ワンキャリアは2019年の3月、「就活クチコミアワード2019」を発表した。
本アワードは本選考・説明会・インターンの3部門から構成され、2019年2月末までに投稿された19卒・20卒学生の約5万件のクチコミを基に作成したものだ。
以下のように、今日、クチコミは就活生の意思決定に大きな影響を及ぼしている。
これまでは友人や家族、大学のOB・OGなど、周囲の人からしか聞けなかったクチコミが、就活クチコミサービスの出現によりWeb上にストックされ始めた。学生はより多くの人が発信するクチコミに触れられるようになったといえよう。
ある21卒学生は「ワンキャリアのクチコミを見ていて、面白そうだったのでインターンに申し込んだ」と語っており、「クチコミを就活に活用する」という新しい文化の定着が感じられる。
ワンキャリアがForbes JAPANと共催する「Great Company for Students supported by ONE CAREER」や、パンテーンのブランドキャンペーン「#令和の就活ヘアをもっと自由に」も、ワンキャリアがクチコミという形で学生の声をくみ取ってきたからこそ生まれた取り組みである。
そしてワンキャリアは、来春にも「就活クチコミアワード2020(仮)」を発表予定だ。
今回はその速報値として、2019年上期のクチコミを集計した暫定のTOP30企業を発表する。
ONE CAREERの掲載企業の中から特定の期間(※1)において、クチコミの評価点を集計の上、表彰を実施。
具体的には、「イベントの満足度」の平均点(※2)を評価指標とし、公平性を期すために10件以上集まった企業をランキング順に評価。その中で上位30企業をランクイン企業として表彰。
(※1)……2019年1月1日〜2019年6月30日の期間に投稿された約1.9万件のクチコミ、2019卒・2020卒 1,300名以上の投稿者が集計対象
(※2)……(イベントの満足度に関する評価点の合計)÷(投稿件数)の式にて換算される平均点のこと
本記事では、このTOP30社から、インターン、説明会、本選考それぞれで特徴的な企業を取り上げる。
<目次>
1. インターンが大好評。ワークのリアルさにこだわる豊島・社員60人に会えるゴールドマン
2. 人事の実力が光る日鉄物産。短時間の説明会で学生をアトラクト
3. 学生の人柄に向き合う本選考──住友金属鉱山、東京海上日動
1. インターンが大好評。ワークのリアルさにこだわる豊島・社員60人に会えるゴールドマン
2019年版のインターン部門でGOLD賞を受賞した繊維商社の豊島は、今回のランキングでもTOP30にランクイン。特に、トレーディングビジネスを体験できるインターンへの満足度が高い。
ビジネスを疑似体験できるワーク形式のインターンは少なくないが、豊島のワークは「精神的なすり減りを経験できる」など、そのこだわりようで他社と差別化できているようだ。
(以下、画像をクリックするとクチコミを閲覧できます)
前回のインターン部門でGOLD賞を受賞したメタルワンも、リアルさには徹底的にこだわっていた。
交渉の場面が厳しいのはもちろん、その手前の部分である窓口での対応も厳しいです。提出書類に1カ所でも不備があれば受け取りません。
(中略)
私たちは、交渉の場面で鉄鋼メーカーさんや海運会社さんなどさまざまな企業の役を演じることになりますが、その時々のシチュエーションを頭に浮かべながら、態度や話し方などのコミュニケーションを変えています。
※出典:【メタルワン】インターンはゲームじゃない リアルを突き詰め、鉄鋼総合商社の「魅力と実態」を伝える
「ゲーム感覚」に陥ってしまいがちのワークを、どれだけ緊張感ある現実のビジネスに近づけられるかが差別化ポイントといえよう。
一方、外資系投資銀行のゴールドマン・サックスは、インターンで圧倒的な数の社員に会えることをウリにしている。同社は部門別採用を行っているが、複数部門で「多くの社員に会える」というクチコミが集まっている。
「5日間で60人の社員に会えた」とクチコミも投稿されており、外資系投資銀行の中でも新卒採用への熱意が際立っている。社員の時間を投資した分、着実に採用ブランドを構築できているのだ。
2. 人事の実力が光る日鉄物産。短時間の説明会で学生をアトラクト
日鉄物産は、説明会の人気が圧倒的に高い。
同社の説明会が評価されたポイントは、「人事のトーク力が高いこと」「説明会を相互理解の場にできていること」の2つだ。
学生から寄せられている同社のクチコミのほとんどは専門商社業界、あるいは業界横断の合同説明会のものである。そのため、参加したのは必ずしも「日鉄物産に強い興味がある」学生ばかりではないはずだ。
しかしながら、1セッション30分程度の短時間で学生のアトラクトに成功しているのは、コンテンツや人事のトーク力のたまものであろう。
また、同社は説明会中の座談会に力を入れているようだ。
ともすれば、企業から学生への一方的な情報提供になりがちな説明会ではあるが、双方向的な理解の場にできていることが人気の秘訣(ひけつ)ということがよく分かる。
3. 学生の人柄に向き合う本選考──住友金属鉱山、東京海上日動
全掲載企業のクチコミ平均点を部門ごとに比較すると、説明会は3.68、インターンは3.85、本選考は3.46。「落ちる学生」が必ず出る本選考は、説明会・インターンに比べて学生にネガティブな印象を持たれることが多く、評点は低く出る傾向にあるのだ。
しかし、本選考で高い評価を受けている企業も存在する。例えば、住友金属鉱山は、時間をかけた丁寧な面接に定評がある。
このように、「自分の人柄をよく見てくれた」という印象によって学生の満足度は高まる傾向にある。
東京海上日動の面接も学生の人柄を徹底的に深掘りすることで知られており、学生からは好評だ。
逆に、本選考の評価が低い企業には「選考時間が短く、よく見てもらえた気がしない」「何を評価されていたのか分からない」「落ちた時に連絡がない」といったクチコミが集まった。
企業の学生に対する真摯(しんし)さは、クチコミ評価に如実に表れるのだ。
▼参考記事はこちら
・就活生のクチコミで明らかに。「良い本選考」と「悪い本選考」を分ける3つの視点 #クチコミ公開中
世に出回る就活ランキングの多くは、広告費を積み、採用媒体での露出を増やしたもの勝ち。いわば「札束のたたき合い」の世界だ。
一方で、ワンキャリアのクチコミアワードは、全国の学生が投稿した数万件のクチコミを基に作られている。
決して有名な企業でなくても、真に学生に向き合っている企業に光を当てたい──それがわれわれワンキャリアの思いだ。
冒頭でお伝えした通り、今回の記事は速報に過ぎない。「就活クチコミアワード2020(仮)」は来春に発表予定である。楽しみにお待ちいただければ幸いである。
(Photo : Jirsak/Shutterstock.com)