前回のおさらい:企業をディスる技術の注意点
前回の記事で、「企業は褒めるべきではなく、ディスるべきだ」と、メルカリ社を例にお伝えした。
就活生よ!メルカリを褒めるな!むしろディスれ!!そして愛せ
多くの声をお寄せいただいたが「ディスると失礼に聞こえるのではないか」「偉そうではないか」という心配の声も届いている。人気企業になるほど、需給バランスの観点から企業側の市場価値の方が高くなりがちだ。だからこそ「企業を褒めて余計にビットプライスを釣り上げるのではなく、ディスることで市場価格を釣り合わせて内定を勝ち取る」というのが本テクノロジーのバックボーンなのだが、これが行き過ぎると確かに失礼なやつと捉えられてしまう。そうなってしまえば当然内定どころでないので、ディスり方にはかなり注意が必要だ、ボキャブラリーの問題ならば実は「いじる技術」くらいが適当なのかもしれない。
【今回の見どころはコチラ】
・就活生よ! NewsPicksを褒めるな! むしろディスれ!!
・お相手を正しく理解しよう。NewsPicksのビジネスモデル
・ディスるポイントの探し方
・NewsPicksのディスり方
└1)ユーザー数の伸びしろをつかむ
└2)ユーザーの解約防止策に触れる
就活生よ! NewsPicksを褒めるな! むしろディスれ!!
さて、今回の本題であるNewsPicksについて見ていこう。正確にいうと、NewsPicksはユーザベース社のサービスの1つであり、ユーザベース社全体でみると、もう1つの主力事業SPEEDAのほうが売上構成比率は高いのだが、今回は社会的にも注目が高く、成長著しいNewsPicks事業に話を絞ってみたいと思う。(なお、同社は、2019年3月卒の学生から新卒採用を開始するらしい。今この記事を読んでいる就活生は、同社の新卒1期生になる可能性もあるのではないだろうか)。
【ユーザベース社の売上高推移】
※引用:ユーザベース「2018年12月期 第1四半期決算説明資料」
同社の時価総額は恐ろしいことに記事執筆時点(2018年7月)で1,100億円超、さらに今期営業利益は8億円の計画ながら、約100億円かけてアメリカの新興ビジネスメディア・クオーツ(Quartz)を買収したことでも話題になっている。
しかし、就活生はここで間違っても「御社の利益規模でこの株価は凄いです♡」「私は今のNewsPicksが大好きだけど、世界の経済メディアと聞くともっとワクワクする♡」などと言ってはいけない。前者は株を買ってくれる株主でいいし、後者は有料ユーザーでいてほしい。なお後者は必要条件の場合もあるが、少なくとも初期フェーズの面接で言うべきではない。(その理由は後日「就活工学」の連載で触れる)
お相手を正しく理解しよう。NewsPicksのビジネスモデル
ディスるにしても、まずは相手を正しく理解しなければならない。これは恋愛も就活も一緒だ。ここではNewsPicksについての詳しい説明は割愛するが、ビジネスモデルは下記の通り整理される。
※出典:ユーザベース「2017年度 有価証券報告書」(平成29年1月1日ー平成29年12月31日)
簡単に説明すると、NewsPicksは読者に対し、オリジナルコンテンツや「NewsPicksアカデミア」というコミュニティへの参加資格などの価値を提供することで対価を得ている。また企業に対しては、求人広告やブランド広告というサービスを展開している。
ディスるポイントの探し方
さて、「ディスるポイント=企業の課題」を探っていこう。ちなみに「企業の課題にどうアテを付けるか?」という疑問について、就活生であれば「人事や社員に直接聞く」という方法が取れる。万が一質問できなかったり、表面的な答えしか得られなかった場合も安心してほしい。上場企業ならば、有価証券報告書を見ればいい。ユーザベース社であれば、以下の通りだ。
(3)会社の対処すべき課題
当社グループが対処すべき課題は、以下の項目と認識しております。
(1)収益基盤の強化
当社グループは、「SPEEDA」事業、「NewsPicks」事業と2つの事業を展開していますが、グループ全体の収益基盤について、一層の強化が必要であると考えております。(なお、「entrepedia」及び「FORCAS」の両サービスについては、「SPEEDA事業」に含めて開示しております。)
収益基盤を強化するために最も重要となるのが、「SPEEDA」事業については契約ID数、「NewsPicks」事業については、ユーザー数の増加であると考えております。かかる課題に対処するために、効果的なプロモーション活動を通じて、「SPEEDA」及び「NewsPicks」の知名度を向上させると共に、「SPEEDA」及び「NewsPicks」の利用者の視点に立った継続的な機能・利便性・ユーザーインターフェースの改善を行って参りたいと考えております。
※引用:ユーザベース「2017年度 有価証券報告書」(平成29年1月1日ー平成29年12月31日)p.20より
NewsPicksのディスり方
1)ユーザー数の伸びしろをつかむ
有価証券報告書にあるように、ビジネスモデルから考えてもNewsPicksは有料ユーザー数を伸ばしていく必要がある。
※引用:ユーザベース「2018年12月期 第1四半期決算説明資料」
なぜtoBの広告売上ではなく、ユーザー数増加のアプローチが重要か? 上図の通り、非連続的な成長を見せるのはおそらく広告売上よりも、ユーザー課金のほうであるからだ。広告は当然、売れれば売れるほど営業マンや制作スタッフが必要になる労働集約型のモデルなので、社内の人員を増やすペース以上の非連続的な成長は生まれにくい。一方、有料ユーザーについては、コンテンツ課金モデルなのでユーザーの増加に比例して利益が増える。
では、ユーザー数にどれくらいの伸びしろがあるか? これを把握するためには競合の数値が参考になる。
※出典:日本経済新聞「本誌・電子版 購読数305万」(日経電子版)、
※出典:ユーザベース「2018年12月期 第1四半期決算説明資料」
※出典:Fujisan.co.jp「日経ビジネス」(日経ビジネス/ダイヤモンド/東洋経済)
※購読者数の情報の年は、それぞれ「日経電子版」は2017年12月、「ユーザベース」は2018年3月、「日経ビジネス/ダイヤモンド/東洋経済」は2015年度認証部数を参考にしています。
急成長したNewsPicksは、もはや佐々木編集長の古巣である東洋経済の購読者数に追いついている。年齢層や媒体(紙とweb)の違いがあるため一概には言えないが、ユーザー数10万人も射程圏内であるように感じる。実際に、同社代表の梅田氏はインタビューの中でこう答えている。
梅田:それは明確に掲げていまして、5年以内にアメリカも含めて有料会員数100万人、アクティブユーザー数(MAU)で1000万人ですね。
※引用:BUSINESS INSIDER JAPAN 「【独占】米メディア買収NewsPicks 。梅田社長が語る課金モデルへの絶対の自信と世界戦略」
単純にアメリカの人口が日本の3倍として、割り戻すと日本の有料会員は25万人程を見込んでいると推定できる。
ここまで把握できたら、NewsPicksの課題と「こんな解決策はどうだろう」という提案をドヤって嫌みにならないように言えたら内定にだいぶ近づくはずだ。批判と提案はセットで、とよく言われるように、ディスと愛もセットになっていないといけないのだ。
2)ユーザーの解約防止策に触れる
ここは取り上げるまでもないかもしれないし、半分以上筆者の主観なのだが、筆者の周りでも「NewsPicksは最近見ていない」「解約した」という声は多い(私も半年程前に解約してしまった)。その中でもよく聞くのが「オリジナル記事は読みたいけど、空気感が疲れる」という声ではないだろうか。
先日「さよなら、おっさん」というキャッチコピーで広告を出稿し、盛大なブーメランになってもいたが、NewsPicksのコミュニティそのものに筆者は「おっさん感」を感じてしまうのだ。私の執筆記事が1,000picksほどいただいときも「そんな分析ができるのは一部だ」とか「内容が二元論に過ぎない」とか、批判的な意見をすることで、自分ブランディングをするユーザーが多いようにどうしても感じてしまう。(うすうすお気づきかもしれないが、その時のストレスを発散しているだけかもしれない(笑))。
就活生はこの点に触れた上で、気持ちのいいコミュニティの形成施策を提案するのもいいかもしれない。ただし、本人たちも自覚している急所であるとも思うので、余程コミュニケーション能力があり、シャープな施策の提案ができないのであれば、はっきり言っておすすめはしない。
女にだって、男にだって、企業にだって、本当に触れてほしくないことには不用意に触れないのが大人のマナーだ。
以上、NewsPicksをディスる技術、ぜひ試してみてほしい。
「失いたくないものならば、失う程の覚悟で」