※こちらの記事は2016年12月に掲載された記事の再掲です。
就活生は、たいてい黒のリクルートスーツを着ています。
皆が同じようなスーツを着ているので、「画一的だ」「個性がない」と、揶揄(やゆ)されることもあります。
さて、就活生は黒のリクルートスーツを着るという「常識」は、いつできたのでしょうか?
リクルートスーツの主流がパステルカラーだった時代もあった
以前、「『新卒一括採用』のメリットとデメリットを知り、就活に対する悩みを軽くしよう」で書いたように、新卒一括採用は第一次世界大戦の始めごろには既に始まっていました。しかし、黒のリクルートスーツの登場は2001年。それまでにいろいろな主流スタイルが登場し、パステルカラーやグレンチェックが主流の時代もあったのです。
時系列に沿って見ていきましょう。
・1974年まで:会社訪問の開始が5~6月頃だったため、多くの学生がワイシャツだった
・1975年:会社訪問が秋からに変わったのを機に、スーツが着用されるようになった
・1977年秋:新宿伊勢丹のフロアを使って、大学生協が背広の共同購入を開始した。当時は、8割以上の学生が紺色を購入した
・1980年代前半:紺が主流ではあったがスーツの形は今ほど画一的ではなく、襟元や靴の大きなリボンや小さめのバッグも許されていた
・1986年:真夏の会社訪問が解禁になり、ノースリーブやワンピースを着る女子学生もいた
・1987年頃:パステルカラーやグレンチェックが主流だった
参考:togetter「80年代-00年代『JJ』におけるリクルートスーツの変遷」
ということが、それぞれ記されています。
1987年というとバブル景気の直前で売り手市場だった頃。この頃は今では考えられない自由さがあったようです。その後、90年代前半にバブルが崩壊し、1996年卒の求人倍率は1.08倍(※1)と、過去2番目に低い年となりました。
その辺りから、再び紺や濃いグレーが主流となり、求人倍率0.99倍と過去最低(※2)を記録した2000年の翌年、2001年に初めて黒のリクルートスーツが登場します。そして、あっという間に主流となり、2003年以降は黒一色となったようです。
(※1) 出典:リクルートリサーチ「第14回 大卒求人倍率調査」
(※2) 出典:厚生労働省若年者雇用対策室「平成29年度全国キャリア・就職ガイダンス」
「うちの学生は黒いスーツを着ません」と企業に宣言した国際教養大学
新設大学なのに就職率100%を誇る国際教養大学(秋田)が、2014年に「リクルートスーツ非着用の勧め」を宣言したことで話題になりました。
同大の学生にこれまで内定を出してきた約180社には、学生がリクルートスーツを着ないことについて了承を得ていたとのことですが、その後の内定率などに変化はあったのでしょうか?
「『リクルートスーツ非着用』宣言を出した国際教養大のその後 高い内定率には変化なし、金融系企業にも受け入れられる」から、同大学キャリア開発センターの三栗谷センター長の発言を引用します。
「着用を禁止したわけではないので、学生によってはリクルートスーツを着て就職活動をする人ももちろんいました。着用しない学生では、男性は『スラックスにシャツ』、女性では『スカートとブラウス』という服装が多かったと思います」
※引用:キャリコネニュース「「リクルートスーツ非着用」宣言を出した国際教養大のその後 高い内定率には変化なし、金融系企業にも受け入れられる」
三栗谷氏によると、「予想以上に金融系の企業から受け入れられた」とのことで、内定を出す企業や内定率にも変化はなかったとのことです。
学生がスーツを着たがることと人事が黒いスーツを求めることに共通する心理
ただ、中には「最終面接だけは黒のスーツで来るように」と要請してくる企業もあったようです。
「役員の方はスーツ着用が必須だとは思っていないはずです。人事がスーツ必須だとサラリーマン的な考えで言ってきたのだと思います。実際、スーツ着用と言ってきた企業にアンケートをとり、会社としてのコメントを求めると『会社ではスーツ着用と決まっていません』と返ってきたケースがありました」
※引用:キャリコネニュース「「リクルートスーツ非着用」宣言を出した国際教養大のその後 高い内定率には変化なし、金融系企業にも受け入れられる」
役員はスーツ着用を必須と考えていないかもしれないのに、人事が「失礼のないよう」事前に気を回して、最終面接は黒いスーツで来るよう要請する。
この心理は、過去最低の就職率を記録した後に、一斉に黒いスーツを着るようになった学生の心理と共通するものがあるように思えます。
つまり、「型から外れて、失敗したくない」という心理です。
就活とは、失点をできるだけ出さないようにするゲーム?
皆と同じ黒いスーツを着て、目立たないようにして、ムダな失点をなくす。
黒いスーツが象徴するように、就活とは、失点をできるだけ出さないようにするゲームなのかもしれません。
しかし、最終面接は黒のスーツで来るよう要請する企業に入って、ずっと目立たず、失点を出さないように、社会人生活を送ることは窮屈ではないでしょうか?
失点を出さないのではなく、失点を出しても、それを上回る得点でカバーする。
そんな姿勢を受け入れてくれるような企業を探すため、黒スーツを着ないという選択肢があってもいいのかもしれません。