今日における世界的な課題である気候変動問題。その解決を目指し、各国が二酸化炭素(CO2)排出量を減らすカーボンニュートラルの実現に向けて取り組む中、再生可能エネルギー(再エネ)が問題の解決策として期待されています。
その再エネ事業を30年以上にわたり手掛けてきたのが、株式会社ユーラスエナジーホールディングス。1987年にアメリカで風力発電事業をスタートさせ、日本で初めて大規模風力発電所(ウインドファーム)を手掛けた、再エネ事業のリーディングカンパニーです。
同社はどのように風力発電事業を軌道に乗せてきたのか。そして、環境問題の解決に携わるやりがいとは。同社人事総務部長の丹羽さんに話を伺いました。
<目次>
●日本で初めて大規模風力発電所を作った会社
●大事なのは風だけではない 風力発電を支えるビジネスの裏側
●作った電気に、どのような価値を掛け合わせるか
●地域の理解や信頼を得て、活性化に貢献するやりがい
●事業全体の流れを短期間で経験し、早期の成長をサポート
●「クリーンエネルギーを普及させたい」という情熱を原動力に
日本で初めて大規模風力発電所を作った会社
──貴社の事業概要についてお聞かせください。
丹羽:ユーラスエナジーグループは風力発電事業を中心に、太陽光発電事業や小売事業などを手掛ける再エネ事業グループです。
風力発電事業は国内シェア1位であり(※1)、発電所の立地調査から建設から発電所の保守・運営までを一貫して当社グループで行っています。また、電力の小売事業も開始しているほか、北海道北部地域での送電事業を手掛ける新会社を設立し、送電網整備の事業にも着手するなどしています。その中でユーラスは、発電所候補地の調査検討や用地取得、建設といった、発電事業を実際に開始するまでの部分を担当しています。
(※1)参考:ユーラスエナジーホールディングス「数字で知るユーラスエナジー」
丹羽 陽介(にわ ようすけ):ユーラスエナジーホールディングス 人事総務部長
2001年に新卒で株式会社日本総合研究所に入社して人事を担当した後、社会貢献性の高い事業領域で自らの経験を生かしていきたいと考え、2013年にユーラスエナジーホールディングスへ中途入社。人事総務部で人事や総務、情報システムを所管し、2018年にマネジャー、2019年に部長となった。
──近年、クリーンエネルギーへの注目度はますます高まっています。風力発電事業を立ち上げたのも、そうした需要を受けてのことでしょうか。
丹羽:いえ、私たちの前身となる会社で風力発電事業を立ち上げたのは、1987年のことなんです。
──そんなに前から!
丹羽:実は、再エネへの注目は今に始まったことではないんですよ。当社は日本での事業に先駆け、アメリカのカリフォルニア州にあるモハベ砂漠で風力発電プロジェクトをスタートしています。
──なぜそのタイミングで風力発電を、しかもアメリカで始めたのでしょう。
丹羽:当社の前身となる事業をスタートしたのは、株式会社トーメンという総合商社でした。商社として、安定的に利益を生む新事業を模索する中でたどり着いたのが、「発電所を作って電気を売る」という電力ビジネスでした。風力発電を選んだのは、1970年代のオイルショックを契機にアメリカで石油代替エネルギーの導入促進を奨励した法律が制定され、再エネの導入が加速する動きをキャッチしたからです。
今も昔も、風力発電事業は社会情勢や政策と大きく関わっています。風力発電を政策として推進する国を見つけて、事業者向けの支援制度や優遇制度を活用し、スピーディーに事業を展開していくのが、風力発電事業の主流の1つにあるんですね。そのチャンスが、当時のアメリカにあったというわけです。
現在アメリカのウマティラ郡で運転している風力発電所
──その後、風力発電事業をどのように展開していったのでしょうか。
丹羽:イギリス、イタリア、スペインなど欧州各国で事業を展開した後、1999年には日本初のウインドファームである「ユーラス苫前ウインドファーム」を建設し、風力発電事業を開始しました。
この頃、1995年に開催された第1回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP1)や、1997年のCOP3で採択された「京都議定書」によって、各国でクリーンエネルギーの普及に向けた動きが活発になっていました。
日本で事業を始めたのも、政府が再エネを導入促進するための施策を打ち出すとともに、電力会社が自然エネルギー由来の電気を自主的に長期にわたって買い取る制度が整ったのを受けてのことです。
──1980年代から取り組んできた風力発電事業に、まさに「追い風」が吹いてきたわけですね。
丹羽:そうですね。立ち上げ当初から「意義ある事業を進めている」という意識はあったものの、風力発電のマーケット自体は非常に小さいものでした。徐々に再エネの社会的価値が認められていく中で、培ってきた経験や技術力を生かし、事業を伸ばしてきました。
現在はメキシコやエジプト、台湾でも再エネ事業を開始しています。世界の同業他社と比べても、これほど世界全域にバランス良く資産を持つ会社は珍しいのではないでしょうか。80年代からグローバルに再エネ事業を展開してきた会社として、独自の存在感を示せていると自負しています。
大事なのは風だけではない 風力発電を支えるビジネスの裏側
──先ほど風力発電のビジネスについて、「発電所を作って電気を売る」という言葉がありました。改めて、風力発電事業のビジネスモデルについて詳しく聞かせてください。
丹羽:当社の商品は「電気」です。発電所で発電した電気を、電力会社に購入してもらうことで売上が立ちます。近年は企業に購入いただくケースも増えてきました。
──電力会社が電気を買うのはイメージできるのですが、企業も電気を買うんですね。
丹羽:電力自由化によって、家庭でも好きな電力会社を選べるようになりましたよね。それと同じで、企業も電力の購入先を選べるんですね。
近年は、カーボンニュートラルなど環境意識の高まりから、「自社の電力はすべてクリーンエネルギー由来にしたい」という企業も増えてきています。
──安定して利益を生み出し続けるには、電気の「生産体制」を整えなくてはなりませんね。
丹羽:そうですね。風力発電においては、発電所を建てる場所に3つの条件があります。
1つ目は、当たり前のことですが「強い風が安定して吹くこと」。日本では北海道や北東北などに風が強いところが集中しており、ユーラスでも多くのプロジェクトを手掛けています。
2つ目は「風車が運べる場所であること」。あの巨大な風車の羽根や部品は、港から陸路で輸送するんです。運ぶために自然を壊して道路を新しく作るということはせず、なるべく既存の道路を使うことを基本としています。そのため港からあまりに遠いエリアだと、風車が運べないこともあるんです。
北海道稚内市の宗谷岬にある風力発電所「ユーラス宗谷岬ウインドファーム」
──なるほど。いくら風が強くても、風車が建てられなければ意味がありませんからね。
丹羽:そして3つ目が「送電網が近くにあること」です。風力発電では、作った電気をどうやって届けるのかも考えなくてはなりません。風などが好条件なのにもかかわらず、送電網の状況から事業を断念した地域も過去にはありました。
──それはもったいないですね……。
丹羽:そこでユーラスでは、送電事業のための新会社として北海道北部風力送電株式会社を設立しました。国の補助事業として北海道北部エリアで鉄塔や送電線を整備し、今年3月に約78キロの送電網が完成しています。今後2年をかけて、当社グループの発電所を含め、風車127基と順次つながる計画です。このエリアは風力発電に最適な環境であることが以前から分かっていましたから、われわれの知見が生かせる時が来たと感じています。
作った電気に、どのような価値を掛け合わせるか
──風力発電といえば、最近は「洋上風力(※2)」も注目されています。
丹羽:日本は山岳地帯が多く、風車を建てられる土地が限られているため、洋上風力には非常にポテンシャルを感じています。長らく風力発電事業を手掛ける会社として、もちろんユーラスでも取り組みを進めているところです。
(※2)……風車による発電を海の上で行うもの。陸上に比べて輸送・設置における制約が少ないため設備の大型化が可能であり、効率的に大量のクリーンエネルギーを発電できるとして、欧州を中心に導入が拡大している。
──風力や太陽光による発電は、気象条件に左右される部分も大きいのではないでしょうか。安定して電力を供給するために、どのような取り組みをされていますか。
丹羽:蓄電池に余剰電力を蓄えて供給を平準化させるといった取り組みをしています。今年4月には、先ほど触れた送電事業と組み合わせる形で、世界最大級の蓄電池設備が商業運転を開始しました。容量は72万キロワット時で、電気自動車に換算すると約1万台にあたる容量です。
また、再エネのさらなる普及のためには、再エネのバリューチェーンの拡大の必要があると考えています。その一環として、「再エネ×ITサービス」によるクリーンコンピューティング事業の拡大も目指しているところです。
──電気そのものではなく、サービスとして付加価値を加えるわけですね。
丹羽:再エネ事業に注目が集まる今、作った電気をいかに販売していけるかが重要になってきます。そこでユーラスでは、2018年に小売事業を立ち上げました。
当初は社員向けに実験的に提供していましたが、今年10月には秋田県で地元の銀行と連携して実質再エネ電力の供給を始めるなど、再エネの地産地消も取り組み始めています。発電の大きなノウハウを持つ当社がグループ内でさまざまなシナジーを生み出していければと考えています。
地域の理解や信頼を得て、活性化に貢献するやりがい
──発電所を建設するには、その地域の理解や信頼も欠かせないのではと思います。地域の理解を得るために、どのような取り組みをされているのでしょうか。
丹羽:とにかく「誠実に対応する」に尽きますね。当社は企業ビジョンの1つに「地域とともに発展し、社会から信頼される企業」を掲げています。地域との共生や発展なくして、この事業は続けられないと考えているからです。
地域の方々には、さまざまな懸念を抱く方がいらっしゃいます。風力発電であれば、風車の音や影、景観の変化、環境への影響などです。プロジェクトごとに状況は異なりますが、担当者からは「とにかく足しげく通って地域の皆さんと会話を重ね、真摯(しんし)に対応すること」だと聞きます。
──発電所を建設した後も、地域とのつながりは続きますよね。
丹羽:そうですね。例えば学校向けにクリーンエネルギーについての出前授業を行ったり、発電所建設の一環として道路や公園を整備したりということもしています。
近年は社内に「地域創生推進部」という専門部署を作りました。地域の困りごとをヒアリングして、その地域に必要な事業を一緒にできることを目指しています。まちづくりというにはおこがましいですが、地域活性化に少しでも貢献できればと。
──地域とつながることで、喜びややりがいを感じることも多いのではないでしょうか。
丹羽:日本各地の方々と関係ができているので、本社によく名産品が届きます(笑)。みかんとか、リンゴジュースとか……。先日は北海道からジャガイモが届いていましたね。
同社では会議用の飲料水に、発電所がある自治体の特産品を利用している。インタビュー中にも地域特産のリンゴジュースをいただいた。
丹羽:印象に残っているのは、グループ会社であるユーラステクニカルサービスの応募者に志望動機を聞いたときのこと。「子どものころに自分の地元に発電所ができて、どこの会社なのか調べたらユーラスだったから」と答えてくれて、とてもうれしかったですね。
風力発電に懸念を抱く方もいる一方で、風車を誇りに思っていただける土地もあるんです。例えば北海道の苫前町は「風車の町」として、風車を観光資源にしてくださっています。地域と相乗効果が生まれていることは、本当に喜ばしいですし、やりがいにもつながっていますね。
事業全体の流れを短期間で経験し、早期の成長をサポート
──今後の成長戦略について聞かせてください。再エネ事業をグローバルに展開する中で、次のターゲットはどこになるでしょうか。
丹羽:アメリカや欧州など、先進国では再エネ導入がある程度一巡してきましたので、それ以外のエリアをターゲットに少しずつ取り組んできています。オーストラリア、台湾、エジプト、チリなどで事業を広げてきましたし、今後も新しいエリアでの取り組みを続けます。
──では今、貴社に新卒で入社することで、どのような経験ができるでしょうか。
丹羽:当社では大きく「開発・コーポレート系」と「技術系」の2つの領域で採用を行っています。
「開発・コーポレート系」では、最初の4年間は仮配属として、開発とコーポレートの仕事を2年ずつ経験してもらい、5年目に本配属を決めています。
開発というと、技術開発や商品開発をイメージされる方も多いですが、当社の仕事は不動産関連の「土地開発」に近いイメージです。発電事業を起こすために事業計画を検討し、発電所の用地選定や取得に携わります。
コーポレート系の仕事は、財務や投融資管理といった部署で、開発事業の推進を支える本社での業務を経験してもらいます。最初の4年で、事業全体の流れを経験することが狙いです。
──技術系の仕事はどのようなものでしょうか。
丹羽:技術系は、専門領域として「電気」「土建」「機械」、そして風の状況を測定する「風況」の4つに分かれます。担当の専門領域を深めていただくことはもちろんですが、それぞれのつながりは深いので、領域をまたがって全体を見渡しながら自分の専門性を発揮できる人材を育成したいと考えています。
風力発電所を建設するプロジェクトは、長いもので10年ほどの期間を要します。風の状況を測るだけでも、四季の変化を見る必要があるため1年から2年かけるほどです。そうしたこともあり、開発担当のほとんどが複数のプロジェクトを同時並行で担当しています。
新人の皆さんにも、同様に複数のプロジェクトを担当してもらい、プロジェクト内のさまざまなフェーズをなるべく短期間で経験してもらうように教育を進めています。
──関わる先輩たちも、多岐にわたりそうですね。
丹羽:そうですね。部署直属の先輩たちが指導をするのはもちろん、「メンター制度」として人事の若手メンバーによる面談も行っています。第三者的な立場からアドバイスしたり、他の新人とのつながりを保ったりなどして、早期に活躍できるようサポートする形です。
「クリーンエネルギーを普及させたい」という情熱を原動力に
──今日のお話を伺って、風力発電事業にはさまざまなレイヤーの仕事があるのだと、改めて感じました。
丹羽:仕事は本当に幅広いですね。地域の人々や行政、あるいは建設会社、風車メーカーなど、さまざまなステークホルダーとのコミュニケーションが求められますし、実際に発電所を建設する現場にも立ち会います。
一方で、事業として成立するのかを判断したり、リスクを総合的に分析したりといった事業を見極める力も必要です。まさに総合力が求められる、チャレンジングで、かつ手応えのある仕事だと思います。
──そうした仕事に関わる社員の皆さんは、どのようなマインドで働いているのでしょうか。
丹羽:環境問題への使命感や、「なんとしても成功させる」という情熱を秘めている人が多いのではないでしょうか。
丹羽:風車を1つ建てるというのは国内外問わず一大プロジェクトになるわけで、われわれが単独でできることは限られています。その国や地域ならではの支援を受けたり、現地でパートナーを見つけたり、各所を巻き込みながら進めなければなりません。
もちろん簡単なことではありませんが、「クリーンエネルギーを普及させたい」「この国で再エネを広げたい」という思いを原動力にしてきたからこそ、ここまで事業を拡大してこられたのだろうと感じます。
──最後に、ここまで記事を読んで「再エネ事業も面白そうだな」と思い始めている学生さんに、メッセージをお願いします。
丹羽:就職活動では、会社を選ぶ前に、まずはどの事業領域で働きたいかという選択があると思います。数ある事業領域の中で、成長産業である再エネ業界はベストな選択肢だと思うんです。
その中で当社グループは、国内ナンバーワンの風力発電事業者として着実に実績を積み上げてきています。特にここ5年ほどで社員数も倍近くになり、会社が急成長しているのも、会社に体力がついたことで「新卒が新卒を教える」という好循環が生まれ、新卒がどんどん活躍していることが大きいと思っています。
社会的ニーズが高まる成長産業において、加速度的な成長を遂げたい方に、ユーラスは最適な会社だと自負しています。ぜひ私たちと一緒に、再エネ事業を盛り上げてもらえたらうれしいです。
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【ライター:井上マサキ/編集:黒木貴啓(ノオト)、萩原遥/撮影:赤司聡】