深掘りができている
多田: まず、必要な要素は次の5つです。
・目標(Goal)
・現状(Situation)
・課題(Task)
・解決策(Solution)
・結果(Result)
そして特に大切なのが「課題の深掘り」です。
──「課題の深掘り」とは何でしょうか。
多田:まずは、「優秀なビジネスパーソン」の視点から考えてみましょう。例えば、あなたが優秀な営業マンだったとして、売り上げの目標(Goal)が1,000万円だったとしましょう。現状(Situation)は売り上げ800万円の場合、目標との間に200万円の差分(Gap)があります。だから、200万円の差を埋めるために設定すべき課題(Task)を考えないといけないです。
──「200万を埋める」が課題だと考えるのは違うのですね。
多田:この差分(GAP)を生んでいる原因を考えてみましょう。
1. テレアポ数の不足
2. テレアポからのアポ取得率の低さ
3. アポに行ってからの受注率の低さ
などが考えられますよね。そして、今回は「アポ取得率が低い」ことが数字で分かったとしましょう。では、アポ取得率の低さの原因は何なのか? これを深掘れば、それが課題(Task)です。先程の図に加筆してみましょう。
──「自分のトークが下手だった」で終わらせてもいけないのですね。
多田:大事なのは、課題に対してのSolution(解決策)を行動に移したことです。つまり、「なぜ」と自分に問い掛けて深掘ることで課題を特定できるようにするのです。
実際のビジネスの場面ではさまざまな状況があり、このようにおいそれとはいきません。ですが、就活ではこの視点でガクチカを伝える必要があります。でないと、面接官に突っ込まれてしまいます。
──ガクチカの場合の具体例も教えてもらえますか。
「新歓飲み会に来る人を増やした」ではガクチカとして未完成。「なぜ」を突き詰めよう
多田:例えば「サッカーサークルの新歓で新入生を30名入れた」がガクチカだったとしましょう。
このとき、次のような背景があったとします。
1. 自分は1学年30名程度のサッカーサークルで新歓の責任者を務めていた
2. サークルに入る流れは「新歓祭 → 新歓飲み会参加→ 確定飲み会参加 → サークルに入る」
3. 昨年度は、新歓祭で自分のサークルのブースに来てくれた人が、80名(数はLINEで管理)
4. 昨年度は、新歓飲み会に来てくれた新入生は40名、確定飲み会に来てくれた新入生は25名
5. 昨年度は、目標30名に対して、新入生を20名しか入れることができなかった
すると、昨年の結果から出てくるTask(課題)は下の図のようになります。
──先ほどの営業マンの場合と同じように細分化できるのですね。
多田:このとき、就活生は「新歓祭から新歓飲み会に来てくれた人が不足していた」をそのまま課題(Task)に設定してしまいがちです。ここを深掘ることが大事なんです。例えば、「新歓飲み会に来てくれた人が不足していた」原因は、以下のようなものが考えられます。
・新歓祭当日/後日のコミュニケーション不足
・新歓飲み会の認知不足
・新歓飲み会のコンテンツの魅力不足
・新歓飲み会の開催時期 etc……
過去の自分を冷静に振り返ってみれば、実は「この課題に着手していたのか」と気付きがあるはずです。当時は直感でやっていたことを言語化することが重要です。学生時代にこんなことを考えながらやっている人はほとんどいないわけですから。
──「なぜその課題に至ったのか」というプロセスが、ESや面接でも分かると非常に良いですね。
多田:まとめると、面接での話やESが「分かりやすい」と思われるポイントは次の2つです。
・「目標/現状/課題/施策/結果」の流れで書かれていること
・ESで書いた課題が深掘りされて書かれていること
ちなみにですが、上の仮想ESの「現状(Situation)」を書く際には、マーケティングの「ファネル」という考え方を元に書きました。ファネルは日本語だと、逆三角の形をした「漏斗(じょうご)」という器具のことを指します。理科の実験で使った人もいるかもしれません。
上から液体を入れると少しずつ水が下から垂れてくる様子を、ビジネスに例えていて、下のように紹介しているサイトもあります。
ファネル(漏斗)とは、広く集客をしたうえで、ふるいにかけられた見込み顧客が、検討・商談、そして成約へ流れる中でだんだんと少数になっていくことをいう。
その様を図にすると、漏斗で濾(こ)した様子に似ているところからそう呼ばれている。 ※引用:Synergy Marketing「マーケティング用語集」
──なるほど。確かにさっきの新歓のガクチカもこの図に落とせそうですね。
多田:実際に落とすと、こうなります。
この図を知っていると、面接官の質問の意図が分かるかもしれません。例えば「昨年度はどうだったの?」「新歓祭に訪れる人ってどれくらいなの?」という質問を受けたのなら、その面接官はマーケティングの素養がある人で、この図のような見方をしていると仮定できるでしょう。
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(illustration:rudall30 , Photo:stockfour/Shutterstock.com)
※こちらは2019年12月に公開された記事の再掲です。