こんにちは、ワンキャリ編集部です。
今回は、「外銀IBDインターン・ジョブの乗り切り方」について徹底解説します。ぜひご一読ください。
(※)この記事は2019年までの情報を基に作成いたしました。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、今年は各社のサマーインターンの実施状況が変更する可能性もございます。
<目次>
●そもそも外銀のインターンは何をやるのか(企業価値を向上させよというお題=M&A提案)
●5つのステップで段階的に取り組む
●Step1. 買収する側の企業分析
●Step2. 買収候補先の選定
●Step3. 買収候補先の企業価値算定(バリュエーション)
●Step4. 資金調達方法の選定(ファイナンス)
●Step5. 提案資料の作成
●5つのステップで進む
●おわりに
そもそも外銀のインターンは何をやるのか(企業価値を向上させよというお題=M&A提案)
IBD各社共通のお題「ある企業の企業価値を向上させよ」
多くの外銀各社(IBD)がサマーインターンを開催します。外銀IBDのインターンの形式は「M&Aの提案」が一般的です。「ある企業の企業価値を高める提案をせよ(基本的にはM&Aの提案)」というテーマが設定されたグループワーク(以下GW)が行われます。昔はIPO戦略を題材にしたワークもあったそうですが、近年はこちらが主流になりました。
IBDの本選考では、インターンと同形式のジョブが行われることが多いです。夏の時点からこの課題に慣れておくと本選考を有利に進められるでしょう。
時間がない中で提案をまとめるIBバンカーの疑似体験
IBDのサマーインターンは基本的に3日間です(UBSグループなど2日間の場合もあります)。初日の午前は講義が行われること、提案資料(パワーポイント)の提出は最終日の昼までということを考えると、実質2日間で上記5つのステップを終えなくてはなりません。タイムスケジュールはタイトで徹夜して作業するグループがほとんどです。ある意味IBバンカーの実際の業務に近い経験といえるでしょう。このインターンの特性から、インターン期間は夜も予定を開けておくのがベターです。
5つのステップで段階的に取り組む
それでは、攻略の手順の説明に入ります。インターンのお題は企業価値向上という大きなお題であり多くの学生にとってあまり身近なものではありませんが、以下5つのステップで取り組めば効率よくM&A提案型のジョブを進めることができます。
Step1. 買収する側の企業分析
Step2. 買収候補先の選定
Step3. 買収候補先の企業価値算定(バリュエーション)
Step4. 資金調達方法の選定(ファイナンス)
Step5. 提案資料の作成
Step1. 買収する側の企業分析
買収する側の企業分析をし「どの事業が強い企業を買収するのがいいか」を導き出します。大まかに、「定量分析」であたりをつけ「定性分析」でその根拠を求めるという流れで進みます。
投資すべき事業を定量的に把握しよう
外銀のインターンでは、ピッチブックと呼ばれる分厚い事業・提案用資料(計500枚)が渡されることが多いです。この資料を元に買収する側の企業分析を行います。ポイントは「現状」と「理想」のギャップを数値で捉えることです。「理想」は、「◯年後に◯◯を達成する」などといった中期的目標から導き出すことができます。「現状」と「理想」を事業別に捉え、そのギャップの大きいところが「今後投資を行うべき事業(事業分野や地域)」です。
※図1:過去のインターンでのGAP分析の例
定性分析の3つの方法
「定量分析」により伸ばすべき事業に見当をつけ、それに合致する企業を洗い出したら、「定性分析」を用いてそのうちのどの企業に投資するのが効果的かどうかを検証します。審査員の「なんであっちの会社じゃないの?」といった質問の回答を用意することにもつながります。事業の成り立ちや、カルチャーについてなど定量的に測りにくいものも忘れずに考慮に入れましょう。
具体的には以下の3つのステップで進めることをオススメします。
1. 自社の現状と理想のGAP分析
(ア)中期経営計画を読み、会社全体(社長として)としてどの事業を伸ばしたいのか分析
(イ)同様に、どの事業や地域が現状と目標との差分が大きいか分析
2. 各事業領域の業界研究を行う
(ア)各事業の市場全体の分析
(イ)各事業の競合企業の強みや弱みを分析
3. 投資すべき事業のSWOT分析(※1)を行う
(※1)……4つの指標で現状を要因分析し、今後取るべき方策を導き出すビジネスフレームワーク
ここでは名称の紹介のみにとどめましたが、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
・すべての外資コンサル志望者へ送る、インターン・ジョブ突破の5つのステップ
Step2. 買収候補先の選定
買収候補先は、判断軸に基づいて絞ろう
投資すべき事業が決まったら次は買収先を考えましょう。
場合によっては日本企業ではなく外国企業を買収する必要もあるかもしれません。膨大な企業の中から1社を選ぶ作業です。「正解はない」ため、GWにおいて最も難しく、かつ提案の質の差がでる部分といえるでしょう。
まずは適切な判断軸を定め候補先を絞ることが先決です。
「企業価値の向上」という目的に則した判断軸として以下のものをオススメします。
1. 買収した結果、自社の中期経営目標が達成できるのか
(ア)買収候補先の売上高や利益の大きさ
(イ)買収候補先企業の事業の市場全体の成長率の大きさ
2. 本当に買収できるのか(実現可能性)
(ア)買収候補先の株主構成という点で、買収実現性は十分か(例:一族経営で、一部の親族が過半数の株を取得しているため、説得が必要になるなど)
(イ)買収候補先の企業価値(≒買収価格)に対して、買収する側の企業の資金は十分なのか
(ウ)買収候補先と買収側の企業との親和性の高さ(文化やカルチャー)
これらを詰めることで、プレゼンの際も社員から上記の項目に基づいた質問に対応できるようになります。
例:
「なんでこの企業を買わなきゃいけないの?」→「中期経営計画を達成するためには、◯◯が必要でそのためにはこの企業を買うしかない」
「本当に買えるのか、どう説得するのか?」→「買収の鍵となる株主は××で、◯◯な理由から買える可能性は十分にある」
買収先が決まったら、相乗効果(シナジー)を徹底的に考える
買収先が1社定まったら買収による相乗効果(シナジー)を考えます。この部分が買収の目的を具体的に支える根拠であり、提案の肝と。
買収によるシナジーは2つに大別できます。
1. 売上について
(ア)商品のラインアップの拡大によるもの(例:各社得意とする異なる商品を持つため、買収によるラインアップを拡大)
(イ)販路の拡大によるもの(例:各社異なる地域に強みを持つため、2社をあわせることによる販路の拡大)
2. コストについて
(ア)設備集約によるもの(例:2社で重複する研究施設を合併することによるコスト削減)
(イ)類似商品の同一化によるもの(例:商品の統一化による研究費などの削減)
(ウ)その他の要因にするもの(例:買収によって短時間での市場に参入可能=時間というコストを買うなど)
シナジーを考える際、プラス面ばかりに目が行きがちですが、必ずマイナス面についても考えましょう。完璧な買収というものはほぼ存在しません。必ず買収によるマイナス面も付随します。実際に、プレゼン時は社員から「買収によるマイナス面での影響はないのか? あるとしたらどうやって説得するのか」といった質問がなされる場合が多いです。
Step3. 買収候補先の企業価値算定(バリュエーション)
つづいて、買収候補の企業価値を算定します。
事前知識は基本的には不要だが、最低限のインプットは必要
インターン中にワークで使うべき手法の講義が設けられますので、事前知識が必須というわけではありません。ただし、金融を全く学んでいない人が講義の内容を一度で理解するのは難しいでしょう。事前によく使う単語(バリュエーション、PER、EBITDA、各財務諸表の名前:PL、BS、CFなど)は押さえておきましょう。
参考書は以下2冊がおすすめです。
・実況LIVE 企業ファイナンス入門講座―ビジネスの意思決定に役立つ財務戦略の基本
※第4章〜第6章は特にM&Aの基本的な流れに触れています。
よく使われるバリュエーション手法は以下の3つです。簡単に概要を説明します。
・マルチプル法(類似上場企業比較法)
似た会社の金額を平均して決める手法。買収先の類似会社(コンプス)を選択し、それぞれのマルチプル(PERやEBITDA)の平均または中央値から買収価格を決める
・市場株価法
株式市場で付けられる株価の期間ごとの平均値(1カ月、3カ月、6カ月が多い)を算出し、買収価格を決める手法
・DCF法(Discounted Cash Flow法)
買収先の企業が生み出す将来のキャッシュフローを算出し、それらの割引率を定めて、現在価値に割り戻すことで、買収価格を決める手法
このうち使われるのが多いのは「マルチプル」です。また、「DCF法」は特に難易度が高いことから、多くの企業で使わなくて良いと指示されることもあります(※2)。
これらの専門的知識はあったに越したことはないですが、ないからといって選考を突破することが不可能になるわけではありません。太刀打ちできない状況に立ち止まってしまうのではなく、積極的に社員に質問をするなど前に進もうとする姿勢を示しましょう。
(※2)……内定者によると、17卒のインターンでは、モルガン・スタンレーIBDではDCF法を用いても良いとされたそうです
Step4. 資金調達方法の選定(ファイナンス)
事前知識は基本的には不要
バリュエーションと同様資金調達も、夏の時点で学生が熟知していないことを社員は十分に分かっています。企業価値算定以上と同様、知識がなくても前向きに取り組む姿勢を見せれば選考突破へ可能性がつながります。
調達方法の特徴は押さえておこう
そうは言っても、事前知識があったに越したことはありません。ここでは概要のみをお伝えします。
資金調達方法は大きく分けて、以下の2つがあります。
・社債による調達(デットファイナンス)
借入や社債の発行を通じて、会計上の負債を増やす方法(※3)
(※3)……企業によっては、転換社債(CB)などの特殊な調達方法を用いる場合もある
・株式による調達(エクイティファイナンス)
株式の発行を通じて、会計上の資本を増やす方法
買収する側の企業の財務状況や買収金額によって、どの手法を用いるかは異なります。学生では判断が及ばないことも多いため、上述の通り班で議論しつつ、社員からのアドバイスを元に練り上げましょう。
このとき必ず「買収する側の企業の格付け」をチェックしてください。たとえば借入金が多くこれ以上の負債を抱えづらい場合は株価の希薄化(※4)があったとしても株式での調達を優先すべき場合などがあるからです。
(※4)……株の希薄化:株式の数が増えることで、1株あたりの価値が下がること。株主は企業が得た利益から配当という形で分配を受ける。増資により新たに株式を発行し株式の総数が増えると1株あたりの利益が減る。この場合、既存株主にとって不利益と映り、株価は下がることが多い
Step5. 提案資料の作成
費やす時間とこだわりのバランスが大事
Step1~Step4で導き出した提案をもとに資料を作りましょう。提案を考えているStep1からStep4の間から、資料作成を意識しておくと、スムーズかつ分かりやすい資料作成ができるでしょう。
スライドは文字量が多くなり過ぎないように気を付けましょう。各スライドで伝えたいメッセージを決め、全体のスライドの流れを決めた後で、具体的なデータ表やグラフ作成を行います。
時間が極めて短いため資料作成に時間を取り過ぎないように工夫することも大事ですが、資料の分かりやすさ・見やすさへの注意を忘れてはいけません。IBDはきれいに資料を作り込むことが求められる職業であるため、汚い資料(何が言いたいのか分からないスライド、そもそも見にくいスライド)は受けが悪いです。
5つのステップで進む
Step1. 買収する側の企業分析
Step2. 買収候先の選定
Step3. 買収候補先の企業価値算定(バリュエーション)
Step4. 資金調達方法の選定(ファイナンス)
Step5. 提案資料の作成
これまで説明したように基本的にはこの順で進みますが、何の問題もなく順調に進むことはあり得ません。適宜、前のステップに立ち戻りながら、骨太な提案を練りあげましょう。
おわりに
インターンでは時間に追われながらも、大量の情報を効率的に集め、論理立てて考え、最終的なプレゼンの質を高めることが求められます。
体力的にもつらいインターンかもしれませんが、チームや社員と協力し素晴らしいパフォーマンスができることを祈っています!
各社の内定者インタビューで分かった、ジョブの詳細と合格の秘訣(ひけつ)はこちらをご覧ください。
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