ワンキャリ編集部の辻です。
外資OB・OG訪問特集、1本目の今回は外資コンサルタントの話を伺いました。1年目から大企業の戦略案件に関わってきた若手が、就活生の知らない業界の内部事情を語ります!
<見どころ>
・社会人1年目から大企業役員に戦略提言!
・「システム導入案件は増えている」──アタリ案件とハズレ案件
・コンサルタントとして出世したいなら、IT案件は経験すべきだ
・入社してみたら、「戦略ファーム>総合ファーム」ではなかった
<プロフィール>
辻:ワンキャリの新米編集者。大学時代は社交ダンスに熱中し、バイトではマダムのダンスパートナーを務めた。
好きな記事は「ゴールドマン・サックスを選ぶ理由が、僕には見当たらなかった」と「上司の唱えた『当事者意識を持て』という恐ろしい呪文。そうそれはマダンテ」。Kさん:外資系総合ファームに勤める若手コンサルタント。これまで大企業の海外戦略案件や新規事業立案に関わってきた。かつては2時間以上にわたって辻の就活相談に乗ってくれたこともある人格者。
社会人1年目から大企業役員に戦略提言!
辻:「スキルが身につく」「ブランドを得られる」「早く内定が出る」といった理由でコンサルを志望する学生は多いですが、コンサルティングの仕事そのものの魅力って意外と知られていない気がしています。ズバリ、コンサルタントの仕事の醍醐味(だいごみ)って何ですか?
Kさん:もちろん人によるだろうけど、自分にとっての醍醐味は「企業変革の現場に立ち会えること」かな。目の前で大きなお金が動くし、海外戦略として次はこういう事業を展開していこうとか、M&Aでこういう会社を買おうとか。「自分がビジネスを動かしてる」っていう感覚になれるから。
辻:絵に描いたような企業参謀……! でも、「コンサルの入社1年2年は雑用ばかりで、基本的にはパワポ屋さん」なんて言われてますよね。実際はどうなんですか?
Kさん:確かにパワポやエクセルの能力は求められるし、雑用と思えるような仕事は多い。でも、実感として最初の1、2年が雑用ばかりで終わっていくっていうことはないと思う。他の業界のと比べればずっと若手にもチャンスは多いんじゃないかな。
辻:例えばどんなチャンスがありますか?
Kさん:自分の場合、1年目からクライアントの役員と一緒に仕事ができたのは印象深いな。大企業の役員と膝を突き合わせてビジネスアイデアをぶつけ合ったし、1人でプレゼンをする機会ももらった。この年次でそんな体験をすることは、コンサルじゃなければまず難しいと思うんだよね。最先端の業界知識やテクノロジーの知見を使いながら、社会にとって有益な仕事を進めていく。入社間もないころから、そんな仕事に関われたのはラッキーだったと思う。
「システム導入案件は増えている」──アタリ案件とハズレ案件
辻:人によるとは思うんですが、「これはアタリだな」と思うアサインってどういうものなんですか?
Kさん:まず1つ目は、戦略系案件。業界を問わず、いわゆる新規事業立ち上げとか、社長や役員クラスの人と渡り合うような仕事は、アタリと言われやすいと思う。最初に話した、コンサルの醍醐味を体験しやすい仕事と言えるよね。
2つ目は、自分が希望していた領域の仕事にアサインされること。ずっと自動車産業に関わりたかった人が、自動車メーカーのプロジェクトに入るとか。
辻:なるほど。では反対に「これはハズレだな」と思われるアサインは何ですか?
Kさん:よくいわれるのはシステム系の案件、いわゆるITコンサルティングだね。クライアントの社内にシステムを導入する仕事はどうしても作業が多くなるから、「ビジネスを動かしている!」っていう実感は湧きにくいし、社内でも比較的敬遠されることが多いかな。
辻:「企業参謀」の印象が薄いということですね。そもそも、戦略案件とIT案件では求められる能力が全然違いそう。
Kさん:そう、戦略案件は思考力やクリエイティビティが求められる場面が多いけど、システム案件は手を動かして作業することが多い。クリエイティブな仕事を思い描いて来た人にとっては、なんとなく遠回りしているような印象があるのかもしれないよね。
コンサルタントとして出世したいなら、IT案件は経験すべきだ
辻:確かに、作業が多いとなるとコンサルタントの「知的労働」のイメージとは離れる気もします。戦略案件に憧れて入社した人にはやりきれないかもしれないですね。
Kさん:うーん、でも入社から何年も……たとえば2年くらいの時間の中で、まったく希望するプロジェクトにアサインされないっていうのは正直考えにくいかな。
辻:ということは、Kさんも「戦略案件がやりたい!」って主張し続けていたんですか?
Kさん:自分の場合はそんなに言わなかった。戦略案件に当たるのを待ってた(笑)。辻くんも知ってる通り、僕はそんなに積極的なタイプではないでしょう?
辻:確かにそうです(笑)。でも戦略案件って、待っていればいつかアサインされるものなんですか?
Kさん:自分の場合はラッキーだったかな。でも、プロジェクトで一緒に仕事をする上層部の人にしっかり希望を伝えていれば、戦略案件にもつないでくれるっていう印象はあるよ。
とはいえ、システム導入を含めたテクノロジー系の案件は経験しておくべきだとも思う。MBBをはじめとする戦略系ファームの中にもテクノロジーに注力するところは増えているし、コンサル業界に長くいるのであれば、ITに強い方が有利なんだよね。
辻:有利というのは?
Kさん:クライアントへの営業では、「うちのコンサルティングを受けて、こんなシステムを導入して、こんなテクノロジーを使えば、こんなことができますよ」という視点で話をすることが多い。クライアントはその最終形を想像して、コンサルティングを依頼することになるんだ。
辻:自分で案件を取ってこれるコンサルタントになりたいなら、テクノロジーにも詳しい方が良さそうですね。
Kさん:うん、ただそうは言っても、思った以上にシステム案件が多くなる人も少なくない。どこの総合系ファームも同じだと思うけど、アサインメントに納得感を感じられる人は全体の50%くらいかな。ある種の覚悟は必要だと思うよ。
入社してみたら、「戦略ファーム>総合ファーム」ではなかった
辻:学生時代は知らなかったけど、コンサル業界に入ってから分かったことはありますか?
Kさん:学生の中では「MBB>その他戦略ファーム>総合ファーム」というイメージがあると思うけど、実際のところ、業界におけるファームの存在感は全然違ったってことだね。
辻:そうなんですね! 業界内のファームごとの存在感を知る機会はなかなかないので、新鮮です。
Kさん:総合ファームの中では、うちが断トツで力があると思う。抱えているコンサルタントやクライアント数は他社の比にならないと思うし、給与水準でも頭一つ抜けているっていう印象かな。提供しているサービスの質とか稼働率も高いだろうね。
辻:戦略ファームについてはどうですか?
Kさん:実は、学生が憧れるような戦略ファームの中には、業界内でほとんど存在感がないところもある。例えば、学生がこぞって受けるA社。業界に入ってからA社の名前を見ることは少ないし、正直どんな領域に強いかすらよく分からない。もしかしたら、外資系事業会社の日本支社なんかが主なクライアントなのかもしれない。
辻:就活生に人気のA社が……!
Kさん:きっと戦略ファームの社員は優秀だと思うよ。でも、日本の市場の大型戦略案件なら、A社よりもうちが強い。領域によってはトップティアといわれるB社やC社にも勝っている。
本当にコンサルタントとしてやっていくなら、正直言うとうちみたいな大規模ファームがおすすめかな。まぁまだ自分も日が浅いから、偉そうなことは言えないけど……(笑)。
辻:大規模案件に関わりたければ、就活界隈(かいわい)での序列よりも、ファームの規模を見よと。
Kさん:大規模ファームは人も案件も膨大だから、知見がたまりやすいと思う。手前味噌かもしれないけど、近い将来、大規模な総合ファームが少数精鋭の戦略系ファームを追い抜くってこともあるかもしれない。
──後編へ続く
【執筆協力:下原マヤ】
【代わりにOB訪問】
<外資コンサル>
・「戦略ファーム>総合ファーム」の嘘。総合系でも戦略案件に携われる?
・コンサルタントの半分が、3年以内にファームを辞める理由
<外資金融>
・外銀では、オンもオフも全力なヤツが頭ひとつ抜け出せる
<外資メーカー>
・華やかなる外資マーケターの泥臭すぎる社内調整
・日本に初進出してきた外資系企業への転職も。マーケターのセカンドキャリア
(Photo:Pressmaster/Shutterstock.com)