こんにちは、ワンキャリ編集部です。
ワンキャリアが総力をあげてお届けする人気企画、総合商社特集。今年は「総合商社の現場力」と題し、第一線で輝く若手・中堅社員に焦点を当ててお送りします。現場で活躍する商社パーソンは、魅力的な仕事に携わる一方、多忙を極めるためOB・OG訪問が難しいのが実情です。インタビューを通して、普段なかなか知ることができない総合商社のリアルと、大義を持って働く商社パーソンたちの気概を味わってください。
今回は双日の現場力に迫ります。2016年入社、リテール・生活産業本部投資マネジメント部事業開発課所属の井出喜文(いで よしふみ)さんにお話を伺いました。
<双日の「現場力」 押さえるポイントはここ!>
・若手を現場に送り込む決断力と豪快さ
・30代社員の構想が部内を動かす。ボトムアップ型で案件を創出
・1年目から活躍するコツは「相手への想像力」
「総合商社」特集ラインアップ
住友商事/伊藤忠商事/三菱商事/三井物産/丸紅/双日
「マレーシアに本物の日本食を届ける」日系レストラン集合施設を立ち上げ日本企業とコラボレーション
──本日はよろしくお願いします。まずは、この記事を読む学生に向けて、所属する投資マネジメント部のビジネスについて簡単に教えていただけますか。
井出:よろしくお願いします。所属するリテール・生活産業本部の投資マネジメント部には、3つの課があります。私が籍を置く事業開発課、そして投資事業課、事業マネジメント課です。事業開発課の役割は、ASEAN(東南アジア諸国連合)地域で商業施設・リテール関連事業を展開することであり、私のチームは、国内で培った商業施設投資・運営ノウハウを海外に展開していくことです。チームメンバーのおよそ3分の1を20〜30代が占めています。
■井出 喜文(いで よしふみ)さんのプロフィール
2016年4月:リテール・生活産業本部に配属
2017年8〜2018年3月:マレーシアに派遣
2018年3月:J's Gate Dining開業前後の支援、ASEAN(東南アジア諸国連合)新規事業開拓業務に従事
──井出さんは入社3年目とのこと。現在までにどのような業務を担当されましたか?
井出:国内外の商業施設関連事業に広く携わっています。国内は高松や滋賀にある商業施設の販促業務です。海外では、シンガポールのJapan Food Townの販促業務、マレーシア・クアラルンプールにある大型商業施設「Lot 10」での日系レストラン集合施設の開発・運営業務などがあります。マレーシアの業務は入社した2016年から今まで関わり、現在は本業務と並行してASEAN(東南アジア諸国連合)新規商業施設事業の開拓にも従事しています。
──これらの仕事でお客さまと関わる中で、井出さんが「総合商社の現場」を感じたのはどのような場面でしたか。
井出:私の手掛けたマレーシアの商業施設に訪れた現地の方たちがおいしそうに日本食を食べている姿を見たときです。Lot 10にオープンした日系レストランが集まるJ's Gate Diningは「マレーシアに本物の日本食を届けたい」というミッションの下動いていました。同施設が2018年1月にオープンしたとき、間近でそうしたシーンを見られたことは特に印象的でした。
責任感が周囲を動かした! 入社半年足らずで海外出張を実現
──J's Gate Diningの案件は入社した2016年から携わっていたそうですね。井出さんは具体的に、どのような役割を担っていましたか?
井出:施設に入居していただけるテナント探し、入居テナントの進出支援やビジネス支援などです。1年目では、テナント集めの営業に奔走しました。さらに同年の9月にはお客さまたちを現地にアテンドし、施設を知ってもらうことでJ's Gate Diningへの期待を高めていただきました。
──1年目で営業に携わる中で、お客さまたちと接する際に注意していたことや意識していたことを教えてください。
井出:「何事も目的を持って取り組むこと」です。人によっては、営業のアポイントや顧客訪問につらさを覚える人がいるかもしれませんが、私はこれまで仕事を通してつらいと感じることはありませんでした。それは可能な範囲で、起こりうる事態を想定しておくことで予想と現実のギャップが大きくならないようにしていたからです。
──1年目の9月にマレーシア出張を経験したとのお話でしたが、双日では1年目から海外出張に行くのは一般的なことなのですか。
井出:双日は若手の海外出張やトレーニー(=短期研修)としての派遣には積極的です。2年目の夏には同期が2名、海外へ派遣されています。とはいえ、当時自分の部署では1年目早々の海外出張は異例のことでした。自分がお声がけしたお客さまへの責任を果たすためにも、どうしても現地視察に同行させてほしいと上司・先輩に相談しました。その時に「なぜ、自分が行く必要があるのか」「双日に及ぼすメリット」などを粘り強く説明することで、結果として出張を許可してもらえました。
──井出さんも、入社2年目でマレーシアに約8カ月間、トレーニーとして派遣された経験もされていますね。現地では実際にどのような業務をされていましたか?
井出:トレーニーとして派遣されたので、通常であれば指導役として日本人社員のトレーナーがつき、アドバイスをしてくれます。しかし、私についたトレーナーはショッピングモールの運営経験がない現地スタッフでした。ですから現地でのコネクション作りも、基本的には私が主体となって進めましたね。現地法人の立ち上げをサポートするコンサルタントとつながり、そこから各専門家を紹介してもらうなどして、手探りで開拓を進めました。入社して2年目の若手にこれだけ任せてもらえるのは、双日ならではだと思います。
──ここまでのお話から、お客さまに対する責任感や仕事への熱意が伝わってきます。この経験から井出さんが学んだことはありますか?
井出:「クロージング力」です。ニーズのある潜在顧客の獲得から、現地へのアテンドといった一連の流れを通して、自分なりに最後までやり遂げる大切さに気付きました。どのような小さなことでも最後までやり遂げること、そしてその積み重ねが大きな仕事につながっていくことを学んだきっかけでもありました。
夢を抱く先輩との出会い。ボトムアップで案件を創出
──若くして活躍されている井出さん。そこまで責任のある仕事を任せてもらえるほど、成長できている理由は何だと思いますか?
井出:仕事をともにした上司・先輩との出会いです。その中でも1年目から現在に至るまで一緒に仕事をしてる、メンター的存在の先輩の影響は特に大きかったと思っています。1年目の時の海外出張の希望を、課長や部長に掛け合ってくれたのもその先輩です。入社した意義の半分は、その先輩との出会いだと思うくらいです。
──ともに働く人たちが、ご自身の仕事にも良い影響を与えているのですね。
井出:はい。先輩からはさまざまなことを吸収していきたいと思っています。実はマレーシアの日本食レストラン街も、シンガポールでの案件も、その先輩が着想したものです。
──驚きました。今、まさに井出さんが携わっているビジネスの土台を作った方なのですね。
井出:おっしゃる通りです。現在でこそ双日はASEAN(東南アジア諸国連合)を視野に入れた事業展開をしていますが、それまでショッピングモール事業は国内が中心でした。その先輩がシンガポール出張をきっかけに立案した構想が、現在の私たちのチームのビジネスにつながっているのです。物語としてでき過ぎではないかと思ってしまいますが、先輩は自身が描いたビジョンを現実に手繰り寄せたのです。
──事業立案のきっかけなど、とても興味深いエピソードです。こうしたボトムアップ型の企画・立案は双日ではよくあることなのでしょうか。
井出:私の肌感覚ではありますが、ボトムアップのプロジェクトは多い印象です。双日が大手総合商社の中でも比較的新しい企業であるからこそ、市場に食いこむためにもボトムアップ型で新しい案件を創出する必要があります。
就活では当事者意識×空間ビジネス=双日にたどり着いた
──井出さんは学生時代、どのようなことを軸に就活を進めていましたか?
井出:「当事者意識を持って働ける環境があるか?」ということが最優先事項でした。しかしそれだとあまりにも選択範囲が広くなるため、「何をしたいのか?」という要素も併せた2軸で進めました。大学院時代の研究を通して空間ビジネスの面白さに心を動かされたので、総合商社やデベロッパーを中心に受けていました。
──では、井出さんが双日への入社を決めたポイントは何でしょう。
井出:就職活動の要所要所での先輩社員との出会いです。特に、最終面接前にサポートしてくれた当社の社員は、面接へのアドバイスではなくて、「自分が双日で今後こうしたい、ああしたい」というビジョンをたくさん話してくれました。どの年次でも言いたいことが言える、やりたいことを応援してくれる会社だと思い魅力的に感じました。
商社1年目に必要なのは、知識やスキルより「想像力」
──商社を志望する学生や、既に商社に内定している学生に対して、井出さんのように1年目から活躍できるコツを教えてください。
井出:相手の立場に立って物事を考える「想像力」を持つことです。まず自身を形作るピラミッドがあったとき、その土台にあるのは「志」です。その上に「想像力」、仮説思考やクリティカルシンキングといった「思考力」、ファイナンスやリーガルなどの「スキル」が順番で乗っかっていると考えています。志は人それぞれのため、そう簡単に変えることはできません。だからこそ私は「相手への想像力」を養うことが重要だと思います。
──井出さんは、相手が想像力を持っているかどうかをどのように判断しますか。
井出:人の話をきちんと聞けているかどうかです。「Aという質問に対してAの回答をする」というのは、当たり前のことですが、できていない人は多いかもしれません。相手がどのような意図でAという質問をしているのか、想像しながら答える必要があります。答えている間に自分の発言が「質問とずれている」と思ったら、軌道修正してアジャストすることが大切です。その答え自体がどんなに素晴らしいものでも、的外れな回答では意味がありません。
──井出さんの経験を踏まえて、入社1年目で意識して働かせるべき想像力はありますか?
井出:私が1年目で海外出張に行けた話を例にあげますね。上司の立場に立って考えれば「1年目の社員が活躍するわけがない」と思っているだろう……と想像しました。その前提を踏まえて、上司たちが納得するような答えを準備しておきます。これは日々の経験から培われることでもあるため、会議の資料を用意するという小さなことでさえ、相手への想像力は大切にした方がいいのではないでしょうか。
──常に相手の立場に立って仕事をすることはとてもすてきなことですよね。その一方で「いつ自分の志を発揮するのか?」という疑問を感じました。
井出:今は信頼を積み上げて、貯金をしているイメージです。私はまだ貯金を使うタイミングではないと思っています。自分の志を発揮したいときに、この貯金を使います。それが1年後、2年後になるのかは分かりませんが、積み上げた信頼によって、自分がやりたいと思うことへの周囲の反応が違うはずです。
「自分のトリセツを作ろう」ここが人生の発射台になる
──率直に伺います。井出さんは、なぜ双日に採用されたと思いますか。
井出:「当事者意識=オーナーシップ」を持って働きたいという考えに賛同してもらえたからではないでしょうか。私は「再現性」を伝えることで、過去の頑張りや成果を双日でも再現できると理解してもらえたと思います。特に双日の場合は、いかにモチベーションを高く保てるかにおいて高い再現性が求められていると感じました。例えば、「どういう瞬間に充実感を感じましたか?」というような質問で話すエピソードの再現性は重要だと思います。
──再現性という部分についてもう少し具体的に教えてください。
井出:例えば、「何かで頑張りました」とアピールするなら、その頑張りを会社や社会でも再現できると相手に思わせることが重要です。甲子園で活躍した経験があるようなスポーツエリートが企業に採用されやすいのは、再現性に疑う余地がないからだと考えます。私にはそこまで突き抜けた経験がないので、再現性をできるだけ原体験と結びつけて話すように心がけていました。
──実際に井出さんは、どのように原体験と再現性を関連付けましたか?
井出:「何かに縛られることなく自分の思いを具現化してきた」という原体験と、それが入社後もできそうだとイメージできるような再現性をひもづけました。例えば学生時代に不動産屋でアルバイトをしていたときの話です。このときはアルバイトでありながら、顧客対応や営業まで行っていました。その時に自分で考えてお客さまの対応をしたことが、すごく楽しかった記憶があります。もっとさかのぼれば、一人っ子だったこともあり、小さい頃から親にやりたいことを止められた記憶がありません。このように、面接では幼少期から現在までの原体験から再現性となる要素を抽出して話していました。
──もし井出さんがOB訪問を受けたら、学生たちにどのようなアドバイスをしますか?
井出:「自分のトリセツ(取扱説明書)を持とう」と伝えます。どこを押せばやる気が出て、前に進んで、悔しがるか……という。全部は分からなくていいので、まずはトリセツの目次を完成させてほしいです。私も、自分のことはまだ全然分かりませんし、失敗することも多いです。でも就活を機会に初版を作って、アップデートしていけばいいのはないでしょうか。
──最後に、これから商社を目指す学生にメッセージをお願いします。
井出:就活は、強制的に自身の人生に向き合わされるシステムです。自分自身を理解する貴重な機会ですから、恥ずかしがらず、面倒がらず、強がらずに真摯(しんし)に向き合って欲しいと思います。就活をあなたの人生の発射台にし、高く遠くへ突き抜けてください。
──井出さん、ありがとうございました。
※年次、所属部署はすべて取材当時の情報です
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【インタビューアー:スギモトアイ/ライター:yalesna/カメラマン:友寄英樹】