外資系投資銀行で活躍する女性社員のリアルに迫る特別企画。今回は、J.P.モルガンの3年目社員、投資銀行本部 投資銀行部の何思寧さんにインタビューを行いました。
今回の見どころ
・「投資銀行=M&A屋」という誤解。本当のゴールは最適な提案で長期的な信頼を築くこと
・駒の置き方を考えるコンサルと、ゲームの勝ち方を考える投資銀行
・一番の決め手は人。高潔な「白鳥」J.P.モルガンの意外な一面
・就活は「自分にとって最適な会社に行くこと」。これから一緒に働く社員を見てほしい
「外資金融×女子」特集ラインナップ
ゴールドマン・サックス/J.P.モルガン
メリルリンチ日本証券/UBSグループ/シティグループ
入社初日にアサイン、年間10案件を担当! 少数精鋭の真価
──本日はよろしくお願いします。早速ですが、何さんの、入社してから現在までのキャリアを伺えますか。
何:私は2015年に経済学部を卒業し、新卒でJ.P.モルガンの投資銀行部門(IB)に入社しました。3年目の現在はM&Aのアドバイスや資金調達の提案が主な業務で、銀行や保険といった金融法人の案件を担当しています。具体的には、アナリストとして提案資料の情報収集・データ分析や、案件執行に携わっています。
JPモルガン証券株式会社 投資銀行本部 投資銀行部 金融法人グループ 何 思寧(か しねい):2015年入社。東京大学経済学部を卒業後、新卒で投資銀行本部に入社。3年目の現在は、銀行や保険といった金融法人に対するM&Aや資金調達の提案および案件執行を担当している。
──外資系投資銀行の志望者と話していると、「入社後どれくらいの案件数を担当できるのか」と度々質問されます。何さんの場合はいかがでしたか。
何:私が1年目の時は、年間で10件以上関わらせていただきました。しかも嬉しいことに、入社初日から案件が入っていたんです。もちろん案件の期間や時期にもよりますが、若手のうちに多くの経験を積めるのは少数精鋭のJ.P.モルガンの特徴だと思います。
──それは確かに魅力的です。一方で、「担当案件が多いと作業に終始してしまう……」ということはありませんか。入社後は提案資料の作成が主な業務になるかと思うので、懸念を感じたのですが。
何: むしろ、お客様と接する場を積極的に与えてくれる印象です。1年目の頃に提案資料を上司に提出したら、「折角作った資料だから、何さんがクライアントにプレゼンしてみてよ」と背中を押されたのを今でも覚えています。
──1年目からクライアントへの提案を任されるわけですね。続けて伺いますが、J.P.モルガンでは、入社後にどのようなキャリアを歩むことが想定されているのでしょうか。何さんはご自身の業務について、その種類や難易度の面でどのようにステップアップしてきたと思いますか?
何:私の場合、徐々に任される仕事の範囲が増えていきました。アナリストの業務には3つのフェーズがあると思っています。最初のフェーズでは、与えられたテーマやデータを調査・分析して、グラフや情報のサマリーといった提案資料のパーツを正確かつ迅速に作ります。次のフェーズでは、連続したページの資料を作ったり、提案の構成そのものに意見を述べるなど、より自主的に案件に関わるようになります。そして3つ目のフェーズとして、お客様にヒアリングした課題を深く調べたり、次のビジネスに繋がる取り組みに挑戦できるようになるのだと思います。
弊社ではアナリスト、アソシエイト、ヴァイス・プレジデント、エグゼクティブ・ディレクター、マネージング・ディレクターの順で昇格していき、アナリストの期間は原則、新卒入社後の3年間程度です。アソシエイトになると資料の構成を担当するため、「昇格までに何ができるようになっておくべきか?」を常に意識しています。
「今まで辞めたいと思うこと、なかったんです」
──プレッシャーも大きい業務の中で、「辞めたい」という気持ちになることはなかったですか?
何:うーん、私が就活生なら「辞めたいと思った時、こんな風に立ち直りました」という話を聞きたいと思うのですが……本音で、辞めたいと感じることはなかったんです。
──その理由はなぜだと思いますか?
何:もちろん案件が集中する時期は苦労も多いですが、それでも仕事を通じて得られる達成感の方が大きいですし、何より周囲からの信頼が大きくなっていったことが成長のモチベーションになりました。信頼に応えるために小さな成長を重ねてきた結果が、前向きに仕事を続けられている今に繋がるのだと思います。
「投資銀行=M&A屋」という誤解。本当のゴールは最適な提案で長期的な信頼を築くこと
──観点を変えて、投資銀行の事業についてお聞きします。一部の就活生は「投資銀行は、収益源となるM&Aに誘導する選択肢しかクライアントに提供できない」、つまり「答えありきの提案になる」と考えているようです。実際に働く身としてどう思われますか。
何:M&Aはもちろん収入を得る手段の一つですが、私達が何より大切にしているのは、お客様との長期的な関係を築くことです。
投資銀行の社員は、企業の財務アドバイザーとしての役割を期待されています。だからこそ、中期経営計画の策定や配当政策といったお客様がその時々で抱える課題や悩みに対しても、ベストな提案をベストなチームで提供することが必要だと思います。
──興味深いです。その考え方は、J.P.モルガンで働く中でも感じますか?
何:はい。お客様の立場に立ち、求められていることに全力で応えようとする姿勢は、私が就活生時代にJPモルガンに感じた魅力の一つです。当社の理念である「First-class business in a first-class way(一流のビジネスを一流の方法で実践する)」にも通ずる点だと思います。
──代名詞ともいえるM&Aを受注できるのも、クライアントからの日頃の信頼があってこそというわけですね。
駒の置き方を考えるコンサルと、ゲームの勝ち方を考える投資銀行
──ここまで何さんの現在のキャリアをお聞きしましたが、今度は就活中のキャリア選択についてお尋ねします。まず、何さんの就活時の軸を教えていただけますか?
何:就活の軸には「関わりたい仕事」と、「個人のキャリア」という2つの側面がありました。前者としては、学生時代から興味のあった金融を仕事にしたかったという気持ちと、社会的インパクトの大きい事業に携わりたいという気持ちとがありました。後者のキャリアについては、若いうちに急成長できる環境で、毎日充実感を得ながら働きたいと思っていました。
──ビジネスパーソンとしての成長や社会的インパクトの観点では、コンサルも選択肢に入るかと思います。なぜ投資銀行を選択したのでしょうか。
何:一番の理由は、「金融の知識を活かしてプロフェッショナルになりたい」という気持ちがあったからです。コンサルは様々な事業に携われるのが魅力だと思いますが、投資銀行も提案資料の作成だけでなく、案件執行や投資家への訪問など、若手のうちから飽きる間もなく色々な仕事ができますよ。
──コンサルとの比較に関連して、もう一つ伺います。投資銀行もコンサルも、企業の財務データをもとに定量的な判断が求められる点が共通していると思います。投資銀行ならではの数字の読み方や考え方はありますか?
何:コンサルが扱う数字は売上予想までですが、投資銀行ではそれに留まらず「この企業を買収する時の価値はいくらか?」まで算出します。その点、投資銀行ではコンサルより一歩先の数字まで見ているといえるかもしれません。
──興味深いですね。両者の違いをゲームのスタイルに例えると、「コンサルは盤上にどの駒を置くかまでを考え、投資銀行はゲームにどう勝つかまでを考える」といえますね。
一番の決め手は人。高潔な「白鳥」J.P.モルガンの意外な一面
──何さんが外資系投資銀行を志した理由が、ここまでのお話で分かってきました。では、その中でもJ.P.モルガンのIBを選んだのはなぜでしょうか?
何:きっかけは、J.P.モルガンのインターンに参加したことです。当時、当社IBは長期インターンシップを実施していました(現在は3日間のサマー・ワークショップ形式で実施)。インターン参加前はIB以外の部門も視野に入れていましたが、1ヶ月間アナリストワークを経験したことで、IBの志望度が上がりました。
──インターンを通じて、業務内容のほかに魅力を感じた点はありますか?
何:私が一番惹かれたのは、J.P.モルガンの「人」でした。インターン中は毎日社員の方と交流の機会があったのですが、その時感じた印象は入社した今でも変わりません。
──人ですか。社員の方のどんなところが好印象だったのでしょうか?
何:責任感とチーム意識が強い点です。実際に働いてみても、各人がオーナーシップを持ちつつも、チームとしてお互いの仕事をカバーし合う空気を感じます。クールながらも面倒見の良い社員が多いと思います。
──クールな印象に関連して、就活界隈では、社員の洗練されたイメージからJ.P.モルガンの社風を「白鳥」と形容することがありますが。
何:光栄です(笑)。確かに紳士的な方が多いと思います。ですが、冗談を言い合ったりと、面白い一面もありますよ。社内のイベントも様々で、納涼会やクリスマスパーティーもありますし、女子会も開催されます。
──女子会ですか。多忙なIBのイメージからは想像しにくいのですが、具体的に教えてもらえますか?
何:2〜3ヶ月に1回、IBで定期的に女子会を開いています。しかも開催予定日は、ヘッドの承認を得て急な仕事が入らないよう予定を空けてもらえるんです。女性同士で話したいことを存分に話し、交流を深めています。これとは別に、部署横断の女子会もあります。こういう小さいポイントが仕事のモチベーションになりますね。
──仕事中にも女性同士の絆を感じることはありますか?
何:ともに働く中で、戦友のような繋がりができると思います。同じチームに私を含めて3人の女性バンカーがいるのですが、ディレクターから「チャーリーズ・エンジェル」と命名されています(笑)。その3人が同じプロジェクトや提案に入ると、お客様に「うちのチャーリーズ・エンジェルたちです」と紹介されることも。一緒に働いて楽しい仲間が集まっていますね。
プライベートが大切だからこそ、仕事でベストを尽くしたい
──ここまで、何さんの今のお仕事と就活時のキャリア選択についてお話しいただきました。現在・過去の話に続いて、何さんの将来像を伺います。
まず、「一人の女性としてのキャリア」という観点でお聞きします。高学歴な女性と話していて必ず出てくる話題として、「結婚・出産と仕事の両立」があります。投資銀行をファーストキャリアとして選んだ何さんは、ご自身のライフイベントをどのように捉えていますか?
何:個人的には結婚したいし子どもも生みたいので、タイムマネジメントを工夫して仕事とのバランスを取りたいです。IBの仕事は費やした時間ではなく、どれだけ成果を出せるかで評価されると思うので、自分なりにベストを尽くしたいです。プライベートは非常に大事だと思いますし、犠牲にしたくないですね。
──プライベートを含めた個人のキャリアをお聞きしましたが、次は「J.P.モルガンの一員」としての未来もお聞かせ下さい。今後取り組みたいことや目標はありますか。
何:入社後の2年間は、M&Aと資金調達の双方をバランスよく経験でき、良い土台を培うことができました。今後も、勉強するとともに経験を活かし、今までサポート役に回っていた案件を自主的に進行させていけるようになりたいです。その中では、「自分がカバレッジ*だったらどう対応するか?」と常に意識し続けたいです。年次にかかわらずお客様の声を本気で聞いて、「First-class business」を提供できるバンカーになりたいと思います。
*カバレッジ=お客様の担当責任者
就活は「自分にとって最適な会社に行くこと」。これから一緒に働く社員を見てほしい
──インタビューもまもなく終盤です。多くの就活生が気になる点だと思いますが、何さんがJ.P.モルガンのIBという狭き門に入れた理由を、当時を振り返って教えてください。
何:当時の採用担当者は、インターンをしている私の様子を見て、「この仕事が楽しい! という気持ちが伝わってきた」と言っていました。「この人であれば辛い時も乗り越えて、楽しみながら成長してくれる」と期待を持ってもらえたことが大きな理由かもしれませんね。
──なるほど。それは採用したい人材像の真理かもしれませんね。最後に、ワンキャリアを利用する就活生にメッセージをお願いします。
何:私が思う就活の目的は、「自分にとって最適な会社に入社すること」です。内定をたくさん集めて入る会社を選ぶのではなく、社員とコミュニケーションを取る中で、自分に合った会社を見極めてほしいです。多くの社員と交流する機会があるのは新卒ならではだと思うので、ぜひ活用して下さい。
──何さん、本日はありがとうございました。
編集・ライター:めいこ インタビュワー:KEN
「外資金融×女子」特集ラインナップ
ゴールドマン・サックス/J.P.モルガン
メリルリンチ日本証券/UBSグループ/シティグループ