年収1000万円というのは、多くのサラリーマンにとって憧れであり、目標でもあるステータスだろう。何といっても年収1000万円は、給与所得者のうちのわずか5%(※1)だからだ。
しかし、5%といってもそれは新入社員から高齢者まで、北海道から沖縄までの全てが分母になっており、年齢が30~40代、東京と絞ればその割合はもっと高くなるはずだ。
実際、大卒で大企業に入社すれば、日本は終身雇用・年功序列型の給与体系なので、長く勤めさえすれば年収1000万円に到達できる可能性は十分にある。ただ、その時期が早いか、遅いかの違いだ。
国内系企業の場合、最速で年収1000万円に到達できるのはキーエンスだろう。キーエンスの場合、業績や残業時間にもよるが、入社2年目くらいで到達すると言われている。また、最難関の5大商社の場合は、入社4年目くらいでほぼ1000万円に到達できるだろう。
一方で、大企業の場合でもメーカー系や流通系など、昇給速度が非常にゆっくりしているところがある。その場合、1000万円の到達は50歳くらいになるのだろう。
いずれにせよ、年齢には大きな差があるものの、大企業に入れば年収1000万円には到達できるという点では共通している。
(※1)出典:国税庁「平成30年分民間給与実態統計調査結果」
憧れの「年収1000万」は大企業に入れば確定、だが年収2000万は……?
しかし、これが年収「2000万円」になると、話が全く変わってしまう。
例えば、メガバンク、大手生損保、大手証券、電博やキー局のような大手マスコミの場合、30歳時点で年収1000万円に到達するが、そこから年収2000万円までは非常に遠い。
40代の管理職ともなれば、年収1500~1800万円くらいまでは何とかなるものの、年収2000万円は部長に昇格しないと達成できないだろう。そして、そういったトップ企業で部長になるのは非常に難しく、同期でせいぜい1割、多くても2割に満たないのではないか。
国内系企業で最も高給と思われる5大商社でも、40歳の時点で1800万円ほど。そこまではたどり着けても、2000万の壁は誰でも自動的に突破できるものではない。それくらい至難の業なのだ。
年収2000万円を超えると国税庁に「マーク」され、今までとは異なる贅沢が見えてくる
年収2000万円となると途端にハードルが高くなるわけだが、そもそも、年収2000万円以上と未満でそんなに差があるのだろうか?
サラリーマンの場合は「年末調整」と「確定申告」との差が非常に大きいと思われる。サラリーマンは年収2000万円以上になると、副業や兼業の有無に関係なく、確定申告が必要になる。それより下回っていれば、たとえ年収1999万円でも年末調整で完了するのだ。
ほんのわずかな違いでも、年収2000万円に到達できれば、それは国税庁から良くも悪くも「高収入」で要注意の人物として認定されるというわけだ。サラリーマンの場合は年収2000万というと、役員クラスという認識を持たれる水準なのだろう。
確定申告というのは、するかしないかで、税金に対する意識が大きく変わる。年末調整だけで完了するサラリーマンは、自分の年収(額面)から手取りの額に至るプロセスが分かるだろうか?
確定申告をする必要がないと、「税金は面倒くさい」と知らないまま終わってしまうことが多い。だからこそ、高収入のサラリーマンは税金を搾取されているという見方もある。
ところが、サラリーマンも毎年確定申告をすると、税の仕組みが自ずと分かるし、毎年確定申告ができるような地位にいたいというモチベーションも湧いてくるのだ。
年収2000万というとピンと来ないかもしれないが、年収1000万円の人が2人いると考えると想像しやすいかもしれない(もちろん、累進税率なので手取りは倍にならないが)。
年収1000万円なりの生活をして、残りの年収1000万円分を他の投資や消費にあてることができると思えば、かなり余裕があると感じないだろうか。
もちろん、見えを張ってタワマンとかポルシェとか、そういった贅沢(ぜいたく)な消費をしてしまえば何も残らないかもしれないが、堅実な使い方をすると、いろいろな使い道がある。
例えば、別荘や収益不動産投資のように、2つ目の不動産を持つことが視野に入ってくる(借入は必要だが)。普通の有価証券投資ではなくエンジェル投資をする余裕も出てきそうだ。
また、海外旅行でもプライベートの旅行でビジネスクラスにアップグレードしようと思えるだろうし、子どもの教育においても私立医学部も夢ではない。
いかがだろうか、年収2000万円の世界は。それまでには見えなかった消費や投資が可能になるというのは、世界が大きく広がるということでもある。可能であれば、狙ってみてはどうだろう。
「出世」以外に、年収2000万円以上のサラリーマンになる近道とは?
年収2000万円を実現するのに、最もシンプルな方法は、とにかく出世することだ。
大企業の場合、部長だと年収2000万は難しい場合が多いが、取締役クラスまで出世をすると達成できそうだ。ただし、いくら頑張ったところで、出世には外部経済環境など運の要素が大きく影響する。
また、取締役の席数は非常に限られているので、同期からはせいぜい数人くらいの枠しかない。運良く取締役まで昇格できたとしても、年齢は50を余裕で越しているだろう。
一方、国内系企業で取締役まで出世をしなくても、年収2000万円に到達できる場合がある。それは、歩合系の営業職で成功することだ。
最も典型的なパターンはM&A仲介。よくある年収ランキングで上位を占めているのは、M&AキャピタルパートナーズやストライクのようなM&A仲介だ。うまくいくと、年収2000万どころか4000万や5000万クラスもゴロゴロいる。
といっても、向き不向きがあるし、成功するには多大な努力と営業センスが必要になる。銀行や証券会社のリテール営業で中堅企業向けの営業が得意な人には、面白いかもしれない。
とにかく出世や歩合営業というのは、どうしても運が絡む。他になるべく早く、なるべく高い確率で年収2000万円を達成する方法はないのだろうか。
サラリーマンの年収は、外資か国内、業種、職種、タイトルの掛け算で決まってくる。一般的に、同じ業種だと外資の方が高給である場合が多い(その分リスクは高くなりがちだが)。そして、業種と職種は年収水準を左右する非常に重要なファクターだ。タイトルは高いほど高給で、特に外資系の場合は、1つのタイトルの違いが非常に大きな年収の違いにつながることが多い。
従って、「外資系」、「金融・IT・商社・コンサル・マスコミ」、「営業・運用・IBD(投資銀行)・エンジニア」という組み合わせを選択して、順調に出世すると達成可能性はどんどん高まるはずだ。
外銀のマーケットとかIBDであれば入社3年目で、外資アセマネとか外資コンサルであれば30歳くらいで到達が可能となる。このあたりは既に知られているだろう。
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年収2000万の穴場は「外資系テック企業」 国内企業なら狙い目は?
意外に高給であることが知られていないのは、GAFAM(※2)に代表される外資系テック企業かもしれない。
外資系企業の場合、タイトル1ランクの違いが非常に大きい。国内系企業の場合だと、課長と部長の年収差は200万円位のところも見られる。しかし、外資系の場合だと、VP(課長クラス)とDirector/SVP(部長レベル)の年収が1.5~2倍違うことはよくある話である。
外資系テック企業の場合、30代で1000万円台というイメージがあるかもしれないが、営業で結果を出した社員、特別な技術を有する社員、社内弁護士の中には余裕で平均的な社員の2倍くらいの年収の社員もいるので、アップサイドは非常に高い。
国内系だと、最も年収2000万円に近い会社はキーエンスだろう(1000万円と同じでつまらないかもしれないが)。業績とボーナス水準にもよるが、30歳時点で年収2000万円は十分射程圏内だろう。こうなるとほぼ外資金融クラスである。
ただ、本社が大阪だからか、転職するための汎用(はんよう)スキルが習得しにくいからか、給与水準ではトップでも、人気や難易度では必ずしもトップではないようだ。
国内系でキーエンスの次に年収2000万円に近いのは5大商社。40歳過ぎで年収2000万に到達する社員がいるが、横並びが強い商社も、これくらいの年齢になると所属部門、評価などで違いが出てくるようだ。従って、到達時期には社員間の格差があると思われる。
もう一息なのが、前述した国内金融最大手だろう。メガバンク、東京海上日動火災保険、日本生命保険、野村證券、農林中央金庫といったところだ。こういった金融機関は40代で1500~1800万円に到達できる可能性は高いが、ここからは年功序列だけでは到達できない。そして、ここから1ランクの昇格というのが非常に難しいのだ。
(※2)……Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft、5社の頭文字から取った言葉。
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年収2000万円の現実的なライン──将来的には「副業」がカギに?
おととしに、経済団体連合会(経団連)の「終身雇用」見直し宣言が注目された。そして、その代償かどうかは定かではないが、副業については解禁(緩和)の傾向にある。要するに、会社は「従業員を定年まで面倒を見られなくなったので、その代わりに自分で稼ぐのはいいよ」ということだ。
今後、副業を緩和する企業は着実に増加するだろう。現時点では、大企業の社員が副業でそれなりの金額を稼げている話はあまり聞かない。しかし、それは副業に挑戦する大企業の社員が少なく、稼ぐための手法が広がっていないことも理由だろう。
もともと、大企業には能力や意欲の高い優秀な社員が多いので、いくつかの副業で稼げるパターンが生じたり、リモートワークの浸透で時間に余裕が生じたり、ITのさらなる進化によって、副業で稼げるインフラは整っていきそうだ。そうすれば、年収2000万円超えのサラリーマンも増えていくかもしれない。
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※こちらは2021年2月に公開された記事の再掲です。
(Photo:Benny Marty , Hanasaki , katjen , Matej Kastelic , conrado , anek.soowannaphoom/Shutterstock.com)