「やりたいことが分からない」「いろいろな選択肢を見てみたい」──。
人それぞれ理由は異なれど、業界を絞らずに就活を行っている学生は多いでしょう。
内定図鑑の第5弾は、「日系メーカー」の内定をもらったEさんのお話。彼女は、業界だけではなく職種まで絞って就活を進めました。
今回は、Eさんだからこそできた選考対策や意外な面接の練習法をご紹介します。
<目次>●業界は「日系メーカー」、職種は「人事部」。早期に決断できた理由とは? ●2社に絞り「経営者の著書」を読み込む。それは「私だけ」の志望理由を作るカギになった ●録画は恥だが役に立つ。面接練習を見返して初めて分かった話し方のクセ ●就活には「仲間」の視点がとても大切。そして「仲間」に惑わされないように
業界は「日系メーカー」、職種は「人事部」。早期に決断できた理由とは?
──就活では、どのような軸で企業を選んでいましたか。
Eさん:「企業がどれだけ熱い思いを持っているか」という点を大切にしていました。
私自身が体育会系のノリというか、物事に対して全力投球できる環境が好きなので、業務内容以外にも社員さんの雰囲気やフィーリングが合うかどうかを見ていましたね。
──その中でも日系メーカーに絞って就活を進めたと聞きました。
Eさん:夏インターンの時点では、ITや金融、インフラ業界など幅広く参加しましたが、秋インターンが始まるころには、日系メーカーの人事部に絞っていました。
──早い段階で職種を絞るのは大きな決断だったかと思います。日系メーカーにはどのような魅力を感じたのでしょうか。
Eさん:企業のワークショップに参加した際、社員の皆さんが自社の製品を愛しているというか、本当に大好きなんだなと伝わってきました。製品に対して、熱い思いを持ちながら仕事に取り組めるっていいですよね。面接でもその思いを伝え続けました。
──人事部を志望するというのも珍しい選択だと思います。なぜ人事に興味を持ったのでしょう。
Eさん:大学では主に人や組織について学んでいたからです。学んだことを生かして専門性を高めるためには、人事部が一番適している職種だと考えています。
──学んだことを生かす、という点では理系就職のような雰囲気もありますね。そうなると、職種別採用をしている企業を探したのでしょうか。
Eさん:そうですね。ただ、それだとかなり受けられる企業が限られてしまうので、それに加えて、将来人事部に行ける可能性があるジョブローテーションが盛んに行われている企業も見ていました。
その場合も、面接では常に「人事に興味があり、人事部に行きたい」と伝えていたので、総合職採用で受けた企業でも結果的に人事部での内定をいただくことができました。
2社に絞り「経営者の著書」を読み込む。それは「私だけ」の志望理由を作るカギになった
──就活を進める中で周りと差をつけようと意識した点はありますか。
Eさん:志望する企業の経営者が書いた本を読むことです。志望度が高かった2社の本を読みました。まずエントリーシート(ES)を書く2週間前に、2~3時間かけて読み込んでいました。ESを書くまでに頭の中で内容を整理することができるからです。最終的には、もう一度重要な部分を読み返し、企業理念や大切にしている価値観を理解したうえでESを書いていましたね。読んでいると志望度も高まりますし、実際に働くことを想像するとワクワクしました。
──なるほど。確かに有名なビジネス書になったような本もありますよね。本を読むときに注目していたことはありますか?
Eさん:企業がアピールしている「キーワード」を自分なりに解釈することです。
例えば、企業のWebページに企業理念が「感動を与えること」と書いてあるとします。この企業ではどのようなことを「感動」というのか、どのような背景があり「感動」を大切にしているかは、Web上の情報だけでは分かりません。そこで実際に本を読むことで、「感動」の意味がより深く分かるというわけです。
そこから、「感動」というキーワードを自分がどのように解釈したのかをESに書いていました。そうすることで、本を読んだことや企業理念への共感をアピールし、志望度の高さを示しました。
──面白いですね。面接でも本を読んだことをアピールしていましたか。
Eさん:直接本を読んだことは伝えていません。過剰なアピールになってしまう恐れがあったからです。しかし、面接でもESと同じように本の中で見つけたキーワードを意識しました。文章の中に「諦めない精神が必要」とあれば、面接では過去諦めずに粘り強さを発揮したエピソードをメインで話したり、面接でどのような質問をされたりしても最後まで粘り強く受け答えをして、諦めない姿を示していましたね。
──一般的な企業研究では、WebページやIR(投資家向け情報提供)情報を見て行いますが、本まで読み込むと他の学生と差別化することができそうです。
Eさん:本まで読めたのは、最初に業界を絞っていたからだと思います。より深く、企業研究ができた自信があります(笑)。幅広く業界を見ていると、本を読む余裕はなかったでしょうね。
▼大手日系企業の経営者が書いている本の参考例
上から、ソニー株式会社、京セラ株式会社
録画は恥だが役に立つ。面接練習を見返して初めて分かった話し方のクセ
──選考対策についても教えてください。約10人の社会人の方に添削をお願いされたとのことですが、コロナ禍でどうやって見つけたのですか?
Eさん:ほとんどが知り合いづてです。友人や長期インターン先の学生から紹介していただきました。最初は、社会人の方とつながるアプリを使っていましたが、満足できませんでした。約束をドタキャンされることもあれば、経歴が怪しいと感じる方もいて。
他には大学のゼミ名簿から直接お願いをすることもありましたね。身元がはっきりされている方ですし、安心してお願いできました。
──録画した動画では、どのようなところに注目していましたか。
Eさん:話し方です。スピードや抑揚が適正かどうかを見ていました。
私の場合は、それで「常に語尾が上がってしまう」という悪いクセが見つかりました。「学生時代頑張っていたことは⤴」や「私が⤴大切にしていることは⤴」という感じで(笑)。
正直、自分が話している動画を見るのは恥ずかしいし、苦痛だったときもありましたが、良い機会になりますよ。
──最近はオンライン面接も多いですし、Zoomで録画するのはうまい手段ですね。自分だけではなく、他の人に見てもらう機会はありましたか?
Eさん:ESと同じように社会人の方に面接練習をお願いしました。1回につき、1時間程度のお時間をいただき、模擬面接とフィードバックの時間を半分ずつくらいで進めていましたね。主に、1人で行うZoomの練習では気付けないポイントについてフィードバックをいただいていました。
例えば、長期インターンの経験をガクチカとして話したとしましょう。しかし、長期インターンを経験していない人にとっては、何を話しているのか分からない部分があると思います。「この業務内容がよく分からなかった」などの指摘をいただき、誰にでも理解できるように話すことを意識していました。
──練習の成果はどうでしたか。
Eさん:確実に以前よりも自分に自信を持って、面接に臨むことができました。一度、グループディスカッション(GD)後に行われた面接で、ガクチカや志望動機だけではなくGDの反省について深掘りされたことがありました。予想外の質問に驚きましたが、落ち着いて伝えられたと思います。
就活には「仲間」の視点がとても大切。そして「仲間」に惑わされないように
──最後に2023年卒の就活生にアドバイスをお願いします。
Eさん:「一人」で就活をしないことです。一人で取り組んでいると、だんだん自信がなくなり孤独になると思うんですよね。さらに、ESや面接などの選考対策は、他者の視点が非常に大切です。人と関わることで、自分だけでは得られなかった情報を知ることができるからです。
一方で、一人で就活をしないとお伝えしましたが、人と比べる必要は全くありません。日系メーカーは内定が出る時期が他の業界と比べても遅い傾向にあります。私は、周囲の学生が早い時期から内定をもらっていることに焦っていました。しかし、あるとき友人に「日系メーカーを目指しているなら、コンサルや外資系などの業界と比べて早い時期に内定が出ないのは当たり前だよ」と言われ、納得したことを覚えています。
私は業界と職種を絞った就活をしましたが、本当にこれで良かったのかと悩むこともありました。現在は、内定をいただいている企業に決まって良かったと心から思っています。しかし、これも人それぞれです。
焦らずに、頑張ってください。
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