※こちらは2021年3月に公開された記事の再掲です。
オンライングループディスカッション(GD)に苦しむ学生を救いたい……そんな思いから、人事の経験を生かし、GDの様子を分析して学生にアドバイスをするアプリを開発している村田製作所の中島彰さん。
このアプリは、GD内での自分の発言量や音声の感情値、参加学生の相互評価などから、自分がどれだけ議論に貢献できたかを教えてくれます。
▼インタビュー前編はこちら
・あなたのオンラインGDを分析、アドバイスします──村田製作所が開発を進める神アプリの正体
さまざまな学生にアプリを試してもらい、データを分析していく中で中島さんはGD中の学生の特徴が見えてきたと言います。インタビューの後編では、100人以上のオンラインGDを見てアドバイスをしてきた中島さんに、オンラインGDのポイントについて語っていただきました。
村田製作所IoT事業推進部データソリューション企画開発課 中島彰さん(所属部署はインタビュー当時のものです)
日本の学生はGDで「気を使いすぎ」、発言比率が10%を切る人も少なくない
オンラインGDのポイントとして、まず中島さんが挙げてくれたのは「気を使いすぎる人が多い」ということ。議論を深めるために、あえて健全な批判を言うのは有効ですが、「苦手な人が多いためか、そういう場面があまり見られない」と言います。
また、仮に5人グループであれば発言比率が極端に低い人が1人か2人は必ずいるそう。グループが6人になると、半分くらいのメンバーが議論に参加せず、3人くらいでディスカッションを進めてしまうケースも少なくないようです。
「発言が少なかった学生の方に話を聞いてみると、『自分の発言比率がこんなに低いとは思っていなかった』と驚かれるケースが多いです。頭の中では考えて、議論についていっていたとしても、それを言葉にしていないから、周りから見たら何を考えているのか全くわからないし、議論にも加われていない。そうなるともったいないですよね」(中島さん)
頭で考えているだけでは、議論に参加しているとは言えません。中島さんが開いたGD解析アプリの体験会では、発言比率が10%を切る人も結構いて、4%という数値が出た人もいたとのこと。
村田製作所が開発しているGD分析アプリ「NAONAグループディスカッション(仮)」では、自身のGD中の発言比率が分かる(画像左)
比率が高すぎても問題ですが、これでは人事にアピールできないでしょう。「思ったことを積極的に言葉にするよう意識すると、緊張感もなくなってきて良いアイデアも出せるようになる」と中島さんはエールを送りました。
まとまりがない意見、他人の発言機会を奪う──自己中心的になりがちな学生へのアドバイスとは?
逆に発言比率が高すぎると、自己中心的だと思われてしまうので注意が必要です。
中島さんによると、周囲に配慮せず、一方的に議論をリードしがちな人は発言比率が平均(参加者の人数で均等に割った割合)よりも非常に高い一方で、他の参加学生からの相互評価が低いという傾向があるそうです。
「平均の2倍くらい発言し、議論をリードしているのに、相互評価のスコアが低い。要するに他人の発言機会を奪っている上に、議論に貢献できる内容を話していないということです。このような傾向を持つ人に対し、どうアドバイスするか悩んでいたのですが、これが分かってからは『発言が少ない人に話を振ると良いです』と伝えることにしました」(中島さん)
さらに、「1回の発言の内容が短く、意見にまとまりがない」というのもこうした傾向を持つ人の特徴とのこと。中島さんによると、議論における1回の発言の長さは10秒から15秒程度が適当で、それくらいの長さであれば、意見として意味のあるまとまりの発言ができるようになると言います。
「彼らは、大体、考えながらバーッとしゃべるのですが、結局何が言いたかったのかあまり分からなかったり、議論がだいぶ脇道にそれたり、戻ってしまったりすることが多いです。周りの人はそういうときにシーンとなるのですが、でも止めるわけにもいかないし、皆すごく困っていますね。そういう振る舞いは、やはり相互評価で如実に表れます」(中島さん)
発表はそこまで重要じゃない? 学生と人事の認識がズレやすいポイントを知っておこう
GDの解析アプリを作る際には、村田製作所の社員でもテストを行いました。得点を比べてみるとやはり社会人の方が高い結果になったそう。その理由について、中島さんは「社会人の方が1回あたりの発言時間が長く、議論全体を通じて安定的に意見を言っているため」だと言います。
また、学生は「発言量が多い人」を高く評価する傾向にあるということも分かりました。解析アプリでは、GD後に「リーダーシップ」「フォロワーシップ」「クリエイティビティ」という観点で相互評価を行うのですが、リーダーシップが高い人は他の項目も高くなりやすいとのことでした。
きれいにまとめれば高く評価される……これは学生がGDの最後にある「発表」に注力する姿勢にも表れている、と中島さんは言います。
「例えば、『最後の5分を発表練習に使おう』みたいな話になるグループもいますが、短時間のGDであれば、議論を最後までしっかり深めた方がいいと考えます。大事なのは、あくまで議論にどれだけ貢献したか。議論の結果よりもそれぞれの参加度や寄与度が重要です」(中島さん)
議論をできるだけ長く発散させて、深い内容にしたものをまとめて発表するのが良い──。もちろん、企業によって評価のポイントは異なりますが、発表だけで「逆転」できるというものでもない、という点は知っておくべきでしょう。
オンラインGDは人事側にも有効な選考プロセス、コロナが終わっても絶対になくならない
ここまで、オンラインGDのポイントについてお話ししてきましたが、中島さんは「コロナ禍が過ぎてもオンラインGDはなくならない」と強調しました。その理由は人事側にとって、有力な選考プロセスであることがこの1年で分かったから。むしろ、インターン選考などではさらに増えるのではないか、と予想しています。
「大きな会場を使わずに開催できるというのもそうですし、部屋を移動しなくても、画面を切り替えるだけでさまざまな学生を見ることができる。オンラインGDは企業側のメリットもあるのです」(中島さん)
今後も開催が増えると思われるオンラインGD。中島さんは「とにかく練習することが大切」と念を押しました。やみくもに練習するのではなく、改善するポイントを意識しながら、本番に近い形で練習に臨み、振り返りをすることが上達の近道だと言います。
「初回のオンラインGDで、いきなり最高のパフォーマンスが出る人なんてまずいません。少なくとも2回、3回とやらないと自分の立ち回りや強みは分かってきません。毎回メンバーや課題が異なるので、対策しづらいとは思いますが、頑張ってほしいと思います」(中島さん)
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・あなたのオンラインGDを分析、アドバイスします──村田製作所が開発を進める神アプリの正体