日系大手企業に内定した2021年卒学生の選考対策や就活スタイルを余すことなくお伝えする「21卒 内定図鑑」。
第3弾は、大手広告代理店の内定者に、行っていた選考対策や就活のスタンスについてお聞きしました。今回お話しを伺ったのは、自分のやりたいことを達成するために大企業に入る必要があると考え、広く業界を受けていたCさん。
彼に「自分の性格を一言で表すと?」と質問すると「成果を出すためなら手段は問わない。成果にこだわり続けてきた」と鋭い目で話してくれました。「就活でやり残したことは一切ない。成長できて楽しかった」
という彼の成功の極意を探ります。
<目次>
●社会的マイノリティへの排他的意識を変えたい──人の心を動かすために僕は広告業界を志望した
●企業のファンはいらない。内定の要因は「提供できる価値」を考え抜いたこと
●どの話がウケるか? 面接経験を重ねれば雰囲気で分かるようになる
●「広告代理店でなくてもできる」に筋が通った反論を用意せよ
・エントリーシート(ES)
・Webテスト
・面接
●おわりに
社会的マイノリティへの排他的意識を変えたい──人の心を動かすために僕は広告業界を志望した
──最初から第一志望は広告代理店でしたか?
Cさん:就活当初は、広告は全く見ていませんでした。自分が「過程は関係なく成果を出すことに強い執着がある」人間なので、性格的に外資系企業に入ると思っていましたね(笑)。
──なぜ広告に決めたんですか?
Cさん:第一志望の外資系企業から内定をいただけた後、自分のやりたいことについて多くの大人とお話させていただきながら1カ月くらい考えたのが契機です。働くことで成し遂げたい目標を考えたときに、広告業界が頭に浮かびました。自分は昔から「社会的マイノリティに対する排他的な意識を変えたい」と思っていました。
そのためには人の心を最も動かせそうな企業に入る必要があると感じたからです。 ただ、より大きなインパクトを与えたい思いがあったので、広告の中でも事業規模にはこだわっていました。
Cさん:本格的に始めたのは、大学3年の秋頃です。留学していたので、まず海外で開催された選考イベントに参加しました。日本にいる友人たちはサマーインターンに積極的に参加するなどで、すでに動き出しており、少し焦りはありましたね。絶対にこの選考で結果を出してやろうと考えていました。
企業のファンはいらない。内定の要因は「提供できる価値」を考え抜いたこと
──複数内定されていますが、内定を獲得できた要因はどこにあったと思いますか?
Cさん:就活以前から、やりたいと思ったことは必ず行動に移してきましたし、結果も出し続けてきたと自負しています。
選考を受けていた企業からもこれまでの実績を評価いただけたので、積み重ねてきた挑戦と成果はアドバンテージになったと思います。就活で意識したことは、「自分の強みは、企業にどんな価値提供をできるか」を考えたことです。例えば「入ったらなんでもします!」と受け身になるのではなく、自分が入社してやりたいことは、企業にとっても将来的に利益になると暗に示し、アピールしていました。
企業側に立って考えてみると、新卒を一人採用し、雇用し続けるのであれば、少なくとも生涯3億円以上の報酬を与える必要があるじゃないですか。自社のファンというだけで、企業が提供してくれる価値を想像できない学生だけでは、大きな金額を投資する対象にならないと思うんです。
相手の視点に立ち、どういう価値を自分が与えることができるかを徹底的に考え抜きましたね。
──とはいえ、新卒の段階で自分が提供できる価値を自己認知している人はそう多くないかもしれません……。
Cさん:考え方や見つけ方を知らないだけで、誰もが企業に提供できる価値を持っていると思います。例えば、自分は3つのステップで考えていました。
(1)広告業界は今後どうなっていくのかを調べる
(2)企業の将来戦略IR(投資家向け情報提供)を読んで、事業目標達成のためにはどのような人材を集める必要があるのかを分析する
(3)自己分析をもとに、自分が持っているスキルや経験を考える
キモになるのは、(2)と(3)ですね。
長期的に捉えたときに、自分は企業にどんな価値提供ができるのかが大事になると個人的に思います。新卒の段階から高いスキルやセンスを求めているわけではないので。
逆に言うと、考え抜いても出てこなかった場合は、もしかすると違う業界や企業の方が自分に合っている可能性もあります。
どの話がウケるか? 面接経験を重ねれば雰囲気で分かるようになる
──価値が見つかったら、あとはそれを相手にうまく伝えることですね。
Cさん:そうですね。限られた時間の中で相手に自分を伝え切るために、面接の数をこなしてとにかく実践を積みました。
多くの企業と面接していると、「この質問で相手が知りたいことはコレだろうな」とか、「こういう質問にはこの回答がウケそうだな」とか、なんとなく分かるようになっていきます。本選考の頃には、相手のニーズを推測しながら、自分のどんな一面を見せたら最も効果的かを考えながら面接していましたね。
また、話すエピソードも企業や面接官のタイプによって変えていました。
ちなみに、自分が話していたのはアルバイトの話や留学の話だったので、特殊なエピソードを話していたわけではないです。
面接で使用するエピソードを枯渇させないように、就活中も就活以外のさまざまな活動を同時進行で行うことを心掛けていました。
「広告代理店でなくてもできる」に筋が通った反論を用意せよ
──各選考フローの対策についてもお聞きしたいです。
エントリーシート(ES)
ESは一貫性にこだわって書きました。「自分の人生を1枚で表現できるES」を目指していましたね。
書くにあたって、自己分析を結構したんですけど「小学校」「高校」「大学」と時代ごとにわけて性格の構成要素を抽出していました。このやり方だと、性格の根底や今まで大事にしてきた価値観など、時間がたっても変わらない部分が見えてくるんです。
この「変わらないもの」を自分という商品をアピールするベースに据えてESを作成することで、ESに一貫性が生まれ説得力を出せたと思っています。
「半端にあれこれ手を出して『いろいろやってきました』と伝えるのではなく、オレにはコレだって剣を一本持っていること」を伝えられるようにしましたね。
Webテスト
テストセンターには1月後半ぐらいから二週間、毎日受けて実践を積んでいました。
参考書は2、3周ほどです。
本命ではない企業にもESを出して、自分が納得するスコアがとれるまで受け続けようと思っていました。スコアを伸ばすために、出題された問題をノートにメモして、友達と共有し合って対策しました。
Webテストは実践を積みながらスコアを上げていくのが一番効率がいいと思うので、数をこなすことをお勧めします。
面接
自分は、広告代理店だけが第一志望ではなく、さまざまな企業を受けていたので、「内定を出したら本当に入ってくれるのか」という点は確認されました。
また、自分のやりたいことを話したときに「広告代理店でなくてもできるよね?」とよく言われましたね。
これらの質問には怖気付かず「自分にはこんな目標があり、こういう価値を社会に提供していきたい。その実現のためにはあなたの企業が必要です。理由は〜」と論理的に話していました。
正直、広告業界でなきゃならない理由なんて、多くの人の場合あまりないと思うんです。自分の中で筋が通っていて、納得している状態を相手に理解してもらえることが大切だと思います。
あとは先ほど「入ったらなんでもします!」と受け身になるなとは言いましたが、最終面接では、ベタですけど愛を叫ぶことは必須だと思います。
ピュアな目で、入社してからのやりたいことなど、意気込みを語ることを忘れないように。
面接で聞かれる「最後に一言あればどうぞ」のタイミングで愛を伝えると、案外効きます。
おわりに
圧倒的な就活の強さの裏側にある努力を知ることができました。
人気の高い広告代理店。志望するにしても「人が好きだから」「広告が好きだから」では、抜きんでることができません。
「自分にはこんな夢がある」と掲げて、ひた走る先に企業があるんだという人の方が活躍してくれそうですよね。広告を目指している人は広告の仕事の一つである「ブランディング」を意識すべしだとこの取材から学びました。本選考のエントリーが始まるまで、あと数カ月。
「妥協せずに成果を出す」というCさん同様の気持ちで、後悔のない就活になることを願っています。
内定体験記の後は、過去の広告代理店の内定者インタビュー記事や業界研究記事もご覧ください。
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