「若手のうちから裁量があり、仕事を任せてもらえることが就職の決め手でした」
OB・OG訪問をしていて、このような入社理由を語る先輩に出会った学生もいるかもしれません。しかし、「裁量」といっても企業によって定義はさまざま。特に、業務内容が分かりにくい業界は、実際の業務を理解しないと入社後のミスマッチにもつながりかねません。
今回、取材をしたのは、専門商社の岡谷鋼機に入社して2年目の岩崎祐貴さんと河村幸枝さん。専門商社と聞くと事業領域や業務内容が限定されるイメージがあるかもしれませんが、お二人に入社理由を聞いたところ、冒頭の言葉が出てきました。
岡谷鋼機ならではの裁量ややりがいは、どこにあるでしょうか? お二人にお聞きしました。
<目次> ●一人当たりの売上高も業務の幅も、専門商社で最も魅力的だった ●商社の違いは、ビジョンと営業スタイルに現れる ●幅広い業種の現場から情報を仕入れ、商社の存在価値を示す ●コロナで輸入が完全ストップ。日本のガス工事が止まる緊急事態にどう対応した? ●新規提案や海外業務も入社1、2年目から任される ●岡谷鋼機の良さを味わうために必要なのは、好奇心
一人当たりの売上高も業務の幅も、専門商社で最も魅力的だった
──まず、岡谷鋼機に入社するまでの過程をお伺いします。お二人とも就職活動の際は、どういう軸で企業を選んでいましたか?
岩崎:私は、戦略的に考えて仕組みを作る仕事をしたいという軸を持ち、鉄鋼や化学系の専門商社と素材メーカーなどの川上の業界を中心に何社かインターンに行きました。そこで実際に業務の一端を体験してみて、商流を考えて1から商売を作り上げる商社ならではの提案営業の過程が、自分の志望に近いと感じました。
河村:私は「自分で考えたことが反映できる仕事をしたい」という気持ちから、商社を志望していました。加えて、アパレルでアルバイトをしていて、お客さまにテキスタイルの質感やメリットをご提案することに魅力を感じたので、就職活動でも直接客先に提案できる専門商社を中心に見ていました。
河村 幸枝(かわむら さちえ):名古屋本店 化成品部
大学では1年間カナダに留学し、就職活動では専門商社を志望していた。2021年4月に岡谷鋼機へ入社し、化成品部に配属。新規案件や海外との取引にも関わっている。
──最終的に岡谷鋼機を選んだ決め手は何でしたか?
岩崎:若手のうちから裁量を持って働けることと、面接などで会った社員の人柄が決め手でした。独立系商社の中でも岡谷鋼機は採用人数が比較的少なく、売上高を社員数で割ると、1人当たりの売上高がとても高く、一人一人が目標とする金額が大きいです。やりがいがあり、若いうちからいろいろなチャレンジができると思いました。
人柄の部分では、面接で出会った方たちは落ち着いていて誠実なタイプの方が多かったので、自分とカラーが合っていると感じました。
岩崎 祐貴(いわさき ゆうき):東京本店 鉄鋼本部 鉄鋼第二部
大学ではよさこいサークルに所属し、専門商社や素材メーカーを中心に就職活動をしていた。2021年4月に岡谷鋼機へ入社し、鉄鋼本部に配属。若手社員が協業し、部署の垣根を越えて新しい取り組みに挑戦する「C&Cプロジェクト」にも参加している。
河村:私も若手の裁量が大きい会社で働きたいという希望がありました。岩崎さんが言う売り上げの大きさというよりも、私は「自分のやりたいことがどのくらいできるのか」という視点で見ていました。
岡谷鋼機は専門商社といっても、事業のセグメントが鉄鋼、情報・電機、産業資材、生活産業の4つあります。特定の分野に特化した専門商社に行った場合は、その業界の中だけでの取引になってしまいます。でも岡谷鋼機に入った場合は、鉄鋼や機械、化成品などといろいろな業界の商材を扱えるので、自分の提案の幅が広がるのではないかと思いました。
商社の違いは、ビジョンと営業スタイルに現れる
──物を取り次ぐという意味で、どの商社も機能としては変わらないと捉えている学生も多いと思います。実際に商社で働いている経験を踏まえて、就職活動中にどういう観点で会社を見ておくといいと思いますか?
岩崎:確かにトレーディングという捉え方をすると、大差がないと感じると思います。でも、それぞれの会社が基盤としている事業やこれからやろうとしていること、強みは違うはずです。私が就職活動をしていたときは、面接の逆質問で、その会社が今取り組んでいることに加えて、ビジョンやこれからやろうとしていることを具体的に聞くようにしていました。
──岡谷鋼機のビジョンや考え方で、岩崎さんが魅力を感じたものはありますか?
岩崎:目先の商売だけがうまくいけばいいというわけではなく「この先もものつくりを支え続けるためにはどうしたらいいか」と考える姿勢は、入社して気付いた特徴です。
例えば、現在私は韓国の仕入先メーカーから自動車部品を仕入れ、国内のお客さまへ納入するビジネスに取り組んでいます。私たち商社の役割は価格交渉や物流の手配をするだけの短期的なものではありません。毎週のように変わる需要量にも持続的に対応できるよう、岡谷鋼機グループの物流会社と連携し、仕入先メーカーとお客さま間でタイムリーに対応できるようなスキームを構築し提案しました。その結果、現在も毎月30~40万個の過不足ない供給を可能にしています。
また、積極的に現場に訪問すると、他の課題についても相談していただけるようになりました。現在はメカトロ部と協業してお客さまの工場にAGV(無人搬送車)を導入する提案や、貿易本部と連携して仕入先メーカーとお客さまへ海外材の提案も行っています。1つの商流のあらゆるフェーズに対して岡谷鋼機として提案し、トータル岡谷鋼機としてサプライチェーン全体にアプローチしながら、どうすればものつくりの現場に貢献できるかということを考える姿勢や熱意は岡谷鋼機ならではかもしれません。
──確かに、ものつくりの現場を支えようという熱意を感じますね。入社前は「落ち着いていて誠実なタイプの人が多い」というお話しでしたが、今はどう感じていますか?
岩崎:「穏やかに見えて、実は熱い思いを内に秘めている」という方が多いように感じます。
うちの部署の行動指針にも「絶対に諦めずにやり切る」という文言があって、一見穏やかで冷静なタイプに見える先輩たちも、何度断られてもまた客先に行って最終的には受注につなげています。それに、商社という立場であっても、本気でものつくりの現場のことを考えていて、お客さまや仕入先メーカーに寄り添っている姿を何度も見てきました。
幅広い業種の現場から情報を仕入れ、商社の存在価値を示す
──河村さんは、各社の違いをどこで見ていましたか?
河村:私がいつも思うのは、商社によって営業スタイルは違うということです。先ほどの岩崎さんのお話からも分かるように、岡谷鋼機は現場第一で考えるスタイルです。各企業の営業スタイルは、座談会やインターンシップに参加すれば見えてくると思いますね。
あとは、それぞれの会社の事業の強みを見るといいですよ。岡谷鋼機はものつくりに貢献することを第一に考えて350年以上続いてきた会社なので、お客さまの幅やお付き合いの長さは他社と差別化できる点だと思います。
──河村さんは自動車、住宅設備、生活雑貨関係などを担当されていると伺いました。確かに、扱うジャンルが幅広いですね。
河村:岡谷鋼機では、珍しくないラインアップだと思います。プラスチックは本当にいろいろなところに使われているので、化成品(※)はとても需要が幅広い業界なんです。
(※)……化学的な商品のことで、岡谷鋼機では合成樹脂原料、樹脂成型品、リサイクル原料、バイオプラスチックなどを扱っている。
──幅広く担当されることで、どういった点で大変さや良さを感じますか?
河村:とにかくいろいろな業界の知識が必要なところが大変ですね。最近ではEV(電気自動車)関係や車載部品の軽量化でプラスチック部品が広がってきて、自動車メーカーの設計担当の方とお話しさせていただく機会が多いです。でも、こちらに自動車の知識がないと商材のご提案もできないので、知識の収集に注力しています。
逆に、多岐にわたる業界とやり取りをしているからこそ幅広い知見が身につき、提案の幅が広がることで商社としての存在価値を示すことができるのはメリットだと感じています。
──そういった新しい情報は、どうやってインプットされているんですか?
河村:先輩や上司から教えてもらったり、自分で調べたりもするのですが、お客さまや仕入先メーカーに教えていただくことも多いです。
岡谷鋼機では「現地・現物・現人」という「三現主義」を掲げていて、現場に行って直接お客さまや仕入先メーカーとコミュニケーションをとることで、最善の提案をすることが活動の軸です。そのため、日ごろからよくものつくりの現場には足を運んでいます。現場に行くからこそ扱っている商材について知識を増やすことができるとも感じています。
コロナで輸入が完全ストップ。日本のガス工事が止まる緊急事態にどう対応した?
──岩崎さんも、現在のお仕事について教えていただけますか?
岩崎:私は東京本店の鉄鋼本部鉄鋼第二部に所属しています。仕入先は、大手鉄鋼メーカーで、ガス会社、ガス工事会社、パイプ問屋などがメインの客先です。加えて、自動車業界のお客さまなど、多岐にわたる業界、分野を担当しています。
──なぜ幅広い業界を担当するようになったのですか?
岩崎:特定の業界だけ担当すると、その業界の考え方が自分の常識になり、視野が狭くなってしまうので、上司が「いろいろな業界を経験したほうがいいのではないか」と決めたそうです。
重視すべきことは業界によって違いますが、実際に担当することで1つの分野での気付きを別の分野で生かすなど、広い視野を持って働けています。
──何か印象に残っている業務はありますか?
岩崎:国内のガス業者向けの商材を上海から輸入していたのですが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う上海のロックダウンによって日本に入ってこなくなってしまったことがありました。その商材がないと全国のガス工事が止まってしまう状況だったので、1つでも多く供給するために、日本国内で在庫がある業者さんがいないか、部署全員でひたすら電話をかけて確認しました。同時に、今後のBCP(事業継続計画)対策の観点から、これまで実績のなかった新たな国内外のメーカーの商材提案を行いました。
最終的にお客さまの要望にお応えすることができ、いまだにお客さまから「あのときは助かったよ」と言っていただけます。当時の先輩方の姿を見て、お客さまのためにできることを粘り強くやり切る姿勢を学びました。
──お二人とも実際に2年間働いて、ご自身が成長したと思う点はありますか?
岩崎:ガス業界や取引のある分野について、知識の引き出しが増えてきた感覚があります。先輩方は驚くほど引き出しが多くて、実際に現場に行くことでそれぞれの仕入先メーカーの特徴や状況の把握のみならず、業界のトレンドと個別のニーズをどちらも把握しています。だからこそ、お客さまにいろいろな提案ができるんだと思います。その強みが商社の存在価値だと思うので、私も知識をもっと増やしてよりニーズを満たした提案ができるようになりたいですね。
河村:私も商材についての知識は増えていますが、まだまだ足りないと思っています。
新規テーマとして金属部品を樹脂化する取り組みもしていて、ほとんど金属しか扱っていないお客さまにも樹脂の提案をしているのですが、場合によっては高機能な樹脂に切り替えることにより価格が高くなってしまうこともあります。
その場合、中長期的な目線から見ると、樹脂化することにより、軽量化・静音化などの付加価値があることを説明してご理解いただく必要があります。そのためにも、まだまだ商材理解を深めていかないといけないと思っています。
新規提案や海外業務も入社1、2年目から任される
──お二人は、今後のキャリアについてどう考えていますか?
岩崎:今の仕事を懸命に取り組んで、いろいろな知識を身につけながら自分の引き出しを増やしていきたいです。受け身ではなく、主体的にどんどん動いていける営業になりたいですね。
──岩崎さんは、ふだんの業務とは別に「C&C(Challenge & Change)プロジェクト」に参加されているそうですね。どのようなプロジェクトなのでしょうか?
岩崎:東京本店の入社5年以内の若手社員を対象にした取り組みで、全部署の若手で3~4名のチームを作ります。チームごとに1年かけて、普段の業務とは関係のない、新しいプロジェクトを自分たちで考えて実行してみるという取り組みです。
──それは面白そうですね。岩崎さんのチームはどんなことに取り組んだのですか?
岩崎:私たちは、これから新たな発展が見込める新技術として、3Dプリンターについて調べました。どういった需要があるのか、各プリンターの強みと弱みは何かを分析し、それぞれの部署を巻き込んで提案営業に取り組みました。
個人で本当に興味がある事柄を深掘りして、それで商売ができないか考えていい自由な取り組みで、実際に成約までいったチームもあります。社員同士で横のつながりもできるし、新しい情報を共有できるので、とてもいい取り組みです。
──河村さんは、どのようなキャリアを考えていますか?
河村:あと5年以上は国内で仕事をして、いろいろなお客さまへの提案方法を学んで、その上で海外に行って活躍したいと思っています。最終的には、どれだけ海外で自分の力が通用するのか確かめてみたいです。
──海外に関係する業務はこれまでもあったのでしょうか?
河村:入社1年目で、新規の海外案件を任せてもらえたときは、正直驚きました。上司からある自動車部品の海外調達の仕組み作りを河村さんに任せたいと言われたんです。価格の交渉などを全て英語でやり取りするのは大変でしたが、先輩や上司に相談しながらなんとかやり遂げることができました。自分の考えた仕組みが量産につながり、今も継続的に商売が続いています。この仕事のおかげで、とても力がついたと感じています。
岡谷鋼機の良さを味わうために必要なのは、好奇心
──岡谷鋼機の社風についてはどのように感じていますか?
岩崎:人に恵まれた環境だと思っています。日常会話の中で上司に「これをやったら面白いんじゃないか」と提案すると、まず「いいね、やってみたら」とポジティブな反応をしてくれるので、とても発言しやすい雰囲気があります。
それに、上司も若手と同じ目線で真剣に考えてくれて、一緒に取り組もうという姿勢なので、私も積極的に仕事に取り組めています。
──若手の提案を歓迎してくれるのが、岡谷鋼機の良さなのですね。こうした環境には、どのような学生が向いていると思いますか?
河村:私が2年目ながら思うのは、好奇心が強くてお客さまと話すことが苦じゃない人が向いていると思います。現場に行っていろいろな人と会話ができて、そこから話を引き出して来られるようなタイプがいいですね。
あとは、小さなところから信頼を獲得し、地道に仕事を広げていける人が向いているのではないでしょうか。
岩崎:先輩方を見て思うのは、人の懐に入っていけるタイプというか、誠実で信頼を勝ち取れるような人が多いなという印象があります。
それと、どんどん新しいことに挑戦できる環境があるので、何にでも興味を持ってやれる人じゃないと、この会社の良さを味わえないのではないかと思います。そういった意味で、やはり好奇心は大事ですね。
──ありがとうございます。最後に、就活生の皆さんに先輩としてアドバイスをいただけますか?
岩崎:私も就職活動をしていた頃は、とにかく内定が欲しいという考えになったときがありました。でも、仕事は人生の中で大きなウェイトを占めるので、本当に自分が面白さを感じながら仕事をしていけるかが大事だと感じています。
会社に合わせた志望動機を考えるよりも、ちゃんと自己分析をして自分軸で会社を選んでくださいね。
河村:私も就職活動をしていく中で、自分が何をしたいのか、本質が見えてこなくなることがありました。企業の事業内容を見るだけではなく、自分が本当にやりたいことと、その企業の将来の方向性がマッチしているかどうかを見極めることが重要です。苦しい時期もあると思いますが、頑張ってください!
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【編集:サムライト株式会社/執筆:末光京子/撮影:赤司聡】