※こちらは2017年9月に公開された記事の再掲です。
創業わずか7年で東証一部に上場後、時価総額1兆円を達成し、15年連続で増収増益を果たす「医療×ITの巨人」ことエムスリー(M3)。マッキンゼーでパートナーを勤めていた谷村社長を筆頭に、外資系戦略コンサルや投資銀行、大手日系企業など、様々な領域から優秀なプロフェッショナル人材が集います。
今回はマッキンゼー・アンド・カンパニー、ゴールドマン・サックス、リクルート出身の社員3人にお話を伺いました。気鋭のメガベンチャーに集結した「一流」たちのキャリア観に迫ります。
就職人気ランキングで企業を選ぶ危うさ。投資銀行やコンサルはコモディティ化している
──マッキンゼー・アンド・カンパニー(マッキンゼー)、ゴールドマン・サックス(GS)、リクルートと、就職人気ランキングの上位を争う一流企業に新卒入社されたお三方です。率直に、就活の現状についてどう思われますか?松岡:そもそも、人気ランキング上位企業を就職先に選ぶリスクを考えるべきだと思います。多くの人が志望する「大企業」でのキャリアは、会社の歯車──コモディティな人材になる可能性が高いですよね。
松岡 高弘(まつおか たかひろ):京都大学大学院 工学研究科を2004年に修了。新卒でゴールドマン・サックスの投資銀行部門に入社し、M&Aと資金調達アドバイザリー業務に従事した。2014年8月よりエムスリーに参画、事業戦略グループにてM&A案件や製薬プロモーション支援サービスを企画・提供している。2017年4月からは、人工知能を活用した医療機器・サービス研究開発に対する支援事業(呼称「エムスリーAIラボ」)の所長を兼任。2017年9月からはM3EUに赴任し欧州事業を担当。(所属部署はインタビュー当時のものです)
──鮮烈なご意見です。そうなると、ご出身のゴールドマン・サックス(GS)をはじめ、投資銀行でも人材がコモディティ化していることになりますが。
松岡:その通りです。私がGSに入社を決めた15年前、投資銀行を就職先に選ぶのは一握りの学生で、M&Aも今のように一般的ではありませんでした。ですが、現在は事業会社がM&A経験者を雇い、自社リソースでM&Aを実行できるくらい人材が増え、M&Aアドバイザリー業務自体がコモディティになってしまいました。現在の過剰流動性を考慮すると、資金調達もコモディティになりつつある今、もはや投資銀行業務は本当に優秀な学生が目指すステージではないと思います。実際、GSから転職する直前の数年は、「本当に優秀だな」と思った新卒社員に限って、短期で辞めてしまいました。
金色 一賢(かないろ かずたか):東京大学大学院 工学系研究科を2003年に修了後、新卒でマッキンゼーに入社。全社戦略から現場改善に亘る様々な問題解決に従事した。UCバークレーでMBA取得後、JPモルガン証券に移り、M&Aと資金調達アドバイザリー業務を担当した。2014年2月よりエムスリーに参画、海外事業開発担当マネージャーを務める。インド・ヨーロッパと、エムスリー史上最大規模のM&Aを実現し、その後の経営に至るまでリードしている。(所属部署はインタビュー当時のものです)
金色:コンサル業界でも状況は同じです。私がマッキンゼーに入社したとき、戦略コンサル業界の内定者は日本全体で30人未満と、顔の見える同期と切磋琢磨しながら成長できる環境でした。今は業界の裾野が拡がり、1社だけで数十名採用することも珍しくなく、日本全体では数百人単位の内定者がいると思われます。そんな中でUP or OUT*を勝ち抜き、コンサルタントとしてキャリアを積むには相当の能力と覚悟が必要になります。
*UP or OUT:「昇進する=UP」か「辞める=OUT」の二者択一と言われる、外資系企業の環境を指す
──数年後の転職ありきでコンサルを選ぶ学生も少なくありません。その場合は、どんなリスクがあるのでしょうか。
金色:大きく2つあります。1つは、「自分の意思で専門領域を選べず深まらないリスク」です。幅広い領域を経験できる一方、実際の仕事はその時々の顧客のニーズ次第です。自分がやりたい事とは限りませんし、実現するのも自分ではなく顧客です。2つ目は、「環境次第では、転職市場で通常コンサル経験者に求められる問題解決能力が身につかないリスク」です。大規模プロジェクトが増え、全体像が掴めない小さなタスクに既存のフレームワークを当てはめるだけの作業を繰り返しても、結果として何のスキルを得られたか分からなくなります。
──プロフェッショナルファーム出身のお二人からお話を伺いましたが、事業会社であるリクルートで「大企業」のデメリットを感じることはありましたか。
野中 亮宏(のなか あきひろ): 東京大学 経済学部を 2008年に卒業、新卒でリクルートに入社し、人事・営業・新規事業開発などを経験。リクルートホールディングスの経営企画室を経て、2015年5月よりエムスリーに参画。MR派遣、医学生の教育を主要事業とするグループ企業に出向し、経営改善を担当。現在は、新規事業立ち上げに従事している。(所属部署はインタビュー当時のものです)
野中:前提として、リクルートは事業経営に関する様々な素晴らしい仕組みを持っています。その中で育ててもらった事は今も生きていて、感謝しています。しかし、リクルートでも「大企業」的な側面を感じることはありました。事業の3つのフェーズとして「0から1」、「1から10」、「10から100」があると言われますが、リクルートは「10を500へ爆発的に育てる」のが抜群にうまい企業です。一方で、「0から1」に関しては、今は昔ほどポンポンと生まれているわけではなく、大きな組織に特有のコミュニケーションの煩雑さを感じることもありました。ですから、僕が転職を決意した背景には「よりコンパクトな組織で事業の全フェーズを経験したい」という思いも少なからずありました。
成長したいならやはり「若いうちからバッターボックスに立つ」しかない
──皆さんから忌憚ないコメントを頂きました。では、今の就活生たちは、どのような基準で新卒で入社する企業を選ぶべきでしょうか。野中:「意思決定を任される機会の多い企業を選ぶべき」だと思います。ビジネスパーソンに求められる経営の勘所を養うには、「とにかく多くの打席に立つ」しかありません。たとえ小さな事業でも、20代で多くの打席に立てる環境に身を置いてほしいですね。例えば、僕がリクルート時代に担当したゼクシィは500億円の事業を社員1,000人で支えており、自分はその1人でした。エムスリーでは20億円のグループ会社の経営をメンバー2人に任されています。事業規模や金額はリクルート時代より小さいですが、1人に任される金額や裁量は非常に大きくなりました。僕は、500億円の事業のトップになるのをずっと待つよりも、20億円の事業で若いうちにリーダー(意思決定者)になるべきだと思います。
松岡:私は「勝ちグセのある組織にいること」が大切だと思います。当時のGSが強かった理由の1つは、競合他社全てが「敵はGS」と意識する中で、昨日までの自分をどう超えるか考え、新しい事業、サービスを問い続けていたからだと思います。また、こういった「勝者の思考回路」は、成長産業で圧倒的な成果を上げている企業でないと身につきません。
金色: 「エッジの効いた経験が積めるか」も重要です。MBAに行った後に実感したのは、戦略コンサル×MBAといった経歴の人はどこにでも沢山いて、それ自体にはあまり意味がないということです。「それで、あなたの何がすごいの?」と問われた時に、本業でズバ抜けているか、ユニークかつ需要のある経験を積んで「○○ならこの人」と言われるくらいになっていると、その後も良い仕事が舞い込んで、さらに「すごい人」になれる好循環になります。ですが、そのいずれでもない場合、良い仕事も巡って来ず成長もできない悪循環に陥ります。私自身が金融機関に転職した当初がそうでした。もしも今の私が就活生なら、似たもの同士の競争になってしまいそうなキャリアは避け、「希少価値の高い経験を積んで、自分の強みを増していけそうか」という点をよく考えると思います。
世界で働きたい人こそ実は日系企業を選ぶべきだ
──「ビジネスパーソンとして成長できる」という観点で企業の選び方を伺いましたが、「グローバルな働き方」という面ではいかがでしょうか? 一般的には、グローバルといえば外資系企業がイメージされますが……。松岡:外資企業で10年働いた実感として、海外で働きたい人ほど日系企業を選ぶべきだと思います。日本人を海外勤務させる必要があるのは「日本で育てた事業を世界に輸出したい企業」だからです。逆に、外資系は「海外で育てた事業を日本に輸入したい企業」なので、英語ができ、日本の商習慣も分かる人ほど本社との調整役として日本国内に居てほしいはずですよね。厳しく言ってしまえば、国際的な仕事がしたくて外資系企業の門を叩く人は「センスがないかもしれない」って思ってしまいます。
金色:同意します。私がアメリカの大学院でMBAを取得した時、同じプログラムには私を含め5人の日本人がいました。そのうち、日系企業から来た3人は修了後全員が海外勤務になったのに対し、外資系企業から来た私ともう1人は、日本国内でしか働けませんでした。20年、30年のキャリアを通じて海外で働きたい人は、外資系企業を選ぶとかえって道が遠のく場合があります。
──今までのお話を踏まえると、今のトップ学生が選ぶべきキャリアの要件は「コモディティにならないサービスを提供している」「一人に任される裁量が大きい」「成長し続けている日系企業」の3点にあると。これらを兼ね備えている点で、エムスリーは魅力的な企業のひとつですね。
大切なのは医療業界への知識・関心よりも「未開のフィールドに飛び込む覚悟」
──とはいえ、「医療に興味がない」という理由で医療業界をキャリアの選択肢から外す学生が多いのも事実です。エムスリーで働くにあたり、医療業界への知識や関心は必要ですか?
野中:いいえ、医療に全く興味がなくとも、エキサイティングな仕事ができますよ。僕がエムスリーを選んだのも、ビジネスチャンスの大きさに魅力を感じたためです。医療業界はその専門性と法規制によって、参入障壁が高いのが特徴です。裏を返せば、一度参入してしまえば競争優位性が高く、手つかずの「新規ビジネスの種」が転がっているといえます。「コモディティ人材」の逆を行きたいと思うなら、まさにうってつけの環境ではないでしょうか。
──なるほど、興味深いです。一方で、お話を聞いていると、「エムスリーで活躍できるのは、経験とスキルを持つ中途採用者に限られるのではないか」と感じる学生も多そうです。新卒でエムスリーに入社する意義や価値はどこにあるのでしょうか。
野中:風土の面で言えば、エムスリーは年次や経験を問わず、飛び抜けたい人にマッチする会社です。企業が成長していくと、どうしても人材管理を「仕組み」で担保するという傾向が強くなります。そうすると人材の質は平均化していく場合が多いと思います。その点でエムスリーは、余計な干渉はせず、各人の才能や熱意が生かせるフィールドを用意しています。業界にビジネスの種が溢れていて、組織の人数はわずか300人とくれば、若手社員に「打席が回る」チャンスは十分にありますよね。イノベーションに必要な創造性を高め、発揮するのに、これ以上の場はありません。
──前回のインタビューでも、経営陣が「若手が活躍する余白作り」に注力しているとコメントがありました。お三方の周囲に、そのような実例はありますか?
金色:インドのグループ会社経営を現地で主導しているのは、新卒採用出身の社員です。彼は海外事業部門の所属でも帰国子女でもありませんでしたが、日本で複数の新規案件を実現した後「どうしてもインドの案件がやりたい」と自ら手を挙げ、最終的には現地へ赴任することになりました。彼とは毎日のように電話しながら仕事を進めていますが、今日もインドで大活躍してくれています。
野中:実際に僕の周りでも余白だらけです。そのおかげで新しいことにどんどんチャレンジが出来ています。自分のフィールドを拡げ試行錯誤しながら進めているからこその学びや成長はかなりあります。
──最後に、エムスリーに興味を持った学生に対して、皆さんからメッセージをお願いします。
松岡:医療業界の市場規模は日本国内で50兆円、世界では1,000兆円と言われる巨大なマーケットです。加えて、人口減少社会にある日本において、実は医療ほどの成長産業はほとんどありません。それは、GS時代にあらゆる国内企業のM&Aを担当した経験からも断言できます。この記事を読んで「エムスリーもありかもしれない」と感じた人はセンスがいい。「自分はコモディティ人材になるつもりはない」と自信を持って言える人に門を叩いてほしいです。
金色: エムスリーとして、今後展開したい事業領域は国内・海外問わず幾らでもあります。また、M&Aでも新規サービス立ち上げでも、1つ形にすることができるとそこから新しい可能性がどんどん出てきます。それらを実際にやり切って事業化まで成功させるのは、全く簡単ではなく、幾つもの障害をあらゆる可能性を試して乗り越えていくようなことになりますが、これは若くて優秀な経営人材にこそ、挑んでほしいフィールドですね。
野中:飛び抜けたい人を歓迎します。採用基準も外資系トップファームと同様にかなり厳しく設定していますが、その分、入社後は思う存分活躍でき、圧倒的な成長が可能となるフィールドを用意しています。
──ありがとうございます。今日は皆さんの忌憚ないキャリア観と、エムスリーの魅力を存分に聞かせていただきました。松岡さん、金色さん、野中さん、ありがとうございました。
エムスリーのこれまでの公式インタビューはこちら
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【インタビューアー、ライター:めいこ】