こんにちは、ワンキャリ編集部です。
社員総会は出なくてもOK、給料は自分で交渉して決める、勝手にマネージャーになれる、退職者の6割が起業──普通の会社と比べると、目を疑ってしまうほど「自由」な会社があります。ソーシャルメディアサービス事業をメインに、シェアリングエコノミーやスタートアップスタジオなど幅広い領域で事業を展開する、ガイアックスです。
「会社名は聞いたことがあっても、ガイアックスが具体的にどんな会社なのかはよく知らない」という方も少なくないでしょう。今回は、そんな謎に包まれたガイアックスの全貌を探るべく、突撃取材をしてきました。お話を伺ったのは、人事の流拓巳さん。「ガイアックスは、結局のところ何者なのか?」「どれくらい自由なのか?」──学生の皆さんが気になるポイントを、余すことなく質問してきました。
【目次】
・社員総会は自由参加、給与交渉も自分で。とにかく「自由すぎる」カルチャー
・説明会の途中退室、大歓迎。10回以上の面接で「自由の厳しさを覚悟した人」だけを採用
・もはや企業ではない。「概念」としてのガイアックスコミュニティ
・「出世」したい人は向いていない。活躍できるのは、常にミッションを問い続けられる人
・これからは、意思決定できる人が勝てる時代。ガイアックスは、自身に合ったスタイルで関われる
社員総会は自由参加、給与交渉も自分で。とにかく「自由すぎる」カルチャー
──本日はよろしくお願いします。「とにかく自由な会社」と名高いガイアックス。とはいえ、その実態には謎も多いです。実際のところ、どれくらい自由なんですか?
流 拓巳(ながれ たくみ):2017年入社。現在は人事部門に所属。内定者インターン生時代から、新規事業セクションで月に数百万円の広告費を任され、関西拠点の立ち上げ責任者にも抜擢(ばってき)。入社後も、新卒入社2年目にして採用マネージャーを務める傍ら、自動車免許合宿に参加しながらリモートワークで働く様子が日経新聞で取り上げられるなど、若手のホープとして活躍中。ミッションは、「人びとの当事者意識を高めること」。
流:一言で表すのは難しいのですが……。例えば、社員総会や夏の合宿が基本的に自由参加となっております。社外の人でも参加可能なので、夏合宿の参加者の2割は社外からということもありました。仕事関係に限らず、友達や家族を連れて来ることもできるんです。
──めちゃくちゃですね(笑)。
流:けど、実は理にかなっているんですよ。自由参加にすることで、企画・運営サイドは、「自発的に参加したい」と思ってもらえるような、面白くて意義のあるコンテンツをつくろうとするようになる。ただ経営方針を伝えるための場所ではなく、参加した全員にとって意味のある場を創り上げるために努力せざるを得なくなるんです。
また、取締役会であれ執行役員会であれ、あらゆる会議の議事録が社内で共有されているため、社員総会に参加しない人がいても情報格差は生まれません。
──ただのカオス状態ではなく、ちゃんと意味があるんですね。
流:こうした取り組みは、「フリー・フラット・オープン」というコアバリューに基づいています。とにかくすべて自分自身で意思決定を行う、「フリー」。社長からインターン生まで対等なパワーバランスを保つ、「フラット」。自分の情報をすべてオープンにして情報の非対称性をつくらない、「オープン」。この3つの価値観をとにかく大事にしているんです。
──なぜ「フリー・フラット・オープン」を重視しているのでしょう?
流:まず前提として、あらゆる制度が性善説に基づいて設計されています。全員が同じミッションを抱いていれば、統率せずに各々が好きなように取り組んだ方が、全体としてのパフォーマンスが上がると考えられているんです。
あとは、根本的に若い人の方が優秀だと考えられている。特にシェアリングエコノミーやスタートアップスタジオのようなイノベーティブな領域だと、若いメンバーの方が感度が高いはずです。したがって、年次に関わらず全員が伸び伸びと活躍できるよう、自由なカルチャーを採り入れているんです。
──「退職者の6割が起業する」のも、そうしたカルチャーが根付いているからこそ実現しているのでしょう。
流:自分自身のミッションに従って生きている人がほとんどですからね。起業だけでなく、農業をはじめる人や、議員になる人もいます。また、周りで起業する人が多いがゆえに、起業へのハードルが下がっている面もあるでしょう。
説明会の途中退室、大歓迎。10回以上の面接で「自由の厳しさを覚悟した人」だけを採用
──自由度を上げすぎて統率力がなくなると、組織としてのパフォーマンスが下がってしまうイメージがあります。ガイアックスがそうならないのはなぜでしょう?
流:自由の厳しさを覚悟した人だけを採用しているからだと思います。「自由」って、一見ラクそうに見えるんですが、実はとても大変なんです。やりたいことから、それを行うための方法まで、すべて自分でデザインして実行しなければいけない。待っているだけでは、何もやることが降ってこず、『社内ニート』になってしまいます。
給与交渉も個々のメンバーが行っているのですが、特にインターン生などは、生まれて初めて取り組む自分への値付けに苦労し、泣きそうになっている人もいます。
──カルチャーに合った人を採用することは、性善説に基づいて企業を運営していく観点でも大事だと思えます。
流:おっしゃる通りです。ポテンシャル採用では10回以上面接し、カルチャーにフィットしているかどうかを入念にすり合わせています。
──つまり「自由過ぎる」組織を経営する際のポイントは「採用時のハードルを徹底的に高くする」ことかもしれませんね。他にもポイントはありますか?
流:そもそも、採用時もすべてをオープンにしているので、カルチャーが合わない人がガイアックスに興味を持ちづらい構造になっているんです。採用イベントも、前半が社長の講演で後半が座談会兼選考会なのですが、社長の話が終わった時点で「ここまでの話を聞いて、帰りたいと思った人は帰って大丈夫です」とアナウンスし、実際に3割くらいが途中退室しています。
──採用のオープン化といえば、新卒採用の活動データを公開されたことでも話題になりましたよね。
流:社会全体の採用活動を良い方向に持っていきたくて敢行しました。現状の新卒一括採用のスタイルだと、学生一人ひとりにじっくりと向き合えず、学歴フィルターを作用せざるを得なくなるなど、さまざまな問題点があります。
けど本当は、学生に誠実に向き合いたくない人事なんていないと思うんです。熱意はあるのに、経団連のルールをはじめとした諸制度にがんじがらめになり、ポジティブな結果が出ない。そこで、一括採用にとらわれずに通年採用を行っているガイアックスが情報を公開することで、新しいモデルでのより良い採用形態を模索するヒントを得て欲しいと思っているんです。
もはや企業ではない。「概念」としてのガイアックスコミュニティ
──ガイアックスの事業内容についても教えてください。
流:メインで収益を支えているのは、ソーシャルメディアサービス事業です。企業や自治体、教育機関向けに、ソーシャルメディアの企画・構築から運用まで、幅広くサービスを提供しています。
一方で、「人と人をつなげる」というミッションと最もマッチし、最近かなり投資・注力しているのが、シェアリングエコノミー領域。外国人が教える家庭料理教室「Tadaku」、ライドシェアサービス「notteco」など、大小合わせて10個ほどの事業を展開しています。
また、スタートアップスタジオでの事業創出も行っていて、アイデア出しから事業運営のサポートまで、若手の起業家を支援しています。資金面での支援も行っていますが、完全子会社というわけではなく、一定割合の株をガイアックスが取得しているかたちになります。
──幅広く事業を展開されているんですね。
流:ガイアックスは、企業ではなく「概念」だと思っていて。スタートアップスタジオから生まれた事業はもちろん、既存の事業部についても、各事業部長がいつでも子会社化できる権利を与えられています。子会社化の際も、50%の株式(ストックオプション)をメンバーが持ち、外部からの資金調達を行うこともできるんです。
最終的には、ガイアックス本体は管理部機能と技術開発機能しか持たなくなるのかもしれません。ガイアックスの周辺で、ビジョンに向けてそれぞれがやりたい事業を運営する、ゆるやかなコミュニティになっていくと思います。その根底には、「同じ志や覚悟を持っている人には、トップダウンで指示を出すのではなく、各々に好きなスタイルで頑張ってもらった方が大きなインパクトを起こせる」という思想があるんです。
──競合の企業はいるんですか?
流:事業ごとにはいるんですが、ガイアックス全体で見た時の競合はいないですね。各事業の独立性が高いので、ある事業ではアライアンスを組んでいる一方で別の事業では競合になる、「右手で手をつなぎながら左手で殴り合う」状況に陥ることもあります。
──本当に自由なんですね(笑)。とはいえ、ガイアックスの自由さに惹かれて入社する学生さんは、新規事業開発ばかりに目が向いてしまう気がします。
流:実は、シェアリングエコノミー領域やスタートアップスタジオといった新規事業領域よりも、柱であるソーシャルメディアサービス事業部の方が、収益が安定している分、組織としてのチャレンジを積極的に行えます。階層を持たない「ホラクラシー」型の組織形態を導入してみたり、独自のボーナス制度を導入してみたり。どこの事業部でも、「自由さ」は担保されていると思います。
「出世」したい人は向いていない。ガイアックスで活躍できるのは、常にミッションを問い続けられる人
──非常に個性的な会社であることがよく分かりました。ちなみに、どんな人がガイアックスに向いていると思いますか?
流:自分自身のミッションを常に問い続けている人が向いているでしょう。自身の志向性にしっかりと向き合い、実現に向けて心の底から使命感で動けるようなミッションを探求し続けられる人であれば、ガイアックスの自由な環境をうまく利用できると思います。
もともと営業職だった女性で、途中で「健康的な料理をつくって人を幸せにしたい」というミッションを持つようになった末に、ガイアックスのオフィスビルでレストランを開いてしまった方がいます。ガイアックスを辞めて飲食店を開こうとしていたのですが、「ガイアックスで実現できるなら、辞める必要はないのでは?」と思い直し、ガイアックスのオフィスビルでレストランを開いてしまったんです(笑)。自分自身のミッションの実現に、ガイアックスをうまく利用している良い例だと思いますね。
ガイアックスで営業に従事していた荒井智子さんが、オフィスビル「Nagatacho GRID」にオープンしたカフェ「tiny peace kitchen」。「家庭料理を、まいにち食べよう」をコンセプトに、「お母さんが家族のために作るような、栄養たっぷりのごはん」を提供しています。ガイアックスの関係者や近隣で働くビジネスパーソンでにぎわっていました。
──逆に、向いていないタイプの人は?
流:全社一丸となって仕事に取り組みたい人や、「会社が教育環境を整備すべきだ」といった正論に則って動きたい人は向いていないと思います。各々が自身のミッションに従って独立して動いている環境なので。
また、いわゆる「出世」を重ねるかたちで自己実現をしていきたい人も向いていないでしょう。そもそも「執行役員、事業部長、部長は勝手になっちゃダメ」というルールはあるものの、マネージャーくらいであれば、自分の意志に則って自由になれてしまうので(笑)。
これからは、意思決定できる人が勝てる時代。ガイアックスは、自身に合ったスタイルで関われる
──最後に、読者の学生さんに向けてメッセージをいただけますか?
流:とにかく、自分で意思決定をしながら生きていくことをオススメします。ガイアックスに限らず、これからの世の中はどんどん自由度が増していくでしょう。自由は、自分で意思決定をしなければいけないことの裏返しでもあります。そういった時代になっていくからこそ、当事者意識を持って自ら意思決定し、行動した経験を積み重ねれば、どの会社でも通用する人材になれると思います。
流:そのうえで、考え方やミッションがガイアックスと通ずるところがあれば仲間に加わって欲しいですし、条件がマッチしなかったとしても、何かしらのかたちで関わっていければいいなと思っています。
ガイアックスへの関わり方は、「入社」だけではありません。スキルだけマッチする人、カルチャーだけマッチする人など、ガイアックスとのフィット度合いは人によってさまざま。副業やスタートアップスタジオなど、人の数だけ関わり方があります。入社することにならなくても、何らかのかたちで皆さんのやりたいことを実現する土壌は整備されているので、ガイアックスというコミュニティを認識しておいていただけるとうれしいです。
──流さん、ありがとうございました。
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【ライター:小池真幸/カメラマン:塩川雄也】