こんにちは。マスコミ業界に勤める雨月カレンです。今回は編集者の仕事について説明をしたいと思います。
私自身、学生のときは「そもそも編集者って何をやっているの?」と思っていました。OBOG訪問などで話を聞くものの、具体的にはイメージしづらかったのを覚えています。
編集者は商品の形態により働き方が変化する
編集者は雑誌・書籍・漫画などいろいろな書籍を扱いますが、その商品を「作家主導で作る」か「編集者主導で作る」かによって編集者の仕事の意味合いが変化します。それぞれ、作家主導で作る商品の一例は漫画や文芸で、編集者主導で作る商品の一例はビジネス書です。
商品の一例 | 編集者の役割 | 求められるスキルの代表例 | |
作家主導 |
漫画・文芸 | 作家のサポート | ・あらゆるコミュニケーション能力 |
編集者主導 | ビジネス書 | 主導して力強く指示を出す | ・プレゼン力 ・ディレクション力 |
「作家主導」の働き方から順にお伝えします。
「作家主導」は、作家の創造性が肝
作家主導で作る漫画や文芸における編集者の仕事は「つなげること」です。
こうした書籍の場合は、一人の作家がものすごい創造性を発揮して一冊の本を仕上げます。ドラマの「重版出来!」でもコミック誌の編集者にスポットが当たっていますが、とにかく作家と社会・読者をつなぐのが編集者の仕事です。
ズボラな作家は編集者がコントロール
商品を世に出すまでには印刷所に入稿する日・書店に並べる日など締め切りがたくさん存在するのですが、作家によっては気にしない人もいます。「気分がのらないから書けない」「アイデアが浮かばない」などの理由から、筆が止まってしまう人もいます。それでも締め切りはやってきます。
編集者は、時には作家を元気づけ、時には相談にのり、共に「出版」というゴールを目指すのです。時には食事をほとんど取らない作家を心配し、編集者が食事を届けることもあります。編集者は良い商品を世に届けるためにさまざまなサポートを行うのです。
舌を肥やして、贈り物の選択眼を磨くことも仕事のうち
「つなぐ」ためには、「人付き合い」が必要不可欠です。コミックや文芸の編集者は特に「飲む」「食べる」「手紙を書く」「イベントに行く・手伝う」「相談にのる」……などの多岐にわたるコミュニケーションを求められます。
特に、作家に人気があればあるほど出版社としては頭が上がらないので、より丁寧な扱いをすることにもなります。豪華なレストランに連れて行ったり、贈り物を送ったりすることもあります。舌を肥やしつつ、いろいろな店や贈り物の選択肢(センス)を磨いておくことも重要なのです。
「編集者主導」は、編集者自身が光ることが肝
作家主導の場合はとにかく作家の創造性を大切にするサポート姿勢であることが分かったと思います。
一方、編集者主導で作る場合は、企画の立ち上げはもちろん、書籍の内容やその見せ方にまで編集者が積極的に関わります。編集者には、「プレゼン力」や「ディレクション力」も求められるのです。
「企画決定会議」を乗り超えるには、編集者の腕力が必要
企画は、著者から持ち込まれた提案を用いる場合と、編集者が企画し著者を口説く場合がありますが、どちらにおいても企画書を作成し「企画決定会議」を通さねばなりません。
企画決定会議では、「この企画は面白そう」「タイトルをかえればいけそう」「つまんない」などと喧々諤々の議論が交わされます。いろいろと突っ込まれるこの会議を無事通すためにさまざまな能力が必要です。例えば、魅力的に書籍の内容を語るプレゼン・ライティング能力。他にも、予算内でどう制作し、書籍のデザインはどういうものなのかなど、作りたい書籍が自分の中で明確になっているかという仮説思考などが必要です。
ちなみに、世の中に何かを発表するとき、ウェブ→雑誌や新聞・テレビ→書籍といった順に、どんどんハードルが上がります。書籍の売り上げのハードルが高いのは、「売れない本が怖い」からです。売れない分在庫が増え、倉庫などのスペースを圧迫する「お荷物」になってしまうわけです。
デザインは編集者が組み立て、デザイナーが仕上げる
さて、「企画が通って一安心……!」というわけにはいきません。企画決定会議の段階では大まかに決めてある目次に沿って著者が執筆している間に、編集者は書籍のデザインを担当するデザイナーを探します。デザイナーは文字のフォントやページのデザインや図表などをデザインしてくれます。「これで、デザインについては一安心……!」とはいかず、編集者はデザイナーをディレクションする必要があります。
「デザイナー」と聞くとものすごく芸術性の高い仕事のように聞こえますが、内容が「芸術」ではないことや、予算の関係から、編集者が指示する範囲は多いです。
例えば、最近のビジネス書では、『仕事のスピード・質が劇的に上がる すごいメモ。』に代表するように、本文はやや大きめでイラストやまとめ図ページをたくさん使用しています。著者が文字ばかりの原稿を入稿してきて「少し難しい。もっと分かりやすそうにしたいな」と思ったときに、原稿を読んで図解のページなどを差し込むのも編集者の仕事です。図解の内容も、自分で原稿を読みながら作成する場合もあります。
こうして「こうやって作ってください」とかなりの精度で編集者が組み立てたものを、デザイナーさんが「綺麗に仕上げて」くれます。
おわりに
いかがでしたか。今回は作家主導か編集者主導かという視点から、編集者の仕事についてお伝えしました。作家主導では作家のサポートに徹する一方、編集者主導では力強く指示出しを行うという、編集者の対象的な一面がお分かりいただけたかと思います。