みなさんは、「総合職」「一般職」「地域総合職(エリア総合職)」の違いをどれほど説明できるでしょうか。
業界・企業を選ぶ前に、「仕事を中心にバリバリ働きたい」か「ワーク・ライフ・バランスを充実させたい」など、「自分の中の軸・仕事観」により近いものを見極め、職種を選択すべきでしょう。
今回は「女性の働き方」という切り口で、それぞれの職種の働き方や給与、待遇面の違いや傾向をお伝えします。
「総合職」「一般職」「エリア総合職」の違いはあいまい
そもそも「総合職」や「一般職」、その中間にあたる「エリア総合職」は、法律が定めた制度ではありません。
まず、「総合職」と「一般職」2つの職種の違いについて、分かりやすい例として任天堂のQ&Aを引用します。
Q. 総合職コースと一般職コースの違いを教えてください。A. 総合職コースは、一定の分野に留まらず幅広い能力発揮が求められ、全社的な視点で組織全体の業務遂行に貢献することが期待されます。一般職は、主に定型業務や特定の業務を担当し、一定の領域・分野で経験にもとづく実務知識やスキルを活用して業務遂行に貢献することが期待されています。
また、一般職コースは勤務地域を限定して採用しているため、転居を伴う転勤はありません。なお、総合職コースと一般職コースとでは、賃金制度、退職金、福利厚生などにおいて違いがあります。個人の仕事に対する価値観やライフスタイルにあわせて、より働きやすい環境を選択できるしくみになっています。 ※引用:任天堂「採用情報」
職種の違いは「コース別雇用管理」を導入している各企業が任意に定めているため、企業によって異なります。
「コース別雇用管理」とは、男女雇用機会均等法が施行された1980年代半ばから大企業を中心に広まった、各企業が、職務内容・責任の範囲・転勤の有無等により、総合職や一般職といったコース別に雇用管理をすることです。
その中間に位置する「エリア総合職」は、簡単にいえば勤務地限定(転勤なし)の総合職です。
「エリア総合職」を設けている企業は、「銀行・証券・生保・損保などの金融業界がほとんどで、メーカーなどは少ない」という印象を受けました。
実際に、公益財団法人「21世紀職業財団」が行った「『一般職』女性の意識とコース別雇用管理制度の課題に関する調査研究(2017年度)」によれば、
「総合職と一般職の業務範囲が明確でない人:34.1%」、「同じ職位の男性と同じ難易度の仕事をしていると思っている人:50.3%」という現実があるようです。
総合職:長期キャリアは難しい? 女性の割合は10人に1人
総合職の採用実績についてですが、厚生労働省「平成26年度コース別雇用管理制度の実施・指導状況」によると、平成26年4月の採用者の男女比率において、総合職は女性22.2%・男性77.8%、一般職は女性82.1%・男性17.9%となっています。
つまり、総合職で採用される5人に1人が女性、一般職の5人に4人が女性という割合です。
男女雇用機会均等法が施行されたものの、実際は「男性は総合職、女性は一般職」と職種ごとに性別が偏っているのが現状です。
では、入社してからの総合職における女性の割合はどうなっているのでしょうか。
採用10年後・20年後の状況を見てみると、衝撃的な結果が出ています。
総合職で採用された女性は10年後、「33.1%が一般職員、7%が係長や課長などの役職者に昇進、そして58.6%が離職」しています(男性の離職割合は37.1%)。
さらに、採用から20年後には、「8.4%が一般職員、5.2%が役職者に昇進、85.8%が離職」となっています(男性の離職割合は36.6%)。
長期的な育成を見据えて総合職として雇用されても、『入社20年後以降は総合職の女性10人中、9人が離職している』のです。
総合職で女性が長く続ける、キャリアを積んでいくのは難しいことがわかります。
一般職・事務職:やりがいや昇進より、生活を大事にしたい
先ほど、「一般職の5人に4人が女性」とお伝えしましたが、一般職での女性の働き方はどうでしょうか。
先ほどの「『一般職』女性の意識とコース別雇用管理制度の課題に関する調査研究(2017年度)」によると、一般職には下記のような傾向があるようです。
【仕事の幅を広げる経験】
異動経験がない | 50.2% |
勤続10年以上でずっと同じ部署に勤務 | 47.0% |
仕事の担当替えの経験がない | 44.9% |
リーダーや後輩指導の経験がない | 40.5% |
研修を受講したことがない | 31.3% |
【昇級・評価など】
昇級・昇格の可能性がある | 47.2% |
昇進の可能性がない | 47.4% |
上司に、 貢献度を正しく評価されていないと思う |
42.4% |
上司から、 評価理由のフィードバックがない |
54.3% |
仕事の達成感を味わっていない | 49.6% |
貢献についての自己評価が高い | 79.4% |
仕事の難易度を上げる意欲がない | 50.7% |
まとめると、「ずっと同じ仕事ができるが、昇進せず達成感も少なく、正しく評価されていないという不満もある」と、ややネガティブな内容になるようです。
そうした不満があっても、「総合職・エリア総合職になりたくない人」は70.7%という結果になっています。
理由は下記です。
長時間労働になるから /家庭との両立が難しくなるから |
58.9% |
責任が重くなるから | 41.3% |
転勤する可能性があるから | 28.8% |
つまり、「やりがいや評価を犠牲にしても、長時間労働を避けて自分の生活を大事にしたい」という価値観を持っている人が一般職を選んでいるように思えました。
地域総合職(エリア総合職):転勤はないが、残業しても給与は総合職以下?
では、「エリア総合職」は総合職と一般職のミスマッチを解消できているのでしょうか。
そうは簡単にいかないようです。
総合職・エリア総合職・一般職の違い(年収・残業時間など)が分かる公的なデータはほとんどありませんが、厚生労働省が2014年に行った「『多様な正社員』の普及・拡大のための有識者懇談会」によると、総合職とエリア総合職の賃金差には下記の傾向があるようです。
有識者懇談会で実施した企業ヒアリングにおいて・エリア総合職の賃金は、すべての企業で総合職の約8~9割
・総合職と賃金テーブルが異なる例が多い
→転勤の有無による差
→将来的な幹部としての可能性の高低による差
→物価水準で都道府県のグルーピングによる差
・総合職と基本給が同じ場合でも、(総合職に)手当・賞与による加算を行う例がある
→転勤に対するプレミアムとして別途給与項目を設定
また、(公的なデータの裏づけはありませんが)エリア総合職として働く人が転職サイトなどに寄せる声を見ると、「エリア総合職の残業時間は総合職並みなのに、賃金は上記のように総合職よりも低くなる」傾向があるようです。
ブラック企業のエリア総合職に就いてしまった場合などは、忙しいのに給料は安くて苦しい、という意見などが見られました。
一見いいとこ取りに感じる「エリア総合職」にも課題は見受けられます。
総合職、一般職、エリア総合職。それぞれの違いや特徴を理解して就活を
ここまで見てきたことをまとめます。
【総合職】
メリット:幅広くやりがいのある仕事ができ、昇給・昇進の可能性は3つの中で最もある
デメリット:転勤の可能性がある。長時間労働のため家庭と両立できず、離職する人が多い【エリア総合職】
メリット:転勤がない。転勤したくないがバリバリ働きたいという人にはメリットがある
デメリット:転勤の有無以外は総合職と同条件なのに、給与が低くなる傾向がある【一般職】
メリット:転勤がない。異動や仕事の担当替えもないことが多く、長時間労働ではないため家庭とも両立できる
デメリット:昇進しないので昇給も少ない。やりがいや評価に不満を持つ人が多い
なお、一般職ですが、現在では派遣社員やパートタイマーなどの非正規雇用で補てんされることが多いため、例えば商社などの人気企業の一般職を目指そうと思ったら、かなりの競争倍率になることは知っておきましょう。
総合職・エリア総合職・一般職、3つのメリットとデメリットを押さえて、働く上で自分は何を大事にしたいのか、やりがいかプライベートとの両立か、を考えながら情報収集をしていきましょう。
※こちらは2018年2月に公開された記事の再掲です。