本日は、過去にご好評いただいた北野唯我(KEN)の記事をお届けします。
「人事の人って、普段はいったいなにを考えて仕事しているのですか?」
中央大学3年 ♂ アオウさん
ワンキャリアの北野唯我(KEN)です。
この連載では、私のこれまでの経験を踏まえて、皆さんのキャリア相談にお答えしています。
皆さんが面接で会うのは、人事の中でも「新卒担当」の人
一括りに「人事」といってもいくつかの役割があります。まずはその一般的な例をご紹介します。
新卒採用担当:将来の中心人材となりえる学生の採用を担当する★←皆さんが普段会う社員
キャリア採用担当:スキルセットなどを見ながら、中途社員の採用や契約社員・派遣社員等の採用を担当する
育成/配属担当:MBA研修などを含めた研修制度を設計したり部署異動を担当する
人事戦略部(制度設計):会社の方針に基づき、人員計画を作成したり社内評価制度を作成する
労務担当:福利厚生・社会保障制度・勤怠管理・給料・社内ハラスメントなどを担当する
※掛け持ちする場合も多い
このうち、学生の皆さんが面接で会うのは「新卒採用担当」といわれる人々です。彼らは「どんな学生を取るべきか?」「どうやって優秀な学生を見極めるか?」という視点に長けており、普段から学生との接点を持ち採用活動を行なっています。
彼らは定量的には「プレエントリー数」「内定の歩留まり率」等を見ながら仕事をしている
皆さんを評価し、ときとして「お祈りメール」を送ってくる新卒担当の人事。でも、そんな彼らもまたサラリーマンです。事業上の目標を背負っているわけです。今回は、そんな採用担当者の置かれた立場をお伝えしましょう。
彼らにとって「採用の成功」とはなんでしょうか?
結論からいうと、定量的には「エントリー数」と「内定辞退率」という指標でまず結果を出すことです。企業によって差があるものの定量的な指標としてこの2つを採用している企業が多い。例えば、去年のエントリー数が1万人であれば、今年はそれを超える10,001人以上を目指そうとします。また、企業によっては全体の数だけではなく、「東大生で✕%のエントリーシェアを目指す」という大学単位での細かいKPI管理を行っている企業もあります。
採用担当は「超優秀だが、逃げる学生」と、「彼より劣るが、自社に確実に来る学生」どちらを採るべきか? の二律背反で悩んでいる
もう一つの数値目標は、「歩留まり率(or内定辞退率)」です。内々定を出した学生のうち、「何パーセントの学生が内定辞退し、何人が入社してくれたか?」です。内々定を100人出したら、100人全員が入ってくれる状態がベストに近いので、この指標を置くのは一見合理的に見えます。しかし、「内定辞退率」にはKPIとして致命的な問題点があります。それは「リスクを恐れ、優秀な学生を採りにいかなくなること」です。
例えば、内定候補の学生が2人いたとします。内定は1人しか出せません。A君は「超優秀だが、他の企業に行ってしまいそうな学生」。B君は、「A君よりは劣るが、自社に確実に来てくれそうな学生」。企業にとって本当に必要なのはA君です。よって採用担当者が取るべきアクションは、「A君に内々定を出し、A君に来てもらうために、全力で魅力づけすること」のはずです。
ですが、もしも採用担当者が「内定辞退率」だけを気にすれば、B君を採る方にドライブがかかります。「超優秀な学生を取らなかった」という機会損失は目に見えにくい一方、「内定辞退数」という数字は見えやすいからです。採用担当者は日々、この葛藤に悩んでいるわけです。
本来は「内定辞退率はKPIに置くべきではない」と感じつつも、それを追わないといけないので「本当にうち来るの?」と何度も聞いてくる
そのため採用担当者は面接で「本当にうち来るの?」と何度も聞いてきます。「優秀な学生は、なんとしてでも口説く」のか、「内定辞退されそうなら、落とす」のか、この決定は採用担当者の視座によります。企業によっても異なりますし、どの人事が担当者になるかという運の要素もあります。優秀な人に囲まれた環境で働きたいと考える学生の皆さんにはぜひ、「優秀な学生を躊躇(ちゅうちょ)なく採りに行くこと」を目指している企業を見つけてほしいと感じます。ポジティブに解釈すれば、内定辞退の数は「超優秀な学生を採りにいこうとした」人事の優れたアクションだとも解釈できるからです。
「採用上の競合にどれだけ勝ったか?」を軸に、採用のクオリティを自己評価している。
以上、採用担当が気にする指標のうち定量的なものを2つお伝えしましたが、もう一つ定性的な指標をお伝えします。それは「採用の質」です。具体的にいうと「採用上の競合に、どれだけ勝ったか?」です。採用上の競合と、事業上の競合は必ずしも一致しません。例えば、商社の事業上の競合は、他商社でしょう。しかし、採用上ではコンサルや投資銀行、マスコミ、リクルートグループなどとも競合関係に置かれます。そんな競合が獲得した学生を奪うことが、分かりやすい「採用の質」を表します。「他者も欲しがる優秀な人材を、自社に勧誘できた」との自己評価の指標になるのです。
「外資系企業の内定を持っていると、日系企業の面接もうまくいきやすい」と耳にする学生もいると思いますが、その理由はここにもあるといわれます。
採用面接は、普通の人なら100回やれば、飽きる
そんな採用担当ですが、面接中にはどんなことを考えているのでしょうか? 結論からいうと、「なんとか頑張って、皆さんの魅力を見つけよう」としています。どういうことでしょうか。
まず、悲しい事実ですが、面接は採用担当にとって「あんまり面白くない作業」です。
理由はシンプルで、「同じような話を何百回も聞いて、飽きるから」です。例えば、サークル立ち上げの話。学生の皆さんにとって「サークルの立ち上げの話は、一生に一度」の話でしょうが、採用担当のほとんどは既に100回以上似たような話を聞いています。あえて冷たくいうと「またその話か」という感じでしょうか。皆さんも、先輩や友達、家族から、同じ話を何度もされて飽き飽きした経験があると思いますが、あれと近い感覚です。
表層的には見えてこない「人間模様」を掘り出すために質問を重ねてくる
その中で、採用担当が本当に聞きたいのは何か。
結論からいうと「あなたの人間模様」です。先ほどの「サークル立ち上げの話」であれば、あなたがなぜそれを立ち上げ、実施しているのか、という部分はあなただけのストーリーがある。オリジナルな部分は聞いていても飽きない。採用担当は表層的には見えてこない隠れた魅力を掘り出すために質問を重ねているといっても過言ではありません。
私も普段面接をしていて痛感しますが、本当に飛び抜けた学生は「顔つき」だけで分かります。あるいは、最初の2分話せば分かります。同様に、弊社に合わない学生も2分あれば分かります。60分の面接が設定されていても、第一印象で決定する場合も多くあるのです。では、この残りの58分が何に使われるかというと、2分で合否が決まらなかった学生を見極めるためです。質問を重ることで第一印象を超える何かが出てこないかと、魅力を引き出すために時間を使います。これが採用担当からみた面接の実態だと感じます。
面接が終わったら、採用担当ごとに「自分が採りたい学生」を決め、「どうやったら口説けるか?」「どうやったら経営陣はYesというか?」の2つの側面で戦略を練る
面接で、ぜひ採りたい優秀な学生を見つけたら、人事内で担当者を付けるのが一般的です。「誰を担当にするか?」は、学生にあわせて決定します。学生が、その企業の魅力を感じる可能性の高い人を宛てるのです。
人事の担当者が行うことは2つあります。1つは、「どうやったら口説けるのか? 来てもらえるのか?」という学生向けの戦略を練ること。もう1つは「どうやって経営陣を説得するか?」という社内向けの仕事です。面接の結果や所感などを社内資料として残し、決済権限者に「採用してもらうための資料」を作成します。こうやって採用プロセスは進んでいきます。
結論ファーストや、自己分析は採用担当への「礼儀」に近い
以上が、人事から見た視点です。これを踏まえ、学生の皆さんがすべきことは何でしょうか?
1つは、「結論ファーストで話すこと」と「自己分析をきちんと行うこと」です。採用担当の立場に立ってみると、同じような話を何百回も聞くわけです。人の話を聞くのはエネルギーが要ります。厳しい言い方をするようですが、「結論ファーストではない話」や「自己分析ができていない話」は採用担当にとって結構苦痛です。相手の立場を考えられるようになると、結論ファーストで話すことや、自己分析を行うことが礼儀だと感じられるようになるでしょう。
2つは、「面接官に対しても、リスペクトの気持ちを持つこと」です。就職活動は人生にとって重要なため、ついつい自分本位の視点になってしまうかもしれません。自分本位になる理由は、大体「相手のことを知ろうとしていないから」です。今回の記事によって、採用担当の実態が少し分かり、お互いにとってリスペクトを持った関係を作れればいいと思います。皆さんがやるべきことが少しでも明確になれば幸いです。
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