ここを読んでいる皆さんの多くは中小零細企業に興味はないですよね。ないと思います。僕も新卒の頃は1ミリも興味がありませんでした。
しかし、現在僕は社長と机を並べて執務するレベルの零細企業に勤めており、大変快適な職場ライフを送っているので、就活に使える「中小零細企業の選び方」の話をしようと思います。そういうわけで、「選び方」の前に「中小・零細企業の良いところ」からお話しします。
今回の見どころはこちら
・中小企業のメリットは「経営能力がつく」「すぐ強くなれる」「難アリ人材もOK」
・会社は小さければ小さいほど楽しい
・で、儲かっている会社はどう探すの? たった2つの見抜き方
・説明会で数字が出てこない会社は論外
・選ぶべきは「社風に惚れた会社」ではなく「ビジネスモデルに惚れた会社」
・企業研究と業界研究、どうすればいいの? 答えは簡単。会社に突撃すればいい
・訪問の流儀は守るべし。それでも、大手のOB訪問よりハードルは低い
・会社の文化は経営者に似る。カルチャーフィットは社長で見極めよう
中小企業のメリットは「経営能力がつく」「すぐ強くなれる」「難アリ人材もOK」
ざっくり言って、中小企業に新卒入社するメリットは3つほどあると思います。
仕事ができればあっという間に立場が強くなる
例外もありますが、中小零細企業は基本的に年功序列で出世したりしません。というのも、小さい組織で利益を上げる人間を冷遇した場合、あっという間に他社に逃げられるからです。
結果さえ出せば、「は? 文句あるなら辞めるけど?」という強い立場にわりと簡単に到達します。給与交渉もガンガン打てます。
生の経営に触れて「ビジネスモデルと企業財務を見る能力」がつく
社員1,000人とかの会社になると、企業財務を理解するだけでも一苦労ですし、会社の収益の軸となるビジネスモデルを理解するのもかなり難しくなります。しかし、中小零細企業であれば大変分かりやすいでしょう。
これは経営者を目指す皆様には大変魅力的な要素だと思います。まぁ、儲(もう)かってない会社に入ってしまうと「会社の経営状態が分かり過ぎて給与交渉ができない……」みたいな悲しいことにもなるわけですが。
難アリ人材でも利益につながる一芸があれば評価されやすい
中小零細企業は人材獲得に常に苦しんでいます。ゆえに、多少能力的な問題があるとしても、利益を出す人間は認められやすい。
これは、歴史ある大企業の総合職がオールラウンダーとしての能力を求めるのとは実に対照的です。
会社は小さければ小さいほど楽しい
ざっと考えてもこれくらいのメリットがあります。
そして僕は「基本的に、会社は小さければ小さいほど楽しい」と感じています。何せ、メリットの2つ目に挙げたとおり、生の経営に触れる機会が増えますから。仕事の裁量をもらいやすく、業務ルーチンなども固まっていないため、自分のやり方が通せる可能性が高いです。
そういう意味で、野心ある新卒の皆さんが、あえて中小零細企業、あるいはベンチャーやスタートアップに突貫していくのは、僕は「アリ」だと思います。「5年で乗っ取ってやる」くらいの気持ちで突っ込んでみても面白いかもしれません。新卒から入って10年足らずで代表取締役まで登りつめた人を僕は知っています。こういうことが起きるのも小さい会社の面白さでしょう。
デメリットは言うまでもないですよね、基本的に大手に比べて給与が低かったり、福利厚生は乏しいでしょう。あとは、ある日突然会社が消滅したりするくらいです。転職の際も有利には働かないでしょうね。まぁ、大したデメリットではないですね。
で、儲かっている会社はどう探すの? たった2つの見抜き方
それでは本題の「会社の選び方」に入っていきましょう。
こちらの記事も読んでいただけると大変幸いです。ベンチャー企業で一攫千金を目指す皆さんのルートはこちらです。今回はあくまでも「儲かっている中小零細企業を選別する」ことに重きを置いています。
中小零細企業を選ぶ時に最も重要なことは2つです。
1. 利益は出ているのか、どの程度出ているのか
2. その利益はどのようなビジネスモデルから生まれてくるのか
この2つが理解できればいいだけです。ここから詳しく説明します。
説明会で数字が出てこない会社は論外
まず、説明会で事業概要を数字で説明しない会社は論外と考えておきましょう。
売上高と営業利益率、それに社員数が分かるだけで大分見えてくるものがありますよね。あとは平均在籍年数や平均年齢なんかもそれなりに参考になります。この辺をよく見れば「あっ、これ永遠に給料上がらない会社じゃん」と気付けるでしょう。「人間をひたすら安く長時間働かせる」というイノベーションで回っている会社では働きたくないですよね。
僕はただの一度も数字が出てこない会社説明会に参加したことがありますが、ああいうのはダメです。いくら社長が熱く素晴らしい経営理念を語っても、数字の裏づけのないものは一切信じないようにしましょう。調子の良い会社なら、黙っていてもこの数年の売上げや利益率の推移なんかを自慢してくると思いますので、その辺が全く出てこないとなると……ということです。
選ぶべきは「社風に惚れた会社」ではなく「ビジネスモデルに惚れた会社」
そして、利益の出どころが何なのかも掴んでおきましょう。
大企業と違って、中小零細企業には生き残っているだけの理由が必ずあります。それは取引先との強固な関係であったり、商品の特異性であったり、ビジネスモデルの革新性であったりと様々ですが、「なるほど、こいつは儲かるな」と思える会社に入るのが重要です。社長や社員に惚(ほ)れ込むのではなく、ビジネスモデルに惚れ込める会社に入れれば、少なくとも後悔は少なくなるでしょう。
中小零細企業への入社は、大企業よりむしろ起業に似ています。「この事業と心中したい」と思える会社を探しましょう。何せ、中小零細企業に入社するということは、その会社が今後伸びていくと信じての賭けです。悔いの残らない張り方をしましょう。
ちなみに、「自分にとって条件が良いかどうか」という判断軸もあります。「条件」とは、給与形態(基本給や歩合など)であったり、会社の信用度や知名度だったりするでしょうが、自分の適性や望む働き方と合わせて「良い条件とは何か」を考えるのも大事ですね。ちなみに僕が現在の会社を選んだ理由は「会社の知名度とかはどうでもいい。とにかく歩合が良くて、仕事の裁量をくれて、社員管理がヌルいところ」という選び方でした。新卒向きとは言いにくいですが、こういうのもありですね。
企業研究と業界研究、どうすればいいの? 答えは簡単。会社に突撃すればいい
しかし、中小零細企業の業界研究というのは非常に難しい。そこでどうするか。もちろん、前提となる業界情報、業界の規模や代表的な会社、あるいはそのパワーバランスなどは書籍やネットなどを活用して頭に入れておく必要がありますが、ニッチな業界の詳しい情報は「人に聞く」以外の手段はほとんどありません。
そこで、非常に汎用的な大技があります。とりあえず事前情報を頭に入れられるだけ入れたら、後は興味のある会社に突っ込んでいけばいいのです。
僕が貿易会社を経営していた頃は「あんたの商材の輸入がやりたい! あんたの会社について教えろ! あと業界について教えろ!」みたいな大学生が結構訪ねて来たものです。どこから探し出したのか分かりませんが、事業内容なんかは調べれば出てきますしね。OB訪問がガンガン来るような会社なら別ですが、そうでなければ体当たりすれば話くらいは聞いてくれるところも多いですし、業界の見渡し方くらいは聞きだせると思います。
ちなみに、一番質問すべきなのは、前述の通り「儲かってるの? これから儲かっていく見込みはあるの?」とか「利益率どんなもん?」「他社に比べてビジネスモデルの強みあるの?」辺りですよね。うまく聞き出しましょう。「儲からないしこれから儲かっていく見込みもない商売をしている会社」というのは存在します。そういうところは避けた方が良いですね。
業界についておおよそのことを調べ、何社かで話を聞かせてもらえれば「どこの会社が強くてどこの会社が弱いのか」、「どういった特色がそれぞれの会社にあるのか」が見えてくるでしょう。
情報がないなら足で探す。複数の情報源から得た情報を総合する。そういうことです。
訪問の流儀は守るべし。それでも、大手のOB訪問よりハードルは低い
大手のOB訪問と違って、中小零細企業の皆さんはそれほどマナーにうるさくありません。
何より仕事に興味を持ってもらえるのは嬉しいことです。求人というのはとてもお金がかかるものなので、志望者の側から来てくれるのはとてもありがたいことなのです。連絡の方法はSNSが便利ですね。企業のFacebookやTwitterアカウントを持っている会社なら、そこから体当たりしてもいいでしょう。メールも悪くない手段です。
ただ、やはり時間を取ってもらうことになりますので、礼儀や気遣いは忘れないようにしましょう。具体的に言えば、質問したいことをまとめてくるなどの事前準備があるといいですね。というのも、会社側にとっても学生の訪問はイレギュラーですので、上手に話せないこともままあるからです。「熱意があるのは分かるけど、何を知りたいのかよく分からない」というのが一番困りました。一般的な面接とは違って、より人間同士の生のコミュニケーションの度合いが高いことは頭に入れておきましょう。遠慮なく、しかし礼儀を持っていきましょう。
会社の文化は経営者に似る。カルチャーフィットは社長で見極めよう
序盤で「社長が熱く語っているのはハッタリの可能性があるから真に受けすぎるな」という話をしましたが、一方で中小零細企業、あるいはベンチャーやスタートアップにおいて「経営者」は極めて重要な存在です。小さな会社の文化というのは経営者の性質そのものになりがちだからです。
エモーショナルな社長の会社はエモーショナルな雰囲気になりますし、逆に理詰めで論理的な社長の会社は当然、社長の性質を反映した文化になるでしょう。小さい会社はとにかく経営者と従業員の距離が近い。「この人とやっていくのは無理だ」と入社後に気付いても手遅れです。
説明会や面接で社長が熱く語る経営理念や哲学なんかは話半分に聞いて構いません。しかし、「この人とやっていけるか?」という目線は絶対に持っておいてください。経営者というのは口先で人を乗せる達人です。口から出てくるのは輝かしい未来の話に決まっています。だから、「何を話すか」より、「この人はどんな人なんだろう」という目で見るのが大変おすすめです。
小さい会社には逃げ場がありません。配置転換すらないことも多いでしょう。この会社でやっていけるのか、経営者は分かり合うことが可能な人々か、しっかり吟味してください。
小さい会社は本当に楽しい。僕の勤める会社もなかなか儲かっている会社ですが、日々「楽しいな」と思っています。中小零細企業、あるいはベンチャーやスタートアップ。そういう場所にはそれぞれの良さがあります。
給与の高さや安定性は約束できませんが、「ツボに入ったら本当に楽しいよ」とは言えます。みなさんがツボに嵌(はま)る企業に入社できることを心からお祈りしています。
▼独立・起業に関する記事はこちら
・独立・起業したい君へ。就活でのファーストキャリアの選び方
※こちらは2017年8月に公開された記事の再掲です。