※こちらは2017年10月に公開された記事の再掲載です。
会社員人生においては、転職・出産、病気による退社、家庭の都合でのUターンなど、何が起きるか分かりません。
実際、新卒就職者の3年以内の離職率は30%を超えます(出典:厚生労働省 職業安定局「新規学校卒業就職者の在職期間別離職状況」)。
そんなときに困らないよう、就職活動のときから「つぶしのきく職種とは何か」について考えておくのもよいでしょう。
つぶしのきかない職種とは何か
まず、私の失敗体験を例にして、「つぶしのきかない職種とは何か」を考えたいと思います。
私は、新卒で東京の出版社に入社し、編集職として数年働いた後に、過労で病気になり退社、実家がある地方に戻りました。
病気が治ってきて、再び働きたいと思ったときに、下記について困りました。
・編集職である限り、長時間労働が続く
・そもそも編集職の求人が、地方は少ない
・(広報やWebディレクターなど)編集職から転職できそうな職種の求人も、地方は少ない
私の例をもう少し一般化すると、「長時間労働が必須」「他職種へのキャリアチェンジが難しい」「業界が買い手市場のため、給与格差が大きい」「求人が少ない」「求人が都会に集中していて、地方にない」「専門知識や資格を必要としない」などが、「つぶしのきかない職種」の特徴だと思います。
これらを具体的に見ていきましょう。
長時間労働が必須の職種は、一生働き続けることが難しい
まず、長時間労働が必須の職種でなければ、私も過労にならなかったでしょうし、一生働き続けることができたでしょう。
職種を選ぶときには、「大変すぎないか」という観点を持っておくことは必要です。
出版社退社後、フリーランスとして前の会社から仕事をもらっていた時期もありました。しかし、どうしても長時間労働になってしまうため、私は職種を変更しました。
ですが、編集職からのキャリアチェンジの難しさと、病気が完治せず体力がないため正社員の拘束時間に耐えられない現状を思うと、もっと若いうちに、体を壊す前にキャリアチェンジをするべきだったと後悔しています。
つぶしがきく/きかないの前に、私のように普通に働けなくなる状態になることだけは避けてください。
業界内の給与格差が大きいと、転職すると給与は下がることが多い
ここからは、私が職種を変更しなかったらという仮定のもと、話を続けます。
編集職を続けていても、辞めたのが病気という消極的な理由のため、前の会社より大きな会社に入ることは難しかったでしょう。
編集職は業界内で給与格差が大きいため、前社より小規模な会社に転職する場合は、給与は大きく下がることが予想されます。
求人が少ないと、そもそも職につけない
給与格差がある理由は、編集者になりたい人は多いのに、求人は少ないためです。
給与が安くてもやりたい人が入ってくるので、ハローワークの募集を見ると、月収10万円台の編集プロダクションがたくさんあります。
一方、大企業は、多くの希望者の中から優秀な人を選別するために高給を出します。
そのために給与格差が生まれるのです。
また、編集職の求人は、都会でも少ないですが、地方だと全くないといっていいほどに求人がありません。
元同僚で、結婚して夫が山陰地方に転勤になった優秀な編集者も、全く仕事がないので、地元で働くとしたら最低賃金でパートの事務をやるしかないと言っていました(結局、フリーランスとして都会から仕事をもらっています。……逆に考えると、フリーランスとして継続的に仕事を得ることさえできるのなら、編集職は地球のどこでも働けるともいえます)。
薬剤師のように、専門知識や資格に裏づけされた職種は強い
ここまでは「つぶしのきかない職業」を見てきましたが、続いては「つぶしのきく職業」に焦点を当ててみましょう。
たとえば、求人が少ない地方でもよく見かけるのは、薬剤師(高給)と看護師の求人です。
他に意外なところでは、理系の求人(開発職や研究職など)もよく見かけます。
ただし、都会では地域にまんべんなく見られるのに対し、地方では大きなメーカーや工場がある地域のみに集中しているという特徴はあります。
かつ、継続して求人が見られるというのも特徴です。どんなに田舎でも理系の職種は必要とされているものの、応募資格がある人は少ないため、比較的高給でずっと求人が出されているのでしょう。
このことから、理系などの専門知識や資格が必要な職種は、やはり強いといえると思います。
「(前述の)編集職も、編集の専門知識が必要ではないか」と思う方もいるでしょうが、理系の大学や院で数年間研究を重ねたり、資格試験を受けて得たりした知識とは、やはり市場価値が違うといわざるを得ません。
さらにいうと、個人でも電子書籍を簡単に売れるようになった昨今、出版社も、新人作家の育成よりも既にネット上で有名な人のスカウトに力を入れている現状から、あと十数年もしたら、編集職自体がなくなっているかもしれない、と思ったりもします。
つぶしがきく職種とは
まとめると、「つぶしがきく職種」とは、「大変すぎず、一生働き続けることができる」「求人が多く、地方でも職がある」「業界が斜陽ではなく、売り手市場のため、給与も安くならない」「専門知識や資格が必要」などの特徴があるのではないかと思います。
「今やりたいことか」という軸だけではなく、「中長期的な見通しから、つぶしのきく職種かどうか」という軸も持っていると、職種選択の視野が広がるでしょう。
AIが活躍しはじめるこれからを生きるみなさんへ
最後になりますが、……実は、ワンキャリア編集部からこのテーマをいただいたときに、「今後、AI(人工知能)の影響で労働市場がどう変わるか分からない中で、つぶしのきく職種を特定するのは難しいな」と思いました。
先ほども触れた、中長期的な見通しも持とうという話には、AIの影響も含まれます。
「つぶしのきく職種」に就きたければ、「仕事が大変すぎない」「求人が多い」「売り手市場」「専門知識がある職種」を選んだ上で、AI(人工知能)が業界にどのような影響を及ぼしていくかを観察し続けることも忘れないでください。
<女性の働き方や働くこと自体に悩む方へ。ニャートのオススメ記事一覧>
・今ってホントに「売り手市場」なの?実は就職氷河期より高難易度な業界も:データで読む就活
・女性の働き方:総合職・一般職・エリア総合職(地域総合職)の違いは?就活生が悩む3つの職種を比較してみた
・「死にたい」と思うほど就活が苦しい時にどうしたらよいか
・【女性のキャリア】時短勤務の28歳公務員ママVS元リクルート最強の母
・「新卒一括採用」のメリットとデメリットを知り、就活に対する悩みを軽くしよう
・就活で希望の会社に入れなくても、「やりたいこと」への道のりは一つではない