「受ける企業を絞るのは危ない」って聞くけど、だったらいつまでどうやって就活をしていればいいのか?
東京外国語大学4年 井上さん
北野唯我(KEN)です。
この連載では、私のこれまでの経験を踏まえて、皆さんのキャリア相談にお答えしています。
「合計で、何社受けるべきか?」という「結果」ではなく、「常に何社、手持ちのカードを持っておくべきか?」という「プロセス」にフォーカスすべき
「就活って、何社ぐらいエントリーするべきなのでしょうか?」
という質問をたまにされます。ですが、この質問は本質的ではありません。なぜなら、「確からしい答え」が存在しないからです。なぜでしょうか。
そもそも「内定を取れる確率」は人と受ける企業の組み合わせによって全く異なるため、仮に私が、◯◯社内定を取りたいと思っても、「何社受ければいいか」を事前に予測することは不可能に近いです。事前に予測することはできないので、「できるだけ多く」受けようとしがちですが、結果、1社あたりに十分に時間を掛けられず、祈られる確率が上がる。祈られる回数が増えると、さらに不安になるため、エントリー数を増やし、1社あたりに時間を掛けられず、落ちる確率が上がる。悪いスパイラルに入るという構造です。
では、どうすればいいのでしょうか? 結論からいうと「常に何社、手持ちのカードを持っておくべきか?」というプロセスだけで管理すべきです。これはつまり「自分のキャパシティを考えると、◯◯社までなら十分に時間を掛けられる」ということを明確にすることです。
一度数字を決めたら、それ以上は増やさず、そして減らさない。選択と集中です。「合計で何社受けるべきか」は確率によって変動するため、コントロールができません。管理できないことに時間を投資するのは、時間の浪費です。一方で「常に何社のカードを持つべきか?」は現在における意思決定であるため、管理ができます。
常に20社、手持ちのリストがある状態でキープすべき
では、何社程度なら「手持ちのカード」を持つことができるか。結論からいうと、20社が限度だと考えます。
そもそも1社エントリーし、準備した上で、受けると、どれぐらいの時間を消費しているのでしょうか。ざっくり計算しただけで約10時間/月(※1)。これを20社同時並行させると、月に約200時間を就活に使うことになります。これは1日ベースで考えると、約6時間です。つまり、20社同時に就活を進めるということは「毎日6時間、就活のために使わないと回らない」ということです。よって、普通の人は約20社が限界です。
▼面接までに掛かる時間▼
Web上での情報収集:2h
エントリー:0.5h
説明会参加(移動含む):3〜4h
ES/志望動機作成:3h
リクルーター面談(移動含む):2h
OB訪問(移動含む):3h
面談/OB訪問下準備:2h
面接下準備:1h
面接(移動含む):3〜4h
(※1)……学習効果などを考慮し、50%チャージで計算
▼就活のスケジュールについてかわしく知りたい方はこちら
・26卒就活はいつから?スケジュールとインターン準備の有利な進め方
・就活は何から始める?やることリストと時期(大学3・4年/大学1・2年)
20社の内訳は、10社:興味のある業種、5社:全く興味がない業種、5社:嫌いな業種でいくべき
では、20社の内訳はどうすべきでしょうか。結論からいうと下記をオススメします。
10社:興味のある業種
5社:全く興味がない業種
5社:苦手だと思う業種
全く興味がない業種を受ける理由:選択肢の幅を広げるため
全く興味がない業種を受ける理由は「自分の選択肢の幅を広げる」ためです。大半の学生さんは「自分が憧れている企業」をなんとなく持っていますが、「自分に向いている企業」は知っていないことが多い。業界分析によってある程度は、このギャップを埋めることができますが、実際には受けてみないと分からないことも多い。興味がない企業を受ける理由は、「思い込みを捨て、自分に向いている企業」に合う確率を高めるのが目的です。
嫌い、苦手である企業を受ける理由:企業を選ぶ判断材料をそろえるため
嫌い、苦手である企業を受ける理由は簡単です。
それは「内定が出そろった後に、どの企業に入社するか」を決めるための判断材料をそろえるためです。就職活動で失敗するケースの1つは、内定をもらってもないのに、内定した後のことを考え、選択肢を狭め続けてしまうパターンです。内定が出そろい、実際に入社する企業を決める場合には、「自分が絶対に譲れないこと」を明確にする必要があります。自分が行きたい企業だけを受けていた場合、「自分が働く上で絶対に嫌だと思うこと」が明確になりづらい。いい面ばかり見てしまいがちだからです。
就活は結婚に例えられますが、この例えに乗って語ると、「恋愛はいい面だけで、楽しめるが、結婚は嫌な面も見ざるを得ない」。自分が苦手な企業を受けることで「自分が絶対に譲れないこと」を明確にすることが目的です。もちろん「自分が嫌いだと思っていた企業」が実際に会ってみると、いい企業だったということも多々あります。
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1社内定をもらったら、残りの19社も最後まで受けきり、就活を終了させる。
20社のリストを組んで、1社落ちたら、1社追加していき、常に手元には20社を持っておきましょう。そして、1社内定を取ったら、後はその時点で残っている19社のカードを受けきり、就活は終了です。部活と同様に、就活も最後は「納得感」です。やるべきことは全てやりきったと言い切ることが大事です。上記の方法を取れば、少なくとも「自分がその時期に充てられる全ての時間を使って、できる限りのことはやった」とは言い切れます。
おわりに:「就職活動より、働いてからの方が40倍も長い」
就職活動をしていると、志望企業に祈られることもあるでしょう。志望度の高い企業に連続で落ちると「諦めたくなる」気持ちもよく分かります。就活は長いな、と感じることもあるでしょう。しかし、1つの事実としてあるのは「就職活動よりも、働いてからの方が40倍近く長い」ということです。就職活動は約1年程度ですが、仕事人としての生活は40年近く続きます。あるいは、受験勉強とは違い、「答えが見えない就活」「自分が進んでいるかも分かりづらいこと」に不安を覚え、諦める人もいるかもしれません。
しかし、ビジネスの世界では「答えが見えないもの」ばかりです。就活が続くと「長いな」と感じることもあるでしょうが、今後40年間の仕事人としての働きをみて、後悔をしないように就職活動を終えてください。本回答が皆さんの疑問を少しでも解消できたとしたらこれ以上幸せなことはありません。では、また次の機会に。
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取締役 北野唯我(KEN)
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※こちらは2017年10月に公開された記事の再掲です。