名だたる外資系・日系の超人気企業。その内定者は、どのような一年を過ごし、どんな企業を受けていたのか?
ワンキャリ編集部では22大学・31名の18卒にインタビューを行い、人気企業内定の秘訣を記事として公開した。
「大学別トップ就活生レポート」と題し、3月中旬から約2週間に渡ってお送りしたこの特集。今回はその総括編として、公開された31名のトップ就活生レポートをもとに「就活強者の勝ちパターン」を明らかにしていきたい。
19卒版「トップ就活生レポート」は7/6(金)より順次公開します。お楽しみに!
※本記事は2018/4/2初回公開です
1. 商社、デベ、広告、メーカー。「刺さる自己PR」には法則があった
まず調査で浮かび上がったのは、就活強者たちが高く評価を受けた、いわゆる「刺さる自己PR」には法則があることだ。具体的には、商社・デベロッパー、広告、メーカーの各業界で以下のような傾向が見て取れた。
総合商社・デベロッパー:「生々しい苦労話」や「足を動かす泥臭さ」が刺さる
総合商社やデベロッパーでは、OB・OG訪問を重ねたり、時には事業所へ訪問するなど、自分の足を動かす姿勢が好評価を得ている。
【明治大Aさん:三菱商事、伊藤忠商事内定】
67名にOB訪問を行なっており、中には「昼夕夜3人のOBに会った日もあった」
現場に足しげく通って、追求して行く『現場力』があるとOBに指摘された。
【京大Aさん:商社、広告内定】
「行きたい説明会が関西で開催されない」「OB訪問もオフィスの少ない関西では不足」「面接も関西で全て完結する企業はごく一部」。関西からの就職活動は、大学入学時には想像できなかったほど首都圏と差があった。
そこで、こうしたハンディキャップを乗り越えるためにAさんが行ったのが、一日に8人もOB訪問するという荒業。
関西から東京に来ると言えば、社員も極力調整してくれるらしく、東京へ行く日は朝から会社の食堂へ行き、1時間ごとに別々の人とのアポイントを入れていたようだ。
【東北大Bさん:三菱地所、三井不動産内定】
第一志望の一つであったデベロッパーの地方支社に直談判も行っており、面接ではその行動力を高く評価された。
地方学生は説明会やOB・OG訪問の機会が限られることも多いが、そうしたハンデを乗り越えるために積極的に行動する姿勢がプラスに働くこともあるようだ。
広告:「レアな経験」「ユニークな着眼点」が刺さる
クリエイティビティを重視する広告業界は、ESや面接で繰り出される奇問・難問もおなじみだ。自己PRにおいても、経験の「レアさ」を語れることが評価につながるようだ。
【青学Aさん:リクルート、大手広告内定】
ビジネスに興味があったため、起業家が多いといわれるタイへ1年留学していた。
「ITインフラが発達してないのに2位のタイに圧倒的差をつけているウガンダを見てみたい」と考え、ウガンダとナミビアに合計1カ月彼女は滞在していた。
【慶應Aさん:大手広告、マリン内定】
ボランティア活動は、広告業界の面接で食いつきが良かったそうだ。具体的には、ヨーロッパでのホームレス支援や南アフリカに2週間行っての活動に加え、東日本大震災時には宮城の学生30人をヨーロッパに招待する企画を立ち上げたという。
ただし、エピソードは「海外○カ国を旅する」といったように、必ずしもスケールの大きさが必須というわけではないようだ。以下のように、OB・OG訪問でのディスカッションを通して自分を印象づけたケースもある。
【阪大Aさん:電通、丸紅、日揮内定】
多くの学生がするような質問は避け、できるだけ自分独自の持論を織り交ぜた質問をするように心掛けた。多少生意気なくらいに自分の考えをぶつけ、社員と議論をすることでこそ自分を覚えてもらえると感じた。
上記を踏まえると、広告業界の評価のポイントは、やはり発想のユニークさにあるようだ。そう考えれば、そもそもの「レアな経験」も、その出発点は彼らの着眼点にあるといえるだろう。
メーカー:製品愛はNG!?「企業とのマッチ」が刺さる
大手メーカー、特に文系職ともなると倍率100倍を超えることもざらにある、まさに狭き門だ。
その選考で繰り返し問われるのが志望動機だが、単に製品への思い入れを語るのは逆効果になるようだ。
【名大Aさん:大手メーカー内定】
「製品愛を示すのは時間的にも大変で、浅はかな知識では反対に墓穴を掘る結果になる。製品の全体的な特徴や戦略など、しっかりと調べたら分かることを話せば、会社に興味があることを分かってもらえると思います」
知識面で墓穴を掘るリスクがあることはもちろん、「それ以外の製品担当になった時にも頑張れるのか」という点を懸念されてしまう。
以下のように、製品の特色ではなく、全社戦略や自分の描くキャリアとのマッチングなど、「企業そのもの」への思い入れに重点を置くとよいだろう。
【同志社Aさん:サントリー、パナソニック内定】
本当に行きたい企業とは、自分が思い描く会社・会社員像とぴったりマッチした企業だったため、「『自分の熱い思いを精一杯伝える』だけでどんどん面接を突破した」
【早稲田Bさん:リクルート、トヨタ内定】
受けたい企業の業務理解を通じて求められている、人材の要件を把握し(Competitorの分析)、企業が属している業界の動向を把握し(Customerの分析)、分析に基づいて企業が欲しいと思う能力を示せるエピソードを話す(Companyの分析)。
2. もはや留学・体育会だけでは勝てない、求められるプラスアルファ
「海外経験」「体育会所属」なら就活も楽勝……。というイメージはないだろうか。その認識は、もはや時代遅れかもしれない。
インターンなど学部3年(院1年)夏からの早期選考がメジャーになる中で、就活のスタートが比較的遅くなる傾向にある留学生や体育会は、むしろハンディを背負うことにすらなっている。
そんな中でもトップ企業の内定を勝ち取った就活強者たちには、以下のような共通点があった。
留学:「語学だけ」は時代遅れ。コミュニティに溶け込むと高評価
留学経験を自己PRの軸にした就活強者たちの共通点は、「滞在先のコミュニティに溶け込んだ」ことにあった。以下のように、留学先で課外活動に積極的に取り組んだり、インターンやOB・OG訪問で社会人との交流を深めている。
【青学Aさん:リクルート、大手広告内定】
日本人の起業が盛んなタイへ留学し、現地の学生の有志10名と共に観光ビジネスをやってみた。
【早稲田Aさん:メリルIB、三菱商事内定】
高校時代には海外への短期留学を経験するとともに、大学時代にはヨーロッパの難関大学院へ留学し、海外での勉学や現地でのインターンに励むことで、世界と言う舞台で戦うことの出来る人材へと自分を鍛えていった。
語学力を鍛えるだけならば、今やインターネット上の教材で完結する時代だ。彼らが好評価を受ける理由は「海外で暮らしたから」「語学ができるから」ではなく、現地のコミュニティの一員として活躍できる適応力とコミュニケーション能力といえるだろう。
体育会:求められるのは「二足のわらじ」+αが求められる時代へ
トップ就活生たちは、体育会経験をあくまでも差別化のポイントとして捉えていたようだ。実際に高く評価されたのは、以下のように、部活の内外で「プラスアルファ」の行動を起こした経験だった。
【慶應Bさん:エンタメ大手内定】
投資銀行部門(以下、IBD)のサマーインターンに参加したBさんに選考突破の決め手を伺ったところ「外銀マンに無い面白さがあったから」と語ってくれた。実際Bさんの肩書きは、体育会所属から学生団体の幹部経験、1年間の留学、果てにはメディア露出まで非常に個性的だ。
長時間の勤務に耐えられるストレス耐性と体力が求められるIBDにおいて「体育会所属」以上の付加価値を有しているBさんは魅力に映ったのだろう。
【日本女子大Aさん:総合商社(事務職)内定】
「副キャプテンとしてキャプテンを支えた」など、『副○○』の経験は組織に貢献をしつつも裏から支えられるというアピールをしやすい
OB・OGのつながりが強く、就活を有利に進めやすい体育会。しかし、「体育会経験さえあれば楽勝だ」と高をくくっていると就活では苦戦する、という厳しいコメントも聞かれた。
【京大Bさん:三菱商事、丸紅内定】
多くの学生は4年生の10月まで部活に全力を注ぐため、留年して就活をするそうだ。
「体育会」と聞くと、「非公開推薦ルートで早期内定をもらえる」「OB・OGからのあっせんがある」など就活に有利なイメージを持つ方もいるだろう。
Bさんに上記のようなあっせんの有無ついて聞いたところ「他の大学ではそのような優遇はあると聞いたことがあるが、京大アメフト部にはない」と赤裸々に語ってくれた。【MARCH Aさん:大手広告2社内定】
「部活の先輩達が4年の8月くらいまで就活を続けていたんですよね。そういう風にはなりたくないなって思ってたんです。」
3. 志望動機は「フィードバック」で磨く。OB・OG訪問やキャリセンを活用
ここまで紹介したように、業界や学生の属性ごとに、「勝てる」自己PRの共通点が見て取れた。しかし、就活強者たちが初めから完璧な自己PRができていたわけではない。彼らはOB・OG訪問やキャリセンで社会人目線のフィードバックを得ていたのだ。
特に「トップ就活生レポート」の中では、OB・OG訪問を通して自己PRやESをブラッシュアップしていたとのコメントが多数あった。
【名大Aさん:大手メーカー内定】
「トヨタ系はメンターやリクルーターがいろいろとアドバイスをくれる。自分はエントリーシート(ES)などを10〜20回添削してもらった」
【上智Aさん:住商、キーエンス内定】
Aさんは最初に5大商社✕2人ずつ=計10人程度に会い、その中で自分と似たタイプや経歴・感性を持った2、3人に何度もOB訪問をすることで、エントリーシート(ES)のブラッシュアップや業務理解を重ねていった
【明治大Aさん:三菱商事、伊藤忠商事内定】
複数回OBに会って自身のエントリーシート(ES)や志望動機をブラッシュアップし続けてもらっていた
総合商社やメーカーでは、志望動機の内容や社風とのマッチングが深く問われる。実際に働く社員からのフィードバックは確かに有益といえそうだ。
キャリアセンターを積極的に活用した学生も複数いた。
【中大Aさん:政府系金融、住商、外資系コンサル内定】
大学のキャリアセンターが主催する「商社OB会」に参加することで、7大商社のOB訪問のための人脈を一気に作ることが出来たとともに、「就活合宿」という合宿で三井物産のOBに指導してもらえ、そこで自己分析を完璧に行うことが出来たとAさんは語る。
【関学Aさん:日本IBM、日本HP内定】
関西学院大学では、OB訪問名簿において数の少ない外資系就職者まで網羅されているとともに、WEBテストの模試を受けられるサービスも存在しており、環境的は十分に整っていると語る。
【神大Aさん/関西電力、双日内定】
神戸大学の意外な魅力の1つとしては、商社志望を中心に知られているキャリアセンターの名物「おじいちゃん」の存在が挙げられるという。この「おじいちゃん」は某総合商社のOBなのだが、社会人の紹介や志望動機を見てくれる商社志望の神様的存在であるそうだ。実際にAさんも何度かお世話になり、その鋭い指摘が成長につながったと述べていた。
「OB・OG訪問って意味あるの?」
「キャリアセンターをどう使えばいいかわからない」
という就活生にとって、一つのアンサーになるのではないだろうか。
まとめ:就活強者が見ているのは「働くことの本質」だ
いかがだっただろうか。
ここまでを踏まえ、就活強者たちの「内定の秘訣」は以下の3点にまとめられる。
・業界ごとに「刺さる」自己PRの傾向を掴む
・留学や体育会は、経験自体を武器にするのではなく「複数の経験の組み合わせ」や「自発的な行動」をアピールする
・社会人目線でのフィードバックを受ける
就活強者たちは、確かに華やかな経験やスキルを備えていることも多い。しかし、その成功の本質は意外にもシンプルだ。それは、常に就職活動の先にある「働く自分」を見据えていたからだろう。彼らはこのように語っている。
【同志社Aさん:サントリー、パナソニック内定】
Aさんに「就活の勝因」を尋ねたところ、次のように返ってきた。
「ギリギリまで就活をするかどうか迷っていたため『就活する意味』『働いて得られること』とは何か深く考えていたことを伝えられたから」
【中大Bさん:国税専門官、国家一般職内定】
自分の進路を決めるに当たって、今後の人生を深く考えたという。そして人生の多くを占める仕事において、「仕事とは、終局的に自分が生きた証であって、何を成し遂げることが出来たのかが重要だと感じる」との考えに至ったとBさんは語る。
【上智Aさん:住商、キーエンス内定】
突き詰めれば「仕事とは人生の暇つぶし」だという。その中での「正解」とは、その仕事が自分にとって楽しく満足できることであって、就職とは暇つぶしのための環境選びだと、Aさんは分析する。
実際に、就活中から入社後を見据えて勉強を始めたり、転職を前提にキャリア設計をしているとのコメントもあった。
【早稲田Cさん:AIベンチャー内定】
将来どう環境が変化しても、自分らしさを貫いていけるキャリアチェンジを「変身の着火剤」とCさんは呼び、安定を得るためになるべくたくさん着火剤を持つべきだと考えている。
もちろん転職に対してもポジティブ、というよりあって然るべきものであるという価値観を持つ。
就職活動はあくまでも、キャリアの入口を探すプロセスだ。自己分析やOB・OG訪問は、自分が望む働き方を明らかにするために行うものであり、選考を有利に進めるための手段ではない。面接やESといった選考は、企業と学生双方がマッチングを確かめるための場であり、その場限りで自分をよく見せて合格を勝ち取るプレゼンの場ではない。
その本質に立ち返り、自分が働く姿をイメージしながら行動することこそが、就活強者たちから最も学ぶべき点といえるだろう。
▼大学別レポート個別記事はこちら
あなたの「就活生レポート」教えてください
ワンキャリアでは、19卒の皆さんの就活動向をアンケートしています。
あなたの回答が、来年の「トップ就活生レポート」として発信されるかもしれません。ぜひご協力をお願いします。
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